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オブジェクト指向」カテゴリーアーカイブ

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オブジェクト指向の基本プログラム

C++のクラスで表現

前回の講義での、構造体のポインタ渡しをC++の基本的なクラスで記述した場合のプログラムを再掲する。

#include <stdio.h>
#include <string.h>

// この部分はクラス設計者が書く
class Person {
private: // クラス外からアクセスできない部分
   // データ構造を記述
   char name[10] ; // メンバーの宣言
   int  age ;
public: // クラス外から使える部分
   // データに対する処理を記述
   void set( char s[] , int a ) { // メソッドの宣言
      // pのように対象のオブジェクトを明記する必要はない。
      strcpy( name , s ) ;
      age = a ;
   }
   void print() {
      printf( "%s %d¥n" , name , age ) ;
   }
} ; // ← 注意ここのセミコロンを書き忘れないこと。

// この部分はクラス利用者が書く
int main() {
   Person saitoh ;
   saitoh.set( "saitoh" , 55 ) ;
   saitoh.print() ;

   // 文法エラーの例
   printf( "%d¥n" , saitoh.age ) ; // phoneはprivateなので参照できない。
   return 0 ;
}

この様にC++のプログラムに書き換えたが、内部の処理は元のC言語と同じであり、オブジェクトへの関数呼び出し saitoh.set(…) などが呼び出されても、set() は、オブジェクトのポインタを引数して持つ関数として、機械語が生成されるだけである。

用語の解説:C++のプログラムでは、データ構造とデータの処理を、並行しながら記述する。 データ構造に対する処理は、メソッド(method)と呼ばれる。 データ構造とメソッドを同時に記載したものは、クラス(class)と呼ぶ。 そのデータに対し具体的な値や記憶域が割り当てられたものオブジェクト(object)と呼ぶ。

C++では隠蔽化をさらに明確にするために、private:public: を指定できる。private: は、そのメソッドの中でしか使うことができない要素や関数であり、public: は、メソッド以外からでも参照したり呼出したりできる。オブジェクト指向でプログラムを書くとき、データ構造や関数の処理方法は、クラス内部の設計者しか触れないようにしておけば、その内部を改良することができる。しかし、クラスの利用者が勝手に内部データを触っていると、内部設計者が改良するとそのプログラムは動かないものになってしまう。

隠蔽化を的確に行うことで、クラスの利用者はクラスの内部構造を触ることができなくなる。一方でクラス設計者はクラスの外部への挙動が変化しないようにクラス内部を修正することに心がければ、クラス利用者への影響がないままクラスの内部を改良できる。このように利用者への影響を最小に、常にプログラムを修正することリファクタリングと呼ぶ。

クラス限定子

前述のプログラムでは、class 宣言の中に関数内部の処理を記述していた。しかし関数の記述が長い場合は、書ききれないこういう場合はクラス限定子を使って、メソッドの具体的な処理をクラス宣言の外に記載する。

class Person {
private:
   char name[10] ;
   int  age ;
public:
   // メソッドのプロトタイプ宣言
   void set( char s[] , int a) ;
   void print() ;
} ;

// メソッドの実体をクラス宣言の外に記載する。
void Person::set( char s[] , int a ) {  // Person::set() 
   strcpy( name , s ) ;
   age = a ;
}
void Person::print() {                  // Person::print()
   printf( "%s %d¥n" , name , age ) ;
}

inline 関数と開いたサブルーチン

オブジェクト指向では、きわめて簡単な処理な関数を使うことも多い。
例えば、上記のプログラム例で、クラス利用者に年齢を読み出すことは許しても書き込みをさせたくない場合、以下のような、関数を定義する。(getterメソッド)

# 逆に、値の代入専用のメソッドは、setterメソッドと呼ぶ

class Person {
private:
   char name[10] ;
   int  age ;
public:
   // メソッドのプロトタイプ宣言
   inline int get_age() { return age ; } // getter
   inline void set_age( int a ) { age = a ; } // setter
} ;

ここで inline とは、開いた関数(開いたサブルーチン)を作る指定子である。通常、機械語を生成するとき中身を参照するだけの機械語と、get_age() を呼出したときに関数呼び出しを行う機械語が作られる(閉じたサブルーチン)が、age を参照するだけのために関数呼び出しの機械語はムダが多い。inline を指定すると、入り口出口のある関数は生成されず、get_age() の処理にふさわしい age を参照するだけの機械語が生成される。

