オブジェクト指向の基本プログラム
C++のクラスで表現
前回の講義での、構造体のポインタ渡しをC++の基本的なクラスで記述した場合のプログラムを再掲する。
#include <stdio.h> #include <string.h> // この部分はクラス設計者が書く class Person { private: // クラス外からアクセスできない部分 // データ構造を記述 char name[10] ; // メンバーの宣言 int age ; public: // クラス外から使える部分 // データに対する処理を記述 void set( char s[] , int a ) { // メソッドの宣言 // pのように対象のオブジェクトを明記する必要はない。 strcpy( name , s ) ; age = a ; } void print() { printf( "%s %d¥n" , name , age ) ; } } ; // ← 注意ここのセミコロンを書き忘れないこと。 // この部分はクラス利用者が書く int main() { Person saitoh ; saitoh.set( "saitoh" , 55 ) ; saitoh.print() ; // 文法エラーの例 printf( "%d¥n" , saitoh.age ) ; // phoneはprivateなので参照できない。 return 0 ; }
この様にC++のプログラムに書き換えたが、内部の処理は元のC言語と同じであり、オブジェクトへの関数呼び出し saitoh.set(…) などが呼び出されても、set() は、オブジェクトのポインタを引数して持つ関数として、機械語が生成されるだけである。
用語の解説:C++のプログラムでは、データ構造とデータの処理を、並行しながら記述する。 データ構造に対する処理は、メソッド(method)と呼ばれる。 データ構造とメソッドを同時に記載したものは、クラス(class)と呼ぶ。 そのデータに対し具体的な値や記憶域が割り当てられたものをオブジェクト(object)と呼ぶ。
C++では隠蔽化をさらに明確にするために、private: や public: といったアクセス制限を指定できる。private: は、そのメソッドの中でしか使うことができない要素や関数であり、public: は、メソッド以外からでも参照したり呼出したりできる。オブジェクト指向でプログラムを書くとき、データ構造や関数の処理方法は、クラス内部の設計者しか触れないようにしておけば、その内部を改良することができる。しかし、クラスの利用者が勝手に内部データを触っていると、内部設計者が改良するとそのプログラムは動かないものになってしまう。
隠蔽化を的確に行うことで、クラスの利用者はクラスの内部構造を触ることができなくなる。一方でクラス設計者はクラスの外部への挙動が変化しないようにクラス内部を修正することに心がければ、クラス利用者への影響がないままクラスの内部を改良できる。このように利用者への影響を最小に、常にプログラムを修正することをリファクタリングと呼ぶ。
クラス限定子
前述のプログラムでは、class 宣言の中に関数内部の処理を記述していた。しかし関数の記述が長い場合は、書ききれないこういう場合はクラス限定子を使って、メソッドの具体的な処理をクラス宣言の外に記載する。
class Person { private: char name[10] ; int age ; public: // メソッドのプロトタイプ宣言 void set( char s[] , int a) ; void print() ; } ; // メソッドの実体をクラス宣言の外に記載する。 void Person::set( char s[] , int a ) { // Person::set() strcpy( name , s ) ; age = a ; } void Person::print() { // Person::print() printf( "%s %d¥n" , name , age ) ; }
inline 関数と開いたサブルーチン
オブジェクト指向では、きわめて簡単な処理な関数を使うことも多い。
例えば、上記のプログラム例で、クラス利用者に年齢を読み出すことは許しても書き込みをさせたくない場合、以下のような、inline 関数を定義する。(getterメソッド)
# 逆に、値の代入専用のメソッドは、setterメソッドと呼ぶclass Person { private: char name[10] ; int age ; public: // メソッドのプロトタイプ宣言 inline int get_age() { return age ; } // getter inline void set_age( int a ) { age = a ; } // setter } ;ここで inline とは、開いた関数(開いたサブルーチン)を作る指定子である。通常、機械語を生成するとき中身を参照するだけの機械語と、get_age() を呼出したときに関数呼び出しを行う機械語が作られる(閉じたサブルーチン)が、age を参照するだけのために関数呼び出しの機械語はムダが多い。inline を指定すると、入り口出口のある関数は生成されず、get_age() の処理にふさわしい age を参照するだけの機械語が生成される。
# 質問:C言語で開いたサブルーチンを使うためにはどういった機能があるか?
コンストラクタとデストラクタ
プログラムを記述する際、データの初期化忘れや終了処理忘れで、プログラムの誤動作の原因になることが多い。
このための機能がコンストラクタ(構築子)とデストラクタ(破壊子)という。
コンストラクタは、返り値を記載しない関数でクラス名(仮引数…)の形式で宣言し、オブジェクトの宣言時に初期化を行う処理として呼び出される。デストラクタは、~クラス名() の形式で宣言し、オブジェクトが不要となる際に、自動的に呼び出し処理が埋め込まれる。
class Person { private: // データ構造を記述 char name[10] ; int age ; public: Person() { // (A) 引数なしのコンストラクタ name[0] = 'class Person { private: // データ構造を記述 char name[10] ; int age ; public: Person() { // (A) 引数なしのコンストラクタ name[0] = '\0' ; age = 0 ; } Person( char s[] , int a ) { // (B) 引数ありのコンストラクタ strcpy( name , s ) ; age = a ; } ~Person() { // デストラクタ print() ; } void print() { printf( "'%s' = %d¥n" , name , age ) ; } } ; int main() { Person saitoh( "saitoh" , 55 ) ; // オブジェクトsaitohを"saitoh"と55で初期化 Person tomoko ; // 引数なしのコンストラクタで初期化される。 return 0 ; // main を抜ける時にオブジェクトsaitohは不要になるので、 // デストラクタが自動的に呼び出され、'saitoh' = 55 が表示。 // 同様に tomoko のデストラクタでは、'' = 0 を表示。 }' ; age = 0 ; } Person( char s[] , int a ) { // (B) 引数ありのコンストラクタ strcpy( name , s ) ; age = a ; } ~Person() { // デストラクタ print() ; } void print() { printf( "'%s' = %d¥n" , name , age ) ; } } ; int main() { Person saitoh( "saitoh" , 55 ) ; // オブジェクトsaitohを"saitoh"と55で初期化 Person tomoko ; // 引数なしのコンストラクタで初期化される。 return 0 ; // main を抜ける時にオブジェクトsaitohは不要になるので、 // デストラクタが自動的に呼び出され、'saitoh' = 55 が表示。 // 同様に tomoko のデストラクタでは、'' = 0 を表示。 }
このクラスの中には、(A)引数無しのコンストラクタと、(B)引数ありのコンストラクタが出てくる。C++では、同じ名前の関数でも引数の数や型に応じて呼出す関数を適切に選んでくれる。(関数のオーバーロード)
デストラクタは、データが不要となった時に自動的に呼び出してくれる関数で、一般的にはC言語でのファイルの fopen() , fclose() のようなものを使う処理で、コンストラクタで fopen() , デストラクタで fclose() を呼出すように使うことが多いだろう。同じように、コンストラクタで malloc() を呼出し、デストラクタで free() を呼出すというのが定番の使い方だろう。
複素数クラスの例
隠蔽化と基本的なオブジェクト指向の練習課題として、複素数クラスをあげる。ここでは、複素数の加算・乗算を例に説明をするので、減算・除算などの処理を記述することで、クラスの扱いに慣れてもらう。
直交座標系の複素数クラス
