Excel で計算式の基礎(part1)
情報制御基礎では、プログラムで計算する所を、Excel のような表計算ソフトを用いて検証してもらったりする予定なので、Excel で計算式を使う方法を説明する。
セルの場所と簡単な式
簡単な、品名・単価・個数・価格の表を考える。以下の表のように、列の名前と、品名・単価・個数まで入力した後、単価と個数をかけた価格を求めるとする。
Excel では、表の列には左から、A,B,C,D… , 表の行には上から1,2,3,4,5 と番号が振られていて、特定の列・特定の行のデータを表す時には、列行を組み合わせ、A1に品名、B3に¥80、C5に4 が入っている。
例えば、D2 に、ノート単価120円、ノート個数3個をかけた値を入れたい場合は、D2の場所に、
=B2*C2
を書き込めば、その場所には360が表示される。
D3には、”=B3*C3″を入力すれば、160 が表示される。しかし、この様な式を何度も入力するのは面倒である。
この場合、セル・カーソルを、D2 に合わせ、[右ボタン]-[コピー]を行い、D3 で[右ボタン]-[貼り付けオプション]-[貼り付け]を行えば、”=B3*C3″が入力される。
ここで注意しないといけないのが、式を張り付ける場合には、貼り付け先のセルの場所が一つ下の行なので、行番号を表す2の部分が1つ下の行番号3に書き換えられて、貼り付けが行われる。(相対参照)
関数式
例えば、下左図のような、数字とその平方根の表を作る場合、A2 に 1、B2に =sqrt( A2 ) を入力、A3 に =A2+1 を入力したあと、B2の式をB3にコピー&ペーストし、A3,B3 を A4~A6にペーストすればいい。
B2に入力したような、sqrt( A2 ) のようなものは、関数式と呼ばれる。
また、A3,B3 といった複数の行・列をまとめた範囲を示す時は、A3:B3 といった表記方法であらわす。
絶対参照と相対参照
最初の例に戻って、単価と個数の積で今度は税率を加えて計算する例を考える。また、税率は後で変化するかもしれないので、B1 のセルに税率を記入しておく場合を考える。
この場合、D3 には、” =B3*C3*(1+B1) ” を入力すればいい。
ただ、このように式を入力すると、D3 の計算式を、D4,D5,D6 にコピーすると、セル D4 には =B4*C4*(1+B2) が入力されてしまい、B2 には単価という文字が記載されているため、正しい結果が求まらない。
こういった場合には、絶対参照を用いる。D3 に記入する式を
=B3*C3*(1+$B$2)
とし、この D3 の式を D4 にコピー&ペーストすると、列記号、行番号の前に$がついた部分の式は、貼り付け場所に応じて変化しない。
このような、$B$2 といったセルの参照は、絶対参照と呼ぶ。これに対し、B2 といったセル参照は、貼り付け場所に応じて書き換えられるので、相対参照と呼ぶ。
絶対参照と相対参照が混ざった、$B2, B$2 といった書き方もある。
式の入力時にF4ボタンを押す度に、B2→$B$2→B$2→$B2→B2 と変化する
$B2 は、式をコピーすると列部分はBのまま、行部分は場所に合わせて変化する。
B$2 は、式をコピーすると列部分は場所に合わせて変化し、行部分は2のままとなる。
レポート課題(2-2)
Excel で、xを0〜180度まで変化させたときのsin(x),位相をyとした時のsin(x+y)の値の表を作り、グラフ機能で表示せよ。
レポートには、セルにどのような式を入力したかの説明と、結果のグラフ(解りやすいように表示を工夫すること)をつけること。
実数型と取り扱いの注意
実数型(float / double)
実数型は、単精度実数(float型)と、倍精度実数(double型)があり、それぞれ32bit,64bitでデータを扱う。
単精度型(float)では、符号1bit,指数部8bit,仮数部23bitで値を覚え、数値としては、以下の値を意味する。(精度が低いので普通のコンピュータではあまり使われることはない)
符号✕ 1.仮数部 ✕ 2指数部-127
倍精度型(double)では、符号1bit,指数部11bit,仮数部52bitで値を覚え、数値としては、以下の意味を持つ。
符号✕ 1.仮数部 ✕ 2指数部-1023
倍精度型を使えば、正しく計算できるようになるかもしれないが、実数型はただの加算でも仮数部の小数点の位置を合わせたりする処理が必要で、浮動小数点専用の計算機能を持っていないような、ワンチップコンピュータでは整数型にくらべると10倍以上遅い場合もある。
実数の注意点
C言語でプログラムを作成していて、簡単な数値計算のプログラムでも動かないと悩んだことはないだろうか?解らなくて友達のプログラムを真似したら動いたけど、なぜ自分のプログラムは動かなかったのか深く考えたことはあるだろうか?
