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実験(斉藤)」カテゴリーアーカイブ

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CTF問題とセキュリティ(4年実験)

この実験では、セキュリティコンテストのCTF問題(Capture The Flag競技)について、インターネットの仕組みを理解し、その問題の解き方を考え、新しく自分自身でCTF問題を作ってもらいます。

日程

実験は、4週にわたり、以下の日程で行います。

内容
1 (前半)暗号・ファイル・Web
2
3 (後半) プログラム作成・インターネット・OS
4

前半・後半でそれぞれ、問題例(もしくは自分で見つけたCTF問題)の1つの説明と、自作の問題を新しく作り説明をしてください。

提出物

  • 実験の目的
  • 問題例(or 自分で見つけたCTF問題)を1つ選び
    • 前半・後半それぞれについて
    • その問題が情報セキュリティにどう関係しているのか
    • 問題の解き方のしくみと解説
  • 自作問題について
    • 前半・後半それぞれ
    • その問題が情報セキュリティにどう関係しているのか
    • 問題の解き方、問題の作り方
    • しくみと解説
  • 提出先はこちらのTeams共有フォルダに。

PHPとセキュリティのレポート講評

5年生の前期実験で「PHPとセキュリティ」のテーマについて、レポートの採点を行った。

以下に、レポート記載での注意点や減点評価を行なったポイントをあげる。

レポートの記載書式について

  1. 電子レポート提出でも所属や報告者の記載をつけること。
    今回は、遠隔実験でPDFファイルのアップロード提出であったため、表紙のつけ忘れなどが見られた。印刷媒体で残す可能性を考慮し、文章内に所属・出席番号・氏名なりの記入は必須。
  2. 図番号・表番号を必ず引用すること。
    実験結果に図番号や表番号をつける習慣はみなさんついているが、本文中で必ず図番号や表番号を引用すること。前表によれば…はNG。「図1をみると…」「(表1参照)」などをつけること。図表は配置の都合で本文とは別のページに記載することもあるので、異なるページに配置されても、わかるように記載する必要がある。
  3. 章・節のインデントはしない。
    今回は減点対象としていないが、卒業論文や卒研中間報告では、節や小節でインデントをしないこと。
    特に、2段組みをする文書の場合、インデントが入るとただでさえ狭い1行が、スカスカになる。

    1. 論文書式ではダメな書き方
    この実験は...  □のようなインデントは不要!!
    ...であった。
    1.1 背景
    □□この問題の背景として...
    □□1.1.1 なんとかかんとか
    □□□なんとかかんとか
    

レポートの考察内容について

  1. PHPのプログラムの改良で、<input … maxlength=”xx”>とか、<input type=…> とか、<input … pattern=”xxx”>をとるといった考察があったが、これは不十分。例えば、Webページの HTML を、自分のサイトにコピーして、maxlenthやpatternを削除したページを作ってそこからPHPにデータを送ることで、相変わらずセキュリティの問題を引き起こすことが可能。HTMLのページを偽装しなくても、プログラムからphpに対して直接データを渡すこともできる。
    このため、送られてくる入力値のチェック(一般的にはサニタイジングと呼ばれる)は、php側でも十分に行う必要がある。
  2. password の管理については、/etc/shadow ファイルの話までしか調べていない考察があった。
    passwdコマンドは、SUID の説明と、その機能「一時的にpasswdコマンドの所有者rootの権限を借りる」の説明がないと減点とした。
    考察のヒントに記載した、自分のパスワードが変更できるのなら/etc/passwdへの書き込み権限があるはず…と同じで、自分のパスワードを変更可能なら/etc/shadowに書き込み権限がある…という話になってしまうから。

(追記)

レポートの採点結果つけたよ…とTeamsで伝えたら、ゾロゾロと自分の点数を聞きにくる人多数。いつも、レポート返却しても教室に放置されてるし、他の先生の評価で平均されるから、あまり気にしないと思ってた。

const char*s, char* const sの違い

専攻科実験のサンプルコードで、警告がでたことについて質問があったので説明。

(( サンプルコード sample.cxx ))
#include <stdio.h>
void foo( char* s ) {
  printf( "%s¥n" , s ) ;
}
int main() {
  foo( "ABC" ) ;
  return 0 ;
}

(( コンパイル時の警告 ))
$ g++ sample.cxx
test.cxx:6:6: warning: conversion from string literal
      to 'char *' is deprecated
      [-Wc++11-compat-deprecated-writable-strings]
  foo( "abcde" ) ;
       ^
1 warning generated.

