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演算子と言語処理系

前回追加で説明した逆ポーランド記法などの説明を再掲したうえで、構文解析といった言語処理系の話を解説する。

逆ポーランド記法

一般的に 1*2 + 3*4 と記載すると、数学的には演算子の優先順位を考慮して、(1*2)+(3*4) のように乗算を先に行う。このような優先順位を表現する時に、()を使わない方法として、逆ポーランド記法がある。

演算子の書き方には、前置記法、中置記法、後置記法があり、後置記法は、「2と3を掛ける、それに1を加える」と捉えると、日本語の処理と似ている。

中置記法 1+2*3
前置記法 +,1,*,2,3
後置記法 1,2,3,*,+  # 1と「2と3をかけた値」をたす。

後置記法は、一般的に逆ポーランド記法(Reverse Polish Notation)とも呼ばれ、式を機械語の命令に置き換える際に役立つ。

演算子の右結合・左結合

例えば、”1/2*3″という式が与えられたとする。この結果は、1/6だろうか?3/2だろうか?

一般的な数学では、優先順位が同じ演算子が並んだ場合、左側から計算を行う。つまり”1/2*3″は、”(1/2)*3″を意味する。こういった左側の優先順位が高い演算子は左結合の演算子という。

ただしC言語では、”a = b = c = 0″ と書くと、”a = (b = (c = 0))” として扱われる。こういった代入演算子は、 右結合の演算子である。

理解度確認

以下の式を指定された書き方で表現せよ。

逆ポーランド記法 1,2,*,3,4,*,+ を中置記法で表現せよ。
中置記法 (1+2)*3-4*5 を逆ポーランド記法で表現せよ。

以前の情報処理技術者試験では、スタックの概念の理解の例題として、逆ポーランド記法への変換アルゴリズムのプログラム作成が出題されることが多かったが、最近は出題されることはなくなってきた。

逆ポーランド記法の式の実行

この逆ポーランド記法で書かれた式から結果を求めるプログラムは以下のように記述できる。このプログラムでは式を簡単にするため、数値は1桁の数字のみとする。

// 単純な配列を用いたスタック
int stack[ 10 ] ;
int sp = 0 ;

void push( int x ) {
   stack[ sp++ ] = x ;
}
int pop() {
   return stack[ --sp ] ;
}

// 逆ポーランド記法の計算
int rpn( char* p ) {
   for( ; *p != '
// 単純な配列を用いたスタック
int stack[ 10 ] ;
int sp = 0 ;

void push( int x ) {
   stack[ sp++ ] = x ;
}
int pop() {
   return stack[ --sp ] ;
}

// 逆ポーランド記法の計算
int rpn( char* p ) {
   for( ; *p != '\0' ; p++ ) {
      if ( isdigit( *p ) ) {
         //         ~~(A)
         // 数字はスタックに積む
         push( *p - '0' ) ;
         //    ~~~~~~~~(B)
      } else if ( *p == '+' ) {
         // 演算子+は上部2つを取出し
         int r = pop() ;
         int l = pop() ;
         // 加算結果をスタックに積む
         push( l + r ) ;
      } else if ( *p == '*' ) {
         // 演算子*は上部2つを取出し
         int r = pop() ;
         int l = pop() ;
         // 乗算結果をスタックに積む
         push( l * r ) ;
      }//~~~~~~~~~~~~~(C)
   }
   // 最終結果がスタックに残る
   return pop() ;
}

void main() {
   printf( "%d\n" , rpn( "123*+" ) ) ;
}
' ; p++ ) { if ( isdigit( *p ) ) { // ~~(A) // 数字はスタックに積む push( *p - '0' ) ; // ~~~~~~~~(B) } else if ( *p == '+' ) { // 演算子+は上部2つを取出し int r = pop() ; int l = pop() ; // 加算結果をスタックに積む push( l + r ) ; } else if ( *p == '*' ) { // 演算子*は上部2つを取出し int r = pop() ; int l = pop() ; // 乗算結果をスタックに積む push( l * r ) ; }//~~~~~~~~~~~~~(C) } // 最終結果がスタックに残る return pop() ; } void main() { printf( "%d\n" , rpn( "123*+" ) ) ; }

逆ポーランド記法の式の実行は、上記のようにスタックを用いると簡単にできる。このようなスタックと簡単な命令で複雑な処理を行う方法はスタックマシンと呼ばれる。Java のバイトコードインタプリタもこのようなスタックマシンである。

Cプログラママニア向けの考察

上記のプログラムでは、int r=pop();…push(l+r); で記載しているが、

push( pop() + pop() ) ;

とは移植性を考慮して書かなかった。理由を述べよ。

最初の関数電卓

初期の関数電卓では複雑な数式を計算する際に、演算子の優先順位を扱うのが困難であった。このため、HP社の関数電卓では、式の入力が RPN を用いていた。(HP-10Cシリーズ)

コンパイラと言語処理系

2分木の応用の構文木について、この後説明を行うが、構文木を使うコンパイラなどの一般知識を事前に説明しておく。

高級言語で書かれたプログラムを計算機で実行するソフトウェアは、言語処理系と呼ばれる。その実行形式により

  • インタプリタ(interpreter:通訳)
    • ソースプログラムの意味を解析しながら、その意味に沿った処理を行う
  • コンパイラ(compiler:翻訳)
    • ソースプログラムから機械語を生成し、実行する際には機械語を実行
  • トランスコンパイラ
    • ソースから他の言語のソースコードを生成し、それをさらにコンパイルし実行
      最初のC++の実装(Cfront)では、C++をトランスレータにかけてC言語を生成し、C言語のコンパイラで動かしていた。
  • バイトコードインタプリタ
    • ソースからバイトコード(機械語に近いコードを生成)、実行時にはバイトコードの命令に沿った処理を行う
  • エミュレーター
    • 異なるCPUのコンピュータで、システムの動作や機能を模倣して動かすシステム。
      近々の例であれば、AppleのARMベースM1チップで intel CPU の動きを真似て動作させる Rosetta2 がトピック。パソコンで古いファミコンのソフトを動かすといった技術もエミュレータ。

      • 同じCPUで異なるOSを動かす場合は、CPU仮想化。

に分けられる。

C言語で機械語が生成されるまで

C言語のプログラムから、機械語の命令が生成されるまでは、以下のような処理が行われる。
一般的にコンパイラの処理というと、ソースコードから機械語を生成するまでの処理を指すが、C言語ではプリプロセッサ処理を含んだり、コンパイラの処理(ソースコードからオブジェクトファイル生成まで)のほかにリンク処理を含んで使われることも多い。

foo.c C言語のソース
↓     プリプロセッサ処理                cpp
foo.c(#行の無いC言語のソース)
↓     コンパイラ                       gcc
foo.obj(オブジェクトファイル/中間コード)  unix系では foo.o
↓
(+) ← ライブラリ(scanf,printfなどの組み込み関数などをまとめたもの)
↓     リンカ(リンケージエディタ)          ld
foo.exe

コンパイラの処理

コンパイラが命令を処理する際には、以下の処理が行われる。

  1. 字句解析(lexical analysys)
    文字列を言語要素(token)に分解
  2. 構文解析(syntax analysys)
    tokenの並び順に意味を反映した構造を生成
  3. 意味解析(semantics analysys)
    命令に合わせた中間コードを生成
  4. 最適化(code optimization)
    中間コードを変形して効率よいプログラムに変換
  5. コード生成(code generation)
    実際の命令コード(オブジェクトファイル)として出力

バイトコードインタプリタとは

例年だと説明していなかったけど最近利用されるプログラム言語の特徴を説明。

通常、コンパイラとかインタプリタの説明をすると、Java がコンパイラとか、JavaScript はインタプリタといった説明となる。しかし、最近のこういった言語がどのように処理されるのかは、微妙である。

(( Java の場合 ))
foo.java (ソースコード)
 ↓       Java コンパイラ
foo.class (中間コード)
 ↓
JRE(Java Runtime Engine)の上で
中間コードをインタプリタ方式で実行

あらかじめコンパイルされた中間コードを、JREの上でインタプリタ的に実行するものは、バイトコードインタプリタ方式と呼ぶ。

ただし、JRE でのインタプリタ実行では遅いため、最近では JIT コンパイラ(Just-In-Time Compiler)により、中間コードを機械語に変換してから実行する。

また、JavaScriptなどは(というか最近のインタプリタの殆どPython,PHP,Perl,…は)、一般的にはインタプリタに分類されるが、実行開始時に高級言語でかかれたコードから中間コードを生成し、そのバイトコードをインタプリタ的に動かしている。

しかし、インタプリタは、ソースコードがユーザの所に配布されて実行するので、プログラムの内容が見られてしまう。プログラムの考え方が盗まれてしまう。このため、変数名を短くしたり、空白を除去したり(…部分的に暗号化したり)といった難読化を行うのが一般的である。

トークンと正規表現(字句解析)

字句解析でトークンを表現するために、規定されたパターンの文字列を表現する方法として、正規表現(regular expression)が用いられる。

((正規表現の書き方))
選言     「abd|acd」は、abd または acd にマッチする。
グループ化 「a(b|c)d」は、真ん中の c|b をグループ化
量化    パターンの後ろに、繰り返し何回を指定
      ? 直前パターンが0個か1個
       「colou?r」
      * 直前パターンが0個以上繰り返す
       「go*gle」は、ggle,gogle,google
      + 直前パターンが1個以上繰り返す
       「go+gle」は、gogle,google,gooogle

正規表現は、sed,awk,Perl,PHPといった文字列処理の得意なプログラム言語でも利用できる。こういった言語では、以下のようなパターンを記述できる。

[文字1-文字2...] 文字コード1以上、文字コード2以下
      「[0-9]+」012,31415,...数字の列
^     行頭にマッチ
$     行末にマッチ
((例))
[a-zA-Z_][a-zA-Z_0-9]* C言語の変数名にマッチする正規表現

構文とバッカス記法

言語の文法(構文)を表現する時、バッカス記法(BNF)が良く使われる。

((バッカス記法))
<表現> ::= <表現1...> | <表現2...> | <表現3...> | ... ;

例えば、加減乗除記号と数字だけの式の場合、以下の様なBNFとなる。

((加減乗除式のバッカス記法))
<加算式> ::= <乗算式> '+' <乗算式>    【要注意】わざと間違っている部分あり
          | <乗算式> '-' <乗算式>
          | <乗算式>
          ;
<乗算式> ::= <数字> '*' <乗算式>
          | <数字> '/' <乗算式>
          | <数字>
          ;
<数字>   ::= [0-9]+
          ;

上記のバッカス記法には、間違いがある。”1+2+3″を正しく認識できない。どこが間違っているだろうか?

