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ネットワーク層とIPアドレス

前回説明したMACアドレスによるデータリンク層では、1つのサブネットの中で指定した相手にデータを送ることはできる。しかし、データリンク層だけでは、他のサブネットにいる相手にデータを送ることができない。(相手の名前を知っていても、住所を知らなければ郵便は送れない。)

ネットワーク層とIPアドレス(IPv4)

サブネットに分割し、隣接するサブネット、さらには上流のインターネットと通信をするためには、IPアドレスを用いた通信が行われる。

ネットワークに接続する機器には、それぞれユニークな32bitの番号(IPv4アドレス)を割り振る。

コンピュータへのIPアドレスの設定には、(a)IPアドレス,(b)サブネットマスク,(c)ゲートウェイの情報が必要となる。

  • IPアドレス: 192.156.145.100 といった、0~255の8bitの値をピリオド区切りで4つ並べて表記するのが一般的。
  • サブネットマスク: 255.255.255.0 といった値で、IPアドレスを2進数で書き並べた32bitと、サブネットマスクの32bitで、2進数の論理積をとった値は、ネットワーク番号と呼ばれ、機器が存在する場所を表す。
    また、IPアドレスとサブネットマスクの否定と論理積をとった値は、ホスト番号と呼ばれる。
    サブネットマスクは、先行する1のbit数で書き表すことも多い。255.255.255.0は、”/24″のように書く。
  • ゲートウェイ: 自分自身のネットワーク番号と通信相手のネットワーク番号が異なる場合は、異なるサブネットにいるので、パケットを中継してもらう機器(ルータ,ゲートウェイ)にパケットを送る。

  • IPアドレスとクラス: IPアドレスは、先頭8bit をネットワーク番号とするクラスA,16bitのクラスB,24bitのクラスCに分類されている。以前は、IPアドレスを割り当てる企業規模に応じて、大規模な大学だからクラスA、中規模ならクラスB(福井大学は133.7.0.0/16 ←このような書き方はCIDR記法という)、小規模ならクラスCを割り当てていた。(福井高専はCクラスを5本192.156.145~149.0/24 : 福井高専のIPアドレスでは3つのCIDR記法で表現できる。 192.156.145.0/24, 192.156.146.0/23, 192.156.148.0/23)
    しかし、最近では IPv4 アドレスの不足から、大きな組織に割り振られた クラスA を再分配している。

ARP(IPアドレスとMACアドレスの橋渡し)

同じサブネットの中では、データリンク層でMACアドレスを用いて通信相手を指定するが、ネットワーク層ではIPアドレスを用いて通信相手を指定する。この違いを埋めるためのプロトコルがARPである。

サブネット内に相手先IPアドレスの指定されたパケット(10.10.22.102)が届くと、通信機器はサブネット内の全ての機器相手に ARPリクエストを送信する。(10.10.22.102はいますか?)

この時、10.10.22.102 のコンピュータは、自分宛てのパケットがあることを知るので、送信元のコンピュータに、自分のMACアドレスを付けたARPリプライを送り返す。(10.10.22.102は、私 “FE:DC:BA:98:76:54” です!)。送信元は、ARP通信をへらすために、その情報を記憶して、2度目以降は覚えたMACアドレスですぐに通信を始める。

ルータとRIP

ルータは、隣接するサブネットの間に入る機器で、各サブネットにゲートウェイとなるインタフェースを持つ。ルータでは受け取ったパケットをどこに流すか…という経路情報が重要となる。

  • 静的ルーティング – 末端のルータの設定で、管理者が経路を設定
  • 動的ルーティング – 上流ルータでRIPにより設定

経路設定には2種類あり、(a)末端のルータではこのネットワーク番号はどのルータに送るという情報をルータに直接設定する静的ルーティングがとられる。(b)上流のルータでは、末端のルータの設定が変更されることがあるので、ルータ同士がルーティング情報を送りあう動的ルーティングがとられる。動的ルーティングでは、RIPというプロトコルにより、各サブネットのつながっている経路情報が送られてくる。この経路情報を見て、パケットのIPアドレスを見て、パケットの送り先を判断する。