警告を抑止する “-Wno-…” のオプションをつけて “g++ -Wno-c++11-compat-deprecated-writable-strings sample.cxx” でコンパイルすることもできるけど、ここは変数の型を厳格にするのが鉄則。

この例では、引数の “ABC” が書き換えのできない定数なので、const キーワードを付ければよい。ただし、宣言時の const の付け場所によって、意味が違うので注意が必要。

void foo( char const* s ) { // const char* s も同じ意味
   *s = 'A' ; // NG ポインタの先を書き換えできない
   s++ ;      // OK ポインタを動かすことはできる
}
void foo( char *const s ) {
   *s = 'A' ; // OK ポインタの先は書き込める
   s++ ;      // NG ポインタは動かせない
}
void foo( char const*const s ) {
   *s = 'A' ; // NG ポインタの先を書き換えできない
   s++ ;      // NG ポインタは動かせない
}

const を書く場所は?

int const x = 123 , y = 234 ; の場合、yは定数だろうか?

(( おまけ ))
#include <stdio.h>
int main() {
  int const x = 123 , y = 234 ; // x は定数だけど yは定数?
  x++ ; // 予想通りエラー
  y++ ; // yも定数なのでエラー
  int const s = 345 , const t = 456 ; // sもtも明らかに定数っぽい
  //                  ^ここで文法エラー

  // おまけのおまけ
  char* s , t ;   // s は文字へのポインタ、t は文字
  char  *s , *t ; // s は文字へのポインタ、t も文字へのポインタ
  return 0 ;
}

Visual Studio Code で印刷

実験や授業課題のレポート提出で、プログラムを印刷したものを提出してくれるけど、行を移動しながら何度もスクリーンキャプチャで保存した画像ファイルをWordに貼り付けて提出している人が多い。

いままでなら、「秀丸エディタで印刷してよ…」とか言ってたけど、最近は Visual Studio Code を利用しているみたいで、「プログラムの印刷の仕方がわからない」という人が多いようだ。

実際、Visual Studio Code はたまにしか使わないけど、確かに基本機能の中には印刷機能がないな….

今時、プログラムリストなんて紙媒体で印刷しないもんなんだろうけど、プログラム課題のレポートなら、コードは証拠だからな。

Visual Studio Code の PrintCode

こういう場合は、Visual Studio Code の拡張機能の PrintCode をインストールすればいい。

印刷する時は、F1 キーを押して、拡張コマンドの入力で printcode と打てば印刷される。

ただし、PrintCode は JavaScript を使って HTML を生成し印刷を行うため、Windowsでデフォルトブラウザが Internet Explorer の場合は動かない。このためデフォルトブラウザの変更により Chrome などを使う様に変更しておく必要あり。

Sublime Text なら Print to HTML

同じく、エディタが Sublime Text を使っているのなら、これも印刷機能が付いていないので、”Print to HTML”パッケージをインストールし、あとは、Shift+Alt+P で HTML 用に出力できるのでブラウザ側で印刷を行う。

コンパイラの技術と関数電卓プログラム(2)

前半では、1文字の数字と簡単な演算子で表現される計算式を再帰下降パーサで計算する処理で、 演習を行った。

後半は、さらに実際のコンパイラに近いものとして、 C言語で広く使われている、字句解析ツール(lexical analyzer : lex or flex)、 構文解析ツール(parser : yacc or bison) を使って、 さらに現実的な関数電卓プログラムを作ってみる。

lex or flex による字句解析

lexは、字句解析のプログラムを自動生成するツール。 “%%”行の内側に、正規表現によるルールとその処理(アクション)を書き並べる。 また、“%{ … %}”の内側に、その処理に必要なC言語のソースを書き、 lex で処理を行うと、lex.yy.c というC言語のソースを出力する。

lex.yy.c の中には、yylex() という関数が自動的に作られ、構文解析ツールから呼び出される。

# flex は、lex の改良版。

(( mycalc.l ))
%{
#include <stdio.h>
// yaccが出力するヘッダファイル
#include "y.tab.h"

int yywrap( void )
{
   // 1: スキャナ終了
   // 0: yyin を切り替えて継続
   return 1 ;
}
%}
%%
"+"  return ADD ;
"-"  return SUB ;
"*"  return MUL ;
"/"  return DIV ;
"\n" return CR  ;
[0-9][0-9]* {
   // 入力はyytextに格納されている。
   int temp ;
   sscanf( yytext , "%d" , &temp ) ;
   yylval.int_value = temp ;
   // 返り値は、字句(トークン)の種別を表す定数
   return INT_LITERAL;
}
%%

