4EI インターンシップ報告会
4年電子情報の学生さんは、高専プロコンに参加して忙しかった人も 多かったようですが、貴重な体験ができ、来年の就職活動の 参考になったと思います。
個人的には、質疑応答時間も短いことから、Teams に質問を 全4EI学生にしてみました。質問の返答を見ていると、問題意識を もってインターンに臨んでいたのか判りますね。
ネットワーク層とIPアドレス
前回説明したMACアドレスによるデータリンク層では、1つのサブネットの中で指定した相手にデータを送ることはできる。しかし、データリンク層だけでは、他のサブネットにいる相手にデータを送ることができない。(相手の名前を知っていても、住所を知らなければ郵便は送れない。)
ネットワーク層とIPアドレス(IPv4)
サブネットに分割し、隣接するサブネット、さらには上流のインターネットと通信をするためには、IPアドレスを用いた通信が行われる。
ネットワークに接続する機器には、それぞれユニークな32bitの番号(IPv4アドレス)を割り振る。
コンピュータへのIPアドレスの設定には、(a)IPアドレス,(b)サブネットマスク,(c)ゲートウェイの情報が必要となる。
- IPアドレス: 192.156.145.100 といった、0~255の8bitの値をピリオド区切りで4つ並べて表記するのが一般的。
- サブネットマスク: 255.255.255.0 といった値で、IPアドレスを2進数で書き並べた32bitと、サブネットマスクの32bitで、2進数の論理積をとった値は、ネットワーク番号と呼ばれ、機器が存在する場所を表す。
また、IPアドレスとサブネットマスクの否定と論理積をとった値は、ホスト番号と呼ばれる。
サブネットマスクは、先行する1のbit数で書き表すことも多い。255.255.255.0は、”/24″のように書く。 - ゲートウェイ: 自分自身のネットワーク番号と通信相手のネットワーク番号が異なる場合は、異なるサブネットにいるので、パケットを中継してもらう機器(ルータ,ゲートウェイ)にパケットを送る。
- IPアドレスとクラス: IPアドレスは、先頭8bit をネットワーク番号とするクラスA,16bitのクラスB,24bitのクラスCに分類されている。以前は、IPアドレスを割り当てる企業規模に応じて、大規模な大学だからクラスA、中規模ならクラスB(福井大学は133.7.0.0/16 ←このような書き方はCIDR記法という)、小規模ならクラスCを割り当てていた。(福井高専はCクラスを5本192.156.145~149.0/24 : 福井高専のIPアドレスでは3つのCIDR記法で表現できる。 192.156.145.0/24, 192.156.146.0/23, 192.156.148.0/23)
しかし、最近では IPv4 アドレスの不足から、大きな組織に割り振られた クラスA を再分配している。
ARP(IPアドレスとMACアドレスの橋渡し)
同じサブネットの中では、データリンク層でMACアドレスを用いて通信相手を指定するが、ネットワーク層ではIPアドレスを用いて通信相手を指定する。この違いを埋めるためのプロトコルがARPである。
サブネット内に相手先IPアドレスの指定されたパケット(10.10.22.102)が届くと、通信機器はサブネット内の全ての機器相手に ARPリクエストを送信する。(10.10.22.102はいますか?)