((Windows の場合))

C:> ipconfig /all
インタフェース名:
 IPv4アドレス............192.168.xx.xx
 サブネットマスク.........255.255.255.0
 デフォルトゲートウェイ....192.168.xx.1
C:> arp -a
インタフェース:
 192.168.xx.xx     74-03-xx-xx-xx-xx 動的
 192.168.xx.yy     B0-05-xx-xx-xx-xx 動的
C:> netstat -r
ネットワーク宛先 ネットマスク ゲートウェイ インタフェース メトリック
      0.0.0.0        0.0.0.0   192.168.xx.1  192.168.xx.xx 45
 192.168.xx.0  255.255.255.0   ....

((Unix の場合))

$ ifconfig -a
en1: ....
     inet 192.168.xx.xx netmask 0xffffff00 ...
$ arp -an
.... (192.168.xx.xx) at 74:03:xx:xx:xx:xx ...
.... (192.168.xx.yy) at b0:05:xx:xx:xx:xx ...
$ netstat -rn
Destination  Gateway ...
default      192.168.xx.1  ...
192.168.xx   ...

プライベートアドレス

IPv4 では、32bit でコンピュータを識別することから、最大でも 232台≒40億台しか識別できない。実際、IPアドレスの管理団体では、2017年度には IPv4 アドレスは使い切った状態となっている。この対応として、その組織やその家庭内だけで使われる IPアドレス である、プライベートアドレスが用いられる。

  • 10.0.0.0~10.255.255.255 / 8 – 大きな機関向け
  • 172.16.0.0~172.31.255.255 / 12
  • 192.168.0.0~192.168.255.255 /16 – 個人向け

プライベートアドレスを利用する組織では、インターネットに接続するルータでは NAT(もしくはNAPT) という機能を内蔵し、プライベートアドレスとグローバルアドレスの変換を行う。

IPv6アドレス

IPv4の32bit の IP アドレスでは、40億台のコンピュータを区別することしかできない。そこで、最近では 128bit の IPv6 アドレスが用いられる。IPv6 では、2004:6800:4004:0826:0000:0000:0000:2003 (www.google.co.jp) といった16進数4桁(16bit)を8個を”:”区切りで書き連ねる書き方をする。ただし16進4桁の先行する0や、全部”0000″ は省略して、”2404:6800:4004:826::2003″ と書く。IPv6 は最近では普及がかなり進んでいるが、途中のルータなどがすべて IPv6 に対応する必要があり IPv4 しか使えない組織も多い。

DNS と nslookup

IPアドレスみたいな数字の羅列は覚えることが難しい。このためコンピュータの名前からIPアドレスを調べるサービスがあり、Domain Name Service(DNS) と呼ばれる。詳しい仕組みは ドメイン名の説明の際に行うが、IP アドレスの調べ方を説明する。

ドメイン名から、IP アドレスを調べるには、nslookup (もしくは dig) を使用する。

$ nslookup www.fukui-nct.ac.jp
:
Non-authoritative answer:
Name:   www.fukui-nct.ac.jp
Address: 104.215.53.205

$ nslookup -query=A www.fukui-nct.ac.jp   # IPv4 アドレスの取得
(同上)

$ nslookup -query=AAAA www.google.co.jp   # IPv6 アドレスの取得
:
Non-authoritative answer:
Name:   www.google.co.jp
Address: 2404:6800:4004:826::2003

理解確認

  • Cクラスのサブネットに設置できるコンピュータの台数は何台?
  • “172.”で始まるプライベートアドレスでは最大何台?
  • 192.168.11.2/24 のコンピュータから、192.168.1.50にデータを送る場合、どのような処理が行われるか、IPアドレス、サブネットマスク、ゲートウェイ、ネットワーク番号を使って説明せよ。
  • 同じサブネット内で相手のIPアドレスが与えられた時、どのようにパケットが送られるか、MACアドレスとARPを交えて説明せよ。