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授業アンケート 2023 後期

情報工学演習(2EI)

84.3  ポイントと高い評価であった。プログラミングコンテストを用いた演習内容の発表では、こちらが想定してた難易度の高い問題について説明したものが少なく、来年度は制約などを設けたいと思った。

情報ネットワーク基礎(3EI)

87.4 ポイントと高い評価であった。感想でもわかりやすかったとか、雑談が面白かったといった具体的な意見ももらえ、授業はうまくいったと思える。

情報構造論(4EI)

86.0 ポイントと高い評価であった。

データベース(5EI)

86.3 ポイントと高い評価であった。選択科目ながらも興味を持ってもらえたと思える。もう少し踏み込んだ内容に改善すべき所については、説明資料などの改善をすすめていきたい。

関数ポインタ

関数ポインタとコールバック関数

JavaScript のプログラムで、以下のようなコーディングがよく使われる。このプログラムでは、3と4を加えた結果が出てくるが、関数の引数の中に関数宣言で使われるfunctionキーワードが出てきているが、この意味を正しく理解しているだろうか?

このような (function()…)は、無名関数と呼ばれている。(=>を使った書き方はアロー関数と呼ばれている) これは「関数を引数として渡す機能」と、「一度しか使わないような関数にいちいち名前を付けないで関数を使うための機能」であり、このような機能は、関数を引数で渡す機能はC言語では関数ポインタと呼ばれたり、新しいプログラム言語では一般的にラムダ式などと呼ばれる。

// JavaScriptの無名関数の例 3+4=7 を表示
console.log( (function( x , y ) {
                 return x + y ;
              })( 3 , 4 ) ) ; // 無名関数
console.log( ((x,y) => {
                 return x + y ;
              })( 3 , 4 ) ) ; // アロー関数

C言語の関数ポインタの仕組みを理解するために、以下のプログラムを示す。

int add( int x , int y ) {
   return x + y ;
}
int mul( int x , int y ) {
   return x * y ;
}
void main() {
   int (*f)( int , int ) ; // fは2つのintを引数とする関数へのポインタ
   f = add ;               // f = add( ... ) ; ではないことに注意
   printf( "%d¥n" , (*f)( 3 , 4 ) ) ; // 3+4=7
                 // f( 3 , 4 ) と書いてもいい
   f = mul ;
   printf( "%d¥n" , (*f)( 3 , 4 ) ) ; // 3*4=12
}

このプログラムでは、関数ポインタの変数 f を定義している。「 int (*f)( int , int ) ; 」 は、“int型の引数を2つ持つ、返り値がint型の関数”へのポインタであり、「 f = add ; 」では、f に加算する関数addを覚えている。add に実引数を渡す()がないことに注目。C言語であれば、関数ポインタ変数 f には、関数 add の機械語の先頭番地が代入される。

そして、「 (*f)( 3 , 4 ) ; 」により、実引数を3,4にて f の指し示す add を呼び出し、7 が答えとして求まる。

こういう、関数に「自分で作った関数ポインタ」を渡し、その相手側の関数の中で自分で作った関数を呼び出してもらうテクニックは、コールバックとも呼ばれる。コールバック関数を使うC言語の関数で分かり易い物は、クイックソートを行う qsort() 関数だろう。qsort 関数は、引数にデータを比較するための関数を渡すことで、様々な型のデータの並び替えができる。

#include <stdio.h>
#include <stdlib.h>

// 整数を比較するコールバック関数
int cmp_int( int* a , int* b ) {
   return *a - *b ;
}
// 実数を比較するコールバック関数
int cmp_double( double* a , double* b ) {
   double ans = *a - *b ;
   if ( ans == 0.0 )
      return 0 ;
   else if ( ans > 0.0 )
      return 1 ;
   else
      return -1 ;
}

// ソート対象の配列
int    array_int[ 5 ] = { 123 , 23 , 45 , 11 , 53 } ;
double array_double[ 4 ] = { 1.23 , 12.3 , 32.1 , 3.21 } ;

void main() {
   // 整数配列をソート
   qsort( array_int , 5 , sizeof( int ) ,
          (int(*)(const void*,const void*))cmp_int ) ;
   //     ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~この分かりにくい型キャストが必要なのがC言語の面倒な所
   for( int i = 0 ; i < 5 ; i++ )
      printf( "%d\n" , array_int[ i ] ) ;
   // 実数配列をソート
   qsort( array_double , 4 , sizeof( double ) ,
          (int(*)(const void*,const void*))cmp_double ) ;
   //     ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
   for( int i = 0 ; i < 5 ; i++ )
      printf( "%f\n" , array_double[ i ] ) ;
}

無名関数

コールバック関数を使っていると、データを比較するだけの関数とか簡単な短い処理が使われることが多い。こういった処理を実際に使われる処理と離れた別の場所に記述すると、プログラムが読みづらくなる。この場合には、その場で関数の名前を持たない関数(無名関数)を使用する。(C++の無名関数機能は、最近のC++の文法なのでテストには出さない)

void main() {
   int (*f)( int , int ) ; // fは2つのintを引数とする関数へのポインタ
   f = []( int x , int y ) { return x + y ; } ; // add を無名関数化
   printf( "%d¥n" , (*f)( 3 , 4 ) ) ; // 3+4=7

   // mul を無名関数にしてすぐに呼び出す3*4=12 
   printf( "%d¥n" , []( int x , int y ) { return x * y ; }( 3 , 4 ) ) ;
   // メモ:C++11では、ラムダ式=関数オブジェクト
   //      C++14以降は、変数キャプチャなどの機能が追加されている。
}

C++の変数キャプチャとJavaScriptのクロージャ

JavaScript のクロージャ

JavaScriptにおいて、関数オブジェクトの中で、その周囲(レキシカル環境)の局所変数を参照できる機能をクロージャと呼ぶ。クロージャを使うことでグローバルな変数や関数の多用を押さえ、カプセル化ができることから、保守性が高まる。

// JavaScriptにおけるクロージャ
function foo() {
   let a = 12 ; // 局所変数
   console.log( (function( x , y ) {
                    return a + x + y ;  // 無名関数の外側の局所変数aを参照できる
                 })( 3 , 4 ) ) ;
}
foo() ;

C++の変数キャプチャ

C++でも無名関数などでクロージャと同様の処理を書くことができるようにするために変数キャプチャという機能がC++14以降で使うことができる。

// C++のラムダ関数における変数キャプチャ
void main() {
   int a = 12 ;
   printf( "%d\n" ,
           [a]( int x , int y ) {  // 変数キャプチャ[a]の部分
              return a + x + y ;   // 局所変数aをラムダ関数内で参照できる。
           }( 3 , 4 ) ) ;
   return 0 ;
}

セキュリティ対策

セキュリティ

バッファオーバーフロー

クラッカーがサーバを攻撃する場合、サーバ上のプログラムの脆弱性を利用する。
サーバプログラムの脆弱性を利用する最も典型的な攻撃方法には、バッファオーバーフローがある。