# 質問:C言語で開いたサブルーチンを使うためにはどういった機能があるか?

コンストラクタとデストラクタ

プログラムを記述する際、データの初期化忘れや終了処理忘れで、プログラムの誤動作の原因になることが多い。

このための機能がコンストラクタ(構築子)とデストラクタ(破壊子)という。

コンストラクタは、返り値を記載しない関数でクラス名(仮引数…)の形式で宣言し、オブジェクトの宣言時に初期化を行う処理として呼び出される。デストラクタは、~クラス名() の形式で宣言し、オブジェクトが不要となる際に、自動的に呼び出し処理が埋め込まれる。

class Person {
private:
   // データ構造を記述
   char name[10] ;
   int  age ;
public:
   Person() { // (A) 引数なしのコンストラクタ
      name[0] = '
class Person {
private:
   // データ構造を記述
   char name[10] ;
   int  age ;
public:
   Person() { // (A) 引数なしのコンストラクタ
      name[0] = '\0' ;
      age = 0 ;
   }
   Person( char s[] , int a ) { // (B) 引数ありのコンストラクタ
      strcpy( name , s ) ;
      age = a ;
   }
   ~Person() { // デストラクタ
      print() ;
   }
   void print() {
      printf( "'%s' = %d¥n" , name , age ) ;
   }
} ;

int main() {
   Person saitoh( "saitoh" , 55 ) ; // オブジェクトsaitohを"saitoh"と55で初期化
   Person tomoko ;  // 引数なしのコンストラクタで初期化される。
   return 0 ;
   // main を抜ける時にオブジェクトsaitohは不要になるので、
   // デストラクタが自動的に呼び出され、'saitoh' = 55 が表示。
   // 同様に tomoko のデストラクタでは、'' = 0 を表示。
}
' ; age = 0 ; } Person( char s[] , int a ) { // (B) 引数ありのコンストラクタ strcpy( name , s ) ; age = a ; } ~Person() { // デストラクタ print() ; } void print() { printf( "'%s' = %d¥n" , name , age ) ; } } ; int main() { Person saitoh( "saitoh" , 55 ) ; // オブジェクトsaitohを"saitoh"と55で初期化 Person tomoko ; // 引数なしのコンストラクタで初期化される。 return 0 ; // main を抜ける時にオブジェクトsaitohは不要になるので、 // デストラクタが自動的に呼び出され、'saitoh' = 55 が表示。 // 同様に tomoko のデストラクタでは、'' = 0 を表示。 }

このクラスの中には、(A)引数無しのコンストラクタと、(B)引数ありのコンストラクタが出てくる。C++では、同じ名前の関数でも引数の数や型に応じて呼出す関数を適切に選んでくれる。(関数のオーバーロード)

デストラクタは、データが不要となった時に自動的に呼び出してくれる関数で、一般的にはC言語でのファイルの fopen() , fclose() のようなものを使う処理で、コンストラクタで fopen() , デストラクタで fclose() を呼出すように使うことが多いだろう。同じように、コンストラクタで malloc() を呼出し、デストラクタで free() を呼出すというのが定番の使い方だろう。

複素数クラスの例

隠蔽化と基本的なオブジェクト指向の練習課題として、複素数クラスをあげる。ここでは、複素数の加算・乗算を例に説明をするので、減算・除算などの処理を記述することで、クラスの扱いに慣れてもらう。

