単純リストから双方向リストへ
ここまで説明してきた単純リストは、次のデータへのポインタを持つ。ここで、1つ後ろのデータ(N番目からN+1番目)をアクセスするのは簡単だけど、1つ前のデータ(N-1番目)を参照しようと思ったら、先頭から(N-1)番目を辿るしかない。でも、これは O(N) の処理であり時間がかかる処理。
ではどうすればよいのか?
この場合、一つ前のデータの場所を覚えているポインタがあれば良い。

// 双方向リストの宣言
struct BD_List {
struct BD_List* prev ; // 1つ前のデータへのポインタ
int data ;
struct BD_List* next ; // 次のデータへのポインタ
} ;
このデータ構造は、双方向リスト(bi-directional list)と呼ばれる。では、簡単なプログラムを書いてみよう。双方向リストのデータを簡単に生成するための補助関数から書いてみる。
// リスト生成補助関数
struct BD_List* bd_cons( struct BD_List* p ,
int d ,
struct BD_List* n ) {
struct BD_List* ans ;
ans = (struct BD_List*)malloc(
sizeof( struct BD_List ) ) ;
if ( ans != NULL ) {
ans->prev = p ;
ans->data = d ;
ans->next = n ;
}
return ans ;
}
void main() {
struct BD_List* top ;
struct BD_List* p ;
// 順方向のポインタでリストを生成
top = bd_cons( NULL , 1 ,
bd_cons( NULL , 2 ,
bd_cons( NULL , 3 , NULL ) ) ) ;
// 逆方向のポインタを埋める
top->next->prev = top ;
top->next->next->prev = top->gt;next ;
// リストを辿る処理
for( p = top ; p->next != NULL ; p = p->next )
printf( "%d\n" , p->data ) ;
for( ; p->prev != NULL ; p = p->prev )
printf( "%d\n" , p->data ) ;
}
双方向リストの関数作成
以上の説明で、双方向の基礎的なプログラムの意味が分かった所で、練習問題。
先のプログラムでは、1,2,3 を要素とするリストを、ナマで記述していた。実際には、どんなデータがくるか分からないし、指定したポインタ p の後ろに、データを1件挿入する処理 bd_insert( p , 値 ) , また、p の後ろのデータを消す処理 bd_delete( p ) を書いてみよう。

// 双方向リストの指定場所 p の後ろに、値 d を要素とするデータを挿入せよ。
void bd_insert( struct BD_List* p , int d ) {
struct BD_List*n = bd_cons( p , d , p->next ) ;
if ( n != NULL ) {
p->next->prev = n ;
p->next = n ;
}
}
// 双方向リストの指定場所 p の後ろのデータを消す処理は?
void bd_delete( struct BD_List* p ) {
struct BD_List* d = p->next ;
d->next->prev = p ;
p->next = d->next ;
free( d ) ;
}
// この手のリスト処理のプログラムでは、命令の順序が重要となる。
// コツとしては、修正したい箇所の遠くの部分を操作する処理から
// 書いていくと間違いが少ない。
番兵と双方向循環リスト
前述の bd_insert() だが、データの先頭にデータを挿入したい場合は、どう呼び出せば良いだろうか?
bd_insert() で、末尾にデータを挿入する処理は、正しく動くだろうか?
同じく、bd_delete() だが、データの先頭のデータを消したい場合は、どう呼び出せば良いだろうか?
また、データを消す場合、最後の1件のデータが消えて、データが0件になる場合、bd_delete() は正しく動くだろうか?
こういった問題が発生した場合、データが先頭・末尾で思ったように動かない時、0件になる場合に動かない時、特別処理でプログラムを書くことは、プログラムを読みづらくしてしまう。そこで、一般的には 循環リストの時にも紹介したが、番兵(Sentinel) を置くことが多い。

しかし、先頭用の番兵、末尾用の番兵を2つ用意するぐらいなら、循環リストにした方が便利となる。このような双方向リストでの循環した構造は、双方向循環リスト(bi-directional ring list)と呼ばれる。
この双方向循環リストを使うと、(1)先頭にデータを挿入(unshift)、(2)先頭のデータを取り出す(shift)、(3)末尾にデータを追加(push)、(4)末尾のデータを取り出す(pop)、といった処理が簡単に記述できる。この4つの処理を使うと、単純リスト構造で説明した、待ち行列(queue)やスタック(stack) が実現できる。この特徴を持つデータ構造は、先頭・末尾の両端を持つ待ち行列ということで、deque (double ended queue) とも呼ばれる。
理解確認
- 双方向リストとはどのようなデータ構造か図を示しながら説明せよ。
- 双方向リストの利点と欠点はなにか?
- 番兵を用いる利点を説明せよ。
- deque の機能と、それを実現するためのデータをリストを用いて実装するには、どうするか?
- 双方向リストが使われる処理の例としてどのようなものがあるか?