こういった問題が含まれるアプリケーションは危険であり、こういった脆弱性が見つかったらプログラムの更新が重要である。

広く利用されているソフトウェアでも日々脆弱性が見つかる。

マルウェア

ウィルスとは、パソコン利用者の上で動く、感染能力のある悪意のあるプログラム。機械語で書かれたものや、オフィスソフトのマクロ機能で動くものもある。パソコン内の情報を利用して、ウィルス付きメールを自動的に送ることが多い。(メールソフトを使うなど、人の操作が必要なもの)

ウィルスは元々、愉快犯によるものが一般的であったが、感染したパソコンのファイルを暗号化し、暗号化を復元するために、ネットバンキングへのお金の振り込みを要求(身代金=ransom)するようなランサムウェアが増えている。

ウォームとは、脆弱性のあるネットワークプログラムに、バッファオーバーフローを引き起こすようなデータを送りつけて、ウィルスを送りつけたり、そのコンピュータを踏み台にしてネットワークを利用した攻撃をさらに行うもの。(ネットワークを介して悪意のあるプログラムを起動させるもの)

通常、インターネットからの攻撃を防ぐために、各組織ではFireWall(後述)を設置している。一方、FireWallの内側では、防御されていることから内部のコンピュータからの攻撃に甘く、無防備であることが多い。そこで、FireWall の内側のコンピュータに、メールなどの添付ファイルでマルウェアを送付・感染させることで、FireWall内で被害が拡大することもある。

このような、FireWall 内部での感染・被害拡大を狙ったマルウェアは、トロイの木馬型と呼ばれる。

ネットワークを介した攻撃では、攻撃対象のコンピュータを乱数で得られたIPアドレスや、そのアドレスを1つづつ増やしながら攻撃を行うことが多い。こういった攻撃は絨毯攻撃と呼ぶ。

ボットとはロボットを略した単語で、ウォームの中で「外部からの命令で動くもの」を指す。マルウェアのボットの中には感染しても表面上は何もせず、クラッカーの動かすインターネットの掲示板などを監視し、そこに書かれた命令を見て spam 送信や、DoS攻撃を行うものがある。

DoS攻撃(Denial of Service attack) – サーバなどに大量のデータを送りつけたりすることで、サーバがその処理に手間取り、他の利用者のサービスに悪影響を引き起こさせる攻撃。ボットからのDoS攻撃は、インターネットの様々なIPアドレスから攻撃を受けるためFireWallで防ぐことも困難である。分散DoS攻撃(Distributed DoS Attack)

最近では、ウィルスやウォームの区別が難しいため、マルウェアと呼ぶ。

ファイアウォール

サーバで動かしているプログラムにバッファオーバーフローのような不備が残っていて、全世界のどこからでもこういった不備があるプログラムに簡単に接続できたとしたら、極めて危険である。

サーバで動くプログラムは、接続するためのポート番号が決まっているので、相手のコンピュータのIPアドレスが分かったら攻撃を仕掛けてくるかもしれない。

FireWall は、これらの接続をできなくするための方法で、例えば学内のWebサーバへの攻撃を防ぎたいのなら、ルータで「宛先ポート番号が80のパケットは廃棄」といった設定をすればよい。また、危険な攻撃を加えてくるコンピュータのIPアドレスがわかっている場合は、「送信元IPアドレスXX.XX.XX.XXのパケットは廃棄」という設定をすればよい。こういった、ポート番号やIPアドレスを見てパケットを遮断するルータは、FireWall(防火壁)と呼ばれる。

よくある設定であれば、ポート番号23(telnet),137,139(Windows ファイル共有),513(リモートデスクトップ)を禁止など(拒否リスト型/ブラックリスト型)、基本は全面禁止だけどポート番号22(ssh)は許可(許可リスト型/ホワイトリスト型)など。

セキュリティ対策

  • OSの更新・インストールアプリケーションの更新
    バッファオーバーフローのような脆弱性が無いようにソフトウェアを更新することが重要。
    Windows で、インストールされているソフトの更新では、winget が便利!!
     
  • 不審なメールは開かない
    添付ファイルにマルウェアがしかけられている可能性。リンクや画像ファイルを開くと、実際に使われているメールアドレスとして迷惑メールが増える可能性がある。
  • 危険なWebサイトをアクセスしない
    OSやブラウザの脆弱性から、マルウェア被害の可能性。
  • パソコンで不要なサービスを動かさない
    ファイル共有や、リモート接続のサーバを不用意に動かさない。
  • ウィルス対策ソフトをインストール&更新
    ウィルス対策ソフトは、新しく発生したマルウェアの命令などのパターンを保存しておき、同じパターンのものをマルウェアとして判定する。

    •  マルウェアは日々新しいものが作られるため、ウィルス対策ソフトのメーカーから、常に新しいマルウェアのパターンをダウンロード&更新が重要。
    • OSの脆弱性が見つかった場合、ウィルス対策ソフトのメーカーがマルウェアパターンを登録する前にマルウェアが届く場合がある。ゼロディ攻撃
    • 特定の企業を攻撃する場合は、その企業専用のウィルスを作る場合もある。このためマルウェアパターンが無いため、ウィルス感染の可能性がある。標的型攻撃
    • 最近では、ブラウザによるWebアクセスからの感染を防ぐために危険なURLへのアクセスを監視したり、危険なIPアドレス・ポート番号へのアクセスを監視する機能も含まれている。パーソナルファイアウォール機能
  • このパソコンは重要な情報が入っていないから、ウィルスに感染しても放置するのは危険。他のコンピュータを攻撃する踏み台、DoS攻撃のボット、トロイの木馬となって危険の元となる。

一般的に、Apple社のiPhone iOS では、ウィルス対策ソフトは不要である。これは、App Store でアプリを公開するためには、プログラムのソースコードを提出した上での審査があり、デバイスも、App Store 以外からのアプリをインストールできないため、マルウェアのインストールがほぼ不可能なためである。一方、Google 社の Android は、アプリの審査が甘く、Google Play アプリ以外からのソフトのインストールも可能であり、ウィルス対策ソフトが必要である。

理解度確認

  • Formsによる理解度確認テスト
  • 標的型攻撃メールがウィルス対策ソフトでは防ぐことが難しい理由を述べよ。
  • ファイアウォールでは、どういった処理を行うのか説明せよ。

暗号化とパスワード

暗号化

有線LANで1本のケーブルを共有したり無線でデータをやりとりする場合、通信の盗聴が行われると危険である。
前回の授業で紹介したように、簡単な置換式暗号などでは暗号の解読ができてしまう。

暗号化アルゴリズム

1980年頃には DES(Data Encryption Standard) がアメリカでの標準的な暗号化として使われていたが、コンピュータの性能があがると共に解読される危険性が高まってきた。そこで2000年頃にはAES(Advanced Encryption Standard) が使われるようになった。どちらも共通鍵を用いてデータをブロック(固定長のデータ)単位で暗号化する共通鍵ブロック暗号方式であり、暗号の鍵の長いものは暗号解読が困難となっている。