このような構文が与えられた時、”1+23*456″と入力されたものを、“1,+,23,*,456”と区切る処理が、字句解析である。

また、バッカス記法での文法に合わせ、以下のような構文木を生成するのが構文解析である。

  +
 / \
1   *
   / \
  23   456

理解度確認

  • インタプリタ方式で、処理速度が遅い以外の欠点をあげよ。
  • 情報処理技術者試験の正規表現,BNF記法問題にて理解度を確認せよ。
  • ソースプログラムがコンパイラにより機械語が生成されるまでの処理について説明せよ。

GROUP BY HAVINGとビューテーブル

GROUP BY HAVING

GROUP BY-HAVING では、指定されたカラムについて同じ値を持つレコードがグループ化される。SELECT 文に指定される集約関数は、グループごとに適用される。HAVING は、ある条件を満たす特定のグループを選択するための条件で、WHERE と違い、集約関数が使える。

SELECT SG.商品番号, SUM(SG.在庫量)
  FROM SG
  GROUP BY SG.商品番号 HAVING SUM(SG.在庫量) >= 500 ;

このSQLを実行すると、SG のテーブルから、商品番号が同じものだけをあつめてグループ化される。そのグループごとに在庫量のデータの合計SUMを集約し、500以上のデータが出力される。

業者番号 商品番号 在庫量
S1 G1 300
S1 G2 200
S1 G3 400
S1 G4 200
S1 G5 100
S1 G6 100
S2 G1 300
S2 G2 400
S3 G2 200
S4 G2 200
S4 G4 300
S4 G5 400

※業者番号順
 ⇒
業者番号 商品番号 在庫量 SUM(SG.在庫量)
S1 G1 300 600
(≧500)
S2 G1 300
S2 G2 400 1000
(≧500)
S3 G2 200
S1 G2 200
S4 G2 200
S1 G3 400 400
S1 G4 200 500
(≧500)
S4 G4 300
S1 G5 100 500
(≧500)
S4 G5 400
S1 G6 100 100

※商品番号でグループ化
 ⇒
商品番号 SUM(SG.在庫量)
G1 600
G2 1000
G4 500
G5 500

※抽出結果

CREATE VIEW

今までで述べてきたSQLでは、実際のテーブルを対象に、結合・選択・射影を行う命令であり、これは概念スキーマと呼ばれる、対象となるデータベース全体を理解したプログラマによって扱われる。

しかし、プログラムの分業化を行い、例えば結果の表示だけを行うプログラマにしてみれば、全てのデータベースの表を考えながらプログラムを作るのは面倒である。そこで、結合・選択・射影の演算の結果で、わかりやすい単純な表となったものであれば、初心者のデータベースプログラマでも簡単に結果を扱うことができる。このような外部スキーマを構成するための機能が、ビューテーブルである。

-- 優良業者テーブルを作る --
CREATE VIEW 優良業者 ( 業者番号 , 優良度 , 所在 )
    AS SELECT S.業者番号, S.優良度, S.所在
         FROM S
         WHERE S.優良度 >= 15 ;

-- 優良業者テーブルから情報を探す --
SELECT *
  FROM 優良業者
  WHERE 優良業者.所在 = '福井' ;

-- 文房具データベース --
CREATE VIEW 文房具データベース ( 業者名 , 商品名 , 在庫量 )
    AS SELECT S.業者名, G.商品名, SG.在庫量
         FROM S, SG, G
         WHERE S.業者番号 = SG.業者番号 and SG.商品番号 = G.商品番号 ;

ビューテーブルに対する SQL を実行すると、システムによっては予め実行しておいた CREATE VIEW の AS 以下の SQL の実行結果をキャッシュしておいて処理を行うかもしれない。システムによっては SQL の命令を 副クエリを組合せた SQL に変換し、処理を行うかもしれない。しかし、応用プログラマであれば、その SQL がどのように実行されるかは意識する必要はほとんど無いであろう。

ただし、ビューテーブルに対する 挿入・更新・削除といった演算を行うと、データによっては不整合が発生することもあるので注意が必要である。

SQL言語

教科書の流れに沿ってSQLの言語について、再掲

  • スキーマ定義
    • CREATE – 実テーブル、ビューテーブルの定義
    • GRANT – 権限の定義
  • スキーマ操作
    • DROP – 実テーブル、ビューテーブルの削除
    • REVOKE – 権限の削除
    • ALTER – テーブルの変更
    • ADD – カラムの追加
  • データ操作
    • SELECT, INSERT, DELETE, UPDATE – レコードの検索、追加・削除・更新
    • トランザクション処理
      • データベースでは、原子性などを満たすためにデータベースへの更新履歴を保持している。これらの更新履歴をデータベースに反映させ確定する処理がトランザクション処理。
      • COMMIT – データベースの更新処理を確定
      • ROLLBACK – データベースの更新処理を取り消す

ホスト言語とのインタフェースとSQLインジェクション

プログラミング言語によっては、その言語の中でSQLを使うために「組み込み型のSQL」が使えるものがある。
(COBOL,PL/Iなど)

動的メモリ管理が得意な最近のPythonやPHPなどの言語であれば、データベース参照の関数が利用できる。

SQLインジェクション

例えば、PHPでは、SQLからデータを取り出す処理は、以下のようになる。

// 検索するユーザID
$id = "t-saitoh" ;
$pdo = new PDO( '...' ) ; // データベースに接続する関数
$sql = "select name from usertable where id='$id'" ;
$query = $pdo->prepare( $sql ) ;

// 取り出せたデータに関する処理 id がプライマリキーならforeachは1回ループのはず
foreach( $query->fetcAll() as $name ) {
   // $name に取り出した名前が入っている
} 

しかし、$id の部分を、Web の入力フォームなどの値であれば、名前以外の情報が入力される場合もある。

この際に、「 $id = ” ‘ or 1==1 — ‘ ” 」といった値が入っていた場合、SQLで実行される命令は、

$id = "' or 1==1 --'" の場合
$sql = "select name from usertable where id='' or 1==1 -- ''" ;

となってしまい、本来なら1人のデータを抽出する select 命令が、全テーブルに対して該当してしまい、情報漏洩が発生するかもしれない。

「 $id = “‘; drop usertable ; — ‘” 」であれば、usertable が消されてしまい、システムが動かなくなる(サービスを提供できなくする攻撃 = DoS攻撃 – Denial-of-service attack)ことも考えられる。

他にもSQLインジェクションを使う技がある。こちらの CTF の WriteUp などが参考になる。

こういった攻撃手法は、SQLに本来の意図ではないSQL命令を紛れ込ませる攻撃ということで、SQLインジェクションという。

SQLインジェクションで発生した有名な事件では、以下のようなものがある。

対策としては、ユーザが入力したデータを用いて SQL 命令を実行する場合は、ユーザ入力をSQLとして悪用されないように、シングルクオートなどをエスケープするなどの処理が必要となる。さまざまな手法があるので、SQL無効化の専用関数を用いるべき。

また、データベースシステムは、ネットワーク経由でSQLによる処理を行うが、データベースサーバ自体がインターネットに接続されていて、パスワード攻撃によりデータベース本体に不正アクセスが行われる場合もある。一般的なデータベースを用いたシステムは、フロントエンドのWebサーバ、スレーブDBサーバ、マスタDBサーバの三層構成をとることが多いが、バックエンドのデータベースは、インターネットから隔離しフロントエンドのWebサーバのみ接続できるようにするのが一般的である。

データベースに接続する場合はパスワードにより利用者を限定することができるが、データベースシステム自体がインターネットに接続されていると、パスワード総当たり攻撃(ブルートフォース攻撃)や、パスワードスプレー攻撃(総当たり攻撃は、短時間でパスワード失敗が多発するのでシステムで接続拒否するのが一般的。これを回避するために時間をかけて総当たり攻撃をする手法)により、情報漏洩が発生する。

AVLと意思決定木と演算子

前回、2分探索木へのデータ追加の説明と、演習課題を行っていたが、演習時間としては短いので、今日も前半講義で残り時間は演習とする。

2分探索木へのデータ追加と不均一な木の成長

先週の講義で説明していた、entry() では、データを追加すべき末端を探し、追加する処理であった。

しかし、前回のプログラムで、以下のような順序でデータを与えたら、どのような木が出来上がるであろうか?