このプログラムを、lex で処理させると、“+” 記号に ADD という定数記号を割り振るとか、数字列” [0-9][0-9]* “をみつけると、文字列から数値を生成(sscanf)して、その場合の記号に INT_LITERAL という定数記号を割り振る…といった処理のプログラムを生成してくれる。(INT_LITERALは構文解析側で定義する定数)

yacc or bison

yacc ( Yet Another Compiler Compiler ) もしくはその改良版の bison は、構文解析のプログラムを自動生成してくれるツールである。構文をBNF記法で記載すると、字句解析ツール(lex等)を呼び出しながら構文に合わせたトークンの出現に応じた状態遷移のための「遷移テーブル」を自動生成し、 その遷移テーブルを用いた処理のプログラムをC言語で出力してくれる。

字句解析プログラムは、様々なトークンとデータを返す。このデータには様々な場合考えられるので、 そのトークンに合わせたデータの型を “%union” の中に記載(C言語の共用体参照)する。 “%%”〜”%%” の間には、BNF記法の(ルール)と、それに対応する処理(アクションは“{ }”の中の部分)を記載する。最初の“%{ … %}”の間には、処理に必要なC言語を記載する。

# bison(水牛)は、yacc(山牛)の改良版。

(( mycalc.y ))
%{
#include <stdio.h>
#include <stdlib.h>

// yacc が定義する内部関数のプロトタイプ宣言
#define YYDEBUG 1
extern  int  yydebug ;
extern  int  yyerror( char const* ) ;
extern  char *yytext ;
extern  FILE *yyin ;

// 最初に呼び出される関数yyparse()
extern  int  yyparse( void ) ;

// 字句解析を呼び出す関数yylex()
extern  int  yylex( void ) ;
%}

// 字句(トークン)の定義
%union {
   int  int_value;
}
%token <int_value>  INT_LITERAL
%token ADD SUB MUL DIV CR
%type  <int_value>   expression term primary_expression

%%
// 構文の定義
line_list  : line                // 行の繰り返し
           | line_list line
           ;

line       : expression CR       { printf( ">>%d\n" , $1 ) ; }
           ;

expression : term
           | expression ADD term { $$ = $1 + $3 ; }
           | expression SUB term { $$ = $1 - $3 ; }
           ;

term       : primary_expression
           | term MUL primary_expression { $$ = $1 * $3 ; }
           | term DIV primary_expression { $$ = $1 / $3 ; }
           ;

primary_expression
           : INT_LITERAL
           ;
%%

// 補助関数の定義
int yyerror( char const* str )
{
   fprintf( stderr , "parser error near %s\n" , yytext ) ;
   return 0 ;
}
int main( void )
{
   yydebug = 0 ;        // yydebug=1 でデバッグ情報表示
   yyin = stdin ;
   if ( yyparse() ) {   // 構文解析を開始
      fprintf( stderr , "Error ! Error ! Error !\n" ) ;
      exit( 1 ) ;
   }
}

このプログラムを、yacc で処理すると、expression$1 ADD$2 term$3のルール「加算式($1) +($2) 乗算式($3)」という文になっている部分を見つけると、そのルールに対応するアクション“{ $$ = $1 + $3 ; }”「$1(加算式部分の値)と、$3(乗算式の部分)の値を加えて、$$(式の結果)を求める」といった処理を生成してくれる。yyparse() 関数を呼び出すと、構文の一番最上部の line_list に相当する処理が起動される。yyerror()は、構文解析の途中で文法エラーになった時に呼び出される関数。

