トランスポート層・TCPとUDP
前回の授業で説明が不足していた DHCP についての説明
DHCP
前回の IP では、異なるサブネットを繋ぐ役割としての Internet Protocol (IP) について説明をした。IP での通信では、IPアドレスが必要だが、正しく接続ができるためには、(1)IPアドレス、(2)サブネットマスク、(3)ゲートウェイアドレス が必要となる。しかし、この情報は初心者には設定が難しいし、IPアドレスが他の利用者と重複させないためには、きちんとした管理が必要となる。
この時に使われるのが DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol) であり、通常のパソコンは、IPの自動設定としておけば、DHCP を用いて前述の(1),(2),(3) の情報が自動で設定される。DHCP機能は、一般的にルータや WiFi の AP(アクセスポイント)の中に組み込まれている。
DHCPサーバには、使用可能なIPアドレスを登録しておく。利用者が DHCP クライアントとして接続する際には、ブロードキャストパケットを使い、同じサブネット内に DHCP リクエストを送る。このリクエストを DHCPサーバが受信したら、サーバはクライアントに向かって、貸し出し用の IP アドレスの1つをクライアントに提供する(サブネットマスクやゲートウェイなども提供)。
データ通信ではノイズなどの影響で通信に失敗することがある。これらを補うためのTCPがある。またTCPの通信の欠点を補うUDPがある。この授業では、TCPとUDPによるトランスポート層の説明を行う。
TCP
TCP(Transmission Control Protocol/トランスミッションコントロールプロトコル)では、分割されたパケットを元の順序に組み上げたり、パケットが途中で消えた場合の再送などの処理を行う。この機能により確実に相手に送る機能が実現されている。
3way ハンドシェーク
TCPの通信では、最初に相互に通信が可能かを確認するハンドシェークが行われる。パケットには、SYN,ACK,FINといった種別を表すフラグがついており、SYNは接続確立の要求を表す。ACKは了解を表す。FINは切断要求を表す。通信開始の時には、(1)通信OK?、(2)OKだよ,そっちもOK?、(3)OKだよ! といった3つの通信パケットで確認してから通信を行う。この最初のやり取りを3way ハンドシェークという。
- SYN flood攻撃 – 3wayハンドシェークは、この後に送られてくるパケットを並び替えるためのメモリを準備などが必要となる。このため通信ルールを無視して相手にSYNパケットだけを大量に送ると相手はムダな準備作業により他の通信が困難になる場合がある。
SEQ番号,ACK番号
通信パケットには、SEQ番号(シーケンス番号/32bit)とACK番号(アクノリッジ番号/32bit)という情報がついており、送信元はACK番号を確認することで、どのパケットが正しく届いたのかを認識できる。3wayハンドシェーク時には、相手のSEQ番号に1を加えたACK番号をつけてパケットを返送することで通信が始められることが確認できる。実際のデータを送信する際には、受け取ったデータ長をSEQ番号に加えた値を、ACK番号にして受信に成功したことを相手に伝える。これにより、小分けにされたパケットで次に何を送れば良いのか判別できる。
(Acknowledge = 承認する)
通信で、パケット分割して送って、その一つ毎の返答を待つと、通信の待ち時間が増えてしまう。このため、相手が受け取り可能であれば、一度に前回の2倍のパケットを返信を待たずに送る。(ウィンドウサイズの拡大)
チェックサムとタイムアウト
通信では、送る途中でデータにノイズが混入したり、パケットが消失することがある。このため、パケットにはパケットのチェックサム(バイトデータを加算した値)を付けて送り、受信時に比較してノイズ混入でデータが壊れていないかを確認する。こういった際には、パケットが正しく届かない。パケットが消失したりして、通信相手からの返送が届かないで一定の待ち時間が経過することをタイムアウトと呼ぶ。この時、返信パケットにはデータのSEQ番号とACK番号の情報があるため、受け取りに失敗したパケットが判別できるので、送り側は失敗したパケットを再送する。
受け取り側は、同じくSEQ番号やACK番号を元にパケットの順番を正しく並べ戻すことができる。
TCP FINパケット
通信を切断する場合には、相互に切断して良いか確認する4回の通信で終了する。
UDP
TCPによる通信は、相手側からの受け取った返事を待ちながら通信を行う。このため、通信にかかる時間を要する。また、複数の利用者に一斉にデータをばらまくブロードキャスト通信では、個別のパケット欠落を修復しようとすると、処理が複雑になる。
これらの対応策として、UDP(User Datagram Protocol)がある。これは、TCP通信でのパケット分割や再送処理を行わない極めて単純な送信方法である。このため、相手側に正しくデータが送られる保証はない。確実に相手に送る必要があれば、確認や再送は上位プロトコルの責任となる。
UDP通信は返信を待つ必要がないので、動画・音声配信などのリアルタイム性が求められる通信でよく使われる。UDPは正しく通信ができずパケットが途絶えても、一時的に動画が止まるなり音声が止まるといったように、問題が少ないような場合に有用となる。
ICMP/ping
IPプロトコルのプロトコルの1つとして ICMP (Internet Control Message Protocol) がある。このプロトコルは、ネットワーク機器(ノード)の間で、通信の確認をするためのもので、ping コマンドや traceroute コマンドで使われる。
基本的に、ICMPパケットを相手コンピュータに送り、返事が返ってくるかを確認する。ping や traceroute は、返事が返ってくるまでの時間や、パケットをいくつ送っていくつ返ってきた…などの情報を表示することができ、相手コンピュータまでの通信路が正常かどうかが判断できる。
$ ping www.google.co.jp PING www.google.co.jp (172.217.25.163) 56(84) バイトのデータ 64 バイト応答 送信元 syd09s13-in-f3.1e100.net (172.217.25.163): icmp_seq=1 ttl=115 時間=7.85ミリ秒 64 バイト応答 送信元 syd09s13-in-f3.1e100.net (172.217.25.163): icmp_seq=2 ttl=115 時間=8.02ミリ秒 ^C # 途中で強制終了させるために Ctrl-C で止める ]$ traceroute www.google.co.jp traceroute to www.google.co.jp (172.217.25.163), 30 hops max, 60 byte packets 1 airstation.ei.fukui-nct.ac.jp (192.168.2.1) 0.355 ms 0.529 ms 0.549 ms (略) 9 108.170.243.33 (108.170.243.33) 8.245 ms 108.170.243.65 (108.170.243.65) 6.893 ms 6.936 ms 10 72.14.239.25 (72.14.239.25) 6.899 ms 7.125 ms 72.14.238.23 (72.14.238.23) 7.140 ms 11 syd09s13-in-f163.1e100.net (172.217.25.163) 7.014 ms 7.007 ms 6.961 ms