1980年頃に開発された RSA 暗号(開発者の名前より) は、巨大な数字の素因数分解が困難なことを利用した、公開鍵暗号方式の1つである。

最近、量子コンピュータを用いた暗号解析が話題となっている。量子力学の原理を計算に応用したコンピュータで、スーパーコンピュータで1万年かかる暗号解読のような処理が200秒で終わってしまうかもしれないと言われている。

公開鍵暗号方式とは…

以前に使われていた暗号化の方式は、暗号化の鍵と復号化の鍵に同じものを用いる共通鍵方式であった。
しかし、この鍵をどうやって相手に渡すか…が問題となっていた。(鍵を相手に渡す瞬間のデータを盗聴されると危険)

このため、最近では公開鍵暗号方式が中心となっている。この方式は「暗号化するため専用公開鍵」と、「暗号化を復号するための秘密鍵」をペアにして用いる。公開鍵は、暗号化するため専用なので、この鍵が他の人に見られても、暗号を復号することはできない。

公開鍵だけでは成り済ました別人と通信してしまう可能性[1]がある。そこで通信相手が本物かどうかを、認証局とよばれる第三者機関によって証明書で確認する。HTTPを暗号化したHTTPSでは、SSL証明書と呼ばれる。最近のブラウザでは、URLの左側の鍵マーク🔒からSSL証明書を確認することができる。

[1] DNSサーバの脆弱性を利用して、間違ったIPアドレスを教えさせる DNSポイズニング が行われると、利用者を間違ったサーバに接続させることが可能。

パスワード解読方法

ログインなどで使われるパスワードは、どのように破られるのだろうか?

  • ブルートフォース攻撃:単純に全ての文字を試す方式。文字の組み合わせ問題なので、パスワード文字列長をNとした場合、数字だけ(10N)とか英字だけ(26N)といった組み合わせでは、短時間に解読されてしまう。数字,大文字,小文字,記号などを交えたパスワードが理想。
  • 英単語辞書を用いた辞書攻撃:パスワードが長い場合、文字列の全ての組み合わせを試すには長い時間が必要となる。しかし、パスワードはユーザが記憶して使うことから覚えやすい単語が使われる。このため英単語辞書の文字を組み合わせることで、解読時間を短くできる場合がある。
  • 漏えいパスワードによる辞書攻撃:サーバへのリモート接続などができてしまった場合、パスワード情報が盗まれる場合がある。この時、別なサイトに同じパスワードを使っていると、その漏えいしたパスワードで別のサイトも接続ができてしまう。これらのことから、同じパスワードを使いまわすことは避けるべきである。
  • ソーシャル攻撃:パスワードには、簡単に覚えられるように自宅の電話番号、誕生日、家族の名前といったものを使う人が多い。このため、SNS で相手に友達登録をしてもうことで、こういった情報を手に入れ、パスワードを破る方法。最近の有名人の個人情報漏洩はこの手の攻撃が多い。

    ソーシャル攻撃は、”元クラッカー” ケビン・ミトニックが有名

  • パスワードスプレー攻撃:login 画面などにブルートフォース攻撃を加えて簡単にパスワードが破られるのは問題となる。このため、短時間に何度も login 操作をできないように、数回のパスワード入力に失敗すると一定時間 login ができなくなるような対策が取られる。しかし、プログラムを使ってブルートフォース攻撃をするのであれば、攻撃間隔を空ければいい。攻撃者は、その代わりにネットワークの別のコンピュータでブルートフォース攻撃をすればいい。時間当たりの攻撃回数が少ないため、通常ユーザのパスワード間違いと区別ができないので、気づかないうちにパスワード破りに成功するかもしれない。このため、長期間パスワードを変更しないユーザは、不正利用被害が発生する可能性がある。

攻撃が難しいパスワードへ

先に述べたような、login に使うパスワードなどは、ブルートフォース攻撃をうけると解読は時間の問題となる。これらの対策として毎回違う鍵(パスワード)を使えばいい。

  • ワンタイムパスワード:使い捨てのパスワードをあらかじめ沢山作っておき、接続の度に次のパスワードを用いる方式。あるいは、時間から特殊な計算方法で生成されるパスワード。時間と共に変化するのでその度毎に違うパスワードとなる。毎回違うパスワードを入力するため、パスワード表を常に持ち歩いたり、入力が面倒なので数字だけを使うことが多く、この方法だけでは使いにくい。(次週に多要素認証などの解説も行う)

多要素認証

パスワードはブルートフォース攻撃をうければ、いつかはパスワードが破られる危険性がある。こういった対策で最も重要な方法が、多要素認証(2段階認証)である。

この方式では、通常のパスワード入力の後に、以下の様な方式でワンタイムパスワードを入力することでログインが可能となる。

  • 携帯電話にテキストメッセージ(SMS)でワンタイムパスワードを送る。
  • かかってきた電話の機械音声のワンタイムパスワードを伝える。
  • 時間で変化するワンタイムパスワード生成アプリの数字を入力する。
  • メールで送られてきたワンタイムパスワードを含んだURLにアクセスする。
  • 認証画面に表示されたQRコードのURLにアクセスする。


SMSやワンタイムパスワードアプリは、携帯電話などを常に持ち歩いていることが本人確認となっている。このような方式では、携帯電話などを失くすとシステムが使えなくなるので、バックアップコード(非常時用のパスワード)の保存や、login先とは別のメールアドレスを登録してあることが重要となる。

CAPTCHA

最近では、フリーで取得できるメールアドレスをプログラムで動くロボットで自動生成し、そのアカウントを使ってspamを送るなどの手口が問題となっている。このため、接続してきた相手が人間か判定することがある。判定には、読みづらく加工された英字を入力させたり、パズルを解かせるといった方法が使われる。

元々は、読みづらい文字はコンピュータでは画像解析しづらいことから、CAPTCHA が使われるが、最近では機械学習によって解析ができるようになってきた。

セキュリティキー

SMSやメールを使ったワンタイムパスワードによる多要素認証も、間にネットワークを挟むと多要素認証では問題となる。そこで、もっと複雑な暗号で多要素認証を行うために、セキュリティキーが使われる。

多要素認証が必要になると、パソコンにセキュリティキーを差し込むことで認証が行われる。現在では FIDO(Fast IDentity Online)や FIDO2 といった規格のものが普及している。

ハッキング

インターネットの用語でハッカー(Hacker)は、コンピュータを使って悪いことをする人という意味でよく使われている。しかし元々は「主にコンピュータや電気回路一般について常人より深く高度な技術的知識を持ち、その知識を利用して技術的な課題をクリアする人々のこと」(Wikipedia引用)という意味で使われていた。このため本来は「優秀なエンジニアへの最大級の誉め言葉」として使われており、ハッカー以上の技術者を ウィザード/wizard や グル/guru と呼称することもある。