生成されるパーサの内容に興味があるなら、生成される y.tab.c の内容を読むと良い。

make と Makefile

これらのプログラムでは、字句解析プログラム mycalc.l から生成された lex.yy.c, y.tab.h と, 構文解析プログラム mycalc.y から生成された y.tab.c を組合せて1つの実行ファイルにコンパイルする。 これらの手順は煩雑なので、make ツールを使う。

make は、 Makefile に記載されている“ターゲット”と、それを作るために必要な“依存ファイル”、 “依存ファイル”から”ターゲット”を生成する処理“アクション”から構成される。 make は、ターゲットと依存ファイルの更新時間を比較し、 必要最小限の処理を行う。

基本的な Makefile の書き方は、

ターゲット: 依存ファイル...
        アクション       # アクションの前はタブ

の様に書き、依存ファイルが更新されていたら、アクションを実行し、ターゲットを更新する。

以下に、今回の課題で使用する Makefile を示す。

(( Makefile ))
# 最終ターゲット
mycalc:	y.tab.o lex.yy.o
        gcc -o mycalc y.tab.o lex.yy.o

# 構文解析処理
y.tab.o: mycalc.y
        bison -dy mycalc.y	# -dy : yacc互換モード
        gcc -c y.tab.c

# 字句解析処理
lex.yy.o: mycalc.l mycalc.y
        flex -l mycalc.l        # -l : lex互換モード
        gcc -c lex.yy.c
clean:; rm mycalc y.tab.c y.tab.h lex.yy.c *.o

(( ファイルの依存関係のイメージ図 ))
mycalc.l           mycalc.y
  |     \           |
lex.yy.c  y.tab.h  y.tab.c
  |            \    |
lex.yy.o        y.tab.o
        \    /
         mycalc

この課題にあたり、後半の実験では flex, bison などの unix 系プログラミング環境を利用する。

macOS の利用者であれば MacPorts や、Windows 利用者であれば、wsl(Windows subsystem for Linux) などをインストールし実行すること。

今回の実験であれば、linux(Debian系)ならば、”sudo apt-get install flex bison gcc make” にて、必要なパッケージをインストールして実験を行うこと。

再帰下降パーサのサンプルコード

再帰下降パーサ・サンプル

授業でもやっていない再帰下読みの説明でもあり、 簡単なサンプルコードを示したいけど、Webで探しても全体的に大きなプログラムばかりで、 再帰関数をどう記述していくか解かりにくい。 ということで、+,-,*,/と数字1桁という条件で、字句解析無しのサンプルコードを書いてみた。

# 数字一桁と1文字演算子なので、字句解析は再帰下降パーサにそのまま組み込みとなっている。

// 再帰下読みの基本の一番短いサンプル
//
//   字句解析は面倒なので、
//   演算子は1文字のみ、定数は数字1桁だけとする。

#include <stdio.h>
#include <ctype.h>

// 括弧の無い +,-,*,/ だけの式の処理
//
//   今回は以下の構文だけとする。
//   以下のような文法の書き方をバッカス記法(BNF)と言う。
//
// exp_PLUS_MINUS ::= exp_MUL_DIV '+' exp_PLUS_MINUS
//                  | exp_MUL_DIV '-' exp_PLUS_MINUS
//                  | exp_MUL_DIV
//                  ;
// exp_MUL_DIV    ::= DIGIT '*' exp_MUL_DIV
//                  | DIGIT '/' exp_MUL_DIV
//                  | DIGIT
//                  ;
// DIGIT          ::= [0-9] ;

// 構文解析に使う関数のプロトタイプ宣言
int exp_PLUS_MINUS( const char* , const char** ) ;
int exp_MUL_DIV( const char* , const char** ) ;

// PLUS,MINUSだけの式
//   構文解析関数の引数
//   pc:   解析する文字列の先頭
//   endp: 解析が終わった場所
int exp_PLUS_MINUS( const char* pc , const char** endp ) {
   // left=乗除算式
   int left = exp_MUL_DIV( pc , endp ) ;

   if ( **endp == '+' ) { // ここが加減算式が右結合になる根本原因
      // right=加減算式
      int right = exp_PLUS_MINUS( *endp + 1 , endp ) ;
      return left + right ;
   } else if ( **endp == '-' ) {
      // right=加減算式
      int right = exp_PLUS_MINUS( *endp + 1 , endp ) ;
      return left - right ;
   } else {
      // 乗除算式を返す
      return left ;
   }
}