トランスポート層
OSI参照モデルでは、TCPプロトコルとUDPプロトコルをあわせてトランスポート層と呼び、TCP+UDPとネットワーク層のIPプロトコルでの通信が、今日のインターネット通信の基本プロトコルとなっており、総称して TCP/IPとかインターネット・プロトコル・スイート と呼ぶ。(suite=”一連のものや一緒に機能するものの集まり”/sweetじゃない)
ネットワーク層とIPアドレス
前回説明したMACアドレスによるデータリンク層では、1つのサブネットの中で指定した相手にデータを送ることはできる。しかし、データリンク層だけでは、他のサブネットにいる相手にデータを送ることができない。(相手の名前を知っていても、住所を知らなければ郵便は送れない。)
ネットワーク層とIPアドレス(IPv4)
サブネットに分割し、隣接するサブネット、さらには上流のインターネットと通信をするためには、IPアドレスを用いた通信が行われる。
ネットワークに接続する機器には、それぞれユニークな32bitの番号(IPv4アドレス)を割り振る。
コンピュータへのIPアドレスの設定には、(a)IPアドレス,(b)サブネットマスク,(c)ゲートウェイの情報が必要となる。
- IPアドレス: 192.156.145.100 といった、0~255の8bitの値をピリオド区切りで4つ並べて表記するのが一般的。
- サブネットマスク: 255.255.255.0 といった値で、IPアドレスを2進数で書き並べた32bitと、サブネットマスクの32bitで、2進数の論理積をとった値は、ネットワーク番号と呼ばれ、機器が存在する場所を表す。
また、IPアドレスとサブネットマスクの否定と論理積をとった値は、ホスト番号と呼ばれる。
サブネットマスクは、先行する1のbit数で書き表すことも多い。255.255.255.0は、”/24″のように書く。 - ゲートウェイ: 自分自身のネットワーク番号と通信相手のネットワーク番号が異なる場合は、異なるサブネットにいるので、パケットを中継してもらう機器(ルータ,ゲートウェイ)にパケットを送る。
- IPアドレスとクラス: IPアドレスは、先頭8bit をネットワーク番号とするクラスA,16bitのクラスB,24bitのクラスCに分類されている。以前は、IPアドレスを割り当てる企業規模に応じて、大規模な大学だからクラスA、中規模ならクラスB(福井大学は133.7.0.0/16 ←このような書き方はCIDR記法という)、小規模ならクラスCを割り当てていた。(福井高専はCクラスを5本192.156.145~149.0/24 : 福井高専のIPアドレスでは3つのCIDR記法で表現できる。 192.156.145.0/24, 192.156.146.0/23, 192.156.148.0/23)
しかし、最近では IPv4 アドレスの不足から、大きな組織に割り振られた クラスA を再分配しているため、先頭が0~126で始まるアドレスでも大きなネットワーク組織とは限らない。
ユニキャスト、マルチキャスト、ブロードキャスト通信
通信では、機器が1対1でデータを送る(ユニキャスト通信)だけでなく、複数の機器に同時にデータを送りたいこともある。
同じサブネット内の全てにデータを送る時には、ブロードキャスト通信が用いられる。この際には、IPアドレスのサブネットにおけるホスト番号部分が全て1のアドレスを使う。Cクラスの 192.168.11.x/24 のネットワークであれば、192.168.11.255 がブロードキャスト通信用のアドレスとなる。一般的にホスト番号部分が全て0のアドレスは、サブネット全体を表すために使われることから、192.168.11.0 のIPアドレスも通常の通信には使えない。このため、Cクラス(サブネットマスク24bit)であれば、256台-2台(全て0と全て1のホスト番号)を引いた254台の機器が設置できる。(実際には、他のネットワークに接続するためのゲートウェイアドレスも必要なので 253台)
動画などの配信では、ユニキャスト通信が使われると、サーバから通信相手までのルータまでに同じデータが送られてくる。こういった方式では大量の視聴者がいる場合、ネットワークの帯域が埋まってしまい、効率の良い配信ができない。同じデータを同じタイミングで複数の機器に配信したい場合はマルチキャスト通信を使う。IPv4では 224.0.0.0/4 を使う。
ARP(IPアドレスとMACアドレスの橋渡し)
同じサブネットの中では、データリンク層でMACアドレスを用いて通信相手を指定するが、ネットワーク層ではIPアドレスを用いて通信相手を指定する。この違いを埋めるためのプロトコルがARPである。
サブネット内に相手先IPアドレスの指定されたパケット(10.10.22.102)が届くと、通信機器はサブネット内の全ての機器相手に ARPリクエストを送信する。(10.10.22.102はいますか?ブロードキャスト通信を使う)
この時、10.10.22.102 のコンピュータは、自分宛てのパケットがあることを知るので、送信元のコンピュータに、自分のMACアドレスを付けたARPリプライを送り返す。(10.10.22.102は、私 “FE:DC:BA:98:76:54” です!)。送信元は、ARP通信をへらすために、その情報を記憶して、2度目以降は覚えたMACアドレスですぐに通信を始める。
ルータとRIP
ルータは、隣接するサブネットの間に入る機器で、各サブネットにゲートウェイとなるインタフェースを持つ。ルータの内部では受け取ったパケットをどこに流すか…という経路情報が重要となる。
- 静的ルーティング – 末端のルータの設定で、管理者が経路を設定
- 動的ルーティング – 上流ルータでRIPにより設定
経路設定には2種類あり、(a)末端のルータではこのネットワーク番号はどのルータに送るという情報をルータに直接設定する静的ルーティングがとられる。(b)上流のルータでは、末端のルータの設定が変更されることがあるので、ルータ同士がルーティング情報を送りあう動的ルーティングがとられる。動的ルーティングでは、RIPというプロトコルにより、各サブネットのつながっている経路情報が送られてくる。この経路情報を見て、パケットのIPアドレスを見て、パケットの送り先を判断する。(ネットワークの上流では、複数のネットワーク経路を操る BGP などが使われる)
((Windows の場合))
C:> ipconfig インタフェース名: IPv4アドレス............192.168.xx.xx サブネットマスク.........255.255.255.0 デフォルトゲートウェイ....192.168.xx.1 C:> arp -a インタフェース: 192.168.xx.xx 74-03-xx-xx-xx-xx 動的 192.168.xx.yy B0-05-xx-xx-xx-xx 動的 C:> netstat -r ネットワーク宛先 ネットマスク ゲートウェイ インタフェース メトリック 0.0.0.0 0.0.0.0 192.168.xx.1 192.168.xx.xx 45 192.168.xx.0 255.255.255.0 ....