  • 86, 53, 11 – 降順のデータ
  • 12, 24, 42 – 昇順のデータ

この順序でデータが与えられると、以下のような木が出来上がってしまう。このような木では、データを探しても1回の比較でもデータ件数が1つ減るだけで、O(N)となってしまう。通常のデタラメな順序でデータが与えられれば、木はほぼ左右均等に成長するはずである。

AVL木

このような、不均一な木が出来上がっても、ポインタの繋ぎ変えで検索回数を改善できる。例えば、以下のような木では、赤の左側に偏っている。(赤の左の枝は深さ=3段、青の枝は深さ=1段)

このような場合でも、最初、青の状態であっても、不均一な部分で赤のようなポインタの繋ぎ変えを行えば、2分探索木の要件を満たしたまま、木の段数を均一に近づけることができる。この例では、11,65,92の木が、右回転して 11 の木の位置が上がっている。(右回転)

この様に、左右の枝の大きさが不均一な場所を見つけ、右回転や左回転を行う処理を繰り返すことで、段数が均一な2分探索木に修正ができる。この様な処理でバランスの良い木に修正された木は、AVL木と呼ばれる。

理解確認

  • 木の根からの段数を求める関数 tree_depth() を作成せよ。
    例えば、上のAVL木の説明の図であれば、4段なので4を返すこと。
// 木の段数を数える関数
_____ tree_depth( _______________ p ) {
   if ( p == NULL ) {
      return _____ ;
   } else {
      int d_L = ______________ ;
      int d_R = ______________ ;
      if ( d_L > d_R )
         return _____ ;
      else
         return _____ :
   }
}

// pをつなぎ替え上部を返り値で返す。
struct Tree*rot_right( struct Tree* p ) {
   struct Tree* pl = p->left ;
   struct Tree* pr = pl->right ;
   pl->right = p ;
   p->left = = pr ;
   return pl ;
}
int main() {
   printf( "%d¥n" , tree_depth( top ) ) ;
   top = rot_right( top ) ;
   return 0 ;
}

ここまで2分探索木に関連したデータ構造の説明をしてきたが、このデータ構造は他のデータを扱う際にも用いられる。ここで、意思決定木を紹介する。

意思決定木

意思決定木の説明ということで、yes/noクイズの例を示しながら、2分木になっていることを 説明しプログラムを紹介。

   ((意思決定木の例:小さい子供が発熱した時))
       38.5℃以上の発熱がある?
      no/         \yes
   元気がある?        むねがひいひい?
 yes/    \no      no/     \yes
様子をみる 氷枕で病院  解熱剤で病院  速攻で病院

このような判断を行うための情報は、yesの木 と noの木の2つの枝を持つデータである。これは2分木と同じである。左右に枝のあるものは質問であり、yesの枝もnoの枝もない末端は最終決断を表す。このようなデータ構造は意思決定木と呼ばれ、質問と決断の処理は以下のように記述ができる。

struct Tree {
   char *qa ;
   struct Tree* yes ;
   struct Tree* no ;
} ;
struct Tree* dtree( char *s ,
                    struct Tree* l , struct Tree* r )
{  struct Tree* n ;
   n = (struct Tree*)malloc( sizeof( struct Tree ) ) ;
   if ( n != NULL ) {
      n->qa = s ;
      n->yes = l ;
      n->no = r ;
   }
   return n ;
}
void main() {
   struct Tree* p =
      dtree( "38.5℃以上の発熱がある?" ,
             dtree( "胸がひぃひぃ?" ,
                    dtree( "速攻で病院",  NULL,NULL ) ,
                    dtree( "解熱剤で病院",NULL,NULL ) ) ,
             dtree( "元気がある?" ,
                    dtree( "様子をみる",  NULL,NULL ) ,
                    dtree( "氷枕で病院",  NULL,NULL ) ) ) ;
   // 決定木をたどる
   struct Tree* d = p ;
   while( d->yes != NULL || d->no != NULL ) {
      printf( "%s¥n" , d->qa ) ;
      scanf( "%d" , &ans ) ;
      // 回答に応じてyes/noの枝に進む。
      if ( ans == 1 )      // yesを選択
         d = d->yes ;
      else if ( ans == 0 ) // noを選択
         d = d->no ;
   }
   // 最終決定を表示
   printf( "%s¥n" , d->qa ) ;
}

2分木の応用として式の表現の説明を行うけど、その前に計算式の一般論の説明を行う。

逆ポーランド記法

一般的に 1*2 + 3*4 と記載すると、数学的には演算子の優先順位を考慮して、(1*2)+(3*4) のように乗算を先に行う。このような優先順位を表現する時に、()を使わない方法として、逆ポーランド記法がある。

演算子の書き方には、前置記法、中置記法、後置記法があり、後置記法は、「2と3を掛ける、それに1を加える」と捉えると、日本語の処理と似ている。

中置記法 1+2*3
前置記法 +,1,*,2,3
後置記法 1,2,3,*,+  # 1と「2と3をかけた値」をたす。

後置記法は、一般的に逆ポーランド記法(Reverse Polish Notation)とも呼ばれ、式をコンピュータで実行する際の処理と似ている。

演算子の右結合・左結合

例えば、”1/2*3″という式が与えられたとする。この結果は、1/6だろうか?3/2だろうか?

一般的な数学では、優先順位が同じ演算子が並んだ場合、左側から計算を行う。つまり”1/2*3″は、”(1/2)*3″を意味する。こういった左側の優先順位が高い演算子は左結合の演算子という。

ただしC言語では、”a = b = c = 0″ と書くと、”a = (b = (c = 0))” として扱われる。こういった代入演算子は、 右結合の演算子である。

理解度確認

以下の式を指定された書き方で表現せよ。

逆ポーランド記法 1,2,*,3,4,*,+ を中置記法で表現せよ。
中置記法 (1+2)*3-4*5 を逆ポーランド記法で表現せよ。

以前の情報処理技術者試験では、スタックの概念の理解の例題として、逆ポーランド記法への変換アルゴリズムのプログラム作成が出題されることが多かったが、最近は出題されることはなくなってきた。

UMLについて(ソフトウェア工学)

UML(Unified Modeling Language)記法が生まれるまで

巨大なプロジェクトでプログラムを作る場合、対象となるシステムを概念として表現する場合、オブジェクト指向分析(OOA: Object Oriented Analysis)オブジェクト指向設計(OOD: Object Oriented Design)とよばれるソフトウェア開発方法が重要となる。(総称して OOAD – Object Oriented Analysis and Design)

これらの開発方法をとる場合、(1)自分自身で考えを整理したり(2)グループで設計を検討したり(3)ユーザに仕様を説明したりといった作業が行われる。この時に、自分自身あるいはチームメンバーあるいはクライアントに直感的に図を用いて説明する。この時の図の書き方を標準化したものが UML であり、(a)処理の流れを説明するための振る舞い図(以前であればフローチャートやPAD)と、(b)データ構造を説明するための構造図を用いる。

UMLは、ランボーによるOMT(Object Modeling Technique どちらかというとOOA中心)と、 ヤコブソンによるオブジェクト指向ソフトウェア工学(OOSE)を元に1990年頃に 発生し、ブーチBooch法(どちらかというとOOD中心)の考えをまとめ、 UML(Unified Modeling Language)としてでてきた。

UMLでよく使われる図を列記すると、以下の物が挙げられる。

  • 構造図
    • クラス図
    • コンポーネント図
    • 配置図
    • オブジェクト図
    • パッケージ図
  • 振る舞い図
    • アクティビティ図
    • ユースケース図
    • ステートチャート図(状態遷移図)
    • 相互作用図
    • シーケンス図
    • コミュニケーション図(コラボレーション図)

UMLを正しく使うことができるようになれば、UMLで仕様書を書けばそれがそのままプログラムになることが理想的な姿かもしれない。ソフトウェア開発やソフトウェアの保守にソフトウェアツールを利用することは、CASE(Computer Aided Software Engineering)と呼ばれ、そのようなツールをCASEツールと呼ぶ。地元福井の永和システムマネジメントでは、astar* というCASEツールを開発している。


UMLの構造図の書き方の説明。 詳しくは、参考ページのUML入門などが、分かりやすい。

クラス図

クラス図は、構造図の中の基本的な図で、 枠の中に、上段:クラス名、中段:属性(要素)、下段:メソッド(関数)を記載する。 属性やメソッドの可視性を示す場合は、”-“:private、”+”:public、”#”:protected 可視性に応じて、”+-#”などを記載する。

関連

クラスが他のクラスと関係がある場合には、その関係の意味に応じて、直線や矢印で結ぶ。
(a)関連(association):単純に関係がある場合、
(b)集約(aggregation):部品として持つが、弱い結びつき。関係先が消滅しても別に存在可能。(has-a)
(c)コンポジション(composition):部品として持つが強い結びつき。関係先と一緒に消滅。(has-a)
(d)依存(dependency):依存関係にあるだけ
(e)派生(generalization):派生・継承した関係(is-a)
(f)実現(realization): Javaでのinterfaceによる多重継承

上図の例では、乗り物クラスVehicleから自動車Carが派生し(CarからVehicleへの三角矢印―▷)、 自動車は、エンジン(Engine)を部品として持つ(EngineからCarへのひし形矢印―◆)。エンジンは車体と一緒に廃棄なら、コンポジション(C++であれば部品の実体を持つ)で実装する。

自動車は、同じく車輪(Wheel)を4つ持つが、自動車を廃棄してもタイヤは別に使うかもしれないので、集約(部品への参照を持つ)で実装する(WheelからCarへのひし形矢印―◇)。 集約で実装する場合は、C++などであれば、ポインタで部品を持ち、部品の廃棄(delete)は、別に行うことになる。

Javaなどのプログラム言語では、オブジェクトはデータの実体へのポインタで扱われるため、コンポジションと集約を区別して表現することは少ない。

is-a 、has-a の関係

前の課題でのカモノハシクラスで、羽や足の情報をどう扱うべきかで、悩んだ場合と同じように、 クラスの設計を行う場合には、部品として持つのか、継承として機能を持つのか悩む場合がある。 この場合には、“is-a”の関係“has-a”の関係で考えると、部品なのか継承なのか判断しやすい。

たとえば、上の乗り物(Vehicle)クラスと、車(Car)のクラスは、”Car is-a Vehicle” といえるので、is-a の関係。 “Car is-a Engine”と表現すると、おかしいことが判る。 車(Car)とエンジン(Engine)のクラスは、”Car has-a Engine”といえるので、has-a の関係となる。 このことから、CarはVehicleからの派生であり、Carの属性としてEngineを部品として持つ設計となる。