直交座標系の複素数クラス

#include <stdio.h>
#include <math.h>

// 直交座標系の複素数クラス
class Complex {
private:
   double re ; // 実部
   double im ; // 虚部
public:
   void print() {
      printf( "%lf + j%lf¥n" , re , im ) ;
   }
   Complex( double r , double i )  // コンストラクタで要素の
     : re( r ) , im( i ) {         //  初期化はこのように書いてもいい
   }                               // re = r ; im = i ; の意味
   Complex()      // デフォルトコンストラクタ
     : re( 0.0 ) , im( 0.0 ) {
   }

   void add( Complex z ) {
      // 加算は、直交座標系だと極めてシンプル
      re = re + z.re ;
      im = im + z.im ;
   }
   void mul( Complex z ) {
      // 乗算は、直交座標系だと、ちょっと煩雑
      double r = re * z.re - im * z.im ;
      double i = re * z.im + im * z.re ;
      re = r ;
      im = i ;
   }
   double get_re() {
      return re ;
   }
   double get_im() {
      return im ;
   }
   double get_abs() { // 絶対値
      return sqrt( re*re + im*im ) ;
   }
   double get_arg() { // 偏角
      return atan2( im , re ) ;
   }
} ; // ←何度も繰り返すけど、ここのセミコロン忘れないでね
int main() {
   // 複素数を作る
   Complex a( 1.0 , 2.0 ) ;
   Complex b( 2.0 , 3.0 ) ;

   // 複素数の計算
   a.print() ;
   a.add( b ) ;
   a.print() ;
   a.mul( b ) ;
   a.print() ;

   return 0 ;
}

練習課題

  • 上記の直交座標系の複素数のクラスのプログラムを入力し、動作を確認せよ。
  • このプログラムに減算や除算の処理を追加せよ。

この練習課題は、次週に予定している「曲座標系の複素数クラス」に変更となった場合のプログラムを加え、第1回のレポート課題となります。

値渡しとポインタ渡し

C言語をあまりやっていない学科の人向けのC言語の基礎として、関数との値渡し, ポインタ渡しについて説明する。ただし、参照渡しについては電子情報の授業でも細かく扱っていない内容なので電子情報系学生も要注意。

オブジェクト指向のプログラムでは、構造体のポインタ渡し(というよりは参照渡し)を多用するが、その基本となる関数との値の受け渡しの理解のため、以下に値渡し・ポインタ渡し・参照渡しについて説明する。

ポインタと引数

値渡し

// 値渡しのプログラム
void foo( int x ) {  // x は局所変数(仮引数は呼出時に
                     // 対応する実引数で初期化される。
   x++ ;
   printf( "%d¥n" , x ) ;
}
int main() {
   int a = 123 ;
   foo( a ) ;  // 124
               // 処理後も main::a は 123 のまま。
   foo( a ) ;  // 124
   return 0 ;
}

このプログラムでは、aの値は変化せずに、124,124 が表示される。
でも、プログラムによっては、124,125 と変化して欲しい場合もある。
どのように記述すべきだろうか?

// 大域変数を使う場合
int x ;
void foo() {
   x++ ;
   printf( "%d¥n" , x ) ;
}
int main() {
   x = 123 ;
   foo() ;  // 124
   foo() ;  // 125
   return 0 ;
}

しかし、このプログラムは大域変数を使うために、間違いを引き起こしやすい。

// 大域変数が原因で予想外の挙動をしめす簡単な例
int i ;
void foo() {
   for( i = 0 ; i < 2 ; i++ )
      printf( "A" ) ;
}
int main() {
   for( i = 0 ; i < 3 ; i++ )  // このプログラムでは、AA AA AA と
      foo() ;                   // 表示されない。
   return 0 ;
}

ポインタ渡し

C言語で引数を通して、呼び出し側の値を変化して欲しい場合は、変更して欲しい変数のアドレスを渡し、関数側では、ポインタ変数を使って受け取った変数のアドレスの示す場所の値を操作する。

// ポインタ渡しのプログラム
void foo( int* p ) {  // p はポインタ
   (*p)++ ;
   printf( "%d¥n" , *p ) ;
}
int main() {
   int a = 123 ;
   foo( &a ) ;  // 124
                // 処理後 main::a は 124 に増えている。
   foo( &a ) ;  // 124
   return 0 ;   // さらに125と増える
}

ポインタを利用して引数に副作用を与える方法は、ポインタを正しく理解していないプログラマーでは、危険な操作となる。C++では、ポインタ渡しを極力使わないようにするために、参照渡しを利用する。ただし、ポインタ渡しも参照渡しも、機械語レベルでは同じ処理にすぎない。