単純な合計と平均
整数を入力し、最後に合計と平均を出力するプログラムを以下に示す。
しかし、C言語でこのプログラムを動かすと、10,10,20,-1 と入力すると、合計(sum)40,件数(cnt)3で、平均は13と表示され、13.33333 とはならない。
小数点以下も正しく表示するには、どうすればいいだろうか?
ただし、変数の型宣言を “double data,sum,cnt ;” に変更しないものとする。
// 入力値の合計と平均を求める。 #include <stdio.h> int main() { int data ; int sum = 0 ; int cnt = 0 ; for(;;) { printf( "数字を入力せよ。-1で終了¥n" ) ; scanf( "%d" , &data ) ; if ( data < 0 ) break ; cnt = cnt + 1 ; sum = sum + data ; } printf( "合計 %d¥n" , sum ) ; printf( "平均 %d¥n" , sum / cnt ) ; }
C言語では、int型のsum / int型のcnt の計算は、int 型で計算を行う。このため、割り算だけ実数で行いたい場合は、以下のように書かないといけない。
printf( "平均 %lf¥n" , (double)sum / (double)cnt ) ;
// (double)式 は、sum を一時的に実数型にするための型キャスト
まずは動く例
以下のプログラムは、見れば判るけど、th を 0度〜360度まで5度刻みで変化させながら、y = sin(th) の値を表示するプログラム。
// sin の値を出力 #include <stdio.h> #include <math.h> int main() { double th , y ; for( th = 0.0 ; th <= 360.0 ; th += 5.0 ) { y = sin( th / 180.0 * 3.1415926535 ) ; printf( "%lf %lf¥n" , th , y ) ; } return 0 ; }
動かないプログラム
では、以下のプログラムはどうだろうか?
// case-1 ---- プログラムが止まらない #define PI 3.1415926535 int main() { double th , y ; // 0〜πまで100分割でsinを求める for( th = 0.0 ; th != PI ; th += PI / 100.0 ) { y = sin( th ) ; printf( "%lf %lf¥n" , th , y ) ; } return 0 ; }
// case-2 ---- y の値が全てゼロ int main() { int th ; double y ; for( th = 0 ; th <= 360 ; th += 5 ) { y = sin( th / 180 * 3.1415926535 ) ; printf( "%d %lf¥n" , th , y ) ; } return 0 ; }
どちらも、何気なく読んでいると、動かない理由が判らないと思う。そして、元のプログラムと見比べながら、case-1 では、「!=」を「<=」に書き換えたり、case-2 では、「int th ;」を「double th ;」に書き換えたら動き出す。
では何が悪かったのか…
回答編
C言語の基礎(part1)
学際科目の情報制御基礎において、学科間でプログラミングの初歩の理解差があるので、簡単なC言語プログラミングの基礎の説明。
Hello World
“Hello World”と表示するだけのC言語プログラムは以下のようになる。