#include <stdio.h> #include <math.h> // 直交座標系の複素数クラス class Complex { private: double re ; // 実部 double im ; // 虚部 public: void print() { printf( "%lf + j%lf¥n" , re , im ) ; } Complex( double r , double i ) // コンストラクタで要素の : re( r ) , im( i ) { // 初期化はこのように書いてもいい } // re = r ; im = i ; の意味 Complex() // デフォルトコンストラクタ : re( 0.0 ) , im( 0.0 ) { } void add( Complex z ) { // 加算は、直交座標系だと極めてシンプル re = re + z.re ; im = im + z.im ; } void mul( Complex z ) { // 乗算は、直交座標系だと、ちょっと煩雑 double r = re * z.re - im * z.im ; double i = re * z.im + im * z.re ; re = r ; im = i ; } double get_re() { return re ; } double get_im() { return im ; } double get_abs() { // 絶対値 return sqrt( re*re + im*im ) ; } double get_arg() { // 偏角 return atan2( im , re ) ; } } ; // ←何度も繰り返すけど、ここのセミコロン忘れないでね int main() { // 複素数を作る Complex a( 1.0 , 2.0 ) ; Complex b( 2.0 , 3.0 ) ; // 複素数の計算 a.print() ; a.add( b ) ; a.print() ; a.mul( b ) ; a.print() ; return 0 ; }
練習課題
- 上記の直交座標系の複素数のクラスのプログラムを入力し、動作を確認せよ。
- このプログラムに減算や除算の処理を追加せよ。
この練習課題は、次週に予定している「曲座標系の複素数クラス」に変更となった場合のプログラムを加え、第1回のレポート課題となります。
令和5年度・高専プロコン福井大会・テーマ・ポスター募集
令和5年度の全国高専プログラミングコンテストは、福井高専が主管で開催されます。
そこで、R5高専プロコン・福井大会のテーマを公募します。(ポスターは1件の応募がありました)
テーマやポスターでは、ぜひとも福井県・鯖江市などをアピールするようなものを提案してください。テーマ募集については、アイデアがまだ出そろわないので学生・教職員どなたでも提案していただいて構いません。
皆さんから提案頂いた内容は、福井高専・高専プロコン準備委員会にて選考し、R5年度のテーマやポスターとして利用します。
なお、ポスターについては以下の点にご留意ください。
- 著作権に留意して作成してください。
- 採用された作品の著作権は福井高専・全国高専プロコンに帰属します。
- 実際の大会ポスターにする段階で文字などを重ねる都合上、若干のレイアウト変更を加える場合があります。
- 最終段階でA1サイズのポスターになることを想定し十分な解像度のデータにて作成してください。
- 応募締め切り
令和4年6月24日(金)期間を延長し 令和4年7月22日(金) までとします。
procon2023fukui@fukui.kosen-ac.jp宛てに、本文にてテーマ、添付ファイルでポスターを添付して送付してください。テーマだけ、ポスターだけの応募でも構いません。- テーマ募集は、こちらのFormsにて回答をお願いします。
例:令和4年度群馬大会(2022)
R4年度の群馬高専主管のプロコンは、以下のようなテーマとポスターとなっています。
テーマ:「ここだんべ!、日本一熱き、ITの戦場!」 |
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過去のポスターなど
2021秋田大会 集え!未来創造への限りなき想い |
2020苫小牧大会 北の大地で拓け!ICTミライ |
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2019都城大会 IT革命起こすっちゃが |
2018阿南大会 ITの未来はここにあるでないで! |
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Webページの生成とプログラム言語
前回の講義では、OSの仕組みとインターネット(Web)の仕組みについて、総括・復習をおこなった。
前回の理解確認の Forms では、間違った回答をした人もある程度いたので、もう一度回答しても良いものとします。ただし、2回目の回答がある場合は、点数を 2/3 にて集計します。
2回目の授業では、インターネットのWebページを作るために使われているHTMLやCSSやプログラム言語について解説を行う。
インターネットの仕組みとDNSの演習
Webページの生成とプログラム言語
理解確認
- こちらの小テストに回答してください。
繰り返し処理と処理時間の見積もり
単純サーチの処理時間
ここで、プログラムの実行時間を細かく分析してみる。
// ((case-1)) // 単純サーチ O(N) #define SIZE 1024 int a[ SIZE ] ; // 配列 int size ; // 実際のデータ数(Nとする) int key ; // 探すデータ for( int i = 0 ; i < size ; i++ ) if ( a[i] == key ) break ;
例えばこの 単純サーチをフローチャートで表せば、以下のように表せるだろう。フローチャートの各部の実行回数は、途中で見つかる場合があるので、最小の場合・最大の場合を考え平均をとってみる。また、その1つ1つの処理は、コンピュータで機械語で動くわけだから、処理時間を要する。この時間を ,
,
,
とする。
この検索処理全体の時間 を考えると、平均時間とすれば、以下のように表せるだろう。
ここで例題
この単純サーチのプログラムを動かしてみたら、N=1000で、5μ秒かかったとする。では、N=10000であれば、何秒かかるだろうか?
感のいい学生であれば、直感的に 50μ秒 と答えるだろうが、では、Tβ,Tα は何秒だったのだろうか? 上記のT(N)=Tα+N ✕ Tβ に当てはめると、N=1000,T(N)=5μ秒の条件では、連立方程式は解けない。
ここで一番のポイントは、データ処理では N が小さな値の場合(データ件数が少ない状態)はあまり考えない。N が巨大な値であれば、Tαは、1000Tβに比べれば微々たる値という点である。よって
で考えれば良い。これであれば、T(1000)=5μ秒=Tβ×1000 よって、Tβ=5n秒となる。この結果、T(10000)=Tβ×10000=50μ秒 となる。
2分探索法と処理時間
次に、単純サーチよりは、速く・プログラムとしては難しくなった方法として、2分探索法の処理時間を考える。
// ((case-2)) // 2分探索法 int L=0 , R=size ; // プログラムは複雑になった while( L != R ) { int M = (L + R) / 2 ; if ( a[M] == key ) break ; else if ( a[M] < key ) L = M + 1 ; else R = M ; }
このプログラムでは、1回のループ毎に対象となるデータ件数は、となる。説明を簡単にするために1回毎にN/2件となると考えれば、M回ループ後は、
件となる。データ件数が1件になれば、データは必ず見つかることから、以下の式が成り立つ。
…両辺のlogをとる
2分探索は、繰り返し処理であるから、処理時間は、
ここで、本来なら log の底は2であるが、後の見積もりの例では、問題に応じて底変換の公式で係数が出てくるが、これはTβに含めて考えればいい。
単純なソート(選択法)の処理時間
次に、並べ替え処理の処理時間について考える。
単純な並べ替えアルゴリズムとしてはバブルソートなどもあるが、2重ループの内側のループ回数がデータによって変わるので、選択法で考える。
int a[ 1000 ] = { 対象となるデータ } ; int size = N ; for( int i = 0 ; i < size - 1 ; i++ ) { int tmp ; // i..size-1 の範囲で一番大きいデータの場所を探す int m = i ; for( int j = i + 1 ; j < size ; j++ ) { if ( a[j] > a[m] ) m = j ; } // 一番大きいデータを先頭に移動 tmp = a[i] ; a[i] = a[m] ; a[m] = tmp ; }
このプログラムの処理時間T(N)は…
… i=0の時
… i=1の時
:
… i=N-1の時
…(参考 数列の和の公式)
となる。
オーダー記法
ここまでのアルゴリズムをまとめると以下の表のようになる。ここで処理時間に大きく影響する部分は、最後の項の部分であり、特にその項の係数は、コンピュータの処理性能に影響を受けるが、アルゴリズムの優劣を考える場合は、それぞれ、
の部分の方が重要である。
単純サーチ | |
2分探索法 | |
最大選択法 |
そこで、アルゴリズムの優劣を議論する場合は、この処理時間の見積もりに最も影響する項で、コンピュータの性能によって決まる係数を除いた部分を抽出した式で表現する。これをオーダー記法と言う。
単純サーチ | オーダーNのアルゴリズム | |
2分探索法 | オーダー log N のアルゴリズム | |
最大選択法 | オーダー N2 のアルゴリズム |
練習問題
- ある処理のデータ数Nに対する処理時間が、
であった場合、オーダー記法で書くとどうなるか?