((Unix の場合))
$ ifconfig -a # もしくは ip addr en1: .... inet 192.168.xx.xx netmask 0xffffff00 ... $ arp -an # もしくは ip neigh .... (192.168.xx.xx) at 74:03:xx:xx:xx:xx ... .... (192.168.xx.yy) at b0:05:xx:xx:xx:xx ... $ netstat -rn # もしくは ip route Destination Gateway ... default 192.168.xx.1 ... 192.168.xx ...
プライベートアドレス
IPv4 では、32bit でコンピュータを識別することから、最大でも 232台≒40億台(4×103×3台)しか識別できない。実際、IPアドレスの管理団体では、2017年度には IPv4 アドレスは使い切った状態となっている。この対応として、その組織やその家庭内だけで使われる IPアドレス である、プライベートアドレスが用いられる。
- 10.0.0.0~10.255.255.255 / 8 – 大きな機関向け
- 172.16.0.0~172.31.255.255 / 12
- 192.168.0.0~192.168.255.255 /16 – 個人向け
プライベートアドレスを利用する組織では、インターネットに接続するルータでは NAT(もしくはNAPT) という機能を内蔵し、プライベートアドレスとグローバルアドレスの変換を行う。
ローカルループバックアドレス
ネットワーク通信では、1つのコンピュータの中でもプロセスとプロセスの間でデータ通信を行うことも多い。この時に使われるIPアドレスは、ローカルループバックアドレスと呼ばれ、IPv4では 127.0.0.1 のIPアドレスを使う。このアドレスには localhost というドメイン名が割り振られる。
IPv6アドレス
IPv4の32bit の IP アドレスでは、40億台のコンピュータを区別することしかできない。そこで、最近では 128bit の IPv6 アドレスが用いられる(256×102412台≒340×1036台)。 IPv6 では、2004:6800:4004:0826:0000:0000:0000:2003 (www.google.co.jp) といった16進数4桁(16bit)を8個を”:”区切りで書き連ねる書き方をする。ただし16進4桁の先行する0や、全部”0000″ は省略して、”2404:6800:4004:826::2003″ と書く。IPv6 は最近では普及がかなり進んでいるが、途中のルータなどがすべて IPv6 に対応する必要があり IPv4 しか使えない組織も多い。
IPv6でも、同じサブネット内だけで使えるIPv6リンクローカルアドレス(fe80::/10)や、同じ組織内だけで使えるIPv6サイトローカルアドレス(fec0::/10)、ループバックアドレス(::1)などが規定されている。
DNS と nslookup
IPアドレスみたいな数字の羅列は覚えることが難しい。このためコンピュータの名前からIPアドレスを調べるサービスがあり、Domain Name Service(DNS) と呼ばれる。詳しい仕組みは ドメイン名の説明の際に行うが、IP アドレスの調べ方を説明する。
ドメイン名から、IP アドレスを調べるには、nslookup (もしくは dig) を使用する。
$ nslookup www.fukui-nct.ac.jp : Non-authoritative answer: Name: www.fukui-nct.ac.jp Address: 104.215.53.205 $ nslookup -query=A www.fukui-nct.ac.jp # IPv4 アドレスの取得 (同上) # もしくは dig www.fukui-nct.ac.jp A +short $ nslookup -query=AAAA www.google.co.jp # IPv6 アドレスの取得 : # もしくは dig www.google.co.jp AAAA +short Non-authoritative answer: Name: www.google.co.jp Address: 2404:6800:4004:826::2003
理解確認
- Formsによる理解度確認問題
- 192.168.11.2/24 のコンピュータから、192.168.1.50にデータを送る場合、どのような処理が行われるか、IPアドレス、サブネットマスク、ゲートウェイ、ネットワーク番号を使って説明せよ。
- 同じサブネット内で相手のIPアドレスが与えられた時、どのようにパケットが送られるか、MACアドレスとARPを交えて説明せよ。
ネットワーク層とIPアドレス
前回の授業でL2スイッチのVLAN機能や、WiFi の話が不十分だったので、前回資料にて補足説明を行う。
説明したMACアドレスによるデータリンク層では、1つのサブネットの中で指定した相手にデータを送ることはできる。しかし、データリンク層だけでは、他のサブネットにいる相手にデータを送ることができない。(相手の名前を知っていても、住所を知らなければ郵便は送れない。)
ネットワーク層とIPアドレス(IPv4)
サブネットに分割し、隣接するサブネット、さらには上流のインターネットと通信をするためには、IPアドレスを用いた通信が行われる。
ネットワークに接続する機器には、それぞれユニークな32bitの番号(IPv4アドレス)を割り振る。
コンピュータへのIPアドレスの設定には、(a)IPアドレス,(b)サブネットマスク,(c)ゲートウェイの情報が必要となる。
- IPアドレス: 192.156.145.100 といった、0~255の8bitの値をピリオド区切りで4つ並べて表記するのが一般的。
- サブネットマスク: 255.255.255.0 といった値で、IPアドレスを2進数で書き並べた32bitと、サブネットマスクの32bitで、2進数の論理積をとった値は、ネットワーク番号と呼ばれ、機器が存在する場所を表す。
また、IPアドレスとサブネットマスクの否定と論理積をとった値は、ホスト番号と呼ばれる。
サブネットマスクは、先行する1のbit数で書き表すことも多い。255.255.255.0は、”/24″のように書く。 - ゲートウェイ: 自分自身のネットワーク番号と通信相手のネットワーク番号が異なる場合は、異なるサブネットにいるので、パケットを中継してもらう機器(ルータ,ゲートウェイ)にパケットを送る。
- IPアドレスとクラス: IPアドレスは、先頭8bit をネットワーク番号とするクラスA,16bitのクラスB,24bitのクラスCに分類されている。以前は、IPアドレスを割り当てる企業規模に応じて、大規模な大学だからクラスA、中規模ならクラスB(福井大学は133.7.0.0/16 ←このような書き方はCIDR記法という)、小規模ならクラスCを割り当てていた。(福井高専はCクラスを5本192.156.145~149.0/24 : 福井高専のIPアドレスでは3つのCIDR記法で表現できる。 192.156.145.0/24, 192.156.146.0/23, 192.156.148.0/23)
しかし、最近では IPv4 アドレスの不足から、大きな組織に割り振られた クラスA を再分配している。
ARP(IPアドレスとMACアドレスの橋渡し)
同じサブネットの中では、データリンク層でMACアドレスを用いて通信相手を指定するが、ネットワーク層ではIPアドレスを用いて通信相手を指定する。この違いを埋めるためのプロトコルがARPである。
サブネット内に相手先IPアドレスの指定されたパケット(10.10.22.102)が届くと、通信機器はサブネット内の全ての機器相手に ARPリクエストを送信する。(10.10.22.102はいますか?)