// コメントの書き方1 // "//"で始まる行は、プログラムの説明(コメント) /* コメントの書き方2 */ // "/*"から"*/"で囲まれる範囲もコメント #include <stdio.h> // #で始まる行はプリプロセッサ行 // stdio.h には、入出力関数の説明が書いてある int main() { // 一連の処理の塊を関数と呼ぶ。 // C言語では main() 関数を最初に実行する。 printf( "Hello World\n" ) ; // printf() は、以下の物を表示する関数。 // "\n"は、文字を出力して改行するための特殊文字 return 0 ; // main() 関数が、正常終了したことを意味する } // 0 を返り値として返す。
“#include <>”のプリプロセッサ行は、最初のうちは解りにくいので、これを書かないとダメ…と思っていればいい。
#include <stdio.h> は、別ファイル(ヘッダファイル) stdio.h に記載されているプログラムを読み込む機能。
stdio.h には、printf() とか scanf() とかの関数や定数などの情報が記載されている。
C言語の基本的な命令(文)は、”;”で終わる。(単文)
複数の処理をまとめる場合には、”{“から”}”の中に、複数の文を書き並べる。(複文)
関数とは、複数の処理をひとまとめにした、処理の「かたまり」と思えばいい。
関数の型 関数名( 仮引数 ... ) { 処理1 ... ; 処理2 ... ; }printf() の 文字列中の”\n”(あるいは”¥n”)は、改行を意味する。
「\:バックスラッシュ」は、日本語環境では「¥:円記号」で入力・表示することが多い。
変数と代入
#include <stdio.h> #include <math.h> // 数学関数を使う 平方根 sqrt() を使っている int main() { // 変数の宣言 int i ; // 符号付き32bit変数 i の宣言 int a = 123 , j ; // a を 123 で初期化 , j も整数型 float x ; // 単精度実数の x を宣言 double y = 1.234 , z ; // 倍精度実数の y を宣言し 1.234 で初期化, // z も倍精度実数 // 変数への代入 i = 1 ; // i に 1 を代入 i = 12 + 2 * a ; // 12+2*a を代入 a は123なので、 // iには、258 が入る。 x = sqrt( 2.0 ) ; // x に 2.0 の平方根(1.4142)を代入 z = y * 2.0 + x * 3.0 ; // y*2+x*3をzに代入 // 変数の内容の表示 printf( "%d\n" , i ) ; // 整数型(%d)で、 i の値を表示 printf( "%f\n" , x ) ; // 単精度実数(%f) で、x の値を表示 printf( "%lf\n" , z ) ; // 倍精度実数(%lf)で、z の値を表示 printf( "iの値は%d,xの値は%lfです。\n" , i , x ) ; return 0 ; // 正常終了 0 を返す }
変数(計算結果を格納する入れ物)を使う場合は、変数を宣言する。
変数名には、何が入っているのか理解しやすいように、名前をつければいい。(英字で始まり、英数字が続くもの,_が入ってもいい)
変数に値を記憶する時は、”変数名=式 ;”の様に書くと、代入演算子”=” の右辺を計算し、その計算結果が左辺の変数に保存される。
変数の内容を表示する時には、printf() の文字列の中に、%d,%f,%lf などの表示したい式の型に応じたものを書いておく。
式の値が、その %.. の部分に書き込まれて、出力される。
繰り返しの制御命令
最も基礎的な繰り返し命令として、for() 文を説明。
#include <stdio.h> int main() { int i ; for( i = 1 ; i <= 10 ; i++ ) { // iを1から10まで変化させる。 printf( "%d %d\n" , i , i*i ) ; // i と iの二乗を表示 } return 0 ; }
for文の意味を説明するために、対応するフローチャートを示す。