参照渡し

// ポインタ渡しのプログラム
void foo( int& x ) {  // xは参照
   x++ ;
   printf( "%d¥n" , x ) ;
}
int main() {
   int a = 123 ;
   foo( a ) ;  // 124
               // 処理後 main::a は 124 に増えている。
   foo( a ) ;  // 124
   return 0 ;  // さらに125と増える。
}

構造体のポインタ渡し

ここまでの説明を踏まえ、構造体を使ったプログラムでは、構造体のポインタ渡しが一般的である。以下に、名前と年齢のデータを扱うプログラムを示す。

// 構造体のポインタ渡しのプログラム
struct Person {
   int name[ 20 ] ;
   int age ;
} ;
// 構造体にデータを代入するための関数
void set_Person( struct Person* p , char nm[] , int ag ) {
   // ポインタ参照で書くと以下の通り
   strcpy( (*p).name , nm ) ;
   (*p).age = ag ;
   // アロー演算子を使うとシンプルに書ける。
   // strcpy( p->name , nm ) ;
   // p->age = ag ;
}

// 構造体のデータを表示するための関数
void print_Person( struct Person* p ) {
   printf( "%s %d¥n" , p->name , p->age ) ;
}

// 関数名さえ処理の意図がつたわる名前を使えば、
// 値をセットして、表示する...ぐらいは一目瞭然。
// 構造体の中身を知らなくても、関数の中身を知らなくても、
// やりたいことは伝わる。...隠蔽化
int main() {
   struct Person tsaitoh ;
   // tsaitohに set して、
   set_Person( &tsaitoh , "t-saitoh" , 55 ) ;
   // tsaitohを print する。
   print_Person( &tsaitoh ) ;
   return 0 ;
}

このプログラムでは、main() の部分だけを見ると、tsaitoh という Person というデータがあり、set_Person() で値をセットして、print_Person() で値を出力するという雰囲気は伝わる。

この main() であれば、Person の name が文字配列とか age が int 型といった情報は知らなくても使える。(データ構造の隠蔽化)

また、set_Person() や print_Person() もどんな関数を使って表示しているのかも知らなくてもいい。(手続きの隠蔽化)

これにより、Person というデータ構造やそれを扱う処理の中身を設計する人と、Person というデータを使う人でプログラム開発の分業ができる。さらに、プログラムで不具合があったときは、Personの内部が悪いのか、使い方が悪いのかの原因の切り分けも明確になる。

オブジェクト指向プログラミングに書き換え

// 構造体のポインタ渡しのプログラム
class Person {
private:
   int name[ 20 ] ;
   int age ;
public:
   void set( char nm[] , int ag ) {
      strcpy( name , nm ) ;
      age = ag ;
   }
   void print() {
      printf( "%s %d\n" , name , age ) ;
   }
} ;  // ← この行の「;」に要注意

int main() {
   Person tsaitoh ;
   // tsaitohに set して、
   tsaitoh.set( "t-saitoh" , 55 ) ;
   // tsaitohを print する。
   tsaitoh.print() ;
   return 0 ;
}

授業アンケート結果

年度末恒例の授業アンケートの結果。
コロナ禍の遠隔授業などもあったけど、どの科目も80ポイントは維持できました。



オブジェクト指向/2021/ガイダンス

専攻科2年のオブジェクト指向プログラミングの授業の1回目。

シラバスは、ここに示すように、最近のプログラミングの基本となっているオブジェクト指向について、その機能についてC++言語を用いて説明し、後半では対象(オブジェクト)をモデル化して設計するための考え方(UML)について説明する。

評価は、3つの課題と最終テストを各25%づつで評価を行う。

オブジェクト指向プログラミングの歴史

最初のプログラム言語のFortran(科学技術計算向け言語)の頃は、処理を記述するだけだったけど、 COBOL(商用計算向け言語)ができた頃には、データをひとまとめで扱う「構造体」(C言語ならstruct …}の考えができた。(データの構造化)

// C言語の構造体
struct Person { // 1人分のデータ構造をPersonとする
   char name[ 20 ] ;             // 名前
   int  b_year, b_month, b_day ; // 誕生日
} ;

一方、初期のFortranでは、プログラムの処理順序は、繰り返し処理も if 文と goto 文で記載し、処理がわかりにくかった。その後のALGOLの頃には、処理をブロック化して扱うスタイル(C言語なら{ 文 … }の複文で 記述する方法ができてきた。(処理の構造化)