この時、10.10.22.102 のコンピュータは、自分宛てのパケットがあることを知るので、送信元のコンピュータに、自分のMACアドレスを付けたARPリプライを送り返す。(10.10.22.102は、私 “FE:DC:BA:98:76:54” です!)。送信元は、ARP通信をへらすために、その情報を記憶して、2度目以降は覚えたMACアドレスですぐに通信を始める。
ルータとRIP
ルータは、隣接するサブネットの間に入る機器で、各サブネットにゲートウェイとなるインタフェースを持つ。ルータでは受け取ったパケットをどこに流すか…という経路情報が重要となる。
- 静的ルーティング – 末端のルータの設定で、管理者が経路を設定
- 動的ルーティング – 上流ルータでRIPにより設定
経路設定には2種類あり、(a)末端のルータではこのネットワーク番号はどのルータに送るという情報をルータに直接設定する静的ルーティングがとられる。(b)上流のルータでは、末端のルータの設定が変更されることがあるので、ルータ同士がルーティング情報を送りあう動的ルーティングがとられる。動的ルーティングでは、RIPというプロトコルにより、各サブネットのつながっている経路情報が送られてくる。この経路情報を見て、パケットのIPアドレスを見て、パケットの送り先を判断する。
((Windows の場合))
C:> ipconfig /all インタフェース名: IPv4アドレス............192.168.xx.xx サブネットマスク.........255.255.255.0 デフォルトゲートウェイ....192.168.xx.1 C:> arp -a インタフェース: 192.168.xx.xx 74-03-xx-xx-xx-xx 動的 192.168.xx.yy B0-05-xx-xx-xx-xx 動的 C:> netstat -r ネットワーク宛先 ネットマスク ゲートウェイ インタフェース メトリック 0.0.0.0 0.0.0.0 192.168.xx.1 192.168.xx.xx 45 192.168.xx.0 255.255.255.0 ....
((Unix の場合))
$ ifconfig -a en1: .... inet 192.168.xx.xx netmask 0xffffff00 ... $ arp -an .... (192.168.xx.xx) at 74:03:xx:xx:xx:xx ... .... (192.168.xx.yy) at b0:05:xx:xx:xx:xx ... $ netstat -rn Destination Gateway ... default 192.168.xx.1 ... 192.168.xx ...
プライベートアドレス
IPv4 では、32bit でコンピュータを識別することから、最大でも 232台≒40億台しか識別できない。実際、IPアドレスの管理団体では、2017年度には IPv4 アドレスは使い切った状態となっている。この対応として、その組織やその家庭内だけで使われる IPアドレス である、プライベートアドレスが用いられる。
- 10.0.0.0~10.255.255.255 / 8 – 大きな機関向け
- 172.16.0.0~172.31.255.255 / 12
- 192.168.0.0~192.168.255.255 /16 – 個人向け
プライベートアドレスを利用する組織では、インターネットに接続するルータでは NAT(もしくはNAPT) という機能を内蔵し、プライベートアドレスとグローバルアドレスの変換を行う。
IPv6アドレス
IPv4の32bit の IP アドレスでは、40億台のコンピュータを区別することしかできない。そこで、最近では 128bit の IPv6 アドレスが用いられる。IPv6 では、2004:6800:4004:0826:0000:0000:0000:0000:2003 (www.google.co.jp) といった16進数4桁(16bit)を8個を”:”区切りで書き連ねる書き方をする。ただし16進4桁の先行する0や、全部”0000″ は省略して、”2404:6800:4004:826::2003″ と書く。IPv6 は最近では普及がかなり進んでいるが、途中のルータなどがすべて IPv6 に対応する必要があり IPv4 しか使えない組織も多い。
DNS と nslookup
IPアドレスみたいな数字の羅列は覚えることが難しい。このためコンピュータの名前からIPアドレスを調べるサービスがあり、Domain Name Service(DNS) と呼ばれる。詳しい仕組みは ドメイン名の説明の際に行うが、IP アドレスの調べ方を説明する。
ドメイン名から、IP アドレスを調べるには、nslookup (もしくは dig) を使用する。
$ nslookup www.fukui-nct.ac.jp : Non-authoritative answer: Name: www.fukui-nct.ac.jp Address: 104.215.53.205 $ nslookup -query=A www.fukui-nct.ac.jp # IPv4 アドレスの取得 (同上) $ nslookup -query=AAAA www.google.co.jp # IPv6 アドレスの取得 : Non-authoritative answer: Name: www.google.co.jp Address: 2404:6800:4004:826::2003
理解確認
- Cクラスのサブネットに設置できるコンピュータの台数は何台?
- “172.”で始まるプライベートアドレスでは最大何台?