先のプログラムをフローチャートで示し、その命令の実行順序と、その変数の変化を下図に示す。
理解度確認
以下のプログラムの実行順序と、最終結果で表示される内容を答えよ。
授業アンケート結果(ぷちブルーな気分)
情報ネットワーク基礎(3EI/後期)
楽しんで受講してくれた人からの意見があり、ポイントでも85ポイントと高評価であった。内容理解やシラバスについてポイントが若干低いようであるが、誤差の範疇と思われる。理解把握のポイントが最も低く、理解度確認のための質問などをもう少し増やしても良かったかと思う。
情報制御基礎(3年学際科目/前期)
学際科目ということで、初めて実施した科目であり、他学科からも受講生がある内容で、ポイントも70ポイントと低い評価であった。
プログラムを授業でやっていない学科の学生から、内容が理解できないとの意見が多かった。今年度は、他学科の学生にもわかるように、プログラムの説明を増やしたり、プログラムよりも基本的な内容を増やしたいと考えている。
情報構造論(4EI/通年)
意見の欄には、例年になく辛辣な意見もあった。他の同クラスのアンケートでも、全般的に厳しい意見が多くみられ、ポイントは74.8と例年よりも低くいが、このクラスのオフセットとも考えられる。
昨年から講義資料のWeb掲載などを行い、それを使った授業を中心としているが、ノート作成ができていない学生から、ノートをとる時間を十分にとってほしいとの意見があった。もう少し、授業の時間の作り方などを考えたいが、一方で不まじめな学生がノートもも一切とらないで受講する姿は、理解する意欲に欠けていることもあり、どのような対処とすべきか、時間をかけて考えていきたい。
データベース(5EI/後期)
ポイントでは78.6と、若干低めの評価であった。演習量や試験についての評価が他に比べて若干低く、意見でも図や表といった具体例を交えた例での説明を増やしたほうが理解が進むとの建設的な意見もあった。資料などもWebでの公開などを進めているが、今後も実例などを増やし解りやすい資料を目指したい。
オブジェクト指向プログラミング(PS2/前期)
他学科出身の受講者も含まれるため、例年進度に注意しながら授業を進めているが、ポイントでは80ポイントで、例年並みの評価であった。
もう少し、演習などをタイムリーに行いながら授業を進めたいと考えているが、演習環境などの準備も必要で自主学習などの課題を検討したいと思う。
プログラムと数値型
コンピュータの中では、2進数で値を表現するが、組み込み系のような小さいコンピュータでは、たくさんの桁を必要とする情報を扱うことが苦手である。そこで、C言語で数値を扱う型と、その型で扱える数値の範囲や問題点を説明する。
補足資料:プログラミングの基礎として、C言語の基礎を示す。
数値を扱う型
C言語では、データを覚える型を大きく2つに分けると、整数型(int)と実数型(float)に分けられる。
整数型(int)
整数型も正の値しか覚えられない符号無し型(unsigned int)と、符号付き型(signed int)に分けられる。さらに、その値を8bitで覚える文字型(char)、16bitで覚える short int型、32bitで覚える int 型、64bitで覚える long int 型(※C言語では long int で宣言すると32bitの場合も多いので要注意)がある。
精度 | 符号あり | 符号なし |
8bit | char | unsigned char |
16bit | short int | unsigned short int |
32bit | int | unsigned int |
64bit | long int※ | unsigned long int※ |
符号付きのデータは、負の数は2の補数によって保存する。この場合2進数の最上位bitは、負の数であれば必ず1となる。
整数型で扱える数
例えば、2進数3桁であれば、000,001,010,011,100,101,110,111 で、10進数であれば 0~7 の8通りの値が扱える。
(例) 符号なしの1byte(8bit)であれば、いくつの数を扱えるであろうか?