- コンピュータで2分探索法で、データ100件で10[μsec]かかったとする。
データ10000件なら何[sec]かかるか?
(ヒント: 底変換の公式) の処理時間を要するアルゴリズムを、オーダー記法で書くとどうなるか?また、このような処理時間となるアルゴリズムの例を答えよ。
の処理時間を要するアルゴリズムを、オーダー記法で書くとどうなるか?
(ヒント: ロピタルの定理)
- 2と4の解説
- 1は、N→∞において、N2 ≪ 2Nなので、O(2N) 。厳密に回答するなら、練習問題4と同様の説明を行う。
- 3は、O(1)。誤答の例:O(0)と書いちゃうと、T(N)=Tα×0=0になってしまう。事例は、電話番号を、巨大配列の”電話番号”番目の場所に記憶するといった方法。(これはハッシュ法で改めて講義予定)
再帰呼び出しの予習
次の講義の基礎を確認という意味で、再帰呼出しと簡単な処理の例を説明する。
最初に定番の階乗(fact)
次に、フィボナッチ数列の場合
次の講義への導入問題
ここで示す導入問題をすべて答えるには、若干の予習が必要です。まずはどういう考え方をすれば解けるかな…を考えてみてください。
- fact(N)の処理時間を、Tfact(N) = … のような式で表現し、処理時間をオーダ記法で答えよ。
- 以下のプログラムの実行結果を答えよ。また、関数sum()の処理時間を対象となるデータ件数N=R–Lを用いて Tsum(N) = …のような式で表現せよ。
int a[] = { 1 , 5 , 8 , 9 , 2 , 3 , 4 , 7 } ; int sum( int a[] , int L , int R ) { if ( R-L == 1 ) { return a[L] ; } else { int M = (L + R) / 2 ; return sum( a , L , M ) + sum( a , M , R ) ; } } int main() { printf( "%d¥n" , sum( a , 0 , 8 ) ) ; return 0 ; }
創造工学演習・PHPとDB(予備実験)
インターネットを活用したプログラムを作成する場合、データを保存管理するためのデータベースと、データベースのデータを処理するためのプログラム言語が必要となってくる。今回の予備実験では、そのためにリレーショナルデータベースと、Webの動的なプログラム言語である PHP について説明する。
リレーショナル・データベース
データベースは、データを保存し、矛盾が発生しない様に管理してくれるシステムであり、インターネットで活用されている。
データを確実に保存し、矛盾なく扱うためには、本来複雑なプログラムが必要となる。この中で、データを表形式のテーブルを組み合わせて管理するシステムはリレーショナルデータベースと呼ばれる。リレーショナルデータベースでは、データの問い合わせなどの処理が簡単にできるように、SQL と呼ばれる言語を使って処理を行う。
大量のデータをインターネットの中で利用するためには、ネットワークを経由してデータの問い合わせが求められ、有名なデータベースシステムには、Oracle, MySQL などがある。今回の実験では、ネットワーク機能は持たないが簡単な手続きで使うことができる SQLite を使って説明する。
また、今回の予備実験では時間も限られることから、複数の表を組み合わせた SQL の処理については割愛する。
SQLの基本
リレーショナルデータベースでは、データの基本は表形式データであり、1つの表に相当するデータはテーブルと呼ぶ。
以下の様な名前・住所・年齢のデータがあったとすると、1人前のデータをレコードと呼び、name, addr, age といった属性はカラムと呼ぶ。
name | addr | age | |
t-saitoh | 越前市 | 55 | ←レコード |
sakamoto | 福井市 | 50 | |
murata | 福井市 | 35 | |
↑カラム |
データの型には、文字列型(char型,varchar型,text型)や、数値型(integer型,decimal型,real型)などがあり、create table 文にてカラムの型を定義する。
create table テーブルを作る
データベースの表を使う最初には、create table 文を実行する。C言語での struct 文をイメージすると解り易いかもしれないが、データはデータベースの中に永続的に保存されるので、システムを動かす最初に一度実行するだけで良い。
上記のような名前・住所・年齢のデータ構造であれば、次の様な create table 文を使う。
create table テーブル名 ( カラム名1 型1 , カラム名2 型2 ) ; -- 例 -- create table PERSON ( -- テーブル名:PERSON name varchar( 20 ) , -- 名前 addr varchar( 20 ) , -- 住所 age integer , -- 年齢 primary key( name ) -- name はデータ検索のキーであり重複は許されない ) ;
これと同じ様な処理をC言語で書くのであれば、以下の様な構造体宣言と同じであろう。
struct PERSON { char name[ 20 ] ; // 名前 char addr[ 20 ] ; // 住所 int age ; // 年齢 } ;
drop table テーブルを消す
データベースは永続的に保存されるので、テーブル全体のデータが不要であれば、drop table 命令で、テーブル全体を消す。
drop table テーブル名 ; -- 例 -- drop table PERSON ;
insert into レコードを追加
データベースに1レコードを保存するには、insert文を用いる。
insert into テーブル名 ( カラム名... ) values( 値... ) ; -- 例 -- insert into PERSON ( name , addr , age ) values ( 't-saitoh' , '越前市' , 55 ) ; insert into PERSON ( name , addr , age ) values ( 'sakamoto' , '福井市' , 50 ) ; insert into PERSON ( name , addr , age ) values ( 'murata' , '福井市' , 35 ) ;
delete レコードを消す
データベースのレコードを消すには、delete 文を用いる。条件を満たす複数のデータをまとめて消すことができる。
delete from テーブル名 where 条件 ; -- 例 -- -- 40歳未満のデータを全て消す。 murata,福井市,35 が消える。 delete from PERSON where age < 40 ;
update レコードを更新
データベースのレコードを修正するには、update 文を用いる。条件を満たす複数のデータをまとめて修正することもできる。
update テーブル名 set カラム = 値 where 条件 ; -- 例 -- -- 住所が越前市のレコードの年齢を 0 にする。 update PERSON set age = 0 where addr == '越前市' ;
select データを探す
データベースの内容を参照するための命令が select 文。where を記載することで、特定の条件のデータだけを選択したり、特定のカラムだけを抽出することができる。
select カラム名 from テーブル名 where 条件 ; -- 例 -- -- PERSON の全データを出力 select * from PERSON ; -- PERSON の住所が福井市だけを選別し、名前と住所を抽出 select name,addr from PERSON where addr = '福井市' ; -- PERSON の年齢の最高値を出力 (集約関数) select max(age) from PERSON where addr = '福井市' ; -- PERSON の年齢条件を満たす人数を数える (集約関数) select count(name) from PERSON where age >= 50 ;
動的なプログラム言語とPHP
本来、Webサーバが作られた頃は、論文や研究用のデータを公開する物であったが、扱うデータが増えるにつれ、特定の論文や研究データの一覧を表示したり探したりという処理が求められた。こういった処理のためにWebページのアクセスを受けた時に処理を実行する CGI という機能があったが、これを発展させてできたプログラム言語が PHP である。
PHPでは、ページを表示するための HTML の中に <?php … ?> のといった開始タグ・終了タグの中に、ブラウザから送られてきたデータに合わせて、処理を行うPHPの命令を記述し、データを(一般的にはHTML形式で)表示することができる。基本文法は C 言語に似ているが、様々なデータを扱うために変数にはどのような型でも保存できるようになっている。
ブラウザからデータを送るためのform文
ブラウザで入力欄を作ったり選択肢を表示し、その結果を送るための HTML は、入力フォーム(form)と呼ぶ。
<form method="get" action="処理ページ" > <input type="text" name="変数名" /> <input type="radio" name="変数名" value="値" /> <input type="checkbox" name="変数名" value="値" /> <textarea cols="横文字数" rows="行数"></textarea> <select name="変数名"> <option value="値1">表示1</option> <option value="値2">表示2</option> </select> <input type="submit" value="実行ボタンに表示する内容" /> </form>