オブジェクト図

クラス図だけで表現すると、複雑なクラス関係では、イメージが分かりづらい場合がでてくる。 この場合、具体的な値を図に書き込んだオブジェクトで表現すると、説明がしやすい場合がある。 このように具体的な値で記述するクラス図は、オブジェクト図と言う。 書き方としては、クラス名の下に下線を引き、中段の属性の所には具体的な値を書き込んで示す。

パッケージ図

パッケージ図は、クラス図をパッケージ毎に分類して記載する図。 パッケージのグループを、フォルダのような図で記載する。


IT専科から引用

コンポーネント図とコンポジット構造図

コンポジット構造図は、クラスやコンポーネントの内部構造を示すもので、コンポーネント図は、複数のクラスで構成される処理に、 インタフェースを用意し、あたかも1つのクラスのように扱ったもの。 接続するインタフェースを飴玉と飴玉を受けるクチのイメージで、提供側を◯───で表し、要求側を⊃──で表す。


IT専科から引用

配置図

配置図は、システムのハードウェア構成や通信経路などを表現するための図。 ハードウェアは直方体の絵で表現し、 デバイスの説明は、”≪device≫”などを示し、実行環境には、”≪executionEnvironment≫” などの目印で表現する。


IT専科から引用

振る舞い図

参考資料をもとに振る舞い図の説明を行う。

ユースケース図

1507131131_211x192.png

ユーザなど外部からの要求に対する、システムの振る舞いを表現するための活用事例や機能を表す図がユースケース図。 システムを構築する際に、最初に記述するUMLであり、システムに対する処理要件の全体像や機能を理解するために記述する。 ユーザや外部のシステムは、アクターとよび人形の絵で示す。楕円でシステムに対する具体的な処理をユースケースとして楕円で記述する。 関連する複数のユースケースをまとめて、サブジェクトとして示す場合もある。

アクティビティ図

処理順序を記述するための図にはフローチャートがあるが、上から下に処理順序を記述するため、縦長の図になりやすい。また、四角枠の中に複雑なことを書けないので、UMLではアクティビティ図を用いる。

初期状態●から、終了状態◉までの手順を示すためのものがアクティビティ図。 フローチャートに無い表現として、複数の処理を並行処理する場合には、フォークノードで複数の処理を併記し、最終的に1つの処理になる部分をマージノードで示す。 通常の処理は、角丸の長方形で示し、条件分岐はひし形で示す。

ステートチャート図(状態遷移図)

ステートチャート図は、処理内部での状態遷移を示すための図。 1つの状態を長丸長方形で示し、初期状態●から終了状態◉までを結ぶ。 1つの状態から、なんらかの状態で他の状態に遷移する場合は、分岐条件となる契機(タイミング)とその条件、およびその効果(出力)を「契機[条件]/効果」で矢印に併記する。 複数の状態をグループ化して表す場合もある。

シーケンス図

複数のオブジェクトが相互にやり取りをしながら処理が進むようなもののタイミングを記述するためのものがシーケンス図。 上部の長方形にクラス/オブジェクトを示し、その下に縦軸にて時系列の処理の流れの線(Life Line)を描く。 オブジェクトがアクティブな状態は、縦長の長方形で示し、そのLife Line間を、やり取り(メッセージ)の線で相互に結ぶ。 メッセージは、相手側からの返答を待つような同期メッセージは、黒塗り三角矢印で示す。 返答を待たない非同期メッセージは矢印で示し、返答は破線で示す。

コミュニケーション図

クラスやオブジェクトの間の処理とその応答(相互作用)と関連の両方を表現する図。

応答を待つ同期メッセージは -▶︎、非同期メッセージは→で表す。複数のオブジェクト間のやりとりの相互作用を表現する。

タイミング図

タイミング図は、クラスやオブジェクトの時間と共に状態がどのように遷移するのかを表現する図。

状態変化の発生するタイミングや、時間的な遅れや時間的な制約を図で明記するために使われる。

オブジェクト指向プログラミング(ソフトウェア工学)

オブジェクト指向プログラミングは、最近の多くのプログラム言語で取り入れられている機能。

今回は、構造化プログラミングオブジェクト指向(クラス,メソッド)、コンストラクタ派生継承仮想関数の概念を紹介する。

オブジェクト指向プログラミングの歴史

最初のプログラム言語のFortran(科学技術計算向け言語)の頃は、処理を記述するだけだったけど、 COBOL(商用計算向け言語)ができた頃には、データをひとまとめで扱う「構造体」(C言語ならstruct {…}の考えができた。(データの構造化)

// C言語の構造体 // データの構造化
struct Person { // 1人分のデータ構造をPersonとする
   char name[ 20 ] ;             // 名前
   int  b_year, b_month, b_day ; // 誕生日
} ;

一方、初期のFortranでは、プログラムの処理順序は、if 文と goto 文で組み合わせて書くこと多く、処理がわかりにくかった。その後のALGOLの頃には、処理をブロック化して扱うスタイル(C言語なら{ 文 … }の複文で 記述する方法ができてきた。(処理の構造化)

      // ブロックの考えがない時代の雰囲気をC言語で表すと
      int i = 0 ;
LOOP: if ( i >= 10 ) goto EXIT ;
         if ( i % 2 != 0 ) goto NEXT ;
            printf( "%d " , i ) ;
NEXT:    i++ ;
      goto LOOP ;   // 処理の範囲を字下げ(インデント)で強調
EXIT:
--------------------------------------------------- 
      // C 言語で書けば
      int i ;
      for( i = 0 ; i < 10 ; i++ ) { // 処理の構造化
         if ( i % 2 == 0 ) {
            printf( "%d¥n" , i ) ;
         }
      }
---------------------------------------------------
      ! 構造化文法のFORTRANで書くと
      integer i
      do i = 0 , 9
        if ( mod( i , 2 ) == 0 ) then
          print * , i
        end if
      end do

このデータの構造化・処理の構造化により、プログラムの分かりやすさは向上し、このデータと処理をブロック化した書き方は「構造化プログラミング(Structured Programming)」 と呼ばれる。

この後、様々なプログラム言語が開発され、C言語などもできてきた。 一方で、シミュレーションのプログラム開発(例simula)では、 シミュレーション対象(object)に対して、命令するスタイルの書き方が生まれ、 データに対して命令するという点で、擬人法のようなイメージで直感的にも分かりやすかった。 これがオブジェクト指向プログラミング(Object Oriented Programming)の始まりとなる。略記するときは OOP などと書くことが多い。

この考え方を導入した言語の1つが Smalltalk であり、この環境では、プログラムのエディタも Smalltalk で記述したりして、オブジェクト指向がGUIのプログラムと親和性が良いことから、この考え方は多くのプログラム言語へと取り入れられていく。

C言語にこのオブジェクト指向を取り入れ C++ が開発される。さらに、この文法をベースとした Java などが開発されている。最近の新しい言語では、どれもオブジェクト指向の考えが使われている。

クラスの導入(構造体でオブジェクト指向もどき)

例えば、名前と年齢の構造体で処理を記述する場合、 以下の様な記載を行うことで、データ設計者データ利用者で分けて 仕事ができる。

// この部分はデータ構造の設計者が書く
// データ構造を記述
struct Person {
   char name[10] ;
   int  age ;
} ;
// データに対する処理を記述
void setPerson( struct Person* p , char s[] , int a ) {
   // ポインタの参照で表記
   strcpy( p->name , s ) ;
   p->age = a ;
}
void printPerson( struct Person* p ) {
   printf( "%s %d¥n" , p->name , p->age ) ;
}
// -------------------------------------------
// この部分は、データ利用者が書く
int main() {
   // Personの中身を知らなくてもいいから配列を定義(データ隠蔽)
   struct Person saitoh ;
   setPerson( &saitoh , "saitoh" , 55 ) ;

   struct Person table[ 10 ] ; // 初期化は記述を省略
   for( int i = 0 ; i < 10 ; i++ ) {
      // 出力する...という雰囲気で書ける(手続き隠蔽)
      printPerson( &table[i] ) ;
   }
   return 0 ;
}

このプログラムの書き方では、mainの中を読むだけもで、 データ初期化とデータ出力を行うことはある程度理解できる。 この時、データ構造の中身を知らなくてもプログラムが理解でき、 データ実装者はプログラムを記述できる。これをデータ構造の隠蔽化という。 一方、setPerson()や、printPerson()という関数の中身についても、 初期化・出力の方法をどうするのか知らなくても、 関数名から動作は推測できプログラムも書ける。 これを手続きの隠蔽化という。

C++のクラスで表現

上記のプログラムをそのままC++に書き直すと以下のようになる。特徴として 構造体を進化させた class 宣言の中に、データ構造とデータ構造を使う関数をまとめて記述する。

#include <stdio.h>
#include <string.h>

// この部分はクラス設計者が書く
class Person {
private: // ■ クラス外からアクセスできない部分
   // データ構造を記述
   char name[10] ; // メンバーの宣言
   int  age ;
public: // ■ クラス外から使える部分
   // データに対する処理を記述
   void set( char s[] , int a ) { // ■ メソッドの宣言
      // pのように対象のオブジェクトを明記する必要はない。
      strcpy( name , s ) ;
      age = a ;
   }
   void print() {
      printf( "%s %d¥n" , name , age ) ;
   }
} ; // ← 注意ここのセミコロンを書き忘れないこと。

// この部分はクラス利用者が書く
int main() {
   Person saitoh ;
   saitoh.set( "saitoh" , 55 ) ;
   saitoh.print() ;

   // 文法エラーの例
   printf( "%d¥n" , saitoh.age ) ; // ■ age は private なので参照できない。
   return 0 ;
}

用語の解説:C++のプログラムでは、データ構造データの処理を、並行しながら記述する。 データ構造に対する処理は、メソッド(method)と呼ばれる。 データ構造とメソッドを同時に記載したものは、クラス(class)と呼ぶ。 そのclassに対し、具体的な値や記憶域が割り当てられたものをオブジェクト(object)とかインスタンス(instance)と呼ぶ。

コンストラクタ

データ構造を扱ううえで、データの初期化や廃棄処理は重要となるが、書き忘れをすることも多い。そこで、C++ ではコンストラクタで初期化を簡単に書ける。

// コンストラクタを使って書く
class Person {
private:
   char name[10] ; // メンバーの宣言
   int  age ;
public:
   Person( char s[] , int a ) { // ■ コンストラクタ
      strcpy( name , s ) ;
      age = a ;
   }
   void print() {
      printf( "%s %d¥n" , name , age ) ;
   }
} ;
int main() {
   Person saitoh( "saitoh" , 57 ) ;  // ■ コンストラクタで宣言&初期化
   return 0 ;
}

派生と継承

オブジェクト指向では、元となったデータ構造(class ? struct ?)を拡張した時の記述が便利。例えば、前述の Person に住所も覚えたかったとしたら どう書くだろうか?