- 192.168.11.2/24 のコンピュータから、192.168.1.50にデータを送る場合、どのような処理が行われるか、IPアドレス、サブネットマスク、ゲートウェイ、ネットワーク番号を使って説明せよ。
- 同じサブネット内で相手のIPアドレスが与えられた時、どのようにパケットが送られるか、MACアドレスとARPを交えて説明せよ。
サブネットとWiFiネットワーク
CSMA/CD方式
Ethernet では、1本の線を共有するバス型であり、複数の機器が同時に信号を出力すると、電圧の高低がおかしい状態となる(衝突,コリジョン)ため、同時に信号を出さない工夫が必要となる。ただし、他の人が信号線を使っていないことを確認してから、信号を出せばいいけど、確認から信号を出すまでの遅延により、衝突を避けるのは難しい。
また、1本の線を共有する機器の数が増えてくると、衝突の発生の可能性が高まってくる。
これらの問題を解決するためのルールが CSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection)方式である。
- 機器は、信号を出す場合、信号線が空いている状態を待ち、出力を行う。
- もし、複数の機器が同時に信号を出した場合、電圧異常を検知したら衝突なので再送を試みる。
- 再送を行う場合には、乱数時間待つ。(機器が多い場合は、これでも衝突が起こるかもしれない)
- 乱数時間待っても信号線が空かない場合は、乱数時間の単位時間を倍にする。
どちらにしろ、バス共有する機器の台数が増えてくると、衝突の可能性は高まり、100台を越えるような状態は通信効率も悪くなる。
ただし、最近はスイッチングHUBで通信制御を行うことが一般的になり、CSMA/CD方式ではなくフロー制御が行われる。HUBのフロー制御では、基本的に衝突は起らないが、複数のネットワークケーブルから同時にHUBにデータが送られてくると、処理ができない場合がある。この際には CSMA/CD 方式での JAM 信号を使うことで衝突が発生しているように扱う。
スイッチングHUB
*BASE-T のような、HUB による接続では、複数の機器が異なる機器どうしで通信をする場合、その通信路を時分割多重するのではなく、通信相手に応じて内部回路を直接つながるように接続するスイッチングHUB(以下SW-HUB)が普及している。
ストア&フォワード方式では、フレーム(パケット)を全部読み込んで、宛先情報を確認してからパケットを送り出す方式。しかし、パケットを全部読み込んだ後の転送による遅延が問題となる。カットスルー方式は、フレーム先頭にあるMACアドレス(6byte)を読み込んで宛先が分かったらすぐにフレームを流す方式で遅延が少ない。しかしフレームにエラーが発生していてもそのままフレームを流してしまう欠点がある。この両者の利点を合わせた方式であるフラグメントフリー方式では、衝突を検出するために必要なフレームの先頭64byteを読み込んだ時点でフレームを流す方式。
バス型通信では、1本の線を共有するため、同じネットワーク内の別機器間の通信は、傍受することができる(タッピング)。しかし、SW-HUB の場合、機器同士が直接つながるので、傍受するのが困難であり、セキュリティ的にも望ましい。
SW-HUBでは、ネットワークケーブルがループ状になると、データ転送が無限に繰り返されるようになる(ブロードキャストストーム)ため、ネットワーク全体がダウンする。ブロードキャストフレームとは、新しくネットワークに入った機器が自分のMACアドレスを周囲の機器に伝えるためのパケット。ループが発生するとブロードキャストフレームが無限に繰り返し流れてしまう。
データリンク層とMACアドレス
前述のように、1つのバス型接続のネットワーク内部には、同時に設置できる機器の数には限界がある。このため、小さなネットワークに分割したもの(サブネット)を、ブリッジやルータで接続し、隣接するサブネットにサブネット内の通信情報が出ないように分割することを行う。
Ethernetに接続する機器は、機器ごとにユニークな番号(MACアドレス)を持っている。このMACアドレスは、8bit✕6個の48bitの値で、メーカー毎に割振られた範囲の値を、機器ごとに異なる値がついている。
Windows であれば、コマンドプロンプト(cmd.exe)を開き、ipconfig /allを実行するとMACアドレスを確認できる。
通信は、一般的に1500byte程のパケットを単位として送受信が行われる。サブネット内の通信では、自分宛のパケットかどうかをMACアドレスを見て受け取る。これらのレイヤーは、データリンク層と呼ばれる。
旧式のHUB(Dumb HUB)は、電気的に信号を増幅するだけなので、物理層(レイヤー1)だけで通信を行う。
スイッチングHUBは、MACアドレスを見て通信相手を判断(データリンク層/レイヤー2)する。最近では、SW-HUBのコネクタ毎に、パケットにタグを付加することで、1本のネットワーク経路に仮想的な複数のネットワークを構築するタグV-LANといった方式を使う場合もある。このような機能を持つSW-HUBは特にレイヤ2スイッチとも呼ばれる。
L2スイッチとL3スイッチ
サブネットに分割し、それぞれに異なるネットワーク番号を割り振り、中継するルータで FireWall を機能させることで、セキュリティを高めることが行われる。しかし、性能の高いスイッチングHUBは高価でもあり、1つのHUBに異なるネットワークを接続する必要がでてくることもある。この場合、IPアドレスを異なるネットワークの番号を偽装されると、データが盗み見られるかもしれない。
こういった相互に分離すべきネットワークであっても、柔軟なネットワーク構成とするためには、VLAN機能を持った L2スイッチ(レイヤ2スイッチングHUB) が使われる。タグVLAN機能付きのL2スイッチでは、特定のポートにVLANのタグ番号を割り当て、ポートに入る時にパケットに VLAN のタグ情報を付加し、そのパケットは同じ VLAN のタグをもつポートからしかデータを取り出せない。
L2スイッチ(レイヤ2スイッチ)は、機器のMACアドレスやパケットに付けられたVLANのタグ番号の情報(レイヤ2=データリンク層)でパケットの流れを制御している(下記OSI参照モデルの表を参照)。最近では、許可されていない機器がネットワークに侵入する不正侵入を防ぐために、登録されていないMACアドレスのパケットを通さないといった機能がある。