しかしながら一部のハッカーの中で、その技術を悪用する人も出てきたことから、インターネットで悪いことをする人という意味で使われることも増えてきた。そこで、悪いことをする人は別な呼び方をしようということで、攻撃を加えるひとはクラッカーと呼ぶことが多い。最近では、正義のためのハッカー = ホワイト・ハッカー、悪いハッカー = ブラック・ハッカー という表現も使われるが、黒人差別主義につながる用語ということで、正義のためのハッカーには最近はエシカル・ハッカー(高い倫理観と道徳心を兼ね備えている高い技術を持ったハッカー)という言葉を使う。

理解度確認

  • Formsによる理解度確認テスト
  • 標的型攻撃メールがウィルス対策ソフトでは防ぐことが難しい理由を述べよ。
  • ファイアウォールでは、どういった処理を行うのか説明せよ。

NoSQLと Google Firestore

データベースシステムとして、最近は NoSQL (Not Only SQL) が注目されている。この中で、広く使われている物として、Google Firestore などが有名である。教科書以外の最近のデータベースの動向ということで、最後に NoSQL の説明を行う。

リレーショナルデータベースシステムの問題

リレーショナルデータベースのシステムでは、大量の問い合わせに対応する場合、データのマスターとなるプライマリサーバに、そのデータの複製を持つ複数のセカンダリサーバを接続させる方式がとられる。しかしながら、この方式ではセカンダリサーバへのデータ更新を速やかにプライマリサーバに反映させる、さらにその結果が他のセカンダリサーバに反映させる必要があることから、大量のデータに大量の問い合わせがあるようなシステムでは、これらのデータ同期の性能が求められる。しかも、プライマリサーバが故障した場合の復旧なども考えると、こういったプライマリ・セカンダリ・サーバ構成での運用・管理は大変である。

NoSQLの利点

NoSQLのデータベースでは、すべてのデータを複数のサーバ(別のデバイス,ネットワーク)に冗長化したうえで分散して保存する。この際に、どのサーバがプライマリサーバといった概念はない。もし1つのサーバが故障したとしても、分散して保存されたデータから元のデータを自動的に修復できるような構造となっている。

データの分散保存であれば、ハードディスクの RAID システムなども関連知識となるであろう。

  • RAID0 – ストライピング(データを別デバイスに分散保存し、並行読み出しで高速化)
  • RAID1 – ミラーリング(データを複数デバイスに同じものを書き込んで、データ故障耐性を実現)
  • RAID5 – データを複数デバイスに分散保存する際に、データ誤り訂正のデータも分散保存し、高速化と故障耐性を実現
  • RAID6 – データ誤り補正のデータを複数もたせて、分散保存

リレーショナルデータベースで大量のユーザからアクセスされる場合、データが安全に取り扱うことができたり、システムに障害が発生した時の対応や、システムのスケーラビリティ(利用状況に応じて処理するプロセッサなどを増やしたり減らしたりする機能)が重要となる。NoSQLのシステムでは、中心となるプライマリサーバを作るのではなく、データを複数のシステムに分散して保存し、障害が発生しても、分散したデータから自動的にデータを修復できるような構成とする。

NoSQLのシステムでは、データ格納形式から、キーバリューストア型、カラムストア型、ドキュメントデータベース、グラフデータベースに分類される。最も代表的なものは、保存するデータ(Value)に対し検索するためのキー(Key)だけの基本的なデータ検索だけを提供する キーバリューストア(Key-Value store)である。こういった構成ではSQLとは違い、複数のテーブルをまたがった検索などができない(サブコレクションなどを使えば代用可能)。

Google の Firestore

NoSQLのデータベースを構築したのは、Google が先駆けであった。現在、このGoogle の NoSQL のシステムは、Firestore として利用されている。(データベースはFireBase)

Firestore は、ドキュメントモデルデータベースの一種であり、すべてのデータはドキュメントとコレクションに保存される。ドキュメントは、データベースでのレコードに相当するが、属性名とそれに対応したデータの JSON オブジェクトである。コレクションは、キーにより対応するドキュメントを取り出せるデータ群である。ドキュメントの中に、サブコレクションを保存することもできる。

参照カウンタの問題とガベージコレクタ

前回の授業では、共有のあるデータ構造では、データの解放などで問題が発生することを示し、その解決法として参照カウンタ法などを紹介した。今日は、参照カウンタ法の問題を示した上で、ガベージコレクタなどの説明を行う。

共有のあるデータの取扱の問題

前回の講義を再掲となるが、リスト構造で集合計算おこなう場合の和集合を求める処理を考える。

struct List* join( struct List* a , struct List* b )
{  struct List* ans = b ;
   for( ; a != NULL ; a = a->next )
      if ( !find( ans , a->data ) )
         ans = cons( a->data , ans ) ;
   return ans ;
}
void list_del( struct List* p )
{                            // ダメなプログラムの例
   while( p != NULL ) {      // for( ; p != NULL ; p = p->next )
      struct List* d = p ;   //    free( p ) ;
      p = p->next ;
      free( d ) ;
   }    
}
void main() {
   // リストの生成
   struct List* a = cons( 1 , cons( 2 , cons( 3 , NULL ) ) ) ;
   struct List* b = cons( 2 , cons( 3 , cons( 4 , NULL ) ) ) ;
   struct List* c = join( a , b ) ; // c = { 1, 1, 2, 3 }
                                     //          ~~~~~~~ ここは b
   // a,b,cを使った処理

   // 処理が終わったのでa,b,cを捨てる
   list_del( c ) ;
   list_del( b ) ;
   list_del( a ) ; // list_del(c)ですでに消えている
}                  // このためメモリー参照エラー発生

このようなプログラムでは、下の図のようなデータ構造が生成されるが、処理が終わってリスト廃棄を行おうとすると、bの先のデータは廃棄済みなのに、list_del(c)の実行時に、その領域を触ろうとして異常が発生する。

参照カウンタ法

上記の問題は、b の先のリストが c の一部とデータを共有しているために発生する。この解決方法として簡単な方法では、参照カウンタ法が用いられる。

参照カウンタ法では、データを参照するポインタの数をデータと共に保存する。

  • データの中にポインタ数を覚える参照カウンタを設け、データを生成した時に1とする。
  • 処理の中で共有が発生すると、参照カウンタをカウントアップする。
  • データを捨てる際には、参照カウンタをカウントダウンし、0になったら本当にそのデータを消す。
struct List {
   int          refc ; // 参照カウンタ
   int          data ; // データ
   struct List* next ; // 次のポインタ
} ;

void list_del( strcut List* p ) {  // 再帰で全廃棄
   if ( p != NULL
        && --(p->refc) <= 0 ) {    // 参照カウンタを減らし
      list_del( p->next ) ;        // 0ならば本当に消す
      free( p ) ;
   }
}

ただし、参照カウンタ法は、循環リストではカウンタが0にならないので、取扱いが苦手。

ガベージコレクタ

では、循環リストの発生するようなデータで、共有が発生するような場合には、どのようにデータを管理すれば良いだろうか?
最も簡単な方法は、「処理が終わっても使い終わったメモリを返却しない」方法である。ただし、このままでは、メモリを使い切ってしまう。