// オブジェクト指向を使わずに記述
// Personを要素として持つ PersonAddr を定義
struct PersonAddr {
   struct Person person ;
   char          addr[ 20 ] ;
} ;
// PersonAddr のメソッド
void setPersonAddr( struct PersonAddr* p , char nm[] , int ag , char ad[] ) {
   setPerson( p->person , nm , ag ) ;
   strcpy( p->addr , ad ) ;
}
void printPersonAddr( struct PersonAddr* p ) {
   printPerson( p->person ) ;
   printf( "%s" , p->addr ) ;
   return 0 ;
}

オブジェクト指向では、こういった場合には、Person を拡張した PersonAddr を定義する。この時、元となるクラス(Person)は基底クラス(あるいは親クラス)拡張したクラス(PersonAddr)は派生クラス(あるいは子クラス)と呼ぶ。

// C++ 流に記述
class PersonAddr : public Person { // ■ Personから派生したPersonAddr
private:        // ~~~~~~~~~~~~~派生
   char  addr[ 20 ] ;
public:
   PersonAddr( char nm[] , int ag , char ad[] )
     : Person( nm , ag ) {         // ■ 基底クラスのコンストラクタで初期化
       strcpy( addr , ad ) ;       // ■ 追加部分の初期化
   }
} ;
int main() {
   Person     tohru( "tohru" , 57 ) ;
   PersonAddr saitoh( "saitoh" , 45 , "Fukui" ) ;
   tohru.print() ;   // tohru 57
   saitoh.print() ;  // saitoh 45 ■ 継承を使って表示
   return 0 ;
}

この例では、saitoh は PersonAddr であり、それを表示するための PersonAddr::print() は定義されていないが、saitoh.print() を実行すると、基底クラスのメソッド Person::print() を使ってくれる。このように基底クラスのメソッドを流用してくれる機能継承と呼ぶ。

仮想関数

前述の継承のプログラムでは、PersonAddr 専用の print() を定義してもいい。また基底クラスと派生クラスが混在する配列を作ることもできる。しかし、以下のようなプログラムでは問題が発生する。

class PersonAddr : public Person {
private:
   char  addr[ 20 ] ;
public:
   PersonAddr( char nm[] , int ag , char ad[] )
     : Person( nm , ag ) {
       strcpy( addr , ad ) ;
   }
   void print() {  // ■ PersonAddr 専用の print() を宣言してもいい
      Person::print() ;  // 基底クラス Person の print() を使う
      printf( "%s" , addr ) ;
   }
} ;
int main() {
   Person     tohru( "tohru" , 57 ) ;
   PersonAddr saitoh( "saitoh" , 45 , "Fukui" ) ;

   Person*    family[] = {  // tohru と saitoh のポインタ配列
      &tohru , &saitoh      // &saitoh は Person* に降格されている
   } ;
   tohru.print() ;   // tohru 57
   saitoh.print() ;  // saitoh 45 Fukui
   for( int i = 0 ; i < 2 ; i++ )  // tohru 57
      family[ i ]->print() ;       // ■ "saitoh 45"としか表示してくれない

   return 0 ;
}

family[] のデータを全部表示したいのなら、”tohru 57, saitoh 45 Fukui” と表示されてほしい。
こういった場合に、データのclassに応じて適切なメソッドを呼び出すメカニズムとして仮想関数がある。

class Person {
private:
   char name[ 20 ] ;
   int  age ;
public:
   Person( char nm[] , int ag ) {
      strcpy( name , nm ) ;
      age = ag ;
   }
   virtual void print() {  // ■ ここに virtual が追加された|仮想関数
      printf( "%s %d" , name , age ) ;
   }
} ;
class PersonAddr : public Person {
private:
   char  addr[ 20 ] ;
public:
   PersonAddr( char nm[] , int ag , char ad[] )
     : Person( nm , ag ) {
       strcpy( addr , ad ) ;
   }
   virtual void print() { // ■ ここに virtual が追加された|仮想関数
      Person::print() ;
      printf( "%s" , addr ) ;
   }
} ;
int main() {
   Person     tohru( "tohru" , 57 ) ;
   PersonAddr saitoh( "saitoh" , 45 , "Fukui" ) ;

   Person*    family[] = {  // tohru と saitoh のポインタ配列
      &tohru , &saitoh
   } ;
   for( int i = 0 ; i < 2 ; i++ )  // tohru 57
      family[ i ]->print() ;       // ■ saitoh 45 Fukui と表示
                                   // print は 仮想関数がそれぞれ定義してあるので
                                   // tohru は、"tohru 57"と表示されるし
   return 0 ;                      // saitoh は、"saitoh 45 Fukui"と表示される。
}

このプログラムでは、Person::print() と PersonAddr::print() がそれぞれ仮想関数で定義されているので、tohru, saitoh の各インスタンスには、型情報が埋め込まれている。このため family[0]->print() では “tohru 57” が表示されるし、family[1]->print() では “saitoh 45 Fukui” が表示される。

多態性・ポリモーフィズム

このように、派生クラスと仮想関数使ってプログラムを書くと、その派生クラスに応じた処理を呼び出すことができる。このように共通の基底クラスから様々な派生クラスを作りながらプログラムを書き、その派生クラス毎にそのデータに応じた処理を実行させることができる。インスタンスがデータ種別に応じた動きをすることは多態性(ポリモーフィズム)と呼ばれる。

集約関数と副問い合わせ

特殊な条件演算子

WHERE 節の中で使える特殊な条件演算子を紹介する。

... AND ...
   WHERE S.業者番号 <= 100 AND S.業者番号 >= 200 ;
... OR ...
   WHERE S.業者番号 >= 100 OR S.業者番号 <= 200 ;
NOT ...
   WHERE NOT S.業者番号 >= 100 ;
... IN ...
   WHERE S.業者番号 IN ( 'S1' , 'S4' ) ;
... BETWEEN A AND B 
   WHERE S.優良度 BETWEEN 50 AND 100 ;
... LIKE ...
   WHERE S.業者名 LIKE 'A_C社' ;   _ は任意の1文字 ABC社 ADC社
   WHERE S.業者名 LIKE 'A%社' ;    % は任意の0~N文字 A社, AA社 ABC社
... IS NULL
   WHERE S.業者名 IS NULL
   WHERE S.業者名 IS NOT NULL

集約関数

集約関数は、SQL の SELECT の射影部分で使える関数で、出力対象となった項目に対して、COUNT(),SUM(),AVG()といった計算を行うもの。

COUNT() - 項目の数
SUM() -   項目の合計
AVG() -   項目の平均
MAX() -   項目の最大値
MIN() -   項目の最低値

SELECT COUNT(S.業者番号) FROM S WHERE S.優良度 > 20 ;

集合計算

複数の SQL の結果に対し、集合和, 集合積, 集合差などの処理を行う。

... UNION ...  集合和
... EXPECT ... 集合差
... INTERSECT ... 集合積

SELECT S.業者名 FROM S WHERE S.所在 = '福井'
UNION
SELECT S.業者名 FROM S WHERE S.所在 = '東京'

SQLの副問い合せ

前節の結合処理は時として効率が悪い。このような場合は、副問い合わせを用いる場合も多い。

SELECT S.業者名, S.所在
  FROM S
  WHERE S.業者番号 IN
     ( SELECT SG.業者番号
         FROM SG
         WHERE SG.商品番号 = 'G2'
           AND SG.在庫量 >= 200 ) ;

まず、『◯ IN { … }』 の比較演算子は、◯が{…}の中に含まれていれば真となる。また、SQLの中の (…) の中が副問い合わせである。

この SQL では、副問い合わせの内部には、テーブル S に関係する要素が含まれない。この場合、副問い合わせ(商品番号がG2で在庫量が200以上)は先に実行される。

{(S1,G2,200),(S2,G2,400),(S3,G2,200),(S4,G2,200)}が該当し、その業者番号の{S1,S2,S3,S4}が副問い合わせの結果となる。最終的に SELECT … FROM S WHERE S.業者番号 IN {‘S1′,’S2′,’S3′,’S4’} を実行する。

相関副問い合わせ

SELECT G.商品名, G.色, G.価格
  FROM G
  WHERE 'S4' IN 
     ( SELECT SG.業者番号
         FROM SG
         WHERE SG.商品番号 = G.商品番号 ) ;

この副問い合わせでは、内部に G.商品番号 が含まれており、単純に()内を先に実行することはできない。こういった副問い合わせは、相関副問い合わせと呼ばれる。

処理は、Gのそれぞれの要素毎に、副問い合わせを実行し、その結果を使って WHERE節の判定を行う。WHERE節の選択で残った結果について、射影で商品名,色,価格が抽出される。