formでは、入力する項目に変数名の名前を付け、action=”” で示したページにデータを送る。
PHPのプログラムの基本
PHPのプログラムは、外見は一般的に HTML ファイルであり、途中で <?php のタグからは、?> までの範囲が、PHP で処理が行われる。PHP のプログラムで print が実行されると、その場所に print 内容が書かれているような HTML ファイルが生成され、ブラウザで表示される。
PHP の中で変数は、$ で始まり、型宣言は基本的に不要である。
文字データを連結する場合は、“.” 演算子を使う。ダブルクオテーション”…”で囲まれた文字列の中の $名前 の部分は、変数名として扱われ、変数名の内容に置き換えられる。
HTMLのform文の action 属性で示された php であれば、PHPの中で送られてきた値を $_GET[‘変数名’] (method=”get”の場合)、 $_POST[‘変数名’] (method=”post”の場合)、または $_REQUEST[‘変数名’] (method=”get” or “post”) で参照できる。
((( sample.php ))) <html> <head> <title>sample.php</title> <meta http-equiv="Content-Type" content="text/html; charset=utf-8" /> </head> <body> <form action="sample.php" method="POST"> <input name="A" type="text" /> <!-- 変数 $A --> + <input name="B" type="text" /> <!-- 変数 $B --> = <?php ini_set( 'error_reporting' , E_WARNING ) ; if ( $_REQUEST[ "A" ] != "" && $_REQUEST[ "B" ] != "" ) { print $_REQUEST[ "A" ] + $_REQUEST[ "B" ] ; } else { print "<INPUT TYPE=submit>" ; } ?> </form> </body> </html>
PHPでデータベースを扱う
SQLのデータベースを、プログラム言語の中で扱う場合は、その記述も色々である。PHPでは以下の様にSQLを扱う。
((( survey-init.php ))) <html> <head> <title>survey_init.php</title> <meta http-equiv="Content-Type" content="text/html; charset=utf-8" /> </head> <body> <?php // デバッグ用にエラー警告を表示する ini_set( 'error_reporting' , E_WARNING ) ; // データベースに接続する $data_dir = "../public_data" ; $dbh = new PDO( "sqlite:$data_dir/sqlite.db" ) ; // データベースを初期化する $init_sql = "drop table if exists Survey ;" . "create table Survey (" . " uid varchar( 20 ) ," . " item varchar( 10 )" . ") ;" . "insert into Survey ( uid , item ) values ( 't-saitoh' , '猫' ) ;" . "insert into Survey ( uid , item ) values ( 'tomoko' , 'ケーキ' ) ;" . "insert into Survey ( uid , item ) values ( 'mitsuki' , 'ボードゲーム' ) ;" ; if ( $dbh->exec( $init_sql ) < 0 ) { print "Error: $init_sql" ; } // データベースの表形式を読み出し、表形式で出力する。 print "<table border='1'>\n" ; print "<tr><td align='center'>uid</td><td align='center'>item</td></tr>\n" ; $select_sql = "select uid,item from Survey ;" ; foreach( $dbh->query( $select_sql ) as list( $uid , $item ) ) { print "<tr><td>$uid</td><td>$item</td></tr>\n" ; } print "<table>\n" ; // データベースの単一データを取り出す $count_sql = "select count(item) from Survey where item = 'ケーキ' ;" ; print $dbh->query( $count_sql )->fetchColumn() ; ?> </body> </html>
PHPの主要なSQL関数(PDO)
$dbh = new PDO(…) ; データベースに接続するハンドラを取得。 $dbh->exec( “create…” ) ; データベースでSQLを実行。 $dbh->query( “select…” ) ; データベースに問い合わせ。「1レコードに対応した配列」が全データだけ繰り返す、2次元配列を返す。 $dbh->query( “…” )->fetchColumn() 結果が1つだけの問い合わせ。集約関数の結果を参照する場合に用いる。
練習問題(1)
- 上記の survey-init.php の select 文の部分を編集し、色々なデータ検索を試してみよ。
入力フォームのデータをデータベースに書き込む
((( survey-vote.php ))) <?php // エラー警告を表示 ini_set( 'error_reporting' , E_WARNING ) ; // form から送られてきた変数を保存 $uid = $_REQUEST[ "uid" ] ; $item = $_REQUEST[ "item" ] ; // データベースに接続する $data_dir = "../public_data" ; $dbh = new PDO( "sqlite:$data_dir/sqlite.db" ) ; // データベースに項目を追加する if ( $uid != "" && $item != "" ) { $insert_sql = sprintf( "insert into Survey( uid , item ) values ( %s , %s ) ;" , $dbh->quote( $uid ) , $dbh->quote( $item ) ) ; $dbh->exec( $insert_sql ) ; // reload処理で追記しないためページを強制的に再表示させる header( "Location: survey-vote.php" ) ; } ?> <html> <head> <title>survey_vote.php</title> <meta http-equiv="Content-Type" content="text/html; charset=utf-8" /> </head> <body> <form method="get" action="survey-vote.php"> 名前: <input type="text" name="uid" /> 好きな物:<input type="text" name="item" /> <input type="submit" value="投票" /> </form> <?php // データベースの表形式を読み出し、表形式で出力する。 print "<table border='1'>\n" ; print " <tr><td align='center'>uid</td><td align='center'>item</td></tr>\n" ; $select_sql = "select uid,item from Survey ;" ; foreach( $dbh->query( $select_sql ) as list( $t_uid , $t_item ) ) { print " <tr><td>$t_uid</td><td>$t_item</td></tr>\n" ; } print "</table>\n" ; ?> </body> </html>
練習問題(2)
- 上記の survey-vote.php のプログラムを編集し色々な入力方法・出力方法を試してみよ。
- 例えば、入力の item 選択に select や ラジオボタン フォームを使う。
- 例えば、出力結果で、item の投票結果を、棒グラフで出力する。
構造体とオブジェクト指向
初回の講義では、欠席者もいたので前回の講義資料も扱いながら説明を行う。最初に、前回講義資料の値渡し・参照渡し・ポインタ渡しを復習してから、構造体の話につなげていく。
構造体
上記資料を元に説明。 最初に構造体が無かったら、名前・国語・算数・理科の1クラス分のデータをどう表現しますか?