OSI参照モデルとレイヤ 第7層 アプリケーション層 アプリケーションの種類の規定 第6層 プレゼンテーション層 データフォーマットの交換 第5層 セッション層 コネクションの確立や切断などの管理 第4層 トランスポート層 パケットの分割合成や再送といった管理(TCP) 第3層 ネットワーク層 隣接するネットワーク間の通信(IPアドレス) 第2層 データリンク層 直接接続された機器間の通信(MACアドレス) 第1層 物理層 物理的な接続方法(コネクタや電圧など)
スイッチングHUBの中には、レイヤ3(IPアドレス)の情報でパケットの流れを制御するものもある。こういったスイッチは、L3スイッチ(レイヤ3スイッチ)と呼ばれるが、機能的にはルータと同じである。
一般的には、LANとWANを接続するための機器はルータ、LAN内部のネットワークを分離するためのものはL3スイッチと呼ぶ。
無線LANと暗号化
無線LAN(通称 WiFi)は、IEEE 802.11 にて規格が定められている。無線LANは、使う通信周波数で、2.4GHz帯を使うものと、最近増えてきた5GHz帯のものに分けられる。
- IEEE802.11a 5GHz帯を使う、最大54Mbps
- IEEE802.11b 2.4GHz帯を使う、最大11Mbps
- IEEE802.11g 2.4GHz帯を使う、最大54Mbps
- IEEE802.11n 2.4GHz/5GHzを使う、最大600Mbps
- IEEE802.11ac 5GHz帯を使う、最大6.9GBps
- IEEE802.11ad 60GHz 最大6.8Gbps
- IEEE802.11ax 2.4GHz/5GHz 最大 9.6Gbps
2.4GHz帯は、電子レンジで使う電波の周波数と重なるため、電波干渉を受けやすい。5GHz帯は、障害物の影響を受けやすい。
2.4GHzは様々な家電製品・電子機器で利用されているため、他の機器との干渉を受けやすく速度低下を起しやすいが、遠くまで電波が届きやすい。 5GHzは、この周波数帯を利用している機器が少ない為、干渉を受けにくく安定して通信できるが、あまり遠くには電波が届かず、通信が極端に不安定になる場合がある。
無線LANに接続する場合には、接続先(アクセスポイント)に付けられた名前(SSID)と、SSIDに割り振られたパスワードが必要となる。ただし無線は、電波で信号を飛ばすため、近くに行くだけで通信を傍受できる。このため、データの暗号化が必須となる。この暗号化は、そのアルゴリズムにより解読の困難さが変わる。
- WEP 64bit / 128bit – すでに古い暗号化で専用ソフトを使うとすぐに解読される可能性が高い。使うべきではない。
- WPA/WPA2 – 現時点の主流。
- 暗号化方式 TKIP や 暗号化アルゴリズム AES
無線LANでは、車でセキュリティの甘いアクセスポイント(暗号化無しやWEPを使うAP)を探し、その無線LANを使ってクラッキングなどをおこなう場合も多い。(ウォードライビング)
勝手に無線LANを使われないようにするために一般的には、(1)アクセスポイントに接続できる機器をMACアドレス(機器に割り当てられた48bitの固有値)で制限したり、(2)SSIDのステルス化(APが出す電波にSSIDを入れない方式)を行う場合も多い。ただし、これらの制限をかけても専用の機器を使えば通信は傍受可能。
携帯電話を使っていると、最近では高速大容量通信、多数同時接続、低遅延を特徴とする 5G 回線という言葉が出てくる。ここまでの話から、5G = 5GHz と勘違いするかもしれない。また、5G = 5G bps といった勘違いもあるかもしれないけど、5G = 第5世代移動通信システム(5th Generation) なので注意。
Ethernet LANとWAN接続
前回の物理層のLANの話に引き続き、WANの話を説明。
前回の復習
10BASE5, 10BASE2 では、同軸ケーブルにPCが接続。
10BASE5 トランシーバ
10BASE2 とT型分岐コネクタ
10BASE-T
Ethernet と通信速度
10BASE 5/2/-T といった 10BASE は、通信速度の上限が 10Mbps (bit per second) を意味する。100BASE-T といった 100BASE は、100Mbps を意味する。最近では、1000BASE-T は、1000 Mbps = 1Gbps の通信速度となる。最近では、10G BASE-T といった記載であれば、10Gbps を意味する。
バス接続(LAN)と転送速度
基本的な Ethernet の接続では、1本の通信路を共有するバス型接続のため、1本の信号線をパケット単位の通信の短い時間に区切って、送信を交代しながら行う時分割多重方式で行い通信を行う。パケット(イーサネットフレーム)とは、通信データを送る単位で最大1500byteとなっている。(MTU値:Maximum Transmission Unit)
例えば、10BASE のネットワークでつながった4台のパソコンで、A-B間、C-D間で同時に通信を行おうとすると、A-Bの通信中は、通信路が使用中のため、C-D間の通信はできない。このため、A-B間、C-D間の通信をパケットを送る毎に交代しながら通信路を利用する。
-
- 10BASE/5の PC-AとPC-Bの間で、音楽CD1枚のデータ(700MB)をを送る場合、通信時間はどの位かかるか?
- →答え:
700M[byte] = 5.6G[bit] なので、10M[bit/sec]で送ると、560[sec]
- →答え:
- 同じく、A-B間、C-D間で同時に送る場合は、通信時間はどのくらいかかるか?
- →答え:
同時に通信ができないので、通信路を切り替えながら送るため、倍の時間がかかる。よって、1120[sec]
- →答え:
- 10BASE/5の PC-AとPC-Bの間で、音楽CD1枚のデータ(700MB)をを送る場合、通信時間はどの位かかるか?
10BASE/T, 100BASE-T, *BASE-T では、HUBの内部構造に注意が必要。基本的には、見かけ上は木構造のように分配しているように見えるけど、内部はバス型の通信路に変わりはない。10BASE/T を利用している頃は、HUBは高価であり単純なバス型接続のHUB(Dumb HUB)であれば、C-D間通信中は、E-F間通信ができない。
しかしこれでは、通信速度が無駄になるので、最近はスイッチングHUBが利用される。このHUBは、通信相手に応じてHUB内部の通信路を切り分けるので、A-B間通信中でも、C-D間通信が可能となる。送り先を区別するためには通信機器ごとに固有値が割り振られているMACアドレスを使う。
理解確認
- 2つのDumb HUBで、A,B,C,D,E,Fのコンピュータが繋がっている時、A-C間、B-D間で音楽CD700MBのデータを送る場合、通信時間はどうなる?