// MUL,DIVだけの式
//   DIGITに相当する構文木の処理は、組み込んでしまう。
int exp_MUL_DIV( const char* pc , const char** endp ) {
   if ( isdigit( *pc ) ) {
      // left=数値
      int left = *pc - '0' ;
      *endp = pc + 1 ;
      if ( **endp == '*' ) { // ここが乗除算式が右結合になる根本原因
         // right=乗除算式
         int right = exp_MUL_DIV( *endp + 1 , endp ) ;
         return left * right ;
      } else if ( **endp == '/' ) {
         // right=乗除算式
         int right = exp_MUL_DIV( *endp + 1 , endp ) ;
         return left / right ;
      }
      // 数値を返す
      return left ;
   } else {
      printf( "Error\n" ) ;
      return 0 ;
   }
}

// 課題(1): () を含む処理にしたかったら、
//          BNF の構文木は、どう直すべきか?
// 課題(2): () を含む処理、空白を無視する処理、
//          定数式が複数桁を使える処理。

int main() {
   const char* e = NULL ;
   printf( "%d\n" , exp_PLUS_MINUS( "1+2*3" , &e ) ) ;
   printf( "%d\n" , exp_PLUS_MINUS( "1*2+3" , &e ) ) ;
   return 0 ;
}

理解確認

  • このプログラムでは演算子は、右結合だろうか?、左結合だろうか?

コンパイラの技術と関数電卓プログラム(1)

コンパイラを作るための技術の基礎を学んでもらうために、 簡単な関数電卓プログラム作成を課題とする。 基本は、printf( “%d” , eval( “1+2*3”) ) みたいな計算プログラムを作成する。

計算式から、計算処理を行う場合、演算子の優先順位を正しく処理できることが求められる。
一般的には、計算の機械語を生成する場合、データを準備して計算という方法であり、 逆ポーランド記法変換が行われる。
たとえば、”1+2*3″は、”1,2,+,3,*” といった表記に改められ、変換後の式は スタックを用いて、「値はpush,演算子はpop,pop,計算して,push」という 単純なルールで処理すれば、計算を行うことができる。

字句解析と構文解析

このような、計算式の処理を実行する場合、”1“,”+“,”2“,”✳︎“,”3“という 字句に切り分ける処理を、字句解析という。 この結果から、”式✳︎式”なら掛け算、”式+式”は足し算といった、 前後の字句の組合せから、構文木を生成する処理は、構文解析という。 コンパイラであれば、この後、最適化コード生成などが行われる。

C言語であれば、コンパイル前後には以下の処理が行われる。

  • プリプロセッサ処理
    ↓(#の無いCコード)
  • コンパイル処理
    • 字句解析
    • 構文解析
    • コード生成

    ↓(中間コード)

  • リンク処理 ← ライブラリ
  • 機械語

字句解析と正規表現

字句(トークン)の切り出しでは、その文法を説明する際には、正規表現なども用いられる。

簡単な正規表現
 . 任意の文字
 * 直前の0回以上の繰り返し
 + 直前の1回以上の繰り返し
 [0-9a-z] カッコの中の文字のいずれか - は範囲を示す。
 (a|b|c) 丸カッコの|区切りのうちのどれか。
 (例) C言語の変数の正規表現 [a-zA-Z_][a-zA-Z0-9_]*

構文解析の方法

構文解析では、構文を状態遷移として考え、この式の後にくる可能性のある状態は? という考えで解析を行う。 このような構文は、一般的にバッカス・ナウア記法(BNF)などで表現されることが多い。 また、簡単な構文解析であれば、

などが用いられる。

再帰下降パーサ

簡単な再帰下降パーサの演習として、1桁の数字と+,*演算子の処理プログラムを 考える。

加減,乗除の式のバッカス記法(BNF)
exp_加減 ::= exp_乗除 '+' exp_乗除
          | exp_乗除 '-' exp_乗除
          | exp_乗除
          ;
exp_乗除 ::= DIGIT '*' exp_乗除
          | DIGIT '/' exp_乗除
          | DIGIT
          ;
DIGIT   ::= [0-9]
          ;

練習として、上に示す再帰下降パーサに、 (1) “(“,”)” を含めた場合の、BNF 記法を考え、(2) 数値として複数桁が使えるようにし、 (3) 式を読みやすくする空白を処理できるように 改造せよ。