      // ブロックの考えがない時代の雰囲気をC言語で表すと
      int i = 0 ;
LOOP: if ( i >= 10 ) goto EXIT ;
         if ( i % 2 != 0 ) goto NEXT ;
            printf( "%d " , i ) ;
NEXT:    i++ ;
      goto LOOP ;
EXIT:
      // C 言語で書けば
      int i ;
      for( i = 0 ; i < 10 ; i++ ) {
         if ( i % 2 == 0 ) {
            printf( "%d¥n" , i ) ;
         }
      }
      ! 構造化文法のFORTRANで書くと
      integer i
      do i = 0 , 9
        if ( mod( i , 2 ) == 0 ) then
          print * , i
        end if
      end do

このデータの構造化・処理の構造化により、プログラムの分かりやすさは向上し、このデータと処理をブロック化した書き方は「構造化プログラミング(Structured Programming)」 と呼ばれる。

この後、様々なプログラム言語が開発され、C言語などもできてきた。 一方で、シミュレーションのプログラム開発(例simula)では、 シミュレーション対象(object)に対して、命令するスタイルの書き方が生まれ、 データに対して命令するという点で、擬人法のようなイメージで直感的にも分かりやすかった。 これがオブジェクト指向プログラミング(Object Oriented Programming)の始まりとなる。略記するときは OOP などと書くことが多い。

この考え方を導入した言語の1つが Smalltalk であり、この環境では、プログラムのエディタも Smalltalk で記述したりして、オブジェクト指向がGUIのプログラムと親和性が良いことから、この考え方は多くのプログラム言語へと取り入れられていく。

C言語にこのオブジェクト指向を取り入れ、C++が開発される。さらに、この文法をベースとした、 Javaなどが開発されている。最近の新しい言語では、どれもオブジェクト指向の考えが使われている。

この授業の中ではオブジェクト指向プログラミングにおける、隠蔽化, 派生と継承, 仮想関数 などの概念を説明する。

構造体の導入

C++でのオブジェクト指向は、C言語の構造体の表記がベースになっているので、まずは構造体の説明。詳細な配布資料を以下に示す。

// 構造体の宣言
struct Person {      // Personが構造体につけた名前
   char name[ 20 ] ; // 要素1
   int  phone ;      // 要素2
} ;                  // 構造体定義とデータ構造宣言を
                     // 別に書く時は「;」の書き忘れに注意
// 構造体変数の宣言
struct Person saitoh ;
struct Person data[ 10 ] ;
// 実際にデータを参照 構造体変数.要素名
strcpy( saitoh.name , "t-saitoh" ) ;
saitoh.phone = 272925 ;
for( int i = 0 ; i < 10 ; i++ ) {
   scanf( "%d%s" , data[ i ].name , &(data[ i ].phone) ) ;
}

構造体に慣れていない人のための課題

  • 以下に、C言語の構造体を使った基本的なプログラムを示す。このプログラムでは、国語,算数,理科の3科目と名前の5人分のデータより、各人の平均点を計算している。このプログラムを動かし、以下の機能を追加せよ。レポートには プログラムリストと動作結果の分かる結果を付けること。
    • 国語の最低点の人を探し、名前を表示する処理。
    • 算数の平均点を求める処理。
#include <stdio.h>

struct Student {
  char name[ 20 ] ;
  int  kokugo ;
  int  sansu ;
  int  rika ;
} ;

struct Student table[5] = {
  // name ,      kokugo , sansu , rika                                          
  { "Aoyama" ,   56 ,     95 ,    83 } ,
  { "Kondoh" ,   78 ,     80 ,    64 } ,
  { "Saitoh" ,   42 ,     78 ,    88 } ,
  { "Sakamoto" , 85 ,     90 ,    36 } ,
  { "Yamagosi" ,100 ,     72 ,    65 } ,
} ;

int main() {
  int i = 0 ;
  for( i = 0 ; i < 5 ; i++ ) {
    double sum = table[i].kokugo + table[i].sansu + table[i].rika ;
    printf( "%-10.10s %3d %3d %3d %6.2lf\n" ,
            table[i].name , table[i].kokugo , table[i].sansu , table[i].rika ,
            sum / 3.0 ) ;
  }
  return 0 ;
}