そこで、廃棄処理をしないまま、ゴミだらけになってしまったメモリ空間を再利用するのが、ガベージコレクタである。
ガベージコレクタは、貸し出すメモリ空間が無くなった時に起動され、

  1. すべてのメモリ空間に、「不要」の目印をつける。(mark処理)
  2. 変数に代入されているデータが参照している先のデータは「使用中」の目印をつける。(mark処理)
  3. その後、「不要」の目印がついている領域は、だれも使っていないので回収する。(sweep処理)


この方式は、マークアンドスイープ法と呼ばれる。ただし、このようなガベージコレクタが動く場合は、他の処理ができず処理が中断されるので、コンピュータの操作性という点では問題となる。

最近のプログラミング言語では、参照カウンタとガベージコレクタを取り混ぜた方式でメモリ管理をする機能が組み込まれている。このようなシステムでは、局所変数のような関数に入った時点で生成され関数終了ですぐに不要となる領域は、参照カウンタで管理し、大域変数のような長期間保管するデータはガベージコレクタで管理される。

大量のメモリ空間で、メモリが枯渇したタイミングでガベージコレクタを実行すると、長い待ち時間となることから、ユーザインタフェースの待ち時間に、ガベージコレクタを少しづつ動かすなどの方式もとることもある。

ガベージコレクタが利用できる場合、メモリ管理を気にする必要はなくなってくる。しかし、初心者が何も気にせずプログラムを書くと、使われないままのメモリがガベージコレクタの起動まで放置され、場合によっては想定外のタイミングでのメモリ不足による処理速度低下の原因となる場合もある。手慣れたプログラマーであれば、素早くメモリを返却するために、使われなくなった変数には積極的に null を代入するなどのテクニックを使う。

プログラム言語とメモリ管理機能

一般的に、C言語というとポインタの概念を理解できないと使えなかったり、メモリ管理をきちんとできなければ危険な言語という点で初心者向きではないと言われている。

C言語は、元々 BCPLB言語を改良してできたプログラム言語であった。これに、オブジェクト指向の機能を加えた C++ が作られた。C++ という言語の名前は、B言語→C言語と発展したので、D言語(現在はまさにD言語は存在するけど)と名付けようという意見もあったが、C++ を開発したビャーネ・ストロヴストルップは、ガベージコレクタのようなメモリ管理機能が無いことから、D言語を名乗るには不十分ということで、C言語を発展させたものという意味でC++と名付けている。

こういった中で、C++をベースとしたガベージコレクタなどを実装した言語としては、Java が挙げられる。オブジェクト指向をベースとしたマルチスレッドやガベージコレクタに加え、仮想マシンによる実行で様々なOS(やブラウザ)で動かすことができる。

最近注目されている言語の1つとして、C言語の苦手であった「メモリ安全性」や実行効率を考えて開発されたものに Rust が挙げられる。メモリ管理や効率などの性能から、最近では Linux の開発言語に Rust を部分的に導入されている。


C言語でデータが保存される領域は大きく以下の3つに分類される。

  1. 静的データ領域(大域変数領域)
  2. スタック領域(局所変数)
  3. ヒープ領域(malloc(),free()で管理される領域)

2,3は、処理の途中で領域が作られ不要になったら消える領域であり動的メモリ領域という。

局所変数とスタック

局所変数は、関数に入った時に作られるメモリ領域であり、関数の処理を抜けると自動的に開放されるデータ領域である。

関数の中で関数が呼び出されると、スタックに戻り番地情報を保存し、関数に移動する。最初の処理で局所変数領域が確保され、関数を終えると局所変数は開放される。
この局所変数の確保と開放は、最後に確保された領域を最初に開放される(Last In First Out)ことから、スタック上に保存される。

baz()の中で、「*((&c)+8) = 123 ;」を実行したら、bar()のxを書き換えられるかも…(実際の関数呼び出し時に保存される情報はもう少し複雑:コールスタック/Wikipedia)

こういった変数の並び順を悪用し、情報の読み書きを防ぐために、局所変数の保存場所の順序を入れ替えたり、メモリのアドレス空間配置のランダム化などが行われたりする。

 

リモート接続と暗号化

リモート接続

サーバなどの管理をしていると、インターネットの先にあるコンピュータを操作したい場合が多い。こういった場合には、リモート接続機能を用いる。

リモート接続による相手側のコンピュータを操作する場合、相手側のコンピュータには リモート接続 用のサーバプログラムを起動しておく。こういったリモート接続を利用するのは、”unix” の利用者が多いが、”unix” では、サーバ のプログラムは、一般的にデーモン(daemon/守護神)と呼ばれる。[daemonとdemonの違い]

telnet と rlogin

telnet は、最も基本的なリモート接続の方法であり、TCP の 23 番ポートを使う。telnetのサーバ(telnetd – telnet daemon)は、送られてくるタイプされた文字を unix の shell (キーボードでの命令を実行するプログラム) に渡し、shell の実行結果の文字を接続元に送り返す。

telnet のクライアントの基本的動作は、タイプされた文字を送って、受信した文字データを表示するだけなので、通信の動作の確認にもよく使われる。

例えば、Webサーバは、80番ポートに”GET /ページの場所”を送ると、HTMLデータが受信できる。この手順を telnet で行う場合は、以下の様に行う。

rlogin は、TCP の 513 番ポートを使うリモート接続用のソフトで、サーバで rlogind を起動しておく。unix で rlogin クライアントを使うと、リモート側で命令を実行したりファイルをコピーすることができる

こういったリモート接続ができると、ネットワークの向こう側のコンピュータを自由に操作できる一方で、login のパスワードが破られるとコンピュータを悪用されたり情報を盗まれる可能性がある。
特に、telnet , rlogin では、通信の内容が暗号化されないため、パケット盗聴(後述)されると、サーバを悪用されてしまう。このため telnet や rlogin による遠隔処理は、使うべきではない

どうしても使うのであれば、ルータや firewall で、ポート番号 23 , 513 などは、遮断し接続するネットワークを限定するのが一般的である。

ssh(secure shell)

暗号化されない rlogin の通信を暗号化により安全に実行できるようにしたものが、ssh (secure shell) である。
ssh は、通常では TCP の 22 番ポートを使う。しかし、暗号化されていたとしてもパスワード破りなどの危険性があるため、ポート番号を変更したり、特定のコンピュータに対してのみ接続許可を与え、安全対策を行う。

リモートデスクトップ

Windows では、コンピュータの操作では、マウス操作が中心(GUI: Graphical User Interface)となる。これに比べ、telnet,rlogin,ssh などの方法では、キーボードによる操作が中心(CUI: Character User Interface)であり、初心者には難しい。遠隔地のコンピュータの操作においてマウス操作などが必要であれば、リモートデスクトップ(remote desktop)が用いられる。

remote desktop では、サーバのディスプレイ画面の情報をクライアントに送り、クライアントの操作(キーボード入力やマウス操作)がサーバに送られ、サーバのコンピュータを自由に操作ができる。