一般的に N bit であれば、0~(2N-1) までの値が扱える。
bit数 | 型 | 符号なし | |
8 | unsigned char | 0~28-1 | 0~255 |
16 | unsigned short int | 0~216-1 | 0~65535 |
32 | unsigned int | 0~232-1 | 0~4294967295 |
符号付きであれば、2の補数表現で最上位bitが0であれば正の数、1であれば負の数を表す。このため、N bit の符号つき整数は、-2N-1から2N-1-1の範囲の値を覚えられる。
bit数 | 型 | 符号あり | |
8 | char | -27~27-1 | -128~127 |
16 | short int | -215~215-1 | -32768~32767 |
32 | int | -231~231-1 | -2147483648~2147483647 |
数値の範囲の問題で動かないプログラム
この話だけだと、扱える数値の上限について実感がわかないかもしれないので、以下のプログラムをみてみよう。
組み込み系のコンピュータでは、int 型でも、一度に計算できるbit数が少ない。例えば、int型が16bitコンピュータでは、以下のプログラムは期待した値が計算できない。以下の例では、16bit int型として short int で示す。
// コード1 #include <stdio.h> #include <math.h> int main() { // 原点から座標(x,y)までの距離を求める short int x = 200 ; short int y = 200 ; short int r2 = x*x + y*y ; // (x,y)までの距離の2乗 short int r = sqrt( r2 ) ; // sqrt() 平方根 printf( "%d\n" , r ) ; // 何が求まるか? return 0 ; // (例) 282ではなく、120が表示された。 }
コンピュータで一定時間かかる処理を考えてみる。
// コード2.1 // 1 [msec] かかる処理が以下のように書いてあったとする。 short int i ; for( i = 0 ; i < 1000 ; i++ ) NOP() ; // NOP() = 約1μsecかかる処理とする。 // コード2.2 // 0.5 [sec]かかる処理を以下のようにかいた。 short int i ; for( i = 0 ; i < 500000 ; i++ ) NOP() ; // でもこの処理は16bitコンピュータでは、1μsecもかからずに終了する。なぜか?
上記の例は、性能の低い16bit コンピュータの問題で、最近は32bit 整数型のコンピュータが普通だし、特に問題ないと思うかもしれない。でも、32bit でも扱える数の範囲で動かなくなるプログラムを示す。
OS(unix) では、1970年1月1日からの経過秒数で時間を扱う。ここで、以下のプログラムは、正しい値が計算できない有名な例である。(2004年1月11日にATMが動かなくなるトラブルの原因だった)
// コード3.1 int t1 = 1554735600 ; // 2019年4月09日,00:00 int t2 = 1555340400 ; // 2019年4月16日,00:00 // この2日の真ん中の日を求める。 // 以下のプログラムは、正しい 2019年4月12日12:00 が求まらない。なぜか? int t_mid = (t1 + t2) / 2; // (例) 1951年03月25日 08:45 になった。 // コード3.2 // 以下のプログラムは正しく動く。 // time_t 型(時間処理用の64bit整数) time_t t1 = 1554735600 ; // 2019年4月09日,00:00 time_t t2 = 1555340400 ; // 2019年4月16日,00:00 // たとえ32bitでも溢れない式 time_t t_mid = t1 + (t2 - t1) / 2 ;
コンピュータと2進数
3年の情報制御基礎の授業の一回目。この授業では、情報系以外の学生も受講する。昨年度は、プログラムも作る話から、プログラムの基礎の話もしたけど、他学科からの学生さんには難しい所もあったので、共通的な話題を増やす予定。