オブジェクト指向プログラミング2020全講義録

専攻科2年オブジェクト指向プログラミングの2020年度の講義録の一覧

2020年度前期授業アンケート

情報構造論

情報構造論は通年科目なので、中間状況だけど、ひとまず80ポイント越え。1件だけ最低評価が並んでいるのが気がかり。不満のある人が積極的に質問してくれるといいのだが。

オブジェクト指向プログラミング

オブジェクト指向は、専攻科2年相手の前期科目。課題でやや不満が1件あるけど、難しかったのだろうか。設定が曖昧だったのだろうか。

情報制御基礎

情報制御基礎は、3年生の学際科目で全学科対象の授業。「テストの過去問題がWebに掲載してあり勉強しやすかった」といった趣旨の意見もあり、評価も高かった。

どの授業も、コロナによる遠隔授業であったが、例年 Web に掲載している講義資料をそのまま使い、Teams のWeb会議でMicrosoft Edge のペン書き機能を使いながら補足説明を書き込みしながら行なった。Web会議は録画しておき、オンデマンドで視聴できるようにしておいたので、コロナ遠隔授業といいながらも、授業の進め方は今まで通りにすすめたつもり。

オブジェクト指向のUML図

専攻科2年のオブジェクト指向プログラミングでは、レポート課題の最終テーマがUMLで自分の特別研究のテーマを表現する内容。
今年のレポートでは、なかなかいいUML図を書いてくる人が多かったので、メモ。


参照渡しを積極的に使う

オブジェクト指向のレポート課題を採点していると、若干きになることがあったので、補足説明。

複素数クラスのレポート課題で、add() などのメソッドが、私がサンプルコードで示したのがそうなっていたのが原因だと思うけど、以下のようなコードとなっている。

class Complex {
   // 略
public:
   void add( Complex z ) { re += z.re ; im += z.im ; }
   //        ~~~~~~~~~ 値渡し
} ;

処理速度の効率を考える場合は、以下のような参照型(参照渡し)を使うのが一般的。上記のような値渡しだと、機械語を生成する際には、実引数の複素数のコピーが行われるので、無駄な処理が発生しがち。参照型を使えば実引数をコピーする手間が不要なので、処理の無駄が省ける。(Complexのような簡単なクラスなら無駄というほどのものじゃないけど)

class Complex {
public:
   void add( const Complex &z ) { re += z.re ; im += z.im ; }
   //        定数型 ~~~~~~~~~~参照渡し
} ;

ただ、上記の参照型を使うと、addメソッドで、zの内部を書き換えるような間違った処理を記述してしまうと、add()の処理で実引数に副作用が発生する。このため、こういった書き間違いによる影響がないことを明示するために、上記のように、z に const 指定子を記載しておくのが一般的。const がついていれば、addメソッド内部で間違って、zを書き換えるような処理を記載しても、コンパイラが間違いを指摘してくれる。

オブジェクト指向とソフトウェア工学

オブジェクト指向プログラミングの最後の総括として、 ソフトウェア工学との説明を行う。

トップダウン設計とウォーターフォール型開発

ソフトウェア工学でプログラムの開発において、一般的なサイクルとしては、 専攻科などではどこでも出てくるPDCAサイクル(Plan, Do, Check, Action)が行われる。 この時、プログラム開発の流れとして、大企業でのプログラム開発では一般的に、 トップダウン設計とウォーターフォール型開発が行われる。

トップダウン設計では、全体の設計(Plan)を受け、プログラムのコーディング(Do)を行い、 動作検証(Check)をうけ、最終的に利用者に納品し使ってもらう(Action)…の流れで開発が行われる。設計の中身も機能仕様や動作仕様…といった細かなフェーズになることも多い。 この場合、コーディングの際に設計の不備が見つかり設計のやり直しが発生すれば、 全行程の遅延となることから、前段階では完璧な設計が必要となる。 このような、上位設計から下流工程にむけ設計する方法は、トップダウン設計などと呼ばれる。また、処理は前段階へのフィードバック無しで次工程へ流れ、 川の流れが下流に向かう状態にたとえ、ウォーターフォールモデルと呼ばれる。