VPN

VPN(Virtual Private Network)とは、物理的に離れた場所にある拠点間を暗号化通信をつかって、仮想的に同じネットワーク内で繋がっているような安全なデータ通信を作るもの。「仮想プライベート・ネットワーク」と呼ばれ、ルータにVPN機能が内蔵されていたり、パソコンではVPNに接続するためのソフトウェアが内蔵されている。VPNで利用されるプロトコルには、SSH/TLS(SSL)/IPsec/PPTP/L2TP/L2F/MPLSなどの種類がある。

[Wikipediaより引用]

バックドア

ssh, リモートデスクトップ, VPN といったリモート接続は、遠隔地のコンピュータを自由に操作できることから、様々なコンピュータを管理している場合、広く使われている。しかしながら、クラッキングなどの悪用の危険があるため、sshサーバ、リモートデスクトップサーバなどのソフトは、通常利用者は起動しないこと

クラッキングなどを行う場合、ウィルスを使ってリモート接続のためのソフトを動かされると、相手のコンピュータを自由に使える。このような、本来の使い方ではない侵入経路は、バックドアなどと呼ばれる。

クラウド・コンピュータ

インターネットのサービスを構築する時には、自分のコンピュータをインターネットからアクセスさせる(オンプレミス)のではなく、企業などがリモート接続機能を使って、貸し出し用に提供されているコンピュータを利用する場合も多い。こういうコンピュータを利用してサービスを提供する場合、利用者にしてみればどこにあるかよくわからないコンピュータ資源を使うことから、クラウド・コンピューティングと呼ばれる。有名なクラウド サービスとしては、Amazon AWS, Microsoft Azure, Google Cloud がある。

[Wikipediaより引用]

クラウドコンピュータを借りる場合、以下のような形態がある。

  • SaaS (Software as a Service) : リモートサーバ上でアプリケーションを事業者側が用意してあるものを借りる
  • PaaS (Platform as a Service) : 事業者側が準備した Web サーバなどを借りて、サービス提供者がソフトウェアなどを準備してサービスを提供する
  • IaaS (Infrastucture as a Service) : 事業者側がコンピュータやネットワークなどの提供する環境(インフラ)を借りて、その上に利用者が OS, Webサーバ(ミドルウェア), アプリケーションを準備してサービスを提供する
形態 コンピュータ,
ネットワーク
OS
(Linux,Windows…)
ミドルウェア
(Web,DB…)
アプリケーション ユーザ
SaaS クラウド事業者が提供
PaaS クラウド事業者が提供 サービス提供者が準備
IaaS クラウド事業者が提供 サービス提供者が準備

暗号化

Ethernet では1本の通信線を共有したり、WiFiのような無線通信では、通信データの盗聴が簡単にできてしまう。クラッカーは、通信データの中から”login, password” といった文字を検索し、その近辺の文字を探すことでパスワードを盗み出す。

このようなことを防ぐために通信データの暗号化は重要な方法である。

暗号化アルゴリズム

暗号化の最も原始的な方法が、置換式 と呼ばれる方法で、特定の文字を別な文字に変更する。rot13は、A→N,B→Oに置き換える暗号。コナン・ドイル原作のシャーロック・ホームズに出てくる踊る人形などもこれに相当する。これらの方法では、アルファベットの文字の出現頻度から元の文を想像することで解読されてしまう。

エニグマ(Enigma)は、第2次世界大戦でナチス・ドイツが用いたロータ式暗号機であり、置換式の解読方法が不可能であった。しかし、イギリスのアラン・チューリングが電気式の解読器(ボンブ)を開発することで暗号解読が可能となった。この解読器が現在のコンピュータの原型となっている。

チューリングによる暗号解読は、映画「イミテーションゲーム」を参照。

最近では、様々な暗号化アルゴリズムが開発されており、古くは “DES, AES“といったアルゴリズムが使われていたが、コンピュータの性能の向上と共に、解読に必要な時間が短くなったことから、RSA といった新しい暗号化方式が考えられ、さらに暗号化の鍵を長くすることで解読に要する時間を長くするようになっている。
(暗号化アルゴリズムについては、次週の講義でもう少し詳しく解説する。)

パスワード解読方法

ログインなどで使われるパスワードは、どのように破られるのだろうか?

  • ブルートフォース攻撃:単純に全ての文字を試す方式。文字の組み合わせ問題なので、パスワード文字列長をNとした場合、数字だけ(10N)とか英字だけ(26N)といった組み合わせでは、短時間に解読されてしまう。数字,大文字,小文字,記号などを交えたパスワードが理想。
  • 英単語辞書を用いた辞書攻撃:パスワードが長い場合、文字列の全ての組み合わせを試すには長い時間が必要となる。しかし、パスワードはユーザが記憶して使うことから覚えやすい単語が使われる。このため英単語辞書の文字を組み合わせることで、解読時間を短くできる場合がある。
  • 漏えいパスワードによる辞書攻撃:サーバへのリモート接続などができてしまった場合、パスワード情報が盗まれる場合がある。この時、別なサイトに同じパスワードを使っていると、その漏えいしたパスワードで別のサイトも接続ができてしまう。これらのことから、同じパスワードを使いまわすことは避けるべきである。
  • ソーシャル攻撃:パスワードには、簡単に覚えられるように自宅の電話番号、誕生日、家族の名前といったものを使う人が多い。このため、SNS で相手に友達登録をしてもうことで、こういった情報を手に入れ、パスワードを破る方法。最近の有名人の個人情報漏洩はこの手の攻撃が多い。

    ソーシャル攻撃は、”元クラッカー” ケビン・ミトニックが有名

攻撃が難しい暗号化へ

先に述べたような、login に使うパスワードなどは、ブルートフォース攻撃をうけると解読は時間の問題となる。これらの対策として毎回違う鍵(パスワード)を使えばいい。

    • 暗号表:置換式で読み取られるのを防ぐために、置換する文字の表を沢山作っておき、別の方法でその度毎に置換表を変更する
  • ワンタイムパスワード:使い捨てのパスワードをあらかじめ沢山作っておき、接続の度に次のパスワードを用いる方式。あるいは、時間から特殊な計算方法で生成されるパスワード。時間と共に変化するのでその度毎に違うパスワードとなる。毎回違うパスワードを入力するため、パスワード表を常に持ち歩いたり、入力が面倒なので数字だけを使うことが多く、この方法だけでは使いにくい。(次週に多要素認証などの解説も行う)

理解度確認

  • ファイアウォールの仕組みを説明せよ。
  • つぎの利用形態は、PaaS, SaaS, IaaS のどれにあたるか?
    • Microsoft が準備した Teams を使って、授業アンケートを取る。
    • 福井高専は、Microsoft Azure 環境の上に、Linux, Webサーバ, PHP, MySQL, WordPress をインストールして HP を運営。