専攻科実験・コンパイラと関数電卓プログラム作成

  • コンパイラの技術と関数電卓プログラム(1)
    • 課題
      • 複数桁の数字が使えること。
      • 式中に空白が使えること。
      • 何らかの演算子を追加すること。
        • (例) %,単項演算子のマイナスなど
      • 演算子が左結合か右結合か確認すること。
      • オプション課題
        • 変数が使えること。
          (変数名は1文字のA-Zといったもので良い)
    • レポート内容
      • コンパイラ技術の概要、課題(1)の説明・最終的なBNF記法・ソース・動作検証、考察
  • コンパイラの技術と関数電卓プログラム(2)
    • 課題
      • 基本的に、lex+yaccで(1)と同様の課題完成を目指す。
    • レポート内容
      • lex,yaccの概要、課題(2)の説明・ソース・動作検証、考察

コンパイラと関数電卓プログラム(専攻科実験2018)

専攻科1年・生産システム実験1(後期)の「コンパイラと関数電卓プログラム」の説明は、昨年度資料と共通なのでリンクを記載しておく。

型による処理速度の実験

授業のネタとするために、型によって計算時間がどう変化するか実験。レガシーなコンピュータを使ってきた人間には、float とか double とか出てきたら、「Z80な時代の頭」では数倍遅いのを期待したけど、FPU を搭載して当たり前のこの時代、そんなに差は出ない。

FPUという言葉さえ、最近は死語かな…

しかたがないので、macOS , Raspberry-Pi , Arduino 遅さの時代を逆行しながら実験。

// test.cxx
#ifndef TYPE
#define TYPE int
#endif
#include <stdio.h>

TYPE foo( TYPE i ) {
    TYPE ans = 0 ;
    for( int j = 0 ; j < 30000 ; j++ ) {
        ans += i * i ;
    }
    return ans ;
}

int main() {
    TYPE y = 0 ;
    for( TYPE i = 0 ; i < 100000 ; i++ ) {
        y = foo( i ) ;
    }
    return 0 ;
}

iMac で実験

iMac で実験。デスクトップ 64 bit マシンだし、そんなに差は出ないのは予想どおり。

bash-3.2$ uname -a
Darwin imac2 17.4.0 Darwin Kernel Version 17.4.0: ... root:xnu-4570.41.2~1/RELEASE_X86_64 x86_64

bash-3.2$ g++ -O0 -DTYPE=int test.cxx
bash-3.2$ time ./a.out
user    0m6.857s
bash-3.2$ g++ -O0 -DTYPE="long long int" test.cxx
bash-3.2$ time ./a.out
user    0m6.831s
bash-3.2$ g++ -O0 -DTYPE=float test.cxx
bash-3.2$ time ./a.out
user    0m8.528s
bash-3.2$ g++ -O0 -DTYPE=double test.cxx
bash-3.2$ time ./a.out
user    0m8.615s

Raspberry-Pi3 で実験

組み込み系の FPU などが貧弱なマシンを想定し、Raspberry-Pi 3 で同じことをやってみた。
64bit整数 long long int が想定外に遅いな。

raspberry-pi:~$ uname -a
Linux raspberry-pi 4.14.22-v7+ #1096 SMP ...2018 armv7l GNU/Linux

raspberry-pi:~$ gcc -O0 -DTYPE=int test.cxx
raspberry-pi:~$ time ./a.out
user    0m37.588s
raspberry-pi:~$ gcc -O0 -DTYPE="long long int" test.cxx
raspberry-pi:~$ time ./a.out
user    1m18.535s
raspberry-pi:~$ gcc -O0 -DTYPE=float test.cxx
raspberry-pi:~$ time ./a.out
user    0m52.206s
raspberry-pi:~$ gcc -O0 -DTYPE=double test.cxx
raspberry-pi:~$ time ./a.out
user    0m50.287s

Arduino で実験

同じことを Arduino でやってみた。main のループは 1/10000 の回数にして、10000倍の時間を掲載…
ようやく「Z80 な頭」が期待している実験結果となったかな。

int       6880[sec] 16bit int
long      6320[sec] 32bit int 
float    92080[sec] 32bit float
double   92080[sec] Arduino Uno では、double = 32bit で float と同じ

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