引用:Think IT 第2回開発プロセスモデル

このウォーターフォールモデルに沿った開発では、横軸時間、縦軸工程とした ガントチャートなどを描きながら進捗管理が行われる。

引用:Wikipedia ガントチャート

一方、チェック工程(テスト工程)では、 要件定義を満たしているかチェックしたり、設計を満たすかといったチェックが存在し、 テストの前工程にそれぞれ対応した機能のチェックが存在する。 その各工程に対応したテストを経て最終製品となる様は、V字モデルと呼ばれる。

引用:@IT Eclipseテストツール活用の基礎知識

しかし、ウォーターフォールモデルでは、(前段階の製作物の不備は修正されるが)前段階の設計の不備があっても前工程に戻るという考えをとらないため、全体のPDCAサイクルが終わって次のPDCAサイクルまで問題が残ってしまう。巨大プロジェクトで大量の人が動いているだから、簡単に方針が揺らいでもトラブルの元にしかならないことから、こういった手法は大人数巨大プロジェクトでのやり方である。

ボトムアップ設計とアジャイル開発

少人数でプログラムを作っている時(あるいはプロトタイプ的な開発)には、 部品となる部分を完成させ、それを組合せて全体像を組み上げる手法もとられる。 この方法は、ボトムアップ設計と呼ばれる。このような設計は場当たり的な開発となる場合があり設計の見直しも発生しやすい。

また、ウォーターフォールモデルでは、前工程の不備をタイムリーに見直すことができないが、 少人数開発では適宜前工程の見直しが可能となる。 特にオブジェクト指向プログラミングを実践して隠蔽化が正しく行われていれば、 オブジェクト指向によるライブラリの利用者への影響を最小にしながら、ライブラリの内部設計の見直しも可能となる。 このような外部からの見た挙動を変えることなく内部構造の改善を行うことリファクタリングと呼ばれる。

一方、プログラム開発で、ある程度の規模のプログラムを作る際、最終目標の全機能を実装したものを 目標に作っていると、全体像が見えずプログラマーの達成感も得られないことから、 機能の一部分だけ完成させ、次々と機能を実装し完成に近づける方式もとられる。 この方式では、機能の一部分の実装までが1つのPDCAサイクルとみなされ、 このPDCAサイクルを何度も回して機能を増やしながら完成形に近づける方式とも言える。 このような開発方式は、アジャイルソフトウェア開発と呼ぶ。 一つのPDCAサイクルは、アジャイル開発では反復(イテレーション)と呼ばれ、 短い開発単位を繰り返し製品を作っていく。この方法では、一度の反復後の実装を顧客に見てもらい、 顧客とプログラマーが一体となって開発が行われる。

引用:コベルコシステム

エクストリームプログラミング

アジャイル開発を行うためのプログラミングスタイルとして、 エクストリームプログラミング(Xp)という考え方も提唱されている。 Xpでは、5つの価値(コミュニケーション,シンプル,フィードバック,勇気,尊重)を基本とし、 開発のためのプラクティス(習慣,実践)として、 テスト駆動開発(コーディングでは最初に機能をテストするためのプログラムを書き、そのテストが通るようにプログラムを書くことで,こまめにテストしながら開発を行う)や、 ペアプログラミング(2人ペアで開発し、コーディングを行う人とそのチェックを行う人で役割分担をし、 一定期間毎にその役割を交代する)などの方式が取られることが多い。

リーンソフトウェア開発は、品質の良いものを作る中で無駄の排除を目的とし、本当にその機能は必要かを疑いながら、優先順位をつけ実装し、その実装が使われているのか・有効に機能しているのかを評価ながら開発をすすめる。

伽藍(がらん)とバザール

これは、通常のソフトウェア開発の理論とは異なるが、重要な開発手法の概念なので「伽藍とバザール」を紹介する。

伽藍(がらん)とは、優美で壮大な寺院のことであり、その設計・開発は、優れた設計・優れた技術者により作られた完璧な実装を意味している。バザールは有象無象の人の集まりの中で作られていくものを意味している。

たとえば、伽藍方式の代表格である Microsoft の製品は、優秀なプロダクトだが、中身の設計情報などを普通の人は見ることはできない。このため潜在的なバグが見つかりにくいと言われている。