// まずは基本の宣言 char name[ 50 ][ 20 ] ; int kokugo[ 50 ] ; int sansu[ 50 ] ; int rika[ 50 ] ; // もしクラスが最初20人だったら、20→50に変更する際に、 // 文字列長の20も書きなおしちゃうかも。 // 50とか20とかマジックナンバーは使わないほうがいい。 #define SIZE 50 #define LEN 20 char name[ SIZE ][ LEN ] ; int kokugo[ SIZE ] ; : // 2クラス分のデータ(例えばEI科とE科)を保存したかったら? // case-1(配列2倍にしちゃえ) char name[ 100 ][ 20 ] ; // どこからがEI科? int kokugo[ 100 ] ; : // case-2(2次元配列にしちゃえ) char name[ 2 ][ 50 ][ 20 ] ; // 0,1どっちがEI科? int kokugo[ 2 ][ 50 ] ; : // case-3(目的に応じた名前の変数を作っちゃえ) char ei_name[ 50 ][ 20 ] ; // EI科は一目瞭然 int ei_kokugo[ 50 ] ; // だけど変数名が違うから : // 処理を2度書き char ee_name[ 50 ][ 20 ] ; int ee_kokugo[ 50 ] ; :
このような問題に対応するために構造体を用いる。
struct Person { // Personが構造体名(タグ名) char name[ 20 ] ; int kokugo ; int sansu ; int rika ; } ; struct Person saitoh ; struct Person ei[ 50 ] , ee[ 40 ] ; strcpy( saitoh.name , "t-saitoh" ) ; saitoh.kokugo = 100 ; ei[ 0 ].sansu = 80 ; ee[ 1 ].rika = 75 ;
このように構造体を使うことで、複数のデータを1つのデータの塊として扱えるようになる。
構造体の参照渡し
構造体のデータを関数の呼び出しで記述する場合には、参照渡しを利用する。
struct Person { char name[ 20 ] ; int age ; } ; void print( struct Person* p ) { printf( "%s %d¥n" , p->name , p->age ) ; } void main() { struct Person saitoh ; strcpy( saitoh.name , "t-saitoh" ) ; saitoh.age = 50 ; print( &saitoh ) ; // ポインタによる参照渡し }
このようなプログラムの書き方をすると、「データ saitoh に、print() せよ…」 といった処理を記述したようになる。 これを発展して、データ saitoh に、print という命令をするイメージにも見える。
この考え方を、そのままプログラムに反映させ、Personというデータは、 名前と年齢、データを表示するprintは…といったように、 データ構造と、そのデータ構造への処理をペアで記述すると分かりやすい。
オブジェクト指向の導入
構造体でオブジェクト指向もどき
例えば、名前と年齢の構造体で処理を記述する場合、 以下の様な記載を行うことで、データ設計者とデータ利用者で分けて 仕事ができることを説明。
// この部分はデータ構造の設計者が書く // データ構造を記述 struct Person { char name[10] ; int age ; } ; // データに対する処理を記述 void setPerson( struct Person* p , char s[] , int a ) { // ポインタの参照で表記 strcpy( (*p).name , s ) ; (*p).age = a ; } void printPerson( struct Person* p ) { // アロー演算子で表記 "(*p).name" は "p->name" で書ける printf( "%s %d¥n" , p->name , p->age ) ; } // この部分は、データ利用者が書く int main() { // Personの中身を知らなくてもいいから配列を定義(データ隠蔽) struct Person saitoh ; setPerson( &saitoh , "saitoh" , 55 ) ; struct Person table[ 10 ] ; // 初期化は記述を省略 for( int i = 0 ; i < 10 ; i++ ) { // 出力する...という雰囲気で書ける(手続き隠蔽) printPerson( &table[i] ) ; } return 0 ; }
このプログラムの書き方では、mainの中を読むだけもで、 データ初期化とデータ出力を行うことはある程度理解できる。 この時、データ構造の中身を知らなくてもプログラムが理解でき、 データ実装者はプログラムを記述できる。これをデータ構造の隠蔽化という。 一方、setPerson()や、printPerson()という関数の中身についても、 初期化・出力の方法をどうするのか知らなくても、 関数名から動作は推測できプログラムも書ける。 これを手続きの隠蔽化という。
C++のクラスで表現
上記のプログラムをそのままC++に書き直すと以下のようになる。
#include <stdio.h> #include <string.h> // この部分はクラス設計者が書く class Person { private: // クラス外からアクセスできない部分 // データ構造を記述 char name[10] ; // メンバーの宣言 int age ; public: // クラス外から使える部分 // データに対する処理を記述 void set( char s[] , int a ) { // メソッドの宣言 // pのように対象のオブジェクトを明記する必要はない。 strcpy( name , s ) ; age = a ; } void print() { printf( "%s %d¥n" , name , age ) ; } } ; // ← 注意ここのセミコロンを書き忘れないこと。 // この部分はクラス利用者が書く int main() { Person saitoh ; saitoh.set( "saitoh" , 55 ) ; saitoh.print() ; // 文法エラーの例 printf( "%d¥n" , saitoh.age ) ; // age は private なので参照できない。 return 0 ; }
用語の解説:C++のプログラムでは、データ構造とデータの処理を、並行しながら記述する。 データ構造に対する処理は、メソッド(method)と呼ばれる。 データ構造とメソッドを同時に記載したものは、クラス(class)と呼ぶ。 そのclassに対し、具体的な値や記憶域が割り当てられたものをオブジェクト(object)と呼ぶ。
情報メディア工学・ガイダンス
情報メディア工学では、前期では情報を扱うためのOSの仕組みなどを、実践を交えながら演習を中心に行う。後期は5年の人工知能の授業につながる内容として、情報の中のデータをどう処理するのかを議論する。
OSの役割と仕組み
組込み系システム
組込み系のシステムで、OSが無い場合(例えば Arduino でデバイスを制御する場合)には、ユーザプログラムはデバイスを操作するライブラリやI/Oポートを直接制御しながら、ハードウェアを制御する。ユーザプログラムは、デバイスを操作するライブラリを含むため、異なるシステムでは機械語をそのまま使うことはできない。(共通化が不十分)
組込み系システムでは、ハードウェアを操作する命令をすべてユーザプログラムが面倒を見る必要があるため、システムが複雑化するとプログラム開発が大変になってくる。また、ユーザプログラムが間違った制御方法を取れば、ハードウェアを壊すような処理を実行してしまうかもしれない。(資源保護ができない)
オペレーティングシステム経由でハード操作
コンピュータのハードウェアの違いは OS がすべて包み隠し、OSが管理する。OSは 特権モード で動作し、ハードウェアを直接制御する。ユーザプログラムはユーザモードで動作し、OSの機能を呼び出すシステムコールを経由し、デバイス毎のデバイスドライバを経由して、ハードウェアを操作する。ユーザモードのプログラムは、ハードウェアを直接操作するような命令を実行しようとすると、OSが命令を強制停止させる。(資源保護)
ユーザプログラムには、ハードウェアを直接操作する機械語が含まれていないので、ユーザプログラムの機械語を同じOSが動く他のコンピュータにコピーして動かすことができる。(資源の扱いを共通化)
(例) helloworld のプログラムがコンソールに出力
簡単な例として、helloworld.c のような簡単なコンソール出力プログラムが動いて、画面に文字が表示されるのは以下の図のようにOSを経由して文字を表示している。