この時、10.10.22.102 のコンピュータは、自分宛てのパケットがあることを知るので、送信元のコンピュータに、自分のMACアドレスを付けたARPリプライを送り返す。(10.10.22.102は、私 “FE:DC:BA:98:76:54” です!)。送信元は、ARP通信をへらすために、その情報を記憶して、2度目以降は覚えたMACアドレスですぐに通信を始める。
ルータとRIP
ルータは、隣接するサブネットの間に入る機器で、各サブネットにゲートウェイとなるインタフェースを持つ。ルータでは受け取ったパケットをどこに流すか…という経路情報が重要となる。
- 静的ルーティング – 末端のルータの設定で、管理者が経路を設定
- 動的ルーティング – 上流ルータでRIPにより設定
経路設定には2種類あり、(a)末端のルータではこのネットワーク番号はどのルータに送るという情報をルータに直接設定する静的ルーティングがとられる。(b)上流のルータでは、末端のルータの設定が変更されることがあるので、ルータ同士がルーティング情報を送りあう動的ルーティングがとられる。動的ルーティングでは、RIPというプロトコルにより、各サブネットのつながっている経路情報が送られてくる。この経路情報を見て、パケットのIPアドレスを見て、パケットの送り先を判断する。
((Windows の場合))
C:> ipconfig /all インタフェース名: IPv4アドレス............192.168.xx.xx サブネットマスク.........255.255.255.0 デフォルトゲートウェイ....192.168.xx.1 C:> arp -a インタフェース: 192.168.xx.xx 74-03-xx-xx-xx-xx 動的 192.168.xx.yy B0-05-xx-xx-xx-xx 動的 C:> netstat -r ネットワーク宛先 ネットマスク ゲートウェイ インタフェース メトリック 0.0.0.0 0.0.0.0 192.168.xx.1 192.168.xx.xx 45 192.168.xx.0 255.255.255.0 ....
((Unix の場合))
$ ifconfig -a en1: .... inet 192.168.xx.xx netmask 0xffffff00 ... $ arp -an .... (192.168.xx.xx) at 74:03:xx:xx:xx:xx ... .... (192.168.xx.yy) at b0:05:xx:xx:xx:xx ... $ netstat -rn Destination Gateway ... default 192.168.xx.1 ... 192.168.xx ...
プライベートアドレス
IPv4 では、32bit でコンピュータを識別することから、最大でも 232台≒40億台しか識別できない。実際、IPアドレスの管理団体では、2017年度には IPv4 アドレスは使い切った状態となっている。この対応として、その組織やその家庭内だけで使われる IPアドレス である、プライベートアドレスが用いられる。
- 10.0.0.0~10.255.255.255 / 8 – 大きな機関向け
- 172.16.0.0~172.31.255.255 / 12
- 192.168.0.0~192.168.255.255 /16 – 個人向け
プライベートアドレスを利用する組織では、インターネットに接続するルータでは NAT(もしくはNAPT) という機能を内蔵し、プライベートアドレスとグローバルアドレスの変換を行う。
IPv6アドレス
IPv4の32bit の IP アドレスでは、40億台のコンピュータを区別することしかできない。そこで、最近では 128bit の IPv6 アドレスが用いられる。IPv6 では、2004:6800:4004:0826:0000:0000:0000:2003 (www.google.co.jp) といった16進数4桁(16bit)を8個を”:”区切りで書き連ねる書き方をする。ただし16進4桁の先行する0や、全部”0000″ は省略して、”2404:6800:4004:826::2003″ と書く。IPv6 は最近では普及がかなり進んでいるが、途中のルータなどがすべて IPv6 に対応する必要があり IPv4 しか使えない組織も多い。
DNS と nslookup
IPアドレスみたいな数字の羅列は覚えることが難しい。このためコンピュータの名前からIPアドレスを調べるサービスがあり、Domain Name Service(DNS) と呼ばれる。詳しい仕組みは ドメイン名の説明の際に行うが、IP アドレスの調べ方を説明する。
ドメイン名から、IP アドレスを調べるには、nslookup (もしくは dig) を使用する。
$ nslookup www.fukui-nct.ac.jp : Non-authoritative answer: Name: www.fukui-nct.ac.jp Address: 104.215.53.205 $ nslookup -query=A www.fukui-nct.ac.jp # IPv4 アドレスの取得 (同上) $ nslookup -query=AAAA www.google.co.jp # IPv6 アドレスの取得 : Non-authoritative answer: Name: www.google.co.jp Address: 2404:6800:4004:826::2003
理解確認
- Cクラスのサブネットに設置できるコンピュータの台数は何台?
- “172.”で始まるプライベートアドレスでは最大何台?
- 192.168.11.2/24 のコンピュータから、192.168.1.50にデータを送る場合、どのような処理が行われるか、IPアドレス、サブネットマスク、ゲートウェイ、ネットワーク番号を使って説明せよ。
- 同じサブネット内で相手のIPアドレスが与えられた時、どのようにパケットが送られるか、MACアドレスとARPを交えて説明せよ。