出席確認は、右側のQRコードを撮影するか、QRコードをクリックして、Microsoft Forms で出席を報告してください。
もし、Office365にLoginできない場合は、直接出席を伝えて下さい。
情報制御基礎のシラバス
情報制御基礎では、ここに上げたシラバスに沿って授業を行う。
基本的に、センサーから読み取ったデータを使って動くシステムを作る場合の、知識ということでアナログ量・デジタル量の話から、移動平均やデータ差分といった数値処理や、そこで求まった値を制御に用いるための基礎的な話を行う。
コンピュータと組み込み系
最近では、コンピュータといっても様々な所で使われている。(1)科学技術計算用の大型コンピュータやインターネットの処理を行うサーバ群、(2)デスクトップパソコン、(3)タブレットPCやスマートフォンのような端末、(4)電化製品の中に収まるようなワンチップコンピュータなどがある。

ワンチップコンピュータ
身近で使われている情報制御という点では、(4)のような小型のコンピュータも多く、こういったものは組み込み型コンピュータとも呼ばれる。しかし、こういったコンピュータは、小さく機能も限られているので、
- 組み込み系では、扱える数値が8bit や 16bit といった精度しかなかったり、
- 複雑な計算をするには、処理時間がかかったりする
ため、注意が必要である。
この情報制御基礎の授業では、組み込み系のコンピュータでも数値を正しく扱うための知識や、こういった小さいコンピュータで制御を行うことを踏まえた知識を中心に説明を行う。
2進数と10進数
コンピュータの中では、電圧が高い/低いといった状態で0と1の2通りの状態を表し、その0/1を組み合わせて、大きな数字を表す(2進数)。
練習として、2進数を10進数で表したり、10進数を2進数に直してみよう。
N進数を10進数に変換
N進数で “abcde” があったとする。(2進数で”10101″とか、10進数で”12345″とか)
この値は、を意味する。
(例1)
(例2)
10進数をN進数に変換
N進数のは、
であることから、値をNで割った余りを求めると、N進数の最下位桁eを取り出せる。
このため、10進数で与えられた35を2進数に変換するのであれば、35を2で次々と割った余りを、下の桁から書きならべれば2進数100011)2が得られる。
実数の場合
途中に小数点を含むN進数のab.cde)Nであれば、を意味する。ここで、小数点以下だけを取り出した、0.cde)Nを考えると、
の値に、Nをかけると、
となる。よって、小数部にNをかけると、整数部分に小数点以下1桁目が取り出せる。
このため、10進数で与えられた、0.625を2進数に変換するのであれば、0.625に次々と2をかけて、その整数部を上の桁から書きならべれば、2進数0.101)2が得られる。
ただし、10進数で0.1という値で、上記の計算を行うと、延々と繰り返しが発生する。つまり、無限小数になるので注意せよ。
2の補数と負の数
コンピュータの中で引き算を行う場合には、2の補数がよく使われる。2の補数とは、2進数の0と1を入替えた結果(1の補数)に、1を加えた数である。
元の数に2の補数
を加えると(2進数が8bitの数であれば)、どのような数でも1,0000,0000という値になる。この先頭の9bit目が必ずはみ出し、この値を覚えないのであれば、元の数+2の補数=0とみなすことができる。このことから、2の補数= (-元の数) であり、負の数を扱うのに都合が良い。
練習問題
(1) 自分の誕生日で、整数部を誕生日の日、小数点以下を誕生日の月とした値について、2進数に変換せよ。(例えば、2月7日の場合は、”7.02″という小数点を含む10進数とする。)
変換の際には、上の説明の中にあるような計算手順を示し、その2進数が元の値を表していることを確認すること。
小数点以下は、最大7桁まで求めれば良い。
(2) 自分の誕生日の日と、自分の学籍番号の下2桁の値を加えた値について、8bitの2進数で表わせ。(2月7日生まれの出席番号13番なら7+13=21)
その後、8bitの2進数として、2の補数を求めよ。
実数と整数の変換
情報制御基礎で出題した問題で、5点の移動平均の処理の一部に、以下のコードがあった場合の間違い説明の問題。