電話線接続
同じ敷地内のネットワーク接続のLANどうしを、ネットワークで相互接続するWAN(Wide Area Network)では、昔は電話線を用いていた。電話は、本来音声を伝えるためのものであるため、0/1のデジタル信号を、音の信号に変換(変調)し、受信側は音をデジタル信号に(復調)する。これらを行う機器は、変復調装置(モデム)と呼ばれる。
変調の際には、0/1信号を、音の強弱(振幅変調/AM),音程の高低(周波数変調/FM),位相の前後(位相変調/PM)の組み合わせによって、送受信を行う。
当初は、300bps程度であったが、最終的には64Kbps 程度の通信速度が得られた。
これらの通信速度の改善のため、電話線にデジタル信号で送る ISDN , 電話線の音の信号の高帯域を使った通信 ADSLなどが用いられた。
最近では、光ファイバによる FTTH(Fiber To The Home) により 1Gbps を越える通信が可能となっている。
通信速度の理解と、古い時代の通信速度を体験してもらうため、試しに「2000ドット✕1500ドットのRGB画像(1ドット3byte)のデータ(無圧縮)を、9600bps で通信したら、どの程度の時間を要するか、いくらかかるのか?」を計算してみよう。ちなみに2000年頃は、携帯電話では、1Kbyteあたり10円の通信料がかかった。
→答え:
データ量 2000✕1500✕3✕8 [bit] = 72 M[bit]
通信速度 9600[bps] であれば、72 M / 9600 = 7500[sec] = 約2時間
通信費 72M[bit]/8/1000 = 9000[Kbyte]、
通信料金 9000[Kbyte]=9000[パケット]、1パケット(1KB)10円だから90,000円 😥
# 320✕240✕RGB(16bit)で圧縮で1/5であれば、それでも100円超え
J-PHONE(J-SH04,200年発売)で始めてカメラ付き携帯が登場。(解像度の低い自撮り写真をスマホで1枚送れば100円かかった時代)
光ファイバ
光ファイバでは、内側(コア)に屈折率の高い透過材料と、外側に屈折率の低い透過材料でケーブルを使い、屈折率の違う断面で全反射することを利用して光を遠くまで運ぶ。中身がガラス繊維なので、中の繊維が折れない工夫や、コネクタで光が減衰しないような工夫が重要。
ネットワークトポロジ
ネットワークに機器を接続する形態をネットワークトポロジと言う。
1本の線を共有するバス型、機器どうしがリング型に接続するリング型、中央の機器を通して接続されるスター型が基本となる。
基本的に、Ethernet は 1本の線を機器で共有するバス型。ただし、10BASE-T,100BASE-TX などの HUB で繋がることから、HUB を中心に広がるスター型とも言える。それぞれれのネットワークは相互につながることから、木の枝状に見えるものはツリー型と呼ばれる。また、上流ネットワークでは、機器が故障した場合に一切の通信ができなくなるのは問題があるため、複数のネットワークで相互に接続される。この場合、網が絡むような構造になることから、ネットワーク型と呼ばれる。
情報ネットワーク基礎・ガイダンス
情報ネットワーク基礎では、インターネットがどのような仕組みなのか、どのようにして動いているのかを説明する。TCP/IPって何? IPアドレスって何? セキュリティって何?
あなたが使っているネットワーク機能は?
共有:ネットワークプリンタ、ファイル共有…
(ハードウェアや情報を共有)
分散:大量のコンピュータで負荷分散、リスク分散…
(仕事を分散し全体で高速化, 沢山のコンピュータの1台が壊れても全体は動く)
ネットワークの歴史
昔のコンピュータは、開発にお金がかかるため1台のコンピュータを全員で使うもの(TSS: Time Sharing System/時分割システム)だった。冷戦の時代、軍の重要な処理を行うコンピュータでは、コンピュータのある所に核攻撃を加えられ、軍の機能がすべて動かなくなることは問題だった。1970年頃にアメリカ国防総省ARPANETがインターネットの原型(TCP/IP)を作る。
1980年代には、パソコンが同じ組織内でネットワークで繋がるようになる(LAN – Local Area Network)。1990年代には、LANどうしを遠隔地接続をするWAN(Wide Area Network)が発達。欧州原子核研究機構(CERN)で、ティム・バーナーズ=リーがWorld Wide Web/httpを開発(1989)。1995年、マイクロソフトの家庭用パソコンのOS Windows95の普及と共にWWWが普及する。
※1980年代:パソコン通信、1997年:weblog,1998年:Google検索、1999年:2ch、2003年:SNSの誕生、2006年:Twitter,Facebook(一般開放)
コンピュータインタフェースとネットワーク(物理層)
ネットワークにおける情報伝達において、伝送媒体(電気信号,光)にて0/1を伝えるための取り決めは、物理層という。まずは、コンピュータと機器の接続について考えると、シリアル通信とパラレル通信に分類できる。(シリアル通信は時間を細かく区切って複数の信号を送ることから時分割多重通信と呼ぶこともある)
通信の高速化に伴い、伝送の配線はコンデンサやインダクタンスを考慮したインピーダンスマッチングが重要となる。このため、高速通信のインタフェース両端は終端抵抗(ターミネータ)が必要だった。
1本の信号線で単位時間あたりのデータ通信速度が同じであれば、パラレル通信の方が高速であるが、長い通信路ではノイズ対策が重要でありノイズ対策をきちんとした線が複数本あるとケーブルが太くなることから、長い通信路ではシリアル通信が使われる。少ない信号線に対してノイズ対策をきちんと施すことができるので、長い通信路ではシリアル通信の方が高速となる。
パラレル通信の例:パラレルポート(プリンタ用)IEEE 1284、ハードディスクATA(IDE)、計測器GP-IB
シリアル通信の例:RS-232C、USB1.1、IEEE1394(FireWire)、USB2.0、USB3.0、USB3.1 Gen2、USB3.2 Gen2x2、Ethernet
Ethernetの種別
- 半二重通信 – 送信/受信を1本の信号線でおこなう。
- 全二重通信 – 送信用の信号線、受信用の信号線がそれぞれ別。送信受信を同時にできる。
- 10BASE/* – 10Mbit/sec
- 10BASE/5 – ケーブルに針を刺して増設 – 半二重通信/ターミネータが必要
- 10BASE/2 – T型BNCケーブルで延長 – 半二重通信/ターミネータが必要
- 10BASE/T – HUBで分配(終端抵抗などの問題はHUBが解決してくれる) – 全二重通信
- 100BASE-T – 100Mbit/sec / CAT5
- 信号線のノイズ対策は、シールドで覆う、信号線を”より線”(ツイストペア)にするなどの対策が重要
- シールドや”より線”の方式でカテゴリー CAT5,CAT6,CAT7 などで分類される
- 信号線のノイズ対策は、シールドで覆う、信号線を”より線”(ツイストペア)にするなどの対策が重要
- 1000BASE-T ギガビット – 1000Mbit/sec = 1Gbit/sec / CAT6
- 10000BASE , 10GBase – 10Gbit/sec / CAT7
![]() 同軸ケーブル |
![]() ツイストペアケーブル |
理解確認
- ネットワークにおける共有と分散について例をあげて説明せよ。
- TSSのような通信によるコンピュータと、TCP/IPによる通信網を比べ何がどう良いのか?