古いコンピュータで、プログラムが動作するだけならば、仕組みはすごく簡単にみえる。ユーザプログラムはすべて特権モードで動くOS(狭義のOSとかカーネルと呼ぶことが多い)を経由してハードウェアを操作する。
GUI が使えるグラフィカルな OS の場合
GUI が使えるグラフィカルなOSの場合、GUI の操作を支援するプログラム(ウィンドウマネージャ)などを利用しながら、ユーザはOSを操作する。コンピュータを操作する場合は、こういうウィンドウマネージャなどがないと不便であり、カーネルとユーザ支援のウィンドウマネージャなどをまとめて広義のOSと呼ぶ場合も多い。
ユーザプログラムは、GUIを操作するためのライブラリを経由し、さらにカーネルを経由してディスプレィに結果が表示される。
ユーザモードのプログラムの実行単位プロセスでは、処理を実行するためのメモリなどは他の処理と分離されており、他のプロセスのメモリ領域などを間違ってアクセスすると「メモリエラー」といった例外などが発生し、処理が強制的に停止させられる。このように、プロセスが他に悪影響を及ぼさないように、OS はメモリを管理する。(OSの保護機能)
(例) helloworld の結果を端末ソフトで表示
以下のように、コンソールアプリの実行結果を表示するような、cmd.exe は、helloworld.exe と OS を経由しながら連動して動いている。
helloworld.exe の出力は、OS を経由しながら cmd.exe に伝わり、cmd.exe はその表示内容に応じて、テキストの文字やフォントに合わせてグラフィカルな画面に文字を表示しようとする。グラフィカルな出力は GUI のライブラリを経由しながら OS に送られ、グラフィックドライバが画面に文字を表示する。
インターネットとプログラム
次に、インターネットの仕組みを踏まえ、インターネットで使われるプログラム言語やデータについて3~4週をかけて演習を中心にしながら、今まで習ってきたことを総括する。
理解確認
情報構造論ガイダンス2022
基本的なガイダンス
情報構造論のシラバスを、ここに示す。プログラムを作成する上で、どのような考え方で作れば処理速度が速いのかを議論する。基本的に、4回のテストのたびに、レポート課題を実施する。各テスト毎の評価は、テスト素点と、「テスト素点×60%+レポート評価×40%」の良い方とする。テストに自信のない人は、レポート課題をきちんと提出すること。
プログラムを評価する3つのポイント
まずは以下を読む前に、質問。
- あなたが”良い”プログラムを作るために何を考えて作りますか? ※1
- ここまでの段階で3つの要点を考えメモしてください。
具体的な言葉で要点を考えると、いろいろなものがでてくるだろうが、端的なポイントにまとめると、次の3つに分類できるはずである。
- プログラムの速度
- プログラムのわかり易さ
- メモリの使用量
プログラムを作る場合、この3要素がトレードオフの関係にある。プログラムの速度を優先すると、プログラムが分かり難くなったり、メモリを大量浪費するものだったりする。
メモリの使用量の影響
メモリを大量に使用すると、どういった影響がでるのか? OSの機能を知らないと、メモリ(主記憶)を使い果たしたら、プログラムが動かないと思うかもしれないけど、最近のOSは仮想メモリ機能があるため、主記憶がメモリが足りなければ待機状態のプロセスのメモリを補助記憶に保存することで、プログラムを動かすことはできる。(仮想記憶)
しかし、プロセスが切り替わる度に、補助記憶への読み書きが発生するため、処理性能は低下する。(スワッピング)
int 型のメモリ使用量
int 型は、プログラムで扱う一般的な整数を扱うのに十分なデータ型。
32bit の0/1情報の組み合わせで、232通りの情報が表現でき、負の数も扱いたいことから2の補数表現を用いることで、-231~0~231-1 の範囲を扱うことができる。231 = 2×210×210×210 ≒ 2×10003
32bit = 4byte
ソフトウェアとアルゴリズムとプログラム
用語として、ソフトウェア、アルゴリズム、プログラムという表現があるが、この違いは何か?
- アルゴリズム – 計算手順の考え方。
- プログラム – アルゴリズムを特定のプログラム言語によって記述したもの。
- ソフトウェア – プログラムと、その処理に必要なデータ。
(日本語を変換するプログラムは、日本語の辞書データが無いと動かない/役に立たない) - パラダイム – プログラムをどう表現すると分かりやすいか?
トレードオフ関係をプログラムで確認
例えば、配列の中から、目的データを探すプログラムの場合、最も簡単なプログラムは以下の方法であろう。
// ((case-1)) // 単純サーチ O(N) #define SIZE 1024 int a[ SIZE ] ; // 配列 int size ; // 実際のデータ数(Nとする) int key ; // 探すデータ for( int i = 0 ; i < size ; i++ ) if ( a[i] == key ) break ;
しかし、もっと早く探したいのであれば、2分探索法を用いるだろう。でも、このプログラムは、case-1 のプログラムよりは分かり難い。(速度⇔わかり易さ)
// ((case-2)) // 2分探索法 O(log N) int L=0 , R=size ; // プログラムは複雑になった while( L != R ) { int M = (L + R) / 2 ; if ( a[M] == key ) break ; else if ( a[M] < key ) L = M + 1 ; else R = M ; }
でももっと速いプログラムとしたければ、大量のメモリを使えば一発でデータを探せる。(速度⇔メモリ使用量)
// ((case-3)) // 添字がデータ O(1) // 探すデータが電話番号 272925 のような 6 桁ならば int a[ 1000000 ] ; a[ 272925 ] = 272925 ; // 処理速度はクソ速いけど、メモリは大量消費
良いプログラムを作るとは
プログラムを作る時には、メモリが大量に使えるのなら、速いものを使えばいい。だけど実際には、そのシステムには限られた予算があるだろう。
実際には、限られた予算からメモリやCPUが決まり、その会社の人員やら経験やらでプログラム開発に使える時間がきまる。プログラムをデザインするとは、限られた条件の中で、適切な速度のコンピュータ、適切な量のメモリでコンピュータを用意し、限られた納期の中でシステムを完成させることである。
皆さんも、ゲームを買った時、処理速度が遅くてキャラクターがカクカク動いたら幻滅するでしょ?ゲームがバグですぐに変な動きしたらキレるでしょ!発売日の予定どおりに買えなかったらさみしいでしょ!!プログラムがでかすぎてローディングに時間がかかったら、寝ちゃうでしょ!!!
組み合わせ問題の解き方(予備実験)
プログラミングコンテストの競技部門では、パズルのような組み合わせ問題が 出題されることが多い。また、課題部門や自由部門であっても、複数の条件の組み合わせの中から最良のものを選ぶといった処理も求められる。そこで、この予備実験では、きわめて単純なパズル問題(組み合わせ問題) のプログラムについて扱う。
組み合わせ問題の基礎
簡単な問題として「100未満の整数の値を3つ選び、その値を辺の長さとした場合、 直角三角形となるものをすべて表示する。」について考える。
一番簡単な方法は、以下となるであろう。
#include <stdio.h> #include <math.h> #include <time.h> // 整数比の直角三角形の一覧を求める。 void integer_triangle( int n ) { for( int a = 1 ; a < n ; a++ ) { for( int b = 1 ; b < n ; b++ ) { // 一番ダサい方法 for( int c = 1 ; c < n ; c++ ) { if ( a*a + b*b == c*c ) { printf( "%d %d %d\n" , a , b , c ) ; } } } } } int main() { integer_triangle( 100 ) ; return 0 ; }
しかしこのプログラムの欠点としては、100×100×100回のループで無駄な処理が多い。
4EIの情報構造論で説明するネタだけど、こういうアルゴリズムは、O(N3) のアルゴリズムという。
ループ回数を減らすだけなら、最も内側の処理を、計算で整数値か確認すればいい。
O(N2) のアルゴリズム
void integer_triangle( int n ) { for( int a = 1 ; a < n ; a++ ) { for( int b = 1 ; b < n ; b++ ) { // ココも改良できるよね? int d = a*a + b*b ; int c = (int)sqrt( d ) ; // 斜辺Cの整数値を求め、改めて確認する。 if ( c*c == d ) { printf( "%d %d %d\n" , a , b , c ) ; } } } }
(1) 計算誤差の問題を考えてみよう。
たとえば、3:4:5の直角三角形で、3*3+4*4 = 25 だが、sqrt(25)は実数で計算するから、 計算誤差で4.99999で求まったらどうなるだろうか?