トヨタの豊田章男…

トヨタの一族なのにトヨタの捨て駒社長…。なかなか面白い話や。

B木とB+木とハッシュ法

データベースでは、キーなどの値を高速に探し出すために、単純なデータが並んだだけのテーブルとは別に、検索専用のデータ構造を別に持たせることが多い。これらの検索用のデータは、インデックスファイルと呼ばれる。また、データベースのテーブルのデータも、高速に検索する機能とすべてのデータを順次取り扱うための機能が求められる。これらの機能を実現するための仕組みを以下に説明する。

B木

データベースのデータを扱う場合には、B木を用いることが多い。(4年の情報構造論で説明済み)

複数のデータを格納するノードは、位数Nであれば、2✕N個のデータと、その間のデータを持つノードへの2N+1個のポインタで構成される。

ノードにデータを加える場合(あるいは削除する場合)は、頻繁にノードのポインタの付け替えが発生しないように、データがN個を下回った時や、2N個を超える場合に以下のような処理を行う。ノード内のデータ数が2Nを超える場合は、均等に木構造が成長するように、中央値を上のノードに移動し、ノードを2分割する。

データを削除することでN個を下回る場合は、隣接するノードからデータを移動する。(上図の緑部分のように上位ノードの値を交えながら移動する)

このような処理を行うことで、極力不均一に成長した木構造が発生しないようにB木は管理されている。

B+木とシーケンスセット

再帰的な木構造のB木では、特定のデータを探す場合には、O(log N)で検索が可能である。

しかしながら、直積のようなすべてのデータを対象とする処理を行う場合、単純なB木では再帰呼出しをしながらの処理を必要とすることから、複雑な処理が発生する。そこで、データ列を横方向にアクセスするための単純リストであるシーケンスセットをB木と並行して管理するデータ構造B+木である。

データを検索する場合は、B木構造部を用い、全データ処理は、シーケンスセットを用いる。

ハッシュ法

ハッシュ表は、データの一部をとりだしてハッシュ値を求め、そのハッシュ値を番地とする場所にデータを保存する方法である。しかし、データの一部を取り出すため、異なるデータに対して同じハッシュ値となる場合がある。これをハッシュ衝突とよぶ。この際のデータの保存の方法から、2つの方式がある。

  1. オープンアドレス法
    ハッシュ表がすでに埋まっていたら、別の保存場所を探す方式。
  2. チェイン法
    同じハッシュ値となるデータをリスト構造で保存する方法。

チェイン法と共有のあるデータの問題

前回の授業で説明したハッシュ法は、データから簡単な計算(ハッシュ関数)で求まるハッシュ値をデータの記憶場所とする。しかし、異なるデータでも同じハッシュ値が求まった場合、どうすれば良いか?

ハッシュ法を簡単なイメージで説明すると、100個の椅子(ハッシュ表)が用意されていて、1クラスの学生が自分の電話番号の末尾2桁(ハッシュ関数)の場所(ハッシュ値)に座るようなもの。自分のイスに座ろうとしたら、同じハッシュ値の人が先に座っていたら、どこに座るべきだろうか?

オープンアドレス法

先の椅子取りゲームの例え話であれば、先に座っている人がいた場合、最も簡単な椅子に座る方法は、隣が空いているか確認して空いていたらそこに座ればいい。

これをプログラムにしてみると、以下のようになる。このハッシュ法は、求まったアドレスの場所にこだわらない方式でオープンアドレス法と呼ばれる。

// オープンアドレス法
// table[] は大域変数で0で初期化されているものとする。

// 配列に電話番号と名前を保存
void entry( int phone , name ) {
   int idx = hash_func( phone ) ;

   while( table[ idx ].phone != 0 )
      idx = (idx + 1) % HASH_SIZE ; // ひとつ後ろの席
   }                                // idx++ でないのは何故?
   table[ idx ].phone = phone ;
   strcpy( table[ idx ].name , name ) ;
}

// 電話番号から名前を調べる
char* search( int phone ) {
   int idx = hash_func( phone ) ;

   while( table[ idx ].phone != 0 ) {
      if ( table[ idx ].phone == phone )
         return table[ idx ].name ;
      idx = (idx + 1) % HASH_SIZE ; // ひとつ後ろの席
   }                                // idx++ でないのは何故?
   return NULL ; // 見つからなかった
}

注意:このプログラムは、ハッシュ表すべてにデータが埋まった場合、無限ループとなるので、実際にはもう少し改良が必要である。

この実装方法であれば、ハッシュ表にデータが少ない場合は、ハッシュ値を計算すれば終わり。よって、処理時間のオーダはO(1)となる。しかし、ハッシュ表がほぼ埋まっている状態だと、残りわずかな空き場所を探すようなもの。

チェイン法

前に述べたオープンアドレス法は、ハッシュ衝突が発生した場合、別のハッシュ値を求めそこに格納する。配列で実装した場合であれば、ハッシュ表のサイズ以上の データ件数を保存することはできない。

チェイン法は、同じハッシュ値のデータをグループ化して保存する方法。 同じハッシュ値のデータは、リスト構造とするのが一般的。ハッシュ値を求めたら、そのリスト構造の中からひとつづつ目的のデータを探す処理となる。

この処理にかかる時間は、データ件数が少なければ、O(1) となる。しかし、ハッシュ表のサイズよりかなり多いデータ件数が保存されているのであれば、ハッシュ表の先に平均「N/ハッシュ表サイズ」件のデータがリスト構造で並んでいることになるので、O(N) となってしまう。

#define SIZE 100
int hash_func( int ph ) {
   return ph % SIZE ;
}
struct PhoneNameList {
   int phone ;
   char name[ 20 ] ;
   struct PhoneNameList* next ;
} ;
struct PhoneNameList* hash[ SIZE ] ; // NULLで初期化

struct PhoneNameList* cons( int ph ,
                            char* nm ,
                            struct PhoneNameList* nx ) {
   struct PhoneNameList* ans ;
   ans = (struct PhoneNameList*)malloc(
                      sizeof( struct PhoneNameList ) ) ;
   if ( ans != NULL ) {
      ans->phone = ph ;
      strcpy( ans->name , nm ) ;
      ans->next = nx ;
   }
   return ans ;
}

void entry( int phone , char* name ) {
   int idx = hash_func( phone ) ;
   hash[ idx ] = cons( phone , name , hash[ idx ] ) ;
}
char* search( int phone ) {
   int idx = hash_func( phone ) ;
   struct PhoneNameList* p ;
   for( p = hash[ idx ] ; p != NULL ; p = p->next ) {
      if ( p->phone == phone )
         return p->name ;
   }
   return NULL ;
}

これまでの授業の中では、データを効率よく扱うためのデータ構造について議論をしてきた。これまでのプログラムの中では、データ構造のために動的メモリ(特にヒープメモリ)を多用してきた。ヒープメモリでは、malloc() 関数により指定サイズのメモリ空間を借りて、処理が終わったら free() 関数によって返却をしてきた。この返却を忘れたままプログラムを連続して動かそうとすると、返却されなかったメモリが使われない状態(メモリリーク)となり、メモリ領域不足から他のプログラムの動作に悪影響を及ぼす。