// 概念の説明用に、C言語風とSQL風を混在して記載する
for( int i = 0 ; i < sizeofarray( G ) ; i++ ) {
   SELECT SG.業者番号 FROM SG
    WHERE SG.商品番号 = G[i].商品番号 を実行
   if ( WHERE 'S4' IN 副query の結果が真なら ) {
      printf( ... ) ;
   }
}
// 全てのG 副queryの結果     WHERE 射影
// G1 ->  {S1,S2}
// G2 ->  {S1,S2,S3,S4} -> ◯ -> (ノート,青,170)
// G3 ->  {S1}
// G4 ->  {S1,S4}       -> ◯ -> (消しゴム,白,50)
// G5 ->  {S1,S4}       -> ◯ -> (筆箱,青,300)
// G6 ->  {S1}

演習課題

SQLの実験環境を使って、自分で考えたSQLの命令を2つ実行すること。実行した命令とその意味を説明し、出力された結果と一致することを確認すること。

さらにこの実行と同じ結果が出力される様なC言語のプログラムを作成し、おなじく結果を確認すること。

考察として、SQLで書いたプログラムとCで書いたプログラムの違いや便利な点や、Cでのプログラムの速度を早めるにはどう書くと良いかを比較検討すること。

2分探索木の処理とデータ追加処理

前回の授業で2分探索木、2分ヒープの説明を行ったが、実際にデータを追加する処理などを踏まえながらの演習の時間とする。

2分木の簡単な処理

int count( struct Tree* p ) {
   if ( p == NULL )
      return 0 ;
   else
      return 1 + count( p->left )
               + count( p->right ) ;
}
int sum( struct Tree* p ) { // データ合計
   if ( p == NULL )
      return 0 ;
   else
      return p->data + sum( p->left )
                     + sum( p->right )
}
int max( struct Tree* p ) { // 最大値
   if ( p == NULL ) {
      return 0 ; // データ件数=0のとき0が最大値でいいのかなぁ?
   } else {
      while( p->right != NULL )
         p = p->right ;
      return p->data ;
   }
}
int depth( struct Tree* p ) { // 木の深さ
   if ( p == NULL ) {
      return 0 ;
   } else {
      int d_l = depth( p->left ) ;
      int d_r = depth( p->right ) ;
      if ( d_l > d_r )
         return d_l + 1 ;
      else
         return d_r + 1 ;
   }
}

int main() {
   struct Tree* top = ..... ;
   printf( "%d\n" , count( top ) ) ; // 木全体のデータ件数
   printf( "%d\n" , sum( top ) ) ;   // 木全体のデータ合計
   printf( "%d\n" , depth( top ) ) ; // 木全体の最大段数

   return 0 ;    
}

2分探索木にデータを追加

前回の授業では、データの木構造は、補助関数 tcons() により直接記述していた。実際のプログラムであれば、データに応じて1件づつ木に追加するプログラムが必要となる。この処理は以下のようになるだろう。

struct Tree* top = NULL ;

// 2分探索木にデータを追加する処理
void entry( int d ) {
   struct Tree** tail = &top ;
   while( *tail != NULL ) {
      if ( (*tail)->data == d )       // 同じデータが見つかった
         break ;
      else if ( (*tail)->data > d )
         tail = &( (*tail)->left ) ;  // 左の枝に進む
      else
         tail = &( (*tail)->right ) ; // 右の枝に進む
   }
   if ( (*tail) == NULL )
      *tail = tcons( d , NULL , NULL ) ;
}

int main() {
   char buff[ 100 ] ;
   int x ;

   while( fgets( buff , sizeof( buff ) , stdin ) != NULL )
      if ( sscanf( buff , "%d" , &x ) != 1 )
         break ;
      entry( x ) ;

   return 0 ;    
}

このプログラムでは、struct Tree** tail というポインタへのポインタ型を用いている。tail が指し示す部分をイメージするための図を以下に示す。

理解確認

  • 関数entry() の14行目の if 判定を行う理由を説明せよ。
  • 同じく、8行目の tail = &( (*tail)->left ) の式の各部分の型について説明せよ。
  • sscanf() の返り値を 1 と比較している理由を説明せよ。
  • entry() でデータを格納する処理時間のオーダを説明せよ。
// 前述プログラムは、データ追加先が大域変数なのがダサい。
// 局所変数で追加処理ができるように、したいけど...

void entry( struct Tree* top , int d ) {
   struct Tree** tail = &top ;
   while( *tail != NULL ) {
      :
      // 上記の entry() と同じとする
}
void main() {
   // 追加対象の top は局所変数
   struct Tree* top = NULL ;
 
   char buff[ 100 ] ;
   int  x ;
   while( fgets(buff,sizeof(buff),stdin) != NULL ) {
      if ( sscanf( buff , "%d" , &x ) != 1 )
         break ;
      entry( top , x ) ;
   }
}

上記のプログラム↑は動かない。なぜ?
このヒントは、このページ末尾に示す。

演習課題

以下のようなデータを扱う2分探索木のプログラムを作成せよ。以下の箇条書き番号の中から、(出席番号 % 3+1)のデータについてプログラムを作ること。

  1. 名前(name)と電話番号(phone)
  2. 名前(name)と誕生日(year,mon,day)
  3. 名前(name)とメールアドレス(mail)

プログラムは以下の機能を持つこと。

  • 1行1件でデータを入力し、2分木に追加できること。
  • 全データを昇順(or降順)で表示できること。
  • 検索条件を入力し、目的のデータを探せること。

レポートでは、(a)プログラムリスト,(b)その説明,(c)動作検証結果,(d)考察 を記載すること。考察のネタが無い人は、このページの理解確認の内容について記述しても良い。

// プログラムのおおまかな全体像の例
struct Tree {
    //
    // この部分を考えて
    //   以下の例は、名前と電話番号を想定
} ;

struct Tree* top = NULL ;
void tree_entry( char n[] , char ph[] ) {
    // n:名前,ph:電話番号 を追加
}
void tree_print( struct Tree* p ) {
    // 全データを表示
}

struct Tree* tree_search_by_name( char n[] ) {
    // n:名前でデータを探す
}

int main() {
    char name[ 20 ] , phone[ 20 ] ;
    char buff[ 1000 ] ;
    struct Tree* p ;

    // データを登録する処理(空行を入力するまで繰り返し)
    while( fgets( buff , sizeof( buff ) , stdin ) != NULL ) {
        if ( sscanf( buff , "%s%s" , name , phone ) != 2 )
            break ; // 入力で、2つの文字列が無い場合はループを抜ける
        tree_entry( name , phone ) ;
    }

    // 全データの表示
    tree_print( top ) ;

    // データをさがす
    while( fgets( buff , sizeof( buff ) , stdin ) != NULL ) {
        if ( sscanf( buff , "%s" , name ) != 1 )
            break ; // 入力で、1つの文字列が無い場合はループを抜ける
        if ( (p = tree_search_by_name( name )) == NULL )
            printf( "見つからない¥n" ) ;
        else
            printf( "%s %s¥n" , p->name , p->phone ) ;
    }
    return 0 ;
}

動かないプログラムのヒント

// 前述プログラムは、データ追加先が大域変数なのがダサい。
// 局所変数で追加処理ができるように、したいけど...
// ちなみに、こう書くと動く

// Tree*を返すように変更
struct Tree* entry( struct Tree* top , int d ) {
   :
   // 最初の entry と同じ
   :
   return top ;
}
void main() {
   // 追加対象のポインタ
   struct Tree* top = NULL ;
   while( ... ) {
      :

      // entry() の返り値を top に代入
      top = entry( top , x ) ;
   }
}

fgets()とsscanf()による入力の解説

前述のプログラムの入力では、fgets() と sscanf() による処理を記載した。この関数の組み合わせが初見の人も多いと思うので解説。

// scanf() で苦手なこと -------------------------//
// scanf() のダメな点
// (1) 何も入力しなかったら...という判定が難しい。
// (2) 間違えて、abc みたいに文字を入力したら、
// scanf()では以後の入力ができない。(入力関数に詳しければ別だけどさ)
int x ;
while( scanf( "%d" , &x ) == 1 ) {
   entry( x ) ;
}

// scanf() で危険なこと -------------------------//
// 以下の入力プログラムに対して、10文字以上を入力すると危険。
// バッファオーバーフローが発生する。
char name[ 10 ] ;
scanf( "%s" , name ) ;

// 安全な入力 fgets() ---------------------------//
// fgets() は、行末文字"¥n"まで配列 buff[]に読み込む。
// ただし、sizeof(buuf) 文字より長い場合は、途中まで。
char buff[ 100 ] ;
while( fgets( buff , sizeof( buff ) , stdin ) != NULL ) {
    // buff を使う処理
}
// 文字列からデータを抜き出す sscanf() -------------//
// sscanf は、文字列の中から、データを抜き出せる。
// 入力が文字列であることを除き、scanf() と同じ。
char str[] = "123 abcde" ;
int  x ;
char y[10] ;
sscanf( str , "%d%s" , &x , y ) ;
// x=123 , y="abcde" となる。
// sscanf() の返り値は、2 (2個のフィールドを抜き出せた)

// ただし、Microsoft Visual Studio では、以下のように関数名を読み替えること。
// scanf( ... )  → scanf_s( ... )
// fscanf( ... ) → fscanf_s( ... )
// sscanf( ... ) → sscanf_s( ... )

理解確認

授業アンケート前期科目

情報メディア工学

今年度、初めて開講した情報メディア工学だが、斉藤担当の前半についてアンケートの結果がでた。情報セキュリティの話を演習中心に講義を行い、レポートやFormsによる小テストにて評価を行ったが、課題などの提出が怪しい学生以外は好成績であった。学生からの評価も81.6ポイントとまずまずの評価であった。

情報制御基礎(学際)

学際科目の情報制御基礎については、複数の学科の学生の参加で、講義内容も色々と制限もあるが、基礎的な課題でのレポート点と期末テストで評価を行う中、期末テストでは評価が低い学生でも、きちんとレポート課題を提出している学生については合格点を出すことができた。

授業アンケートの評価でも 85.9 ポイントと高い評価が得られた。講義資料や過去試験問題などのWeb公開などについては、今後も続けていきたい。

SQLの基本

先週の、関係データベースの導入説明を終えて、実際のSQLの説明。

SQLの命令

SQL で使われる命令は、以下のものに分類される。((参考資料))