1~100までの数値で、”int c = sqrt( (double)(i*i) ) ;” を計算してみて、 異なる値が求まることはあるか? 多少の計算誤差があっても正しく処理が行われるにはどうすればいいか、考えてみよう。
(2) 無駄な答えについて考えてみよう。
このプログラムの答えでは、簡単な整数比の答えの「整数倍の答え」も表示されてしまう。 たとえば、(3:4:5)の答えのほかに、(6:8:10)も表示される。 こういった答えを表示しないようにするにはどうすればよいか?
また、この2つのプログラムの処理時間を実際に比べてみる。
#include <stdio.h> #include <time.h> int main() { time_t start , end ; // time() 関数は、秒数しか求まらないので、 // あえて処理を1000回繰り返し、数秒かかる処理にする。 start = time( NULL ) ; for( int i = 0 ; i < 1000 ; i++ ) { // ただし、関数内のprintfをコメントアウトしておくこと integer_triangle( 100 ) ; } end = time( NULL ) ; printf( "%lf\n" , difftime( end , start ) ) ; return 0 ; }
再帰プログラミング
組み合わせ問題では、forループの多重の入れ子で問題を解けない場合が多い。 (書けないことはないけど無駄なループで処理が遅くなるか、入れ子段数が可変にできない。)
こういった場合には、再帰プログラミングがよく利用される。 もっとも簡単な再帰の例として、階乗のプログラムを考える。 通常であれば、以下のような for ループで記述することになるだろう。
// 階乗の計算 int fact( int x ) { // ループ int f = 1 ; for( int i = 2 ; i <= x ; i++ ) f = f * i ; return f ; }
再帰呼び出しでは、関数の処理の中に、自分自身の関数呼び出しが含まれる。 また、無限に自分自身を呼び出したら処理が止まらないので、 問題を一つ小さくして、これ以上小さくできないときは処理を止めるように記述する。
int fact( int x ) { // 再帰呼び出し if ( x <= 1 ) return 1 ; else return x * fact( x - 1 ) ; }
ここ以降は、指定長さを指定辺の組み合わせで作る課題と、後に述べるFlood-fill 課題の選択とする。
指定長を指定辺の組み合わせで作る(テーマ1)
再帰を使った簡単なパズル問題として、以下のプログラムを作成したい。
配列の中に、複数の辺の長さが入っている。これを組み合わせて指定した長さを作れ。 使用する辺はできるだけ少ない方がよい。
int a[] = { 4 , 5 , 2 , 1 , 3 , 7 } ;
(例) 辺の長さ10を作るには、(5,4,1)とか(7,3)などが考えられる。
これは、ナップサック問題の基本問題で、容量の決まったナップサックに最大量入れる組合せを求めるのと同じである。
このプログラムを解くには…
10 を [4,5,2,1,3,7] で作るには... (0) 6=10-4 を [4|5,2,1,3,7]で作る。 (1) 5=10-5 を [5|4,2,1,3,7]で作る。 (2) 8=10-2 を [2|5,4,1,3,7]で作る。 (3) 9=10-1 を [1|5,2,4,3,7]で作る。 (4) 7=10-3 を [3|5,2,1,4,7]で作る。 (5) 3=10-7 を [7|5,2,1,3,4]で作る。
そこで、ここまでの考えを、以下のようなプログラムで記述してみる。
# まだ再起呼び出しにはしていない。
// 指定されたデータを入れ替える。 void swap( int*a , int*b ) { int x = *a ; *a = *b ; *b = x ; } void check( int array[] , int size , int len , int n ) { // array[] 配列 // size 配列サイズ // len 作りたい長さ // n 使った個数 for( int i = n ; i < size ; i++ ) { // i番目を先頭に... swap( &array[ n ] , &array[ i ] ) ; printf( "check( array , %d , %d , %d )\n" , size , len - array[ n ] , n+1 ) ; // 最初のswapでの変更を元に戻す。 swap( &array[ i ] , &array[ n ] ) ; } } int main() { int a[] = { 4 , 5 , 2 , 1 , 3 , 7 } ; check( a , 6 , 10 , 0 ) ; }
(1) これを再帰呼び出しにしてみよう。どう書けばいい?
void check( int array[] , int size , int len , int n )
{
// array[] 配列
// size 配列サイズ
// len 作りたい長さ
// n 使った個数
if ( len < 0 ) {
// 指定した丁度の長さを作れなかった。
;
} else if ( len == 0 ) {
// 指定した長さを作れたので答えを表示。
for( int i = 0 ; i < n ; i++ ) {
printf( "%d " , array[ i ] ) ;
}
printf( "\n" ) ;
} else {
// 問題を一つ小さくして再帰。
for( int i = n ; i < size ; i++ ) {
swap( &array[ n ] , &array[ i ] ) ;
printf( "check( array , %d , %d , %d )\n" ,
size , len - array[ n ] , n+1 ) ;
check( array , size , len - array[ n ] , n + 1 ) ;
swap( &array[ i ] , &array[ n ] ) ;
}
}
}
(2) 少ない組み合わせの方がポイントが高い場合には、プログラムをどう変更する?
(3) 答えが1つだけで良い場合は、プログラムをどう変更する?
