ワード境界,共用体,列挙型
構造体の演習に引き続き、構造体の応用について説明する。
ワード境界
構造体の配列をメモリに格納する場合、ワード境界が問題となる。 最近のコンピュータでは、CPUの速度に比べ主記憶の速度は遅いため、 メモリを効率よくアクセスする必要がある。 このために、メモリ上のデータは、ワード単位で一括して読み書きされる。
struct Data { char a[ 5 ] ; int b ; short int c ; } ; struct Data array[ 10 ] ;
上記のような構造体があったとして、メモリー上に以下のように配置されていると、 array[0].b を参照する際には、04行と08行の2回のメモリアクセスがあって、 メモリ参照速度が低下する。
ワードアライメントを無視した配置 |
ワードアライメントした配置 |
このような、データを読み書きする際の、ワードの塊の境を「ワード境界」と呼ぶ。 また、右図のように、ワード境界をまたがないようにデータを配置することを、 ワードアライメントと呼ぶ。
もし、処理速度の低下より、メモリの有効利用が必要であれば、VC++であれば、”#pragma pack”や”gccの”__attribute__((packed))”などを指定する。
共用体
プログラムを作っていると、データが「名前と年齢」か「名前と住所」のどちらかで、 「名前と年齢と住所」が揃うことはない…という場合もある。この際に、”struct ..{ char name[] ; int age ; char addr[] } ; ” では、かならず3つのデータを覚えてしまい、メモリの無駄が発生するのが問題となる場合がある。 このようなときに使うのが共用体である。共用体では、中身のいずれかを覚えるために使う。 また、要素の記憶場所は共有される。
union AgeOrAddr { int age ; char addr[ 30 ] ; } ; struct NameAndAgeOrAddr { char name[ 20 ] ; union AgeOrAddr age_addr ; } ;
データの記憶場所が同じことを確認するために、以下の様な処理を実行した結果も示す。
union A { char s[4] ; int x ; } ; union A a ; // 文字列の代入 strcpy( a.s , "ABC" ) ; printf( "%8x\n" , a.x ) ; // 配列の代入 a.x = 0x12345678 ; a.s[2] = 0x99 ; printf( "%8x\n" , a.x ) ; (( 実行結果 )) 00434241 // 実験したコンピュータは Intel Xeon 11995678 // この結果より、リトルエンディアン なのが判る。
この結果は、CPUの内部が、ビッグエンディアン(68系,SPARC)か、リトルエンディアン(x86系)によって異なる。また、この順番はCPUの異なる間のネットワーク通信でも問題となることが多く、ネットワーク通信では、ビッグエンディアンを用いることになっている。
列挙型
カレンダーの処理などで、週のデータを扱う場合、日:0,月:1,火:2… と番号を振って その番号に応じてプログラムを記述する場合がある。
(( わかりにくいプログラム )) int week = なにかの週番号 ; if ( week == 3 ) { // 3がマジックナンバー 水曜日の処理 ; } (( わかりやすいプログラム )) #define SUN 0 #define MON 1 #define TUE 2 : if ( week == WED ) { // 読んでいて意味が判る 水曜日の処理 ; } (( でも週と月を整数型で扱っているだけ )) #define JAN 1 #define FEB 2 #define MAR 3 int week = 週の番号 ; week = FEB ; // エラーにはならないけど、意味的に間違い。
列挙型は、以下の様な使い方をすることで、シンプルな書き方で定数に意味をもたせることができる。このため、型の間違いの確認もできる。
enum Week { SUN , MON , TUE , ... SAT } ; enum Month { JAN , FEB , MAR , APR , MAY , ... DEC } ; enum Week week = 何らかの曜日 ; if ( week == WED ) { 水曜日の処理 ; } switch( week ) { case MON : 月曜の処理 ; break ; case WED : 水曜の処理 ; break ; // この書き方をすると、月水以外の処理が記載されていない // ことをコンパイラが警告してくれる。 } week = FEB ; // エラー:週の変数に月の値を代入することはできない。