  • データ定義言語 – CREATE, DROP, ALTER 等
  • データ操作言語 – INSERT, UPDATE, DELETE, SELECT 等
  • データ制御言語 – GRANT, REVOKE 等 (その他トランザクション制御命令など)

create user

データベースを扱う際の create user 文は、DDL(Data Definition Language)で行う。

CREATE USER ユーザ名
    IDENTIFIED BY "パスワード"

grant

テーブルに対する権限を与える命令。

GRANT システム権限 TO ユーザ名
   データベースシステム全体に関わる権限をユーザに与える。
   (例) GRANT execute ON admin.my_package TO saitoh
GRANT オブジェクト権限 ON オブジェクト名 TO ユーザ名
   作られたテーブルなどのオブジェクトに関する権限を与える。
   (例) GRANT select,update,delete,insert ON admin.my_table TO saitoh
REVOKE オブジェクト権限 ON オブジェクト名 TO ユーザ名
   オブジェクトへの権限を剥奪する。

ただし、後に示す実験環境では、データベースのシステムにSQLiteを用いている。SQLite はネットワーク対応型のデータベースではないため、データベースをアクセスするユーザや権限の概念が存在しない。

create table

実際にテーブルを宣言する命令。構造体の宣言みたいなものと捉えると分かりやすい。

CREATE TABLE テーブル名
   ( 要素名1  型 , 要素名2 型 ... ) ;
   PRIMARY KEY 制約
   1つの属性でのキーの場合、型の後ろに"PRIMARY KEY"をつける、
   複数属性でキーとなる場合は、要素列の最後に PRIMARY KEY(要素名,...) をつける。
   これによりKEYに指定した物は、重複した値を格納できない。

型には、以下の様なものがある。(Oracle)
   CHAR( size)  : 固定長文字列 / NCHAR国際文字
   VARCHAR2( size ) : 可変長文字列 / NVARCHAR2...
   NUMBER(桁) :指定 桁数を扱える数
   BINARY_FLOAT / BINARY_DOUBLE : 浮動小数点(float / double)
   DATE : 日付(年月日時分秒)
   SQLiteでの型
   INTEGER : int型
   REAL : float/double型
   TEXT : 可変長文字列型
   BLOB : 大きいバイナリデータ

DROP TABLE テーブル名
   テーブルを削除する命令

insert,update,delete

指定したテーブルに新しいデータを登録,更新,削除する命令

INSERT INTO テーブル名 ( 要素名,... ) VALUES ( 値,... ) ;
   要素に対応する値をそれぞれ代入する。
UPDATE テーブル名 SET 要素名=値 WHERE 条件
   指定した条件の列の値を更新する。
DELETE FROM テーブル名 WHERE 条件
   指定した条件の列を削除する。

select

データ問い合わせは、select文を用いる、 select文は、(1)必要なカラムを指定する射影、(2)指定条件にあうレコードを指定する選択、 (3)複数のテーブルの直積を処理する結合から構成される。

SELECT 射影 FROM 結合 WHERE 選択
   (例) SELECT S.業者番号 FROM S WHERE S.優良度 > 30 ;

理解確認

  • キー・プライマリキー・外部キーについて説明せよ。
  • 上記説明中の、科目テーブルにふさわしい create table 文を示せ。
  • select文における、射影,結合,選択について説明せよ。

SQLの演習環境の使い方

SQL の演習は、Paiza.IO もしくは 下記の 学内向け SQL 演習環境で動作確認をしてください。

下記URLにアクセスすると、認証画面が表示されるので、情報処理センターのユーザIDとパスワードで、Login する。

以下のような画面が表示されるので、最初に”データベースリセット”を押すこと。

以降、登録済みの処理を実行する場合は、左上のプルダウンメニューから、処理を選んで”バッチ処理実行”を行う。
画面下に、実行された結果が表示される。

教科書内の基本演習のデータを利用したい場合は、”0_Create_DB” , “1_Insert_Data”を実行する。

自分で処理を実行したい場合には、中段のSQLコマンドの欄に、命令を記載する。”create table”や”insert”といった結果を伴わない命令の場合は、”EXEC”を実行。”select” などの実行結果がある場合は、”QUERY”を実行すること。


SQLの基礎

ここまで述べたようにデータベースでは記録されているデータの読み書きは、SQL で行われ、射影・結合・選択を表す処理で構成されることを示した。SQL の機能を理解するために、同じ処理を C 言語で書いたらどうなるのかを示す。

((( 元のSQL )))
SELECT S.業者番号         -- 必要とされるデータを抽出する射影 --
  FROM S                 -- 複数のテーブルを組合せる結合 --
  WHERE S.優良度 >= 20 ;  -- 対象となるデータを選び出す選択 --

((( SQLをC言語で書いたら )))
// 配列の個数を求める #define 文
#define sizeofarray(ARY) (sizeof(ARY) / sizeof(ARY[0]))
// C言語なら... S のデータを構造体宣言で書いてみる。
struct Table_S {
   char 業者番号[ 6 ] ; // 当然、C言語では要素名を
   char 業者名[ 22 ] ;  // 漢字で宣言はできない。
   int  優良度 ;
   char 所在[ 16 ] ;
} S[] = {
   { "S1" , "ABC社" , 20 , "福井" } ,
   :
} ;

// SELECT...をC言語で書いた場合の命令のイメージ
// 結合
for( int i = 0 ; i < sizeofarray( S ) ; i++ ) {
   // 選択
   if ( S[i].優良度 >= 20 )
      // 射影
      printf( "%d¥n" , S[i].業者番号 ) ;
}

Sは、テーブル名であり、文脈上対象テーブルが明らかな場合、フィールド名の前の テーブルは省略可能である。

SELECT 業者番号 FROM S WHERE 優良度 >= 20 ;

WHERE 節で記述できる条件式では、= , <>(not equal) , < , > , <= , >= の比較演算子が使える。
# これ以外の演算機能は、次週にて紹介予定。

直積と結合処理

ここで、SQLの最も便利な機能は、直積による結合処理。複数の表を組み合わせる処理。単純な表形式の関係データベースで、複雑なデータを表現できる基本機能となっている。

SELECT SG.商品番号 , S.所在
  FROM S , SG
  WHERE SG.業者番号 = S.業者番号

上記の様に FROM 節に複数のテーブルを書くと、それぞれのテーブルの直積(要素の全ての組み合わせ)を生成する処理が行われる。この機能が結合となる。しかし、これだけでは意味がないので、通常は外部キーが一致するレコードでのみ処理を行うように、WHERE SG.業者番号 = S.業者番号 のような選択を記載する。最後に、結果として欲しいデータを抽出する射影を記載する。

SELECTの結合処理と処理内容

selectでの選択,結合,射影の処理(select 射影 from 結合 where 選択)を理解するために、同じ処理をC言語で書いたらどうなるかを示す。

// C言語なら
struct Table_S {
   char 業者番号[ 6 ] ;
   char 業者名[ 22 ] ;
   int  優良度 ;
   char 所在[ 16 ] ;
} S[] = {
   { "S1" , "ABC社" , 20 , "福井" } ,
   :
} ;
struct Table_SG {
   char 業者番号[ 6 ] ;
   char 商品番号[ 6 ] ;
   int  在庫量 ;
} = SG[] {
   { "S1" , "G1" , 300 } ,
   :
} ;

// FROM S
for( int i = 0 ; i < sizeofarray( S ) ; i++ ) {
   // FROM SG
   for( int j = 0 ; j < sizeofarray( SG ) ; j++ ) {
      // WHERE S.業者番号 = SG.業者番号
      if ( strcmp( S[i].業者番号 , SG[j].業者番号 ) == 0 ) {
         // SELECT SG.商品番号 , S.所在
         printf( "%s %s¥n" , SG[j].商品番号 , S[i].所在 ) ;
      }
   }
}

(1) i,jの2重forループが、FROM節の結合に相当し、(2) ループ内のif文がWHERE節の選択に相当し、(3) printfの表示内容が射影に相当している。

射影の処理では、データの一部分を抽出することから、1件の抽出レコードが同じになることもある。この際の重複したデータを1つにまとめる場合には、DISTINCT を指定する。

SELECT DISTINCT SG.商品番号, S.所在
   FROM S, SG
   WHERE SG.業者番号 = S.業者番号 ;

上記のプログラムでは、データの検索は単純 for ループで記載しているが、内部で HASH などが使われていると、昇順に処理が行われない場合も多い。出力されるデータの順序を指定したい場合には、ORDER BY … ASC (or DESC) を用いる

SELECT SG.商品番号, S.所在
   FROM S, SG
   WHERE SG.業者番号 = S.業者番号
   ORDER BY S.所在 ASC ;        -- ASC:昇順 , DESC:降順 --

表型のデータと串刺し

FROM に記載する直積のための結合では、2つ以上のテーブルを指定しても良い。

SELECT S.業者名, G.商品名, SG.在庫量
   FROM S, G, SG
   WHERE  S.業者番号 = SG.業者番号  -- 外部キー業者番号の対応付け --
     AND  SG.商品番号 = G.商品番号  -- 外部キー商品番号の対応付け --

// 上記の処理をC言語で書いたら

struct Table_G {
   char 商品番号[ 6 ] ;
   char 商品名[ 22 ] ;
   char 色[ 4 ] ;
   int  価格 ;
   char 所在[ 12 ] ;
} = G[] = {
   { "G1" , "赤鉛筆" , "青" , 120 , "福井" } ,
   :
} ;

// [結合] S,G,SGのすべての組み合わせ
// FROM S -- 結合
for( int i = 0 ; i < sizeofarray( S ) ; i++ ) {
   // FROM G -- 結合
   for( int j = 0 ; j < sizeofarray( G ) ; j++ ) {
      // FROM SG -- 結合
      for( int k = 0 ; k < sizeofarray( SG ) ; k++ ) {