(4) このプログラムでは、冗長な答えがあるか?ないか?検討せよ。
(5) 前設問の整数比直角三角形のプログラムで、冗長な答えを削除するプログラムを作成せよ。
# レポートでは、(2),(3),(4)を検討した結果を実験すること。(5)までチャレンジした人は(2),(3),(4)の説明は簡単に記載するだけで良い。
別解
この問題の解き方には、もっとシンプルな書き方がある。2進数の各bitを、j番目の長さを使うか使わないかを表すこととする。
例えば、j=1番目,3番目を使うというのを、000101)2=5で表すこととする。すべての長さを使うのであれば、111111)2=63 で表す。この2進数を1から63まで変化させれば、すべての組み合わせを試すことになる。
#include <stdio.h> #define sizeofarray(A) (sizeof(A)/sizeof(A[0])) int obj_len = 10 ; int a[] = { 4 , 5 , 2 , 1 , 3 , 7 } ; int main() { int l_max = 1 << sizeofarray( a ) ; for( int i = 1 ; i < l_max ; i++ ) { // i は a[j]を使うか使わないかを表す2進数 // i = 5 の場合 // 5 = 0,0,0,1,0,1 // a[] 7,3,1,2,5,4 // ^ ^ = 長さは6 int sum = 0 ; for( int j = 0 ; j < sizeofarray( a ) ; j++ ) { // iの2進数の各bitに対応する長さを加算 if ( (i & (1 << j)) != 0 ) sum += a[ j ] ; } // 目的の長さを作れたので答えを表示 if ( sum == obj_len ) { printf( "0x%x : " , i ) ; for( int j = 0 ; j < sizeofarray( a ) ; j++ ) { if ( (i & (1 << j)) != 0 ) { printf( "%d " , a[ j ] ) ; } } printf( "\n" ) ; } } return 0 ; }
このプログラムは再帰呼び出しを含まないので、プログラムの挙動も解りやすい。しかし、j番目を使うか使わないのか…という2つの状態しかない組み合わせ問題でしか使えない。R3年度の競技部門のパズルように、絵のピースの↑,→,↓,←,回転右,回転左という6状態の場合は、使えない。
Flood fill アルゴリズム
再帰を使う他の事例として、図形の塗りつぶし問題で示す。(Wikipedia Flood-fill参照)
以下の image のような2次元配列が与えられたら、指定座標(x,y)を中心に周囲を塗りつぶす処理を作成せよ。
include <stdio.h> // *は壁 SPCは白 この領域の指定位置を#で塗りつぶす。 char image1[10][10] = { // (4,4)始点で塗りつぶし後 "*********" , // ********* "* * *" , // * *###* "* * *" , // * *###* "* * *" , // * *####* "*** ***" , // ***###*** "* * *" , // *####* * "* * *" , // *###* * "* * *" , // *###* * "*********" , // ********* } ; char image2[10][10] = { // 応用問題用の画像例 "*********" , // * のような隙間は通り抜けられる "* * *" , // * ようにするにはどうすればいい? "* ** *" , // ** "* ** *" , // ** これは通り抜けられない "*** ***" , // ** "* * *" , "* * *" , "* * *" , "*********" , } ; // 盤面を表示 void print_image( char image[10][10] ) { for( int y = 0 ; y < 9 ; y++ ) { for( int x = 0 ; x < 9 ; x++ ) { printf( "%c" , image[y][x] ) ; } printf( "\n" ) ; } } // 再帰呼び出しを使った flud_fill アルゴリズム void flood_fill( char image[10][10] , int x , int y , char fill ) { // image: 塗りつぶす画像 // x,y: 塗りつぶす場所 // fill: 書き込む文字 // 指定座標が空白なら if ( image[y][x] == ' ' ) { // その座標を埋める image[y][x] = fill ; ////////////////////////////////////// // ここに周囲をflud_fillする処理を書く // ////////////////////////////////////// } } int main() { print_image( image1 ) ; flood_fill( image1 , 4 , 4 , '#' ) ; print_image( image1 ) ; return 0 ; }
応用問題
Wikipediaのflood-fill のプログラムの説明のアルゴリズムでは、左図黒のような斜めに並んだブロックは、境界として通り抜けられないようにつくられている。
そこで、斜めに並んだブロックは通り抜けられるルールとした場合のプログラムを記述せよ。
レポート提出
レポートでは、指定長を辺の組み合わせで作るテーマか、Flood-fill のテーマのいずれかにて、以下の内容をまとめてレポートとして提出すること。
-
- レポートの説明(自分の選んだテーマと自分なりの説明)
- プログラムリスト
- 動作確認の結果
コンピュータとN進数
3年の情報制御基礎の授業の一回目。この授業では、情報系以外の学生も受講することから、基礎的な共通的な話題を中心に説明を行う。参考:2021年度の講義資料
情報制御基礎のシラバス
情報制御基礎では、ここに上げたシラバスに沿って授業を行う。
基本的に、センサーから読み取ったデータを使って動く制御系システムを作る場合の基礎知識ということで、アナログ量・デジタル量の話から、移動平均やデータ差分といった数値処理や、そこで求まった値を制御に用いるための基礎的な話を行う。
コンピュータと組み込み系
最近では、コンピュータといっても様々な所で使われている。
- 科学技術計算用の大型コンピュータ(最近なら富岳や京が有名)や
- インターネットの処理を行うサーバ群
(必要に応じてサービスとして提供されるものはクラウドコンピューティングと呼ぶ)、 - デスクトップパソコン、
- タブレットPCやスマートフォンのような端末、
- 電化製品の中に収まるようなワンチップコンピュータなどがある。

(5) ワンチップコンピュータ:PIC
身近で使われている情報制御という点では、(5)のような小型のコンピュータも多く、こういったものは組み込み型コンピュータとも呼ばれる。しかし、こういったコンピュータは、小さく機能も限られているので、
- 組み込み系では、扱える数値が整数で 8bit や 16bit といった精度しかなかったり、
- 実数を伴う複雑な計算をするには、処理時間がかかったりする
ため、注意が必要である。
この情報制御基礎の授業では、組み込み系のコンピュータでも数値を正しく扱うための知識や、こういった小さいコンピュータで制御を行うことを踏まえた知識を中心に説明を行う。
2進数と10進数
コンピュータの中では、電圧が高い/低いといった状態で0と1の2通りの状態を表し、その 0/1 を組み合わせて、大きな数字を表す(2進数)。
練習として、2進数を10進数で表したり、10進数を2進数に直してみよう。
N進数を10進数に変換
N進数で “abcde” があったとする。(2進数で”10101)2“とか、10進数で”12345)10“とか)
この値は、以下のような式で表せる。
(例1)
(例2)
10進数をN進数に変換
N進数のは、前式を変形すると、以下のような式で表せることから、
値をNで割った余りを求めると、N進数の最下位桁eを取り出せる。
このため、10進数で与えられた35を2進数に変換するのであれば、35を2で次々と割った余りを、下の桁から書きならべれば2進数100011)2が得られる。
実数の場合
途中に小数点を含むN進数のab.cde)Nであれば、以下の値を意味する。
ここで、小数点以下だけを取り出した、0.cde)Nを考えると、
の値に、Nをかけると、次のように変形できる。
この式を見ると、小数部にNをかけると、整数部分に小数点以下1桁目が取り出せる。
このため、10進数で与えられた、0.625を2進数に変換するのであれば、0.625に次々と2をかけて、その整数部を上の桁から書きならべれば、2進数0.101)2が得られる。
ただし、10進数で0.1という値で、上記の計算を行うと、延々と繰り返しが発生する。つまり、無限小数になるので注意せよ。
2の補数と負の数
コンピュータの中で引き算を行う場合には、2の補数がよく使われる。2の補数とは、2進数の0と1を入替えた結果(1の補数)に、1を加えた数である。
元の数に2の補数
を加えると(2進数が8bitの数であれば)、どのような数でも1,0000,0000という値になる。この先頭の9bit目が必ずはみ出し、この値を覚えないのであれば、元の数+2の補数=0とみなすことができる。このことから、2の補数= (-元の数) であり、負の数を扱うのに都合が良い。
練習問題
(1) 自分の誕生日で、整数部を誕生日の日、小数点以下を誕生日の月とした値について、2進数に変換せよ。(例えば、2月7日の場合は、”7.02″という小数点を含む10進数とする。)
変換の際には、上の説明の中にあるような計算手順を示すこと。また、その2進数を10進数に直し、元の値と同じか確認すること。(ただし、結果の2進数が無限小数になる場合最大7桁まで求めれば良い。同じ値か確認する際には無限少数の場合は近い値になるか確認すること)
(2) 自分の誕生日の日と、自分の学籍番号の下2桁の値を加えた値について、8bitの2進数で表わせ。(2月7日生まれの出席番号13番なら7+13=21)
その後、8bitの2進数として、2の補数を求めよ。また、元の数と2の補数を加えた値についても検証すること。
レポートの提出先は、こちらのリンクを参照(この中にレポート書式のひな型を置いてあります)