int avg() { int s = .... ; return (1/5) * s ; }
の間違いを修正せよ….の答えだけど、return 0.2 * s ; とか return s/5 ; が答えだけど、小数点以下が切り捨てになるのか、四捨五入になるのか気になってきた。
for( double x = 0.0 ; x <= 2.0 ; x += 0.1 ) printf( "%ld %d\n" , x , (int)x ) ;
で確認してみたら、(int)実数は、小数点以下切り捨てだな。となると、四捨五入したいなら、return (int)( 0.2 * s + 0.5 ) ; とか、return (s+2)/5 ; とか書いてほしい…とか微妙な話になるな。
採点は、切り捨て・四捨五入の誤差については問わないで、0.2*s , s/5 を◯でいこう。
情報制御基礎の超優秀レポート
3年の学際科目で、5学科入り乱れての参加のある「情報制御基礎」の科目。幅広い知識を習得してもらう目的ということで、簡単なレポートでも要件を満たしていればA評価、B評価としているが、電気電子の学生さんからオリジナリティあふれる取り組みや、きちんとした考察のレポートがいくつか出てきている。この学生のレポートを100%としたら、よくわからないけど頑張ってついてきている学生さんが厳しくなっちゃうなぁ。
ひとまず嬉しいレポートもらったので、メモメモ。
情報制御基礎2018全講義録
- 制御構文について
- 大域変数・局所変数・スコープ
- 実数の注意点
- 実数の注意点・回答編
- 実数の扱い・レポート-No.1
- 入出力リダイレクト
- 入出力と変数・レポートNo.2
- D/A変換回路とA/D変換回路
- 移動平均の処理
- 移動平均のプログラム
- 様々な移動平均
- 様々な移動平均・レポート-No.3
- 変化の検出・差分処理
- 差分計算・レポート-No.4
- 制御工学とまとめ
注意:2018/07/30(Mon)前期期末テスト・情報制御基礎は、A4✕1枚の手書き資料のみ、持ち込み可とする。
制御工学とまとめ
情報制御基礎の授業を通して、入力値を制御するため、コンピュータを使う場合の数値処理の基礎的な話として、信号の平滑化や差分について説明をしてきた。実際には、入力値を制御に利用する場合には、数学的バックグラウンドも必要となる。
制御工学の概要
以下に、制御工学ではどのようなことを行うのか、概要を述べる。
ここで紹介する制御理論は、古典制御理論と呼ばれる。
制御工学では、入力値と、何らかの処理を施し出力値
が得られるシステムで、どのように制御するかを考える。
例えば、電気ポットの温度制御をする場合、設定温度の値を入力値(x)とし、何らかの処理を行い、出力となるヒーターの電流を制御し、最終的には温度(y)が測定される。ヒーターは、設定温度(x)と温度計の値(y)の差に応じて電流量を変化させる。このように一般的な制御では、最終的な温度が入力に戻っている。このように目標値に近づけるために、目標値との差をとって制御することをフィードバック制御という。
入力と出力で制御された波形の例を示す。
この波形では、黒のように入力値が変化した場合、それに追いつこうと出力が変化する。(1)理想的には、速やかに追いつく赤のように変化したい。しかし、(2)変化への制動が大きい過制動(青点線)では、目標値に追いつくまでに時間がかかる。(3)一方ずれに対して制御が激しいと目標値を追い越したり、増えすぎ分を減らしすぎたり変動する過制御(赤点線)となる。
PID制御
目標値、出力
、ずれ(偏差)
、制御量
とした時、基本的なフィードバック制御として偏差の使い方によってP動作,I動作,D動作がある。参考 Wikipedia PID制御
比例制御(P制御)
偏差に比例した制御(Kp は比例ゲイン)
積分制御(I制御)
偏差のある状態が長い時間続く場合、入力値の変化を大きくすることで目標値に近づけるための制御。(Ki は積分ゲイン)
微分制御(D制御)
急激な出力値の変化が起こった場合、その変化の大きさに応じて妨げようとする制御。(Kd は微分ゲイン)
PID制御
上記のI制御やD制御だけでは、安定することはなく、これらを組み合わせたPID制御を行う。
この中で、の値は、制御が最も安定するように調整を行うものであり、数値シミュレーションや、ステップ応答を与えた時の時間的変化を測定して調整を行う。