         // [選択] 条件でレコードを選び出す
         //   WHERE S.業者番号 = SG.業者番号
         //     AND SG.商品番号 = G.商品番号
         if ( strcmp( S[i].業者番号 , SG[k].業者番号 ) == 0
           && strcmp( SG[k].商品番号 , G[j].商品番号 ) == 0 ) {
            // [射影] 使用するフィールドを出力
            printf( "%s %s %d\n" ,
                    S[i].業者名 , G[j].商品名 , SG[k].在庫量 ) ;
         }
      }
   }
}

ここで結合と選択で実行している内容は、外部キーである業者番号を S から探す、商品番号を G から探している。この、外部キー対応しているものを探すという視点で、上記 C 言語のプログラムを書き換えると、以下のように表せる。

// FROM SG
for( int k = 0 ; k < sizeofarray( SG ) ; k++ ) {
   // 外部キー SG.業者番号に対応するものを S から探す
   for( int i = 0 ; i < sizeofarray( S ) ; i++ ) {
      if ( strcmp( S[i].業者番号 , SG[k].業者番号 ) == 0 ) {
         // 外部キー SG.商品番号に対応するものを G から探す
         for( int j = 0 ; j < sizeofarray( G ) ; j++ ) {
            if ( strcmp(SG[k].商品番号,G[j].商品番号) == 0 ) {
               printf( "%s %s %d\n" ,
                       S[i].業者名,G[j].商品名,SG[k].在庫量 ) ;
            }
         }
      }
   }
}

このような、複数の表の実体と関係を対応付けた検索を、データベースの専門の人は「データを串刺しにする」という言い方をすることも多い。

また、SQL では、このようなイメージの繰り返し処理を、数行で分かりやすく記述できている。このプログラム例では、キーに対応するものを単純 for ループで説明しているが、SQL ではプライマリキーなら、B木やハッシュなどを用いた効率の良い検索が自動的に行われる。このため、SQLを扱う応用プログラマは、SQLの結合の処理方法は通常はあまり考えなくて良い。

ネットワーク層とIPアドレス

前回説明したMACアドレスによるデータリンク層では、1つのサブネットの中で指定した相手にデータを送ることはできる。しかし、データリンク層だけでは、他のサブネットにいる相手にデータを送ることができない。(相手の名前を知っていても、住所を知らなければ郵便は送れない。)

ネットワーク層とIPアドレス(IPv4)

サブネットに分割し、隣接するサブネット、さらには上流のインターネットと通信をするためには、IPアドレスを用いた通信が行われる。

ネットワークに接続する機器には、それぞれユニークな32bitの番号(IPv4アドレス)を割り振る。

コンピュータへのIPアドレスの設定には、(a)IPアドレス,(b)サブネットマスク,(c)ゲートウェイの情報が必要となる。

  • IPアドレス: 192.156.145.100 といった、0~255の8bitの値をピリオド区切りで4つ並べて表記するのが一般的。
  • サブネットマスク: 255.255.255.0 といった値で、IPアドレスを2進数で書き並べた32bitと、サブネットマスクの32bitで、2進数の論理積をとった値は、ネットワーク番号と呼ばれ、機器が存在する場所を表す。
    また、IPアドレスとサブネットマスクの否定と論理積をとった値は、ホスト番号と呼ばれる。
    サブネットマスクは、先行する1のbit数で書き表すことも多い。255.255.255.0は、”/24″のように書く。
  • ゲートウェイ: 自分自身のネットワーク番号と通信相手のネットワーク番号が異なる場合は、異なるサブネットにいるので、パケットを中継してもらう機器(ルータ,ゲートウェイ)にパケットを送る。

  • IPアドレスとクラス: IPアドレスは、先頭8bit をネットワーク番号とするクラスA,16bitのクラスB,24bitのクラスCに分類されている。以前は、IPアドレスを割り当てる企業規模に応じて、大規模な大学だからクラスA、中規模ならクラスB(福井大学は133.7.0.0/16 ←このような書き方はCIDR記法という)、小規模ならクラスCを割り当てていた。(福井高専はCクラスを5本192.156.145~149.0/24 : 福井高専のIPアドレスでは3つのCIDR記法で表現できる。 192.156.145.0/24, 192.156.146.0/23, 192.156.148.0/23)
    しかし、最近では IPv4 アドレスの不足から、大きな組織に割り振られた クラスA を再分配している。

ARP(IPアドレスとMACアドレスの橋渡し)

同じサブネットの中では、データリンク層でMACアドレスを用いて通信相手を指定するが、ネットワーク層ではIPアドレスを用いて通信相手を指定する。この違いを埋めるためのプロトコルがARPである。

サブネット内に相手先IPアドレスの指定されたパケット(10.10.22.102)が届くと、通信機器はサブネット内の全ての機器相手に ARPリクエストを送信する。(10.10.22.102はいますか?)

この時、10.10.22.102 のコンピュータは、自分宛てのパケットがあることを知るので、送信元のコンピュータに、自分のMACアドレスを付けたARPリプライを送り返す。(10.10.22.102は、私 “FE:DC:BA:98:76:54” です!)。送信元は、ARP通信をへらすために、その情報を記憶して、2度目以降は覚えたMACアドレスですぐに通信を始める。

ルータとRIP

ルータは、隣接するサブネットの間に入る機器で、各サブネットにゲートウェイとなるインタフェースを持つ。ルータでは受け取ったパケットをどこに流すか…という経路情報が重要となる。

  • 静的ルーティング – 末端のルータの設定で、管理者が経路を設定
  • 動的ルーティング – 上流ルータでRIPにより設定

経路設定には2種類あり、(a)末端のルータではこのネットワーク番号はどのルータに送るという情報をルータに直接設定する静的ルーティングがとられる。(b)上流のルータでは、末端のルータの設定が変更されることがあるので、ルータ同士がルーティング情報を送りあう動的ルーティングがとられる。動的ルーティングでは、RIPというプロトコルにより、各サブネットのつながっている経路情報が送られてくる。この経路情報を見て、パケットのIPアドレスを見て、パケットの送り先を判断する。

((Windows の場合))

C:> ipconfig /all
インタフェース名:
 IPv4アドレス............192.168.xx.xx
 サブネットマスク.........255.255.255.0
 デフォルトゲートウェイ....192.168.xx.1
C:> arp -a
インタフェース:
 192.168.xx.xx     74-03-xx-xx-xx-xx 動的
 192.168.xx.yy     B0-05-xx-xx-xx-xx 動的
C:> netstat -r
ネットワーク宛先 ネットマスク ゲートウェイ インタフェース メトリック
      0.0.0.0        0.0.0.0   192.168.xx.1  192.168.xx.xx 45
 192.168.xx.0  255.255.255.0   ....

((Unix の場合))

$ ifconfig -a
en1: ....
     inet 192.168.xx.xx netmask 0xffffff00 ...
$ arp -an
.... (192.168.xx.xx) at 74:03:xx:xx:xx:xx ...
.... (192.168.xx.yy) at b0:05:xx:xx:xx:xx ...
$ netstat -rn
Destination  Gateway ...
default      192.168.xx.1  ...
192.168.xx   ...

プライベートアドレス

IPv4 では、32bit でコンピュータを識別することから、最大でも 232台≒40億台しか識別できない。実際、IPアドレスの管理団体では、2017年度には IPv4 アドレスは使い切った状態となっている。この対応として、その組織やその家庭内だけで使われる IPアドレス である、プライベートアドレスが用いられる。

  • 10.0.0.0~10.255.255.255 / 8 – 大きな機関向け
  • 172.16.0.0~172.31.255.255 / 12
  • 192.168.0.0~192.168.255.255 /16 – 個人向け

プライベートアドレスを利用する組織では、インターネットに接続するルータでは NAT(もしくはNAPT) という機能を内蔵し、プライベートアドレスとグローバルアドレスの変換を行う。

IPv6アドレス

IPv4の32bit の IP アドレスでは、40億台のコンピュータを区別することしかできない。そこで、最近では 128bit の IPv6 アドレスが用いられる。IPv6 では、2004:6800:4004:0826:0000:0000:0000:2003 (www.google.co.jp) といった16進数4桁(16bit)を8個を”:”区切りで書き連ねる書き方をする。ただし16進4桁の先行する0や、全部”0000″ は省略して、”2404:6800:4004:826::2003″ と書く。IPv6 は最近では普及がかなり進んでいるが、途中のルータなどがすべて IPv6 に対応する必要があり IPv4 しか使えない組織も多い。

DNS と nslookup

IPアドレスみたいな数字の羅列は覚えることが難しい。このためコンピュータの名前からIPアドレスを調べるサービスがあり、Domain Name Service(DNS) と呼ばれる。詳しい仕組みは ドメイン名の説明の際に行うが、IP アドレスの調べ方を説明する。

ドメイン名から、IP アドレスを調べるには、nslookup (もしくは dig) を使用する。

$ nslookup www.fukui-nct.ac.jp
:
Non-authoritative answer:
Name:   www.fukui-nct.ac.jp
Address: 104.215.53.205

$ nslookup -query=A www.fukui-nct.ac.jp   # IPv4 アドレスの取得
(同上)

$ nslookup -query=AAAA www.google.co.jp   # IPv6 アドレスの取得
:
Non-authoritative answer:
Name:   www.google.co.jp
Address: 2404:6800:4004:826::2003

理解確認

  • Cクラスのサブネットに設置できるコンピュータの台数は何台?
  • “172.”で始まるプライベートアドレスでは最大何台?
  • 192.168.11.2/24 のコンピュータから、192.168.1.50にデータを送る場合、どのような処理が行われるか、IPアドレス、サブネットマスク、ゲートウェイ、ネットワーク番号を使って説明せよ。
  • 同じサブネット内で相手のIPアドレスが与えられた時、どのようにパケットが送られるか、MACアドレスとARPを交えて説明せよ。

システム

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