初回の講義では、欠席者もいたので前回の講義資料も扱いながら説明を行う。最初に、前回講義資料の値渡し・参照渡し・ポインタ渡しを復習してから、構造体の話につなげていく。
構造体
上記資料を元に説明。 最初に構造体が無かったら、名前・国語・算数・理科の1クラス分のデータをどう表現しますか?
// まずは基本の宣言 char name[ 50 ][ 20 ] ; int kokugo[ 50 ] ; int sansu[ 50 ] ; int rika[ 50 ] ; // もしクラスが最初20人だったら、20→50に変更する際に、 // 文字列長の20も書きなおしちゃうかも。 // 50とか20とかマジックナンバーは使わないほうがいい。 #define SIZE 50 #define LEN 20 char name[ SIZE ][ LEN ] ; int kokugo[ SIZE ] ; : // 2クラス分のデータ(例えばEI科とE科)を保存したかったら? // case-1(配列2倍にしちゃえ) char name[ 100 ][ 20 ] ; // どこからがEI科? int kokugo[ 100 ] ; : // case-2(2次元配列にしちゃえ) char name[ 2 ][ 50 ][ 20 ] ; // 0,1どっちがEI科? int kokugo[ 2 ][ 50 ] ; : // case-3(目的に応じた名前の変数を作っちゃえ) char ei_name[ 50 ][ 20 ] ; // EI科は一目瞭然 int ei_kokugo[ 50 ] ; // だけど変数名が違うから : // 処理を2度書き char ee_name[ 50 ][ 20 ] ; int ee_kokugo[ 50 ] ; :
このような問題に対応するために構造体を用いる。
struct Person { // Personが構造体名(タグ名) char name[ 20 ] ; int kokugo ; int sansu ; int rika ; } ; struct Person saitoh ; struct Person ei[ 50 ] , ee[ 40 ] ; strcpy( saitoh.name , "t-saitoh" ) ; saitoh.kokugo = 100 ; ei[ 0 ].sansu = 80 ; ee[ 1 ].rika = 75 ;
このように構造体を使うことで、複数のデータを1つのデータの塊として扱えるようになる。
構造体の参照渡し
構造体のデータを関数の呼び出しで記述する場合には、参照渡しを利用する。
struct Person { char name[ 20 ] ; int age ; } ; void print( struct Person* p ) { printf( "%s %d¥n" , p->name , p->age ) ; } void main() { struct Person saitoh ; strcpy( saitoh.name , "t-saitoh" ) ; saitoh.age = 50 ; print( &saitoh ) ; // ポインタによる参照渡し }
このようなプログラムの書き方をすると、「データ saitoh に、print() せよ…」 といった処理を記述したようになる。 これを発展して、データ saitoh に、print という命令をするイメージにも見える。
この考え方を、そのままプログラムに反映させ、Personというデータは、 名前と年齢、データを表示するprintは…といったように、 データ構造と、そのデータ構造への処理をペアで記述すると分かりやすい。
オブジェクト指向の導入
構造体でオブジェクト指向もどき
例えば、名前と年齢の構造体で処理を記述する場合、 以下の様な記載を行うことで、データ設計者とデータ利用者で分けて 仕事ができることを説明。
// この部分はデータ構造の設計者が書く // データ構造を記述 struct Person { char name[10] ; int age ; } ; // データに対する処理を記述 void setPerson( struct Person* p , char s[] , int a ) { // ポインタの参照で表記 strcpy( (*p).name , s ) ; (*p).age = a ; } void printPerson( struct Person* p ) { // アロー演算子で表記 "(*p).name" は "p->name" で書ける printf( "%s %d¥n" , p->name , p->age ) ; } // この部分は、データ利用者が書く int main() { // Personの中身を知らなくてもいいから配列を定義(データ隠蔽) struct Person saitoh ; setPerson( &saitoh , "saitoh" , 55 ) ; struct Person table[ 10 ] ; // 初期化は記述を省略 for( int i = 0 ; i < 10 ; i++ ) { // 出力する...という雰囲気で書ける(手続き隠蔽) printPerson( &table[i] ) ; } return 0 ; }
このプログラムの書き方では、mainの中を読むだけもで、 データ初期化とデータ出力を行うことはある程度理解できる。 この時、データ構造の中身を知らなくてもプログラムが理解でき、 データ実装者はプログラムを記述できる。これをデータ構造の隠蔽化という。 一方、setPerson()や、printPerson()という関数の中身についても、 初期化・出力の方法をどうするのか知らなくても、 関数名から動作は推測できプログラムも書ける。 これを手続きの隠蔽化という。
C++のクラスで表現
上記のプログラムをそのままC++に書き直すと以下のようになる。
#include <stdio.h> #include <string.h> // この部分はクラス設計者が書く class Person { private: // クラス外からアクセスできない部分 // データ構造を記述 char name[10] ; // メンバーの宣言 int age ; public: // クラス外から使える部分 // データに対する処理を記述 void set( char s[] , int a ) { // メソッドの宣言 // pのように対象のオブジェクトを明記する必要はない。 strcpy( name , s ) ; age = a ; } void print() { printf( "%s %d¥n" , name , age ) ; } } ; // ← 注意ここのセミコロンを書き忘れないこと。 // この部分はクラス利用者が書く int main() { Person saitoh ; saitoh.set( "saitoh" , 55 ) ; saitoh.print() ; // 文法エラーの例 printf( "%d¥n" , saitoh.age ) ; // age は private なので参照できない。 return 0 ; }
用語の解説:C++のプログラムでは、データ構造とデータの処理を、並行しながら記述する。 データ構造に対する処理は、メソッド(method)と呼ばれる。 データ構造とメソッドを同時に記載したものは、クラス(class)と呼ぶ。 そのclassに対し、具体的な値や記憶域が割り当てられたものをオブジェクト(object)と呼ぶ。