メモリリークを防ぐためには、malloc() で借りたら、free() で返すを実践すればいいのだが、複雑なデータ構造になってくると、こういった処理が困難となる。そこで、ヒープメモリの問題点について以下に説明する。

共有のあるデータの取扱の問題

リスト構造で集合計算の和集合を求める処理を考える。

// 集合和を求める処理
struct List* join( struct List* a , struct List* b )
{  struct List* ans = b ;
   for( ; a != NULL ; a = a->next )
      if ( !find( ans , a->data ) )
         ans = cons( a->data , ans ) ;
   return ans ;
}

void list_del( struct List* p )
{                            // ダメなプログラムの例
   while( p != NULL ) {      // for( ; p != NULL ; p = p->next )
      struct List* d = p ;   //    free( p ) ;
      p = p->next ;
      free( d ) ;
   }    
}

void main() {
   // リストの生成
   struct List* a = cons( 1 , cons( 2 , cons( 3 , NULL ) ) ) ;
   struct List* b = cons( 2 , cons( 3 , cons( 4 , NULL ) ) ) ;
   struct List* c = join( a , b ) ; // c = { 1, 2, 3, 4 }
                                     //          ~~~~~~~ ここは b
   // a,b,cを使った処理

   // 処理が終わったのでa,b,cを捨てる
   list_del( a ) ;
   list_del( b ) ;
   list_del( c ) ; // list_del(b)ですでに消えている
}                  // このためメモリー参照エラー発生

このようなプログラムでは、c=join(a,b) ; が終わると下の図のようなデータ構造となる。しかし処理が終わってリスト廃棄list_del(a), list_del(b), listdel(c)を行おうとすると、bの先のデータは廃棄済みなのに、list_del(c)の実行時に、その領域を触ろうとして異常が発生する。

実体をコピーする方法

こういった共有の問題の一つの解決法としては、共有が発生しないように実体を別にコピーする方法もある。しかし、この方法はメモリがムダになる場合もあるし、List内のデータを修正した時に、実体をコピーした部分でも修正が反映されてほしい場合に問題となる。

// 実体をコピーする(簡潔に書きたいので再帰を使う)
struct List* copy( struct List* p ) {
   if ( p != NULL )
      return cons( p->data , copy( p->next ) ) ;
   else
      return NULL ;
}

// 共有が無い集合和を求める処理
struct List* join( struct List* a , struct List* b )
{
   struct List* ans = copy( b ) ;
   //                 ~~~~~~~~~実体をコピー
   for( ; a != NULL ; a = a->next )
      if ( !find( ans , a->data ) )
        ans = cons( a->data , ans ) ;
   return ans ;
}

参照カウンタ法

上記の問題は、b の先のリストが c の一部とデータを共有しているために発生する。この解決方法として簡単な方法では、参照カウンタ法が用いられる。

参照カウンタ法では、データを参照するポインタの数をデータと共に保存する。

  • データの中にポインタ数を覚える参照カウンタを設け、データを生成した時に1とする。
  • 処理の中で共有が発生すると、参照カウンタをカウントアップする。
  • データを捨てる際には、参照カウンタをカウントダウンし、0になったら本当にそのデータを消す。
struct List {
   int          refc ; // 参照カウンタ
   int          data ; // データ
   struct List* next ; // 次のポインタ
} ;

struct List* cons( int x , struct List* p ) {
   struct List* n = (struct List*)malloc( sizeof( struct List* ) ) ;
   if ( n != NULL ) {
      n->refc = 1 ; // 初期状態は参照カウンタ=1
      n->data = x ;
      n->next = p ;
   }
   return n ;
}

struct List* copy( struct List* p ) {
   p->refc++ ;  // 共有が発生したら参照カウンタを増やす。
   return p ;
}
// 集合和を求める処理
struct List* join( struct List* a , struct List* b )
{
   struct List* ans = copy( b ) ;
   //                 ~~~~~~~~~共有が発生するのでrefc++
   for( ; a != NULL ; a = a->next )
      if ( !find( ans , a->data ) )
         ans = cons( a->data , ans ) ;
   return ans ;
}

void list_del( strcut List* p ) {  // 再帰で全廃棄
   if ( p != NULL
        && --(p->refc) <= 0 ) {    // 参照カウンタを減らし
      //   ~~~~~~~~~~~
      list_del( p->next ) ;        // 0ならば本当に消す
      free( p ) ;
   }
}

int main() { // リストの生成
   struct List* a = cons( 1 , cons( 2 , cons( 3 , NULL ) ) ) ;
   struct List* b = cons( 2 , cons( 3 , cons( 4 , NULL ) ) ) ;
   struct List* c = join( a , b ) ;

   // a,b,cを使った処理

   // 処理が終わったのでa,b,cを捨てる
   list_del( a ) ;  // aの要素は全部refc=1なので普通に消えていく
   list_del( b ) ;  // bは、joinの中のcopy時にrefc=2なので、
                    // この段階では、refc=2 から refc=1 になるだけ
   list_del( c ) ;  // ここで全部消える。
}

unix i-nodeで使われている参照カウンタ

unixのファイルシステムの基本的構造 i-node では、1つのファイルを別の名前で参照するハードリンクという機能がある。このため、ファイルの実体には参照カウンタが付けられている。unix では、ファイルを生成する時に参照カウンタを1にする。ハードリンクを生成すると参照カウンタをカウントアップ”+1″する。ファイルを消す場合は、基本的に参照カウンタのカウントダウン”-1″が行われ、参照カウンタが”0″になるとファイルの実体を消去する。

以下に、unix 環境で 参照カウンタがどのように使われているのか、コマンドで説明していく。

$ echo a > a.txt
$ ls -al *.txt
-rw-r--r-- 1 t-saitoh t-saitoh 2 12月 21 10:07 a.txt
          ~~~ # ここが参照カウンタの値
$ ln a.txt b.txt      # ハードリンクでコピーを作る
$ ls -al *.txt
-rw-r--r-- 2 t-saitoh t-saitoh 2 12月 21 10:07 a.txt
-rw-r--r-- 2 t-saitoh t-saitoh 2 12月 21 10:07 b.txt
          ~~~ # 参照カウンタが増えているのが分かる
$ rm a.txt            # 元ファイルを消す
$ ls -al *.txt
-rw-r--r-- 1 t-saitoh t-saitoh 2 12月 21 10:07 b.txt
          ~~~ # 参照カウンタが減っている
$ ln -s b.txt c.txt   # シンボリックリンクでコピーを作る
$ ls -al *.txt
-rw-r--r-- 1 t-saitoh t-saitoh 2 12月 21 10:07 b.txt
lrwxrwxrwx 1 t-saitoh t-saitoh 5 12月 21 10:10 c.txt -> b.txt
$ rm b.txt            # 元ファイルを消す
$ ls -al *.txt
lrwxrwxrwx 1 t-saitoh t-saitoh 5 12月 21 10:10 c.txt -> b.txt
$ cat c.txt           # c.txt は存在するけどその先の実体 b.txt は存在しない
cat: c.txt: そのようなファイルやディレクトリはありません

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