これに対しバザール方式の代表格の Linux は、インターネット上にソースコードが公開され、誰もがソースコードに触れプログラムを改良してもいい。その中で、新しい便利な機能を追加しインターネットに公開されれば、良いコードは生き残り、悪いコードは淘汰されていく。

バザール方式は、オープンソースライセンスにより成り立っていて、このライセンスが適用されていれば、改良した機能はインターネットに公開する義務を引き継ぐ。このライセンスの代表格が、GNU パブリックライセンス(GPL)であり、公開の義務の範囲により、BSD ライセンスApacheライセンスといった違いがある。

その他の構造図と振る舞い図

前回の講義で説明した構造図について、クラス図・オブジェクト図以外について改めて説明と、振る舞い図の説明。

構造図

構造図の主なものとして、クラス図、オブジェクト図以外に、

パッケージ図

パッケージ図は、クラス図をパッケージ毎に分類して記載する図。 パッケージのグループを、フォルダのような図で記載する。


IT専科から引用

コンポーネント図とコンポジット構造図

コンポジット構造図は、クラスやコンポーネントの内部構造を示すもので、コンポーネント図は、複数のクラスで構成される処理に、 インタフェースを用意し、あたかも1つのクラスのように扱ったもの。 接続するインタフェースを飴玉と飴玉を受けるクチのイメージで、提供側を◯───で表し、要求側を⊃──で表す。


IT専科から引用

配置図

配置図は、システムのハードウェア構成や通信経路などを表現するための図。 ハードウェアは直方体の絵で表現し、 デバイスの説明は、”≪device≫”などを示し、実行環境には、”≪executionEnvironment≫” などの目印で表現する。


IT専科から引用

振る舞い図

参考資料図をもとに振る舞い図の説明を行う。

ユースケース図

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ユーザなど外部からの要求に対する、システムの振る舞いを表現するための活用事例や機能を表す図がユースケース図。 システムを構築する際に、最初に記述するUMLであり、システムに対する処理要件の全体像や機能を理解するために記述する。 ユーザや外部のシステムは、アクターとよび人形の絵で示す。楕円でシステムに対する具体的な処理をユースケースとして楕円で記述する。 関連する複数のユースケースをまとめて、サブジェクトとして示す場合もある。

アクティビティ図

処理順序を記述するための図にはフローチャートがあるが、上から下に処理順序を記述するため、縦長の図になりやすい。また、四角枠の中に複雑なことを書けないので、UMLではアクティビティ図を用いる。

初期状態●から、終了状態◉までの手順を示すためのものがアクティビティ図。 フローチャートに無い表現として、複数の処理を並行処理する場合には、フォークノードで複数の処理を併記し、最終的に1つの処理になる部分をマージノードで示す。 通常の処理は、角丸の長方形で示し、条件分岐はひし形で示す。

ステートチャート図(状態遷移図)

ステートチャート図は、処理内部での状態遷移を示すための図。 1つの状態を長丸長方形で示し、初期状態●から終了状態◉までを結ぶ。 1つの状態から、なんらかの状態で他の状態に遷移する場合は、分岐条件となる契機(タイミング)とその条件、およびその効果(出力)を「契機[条件]/効果」で矢印に併記する。 複数の状態をグループ化して表す場合もある。

シーケンス図

複数のオブジェクトが相互にやり取りをしながら処理が進むようなもののタイミングを記述するためのものがシーケンス図。 上部の長方形にクラス/オブジェクトを示し、その下に縦軸にて時系列の処理の流れの線(Life Line)を描く。 オブジェクトがアクティブな状態は、縦長の長方形で示し、そのLife Line間を、やり取り(メッセージ)の線で相互に結ぶ。 メッセージは、相手側からの返答を待つような同期メッセージは、黒塗り三角矢印で示す。 返答を待たない非同期メッセージは矢印で示し、返答は破線で示す。

コミュニケーション図

クラスやオブジェクトの間の処理とその応答(相互作用)と関連の両方を表現する図。

応答を待つ同期メッセージは -▶︎、非同期メッセージは→で表す。複数のオブジェクト間のやりとりの相互作用を表現する。

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