- シリアル通信とパラレル通信、それぞれの利点欠点は?
- 10BASE/5,10BASE/2,10BASE/Tのそれぞれの問題点は?
- CD1枚のデータを1000BASE-Tのネットワークで転送するのに何秒かかる?
- サンプリングレート44.1kHz,16bit,ステレオ2ch,74分
暗号化とセキュリティ対策
暗号化
有線LANで1本のケーブルを共有したり無線でデータをやりとりする場合、通信の盗聴が行われると危険である。
前回の授業で紹介したように、簡単な置換式暗号などでは暗号の解読ができてしまう。
暗号化アルゴリズム
1980年頃には DES(Data Encryption Standard) がアメリカでの標準的な暗号化として使われていたが、コンピュータの性能があがると共に解読される危険性が高まってきた。そこで2000年頃にはAES(Advanced Encryption Standard) が使われるようになった。どちらも共通鍵を用いてデータをブロック(固定長のデータ)単位で暗号化する共通鍵ブロック暗号方式であり、暗号の鍵の長いものは暗号解読が困難となっている。
1980年頃に開発された RSA 暗号(開発者の名前より) は、巨大な数字の素因数分解が困難なことを利用した、公開鍵暗号方式の1つである。
最近、量子コンピュータを用いた暗号解析が話題となっている。量子力学の原理を計算に応用したコンピュータで、スーパーコンピュータで1万年かかる暗号解読のような処理が200秒で終わってしまうかもしれないと言われている。
公開鍵暗号方式とは…
以前に使われていた暗号化の方式は、暗号化の鍵と復号化の鍵に同じものを用いる共通鍵方式であった。
しかし、この鍵をどうやって相手に渡すか…が問題となっていた。(鍵を相手に渡す瞬間のデータを盗聴されると危険)
このため、最近では公開鍵暗号方式が中心となっている。この方式は「暗号化するため専用の公開鍵」と、「暗号化を復号するための秘密鍵」をペアにして用いる。公開鍵は、暗号化するため専用なので、この鍵が他の人に見られても、暗号を復号することはできない。
公開鍵だけでは成り済ました別人と通信してしまう可能性[1]がある。そこで通信相手が本物かどうかを、認証局とよばれる第三者機関によって証明書で確認する。HTTPを暗号化したHTTPSでは、SSL証明書と呼ばれる。最近のブラウザでは、URLの左側の鍵マーク🔒からSSL証明書を確認することができる。
[1] DNSサーバの脆弱性を利用して、間違ったIPアドレスを教えさせる DNSポイズニング が行われると、利用者を間違ったサーバに接続させることが可能。
多要素認証
前に述べた暗号化の説明でも解説したように、パスワードはブルートフォース攻撃をうければ、いつかはパスワードが破られる危険性がある。こういった対策で最も重要な方法が、多要素認証(2段階認証)である。
この方式では、通常のパスワード入力の後に、以下の様な方式でワンタイムパスワードを入力することでログインが可能となる。
- 携帯電話にテキストメッセージ(SMS)でワンタイムパスワードを送る。
- かかってきた電話の機械音声のワンタイムパスワードを伝える。
- 時間で変化するワンタイムパスワード生成アプリの数字を入力する。
- メールで送られてきたワンタイムパスワードを含んだURLにアクセスする。
- 認証画面に表示されたQRコードのURLにアクセスする。
SMSやワンタイムパスワードアプリは、携帯電話などを常に持ち歩いていることが本人確認となっている。このような方式では、携帯電話などを失くすとシステムが使えなくなるので、バックアップコード(非常時用のパスワード)の保存や、login先とは別のメールアドレスを登録してあることが重要となる。
CAPTCHA
最近では、フリーで取得できるメールアドレスをプログラムで動くロボットで自動生成し、そのアカウントを使ってspamを送るなどの手口が問題となっている。このため、接続してきた相手が人間か判定することがある。判定には、読みづらく加工された英字を入力させたり、パズルを解かせるといった方法が使われる。
元々は、読みづらい文字はコンピュータでは画像解析しづらいことから、CAPTCHA が使われるが、最近では機械学習によって解析ができるようになってきた。
セキュリティキー
SMSやメールを使ったワンタイムパスワードによる多要素認証も、間にネットワークを挟むと多要素認証では問題となる。そこで、もっと複雑な暗号で多要素認証を行うために、セキュリティキーが使われる。
多要素認証が必要になると、パソコンにセキュリティキーを差し込むことで認証が行われる。現在では FIDO(Fast IDentity Online)や FIDO2 といった規格のものが普及している。
ハッカー
インターネットの用語でハッカー(Hacker)は、コンピュータを使って悪いことをする人という意味でよく使われている。しかし元々は「主にコンピュータや電気回路一般について常人より深く高度な技術的知識を持ち、その知識を利用して技術的な課題をクリアする人々のこと」(Wikipedia引用)という意味で使われていた。このため本来は「優秀なエンジニアへの最大級の誉め言葉」として使われており、ハッカー以上の技術者を ウィザード/wizard や グル/guru と呼称することもある。
しかしながら一部のハッカーの中で、その技術を悪用する人も出てきたことから、インターネットで悪いことをする人という意味で使われることも増えてきた。そこで、悪いことをする人は別な呼び方をしようということで、攻撃を加えるひとはクラッカーと呼ぶことが多い。最近では、正義のためのハッカー = ホワイト・ハッカー、悪いハッカー = ブラック・ハッカー という表現も使われるが、黒人差別主義につながる用語ということで、最近ではエシカル・ハッカー(高い倫理観と道徳心を兼ね備えている高い技術を持ったハッカー)という言葉を使う。
セキュリティ
バッファオーバーフロー
クラッカーがサーバを攻撃する場合、サーバ上のプログラムの脆弱性を利用する。
サーバプログラムの脆弱性を利用する最も典型的な攻撃方法には、バッファオーバーフローがある。
こういった問題が含まれるアプリケーションは危険であり、こういった脆弱性が見つかったらプログラムの更新が重要である。
マルウェア
ウィルスとは、パソコン利用者の上で動く、感染能力のある悪意のあるプログラム。機械語で書かれたものや、オフィスソフトのマクロ機能で動くものもある。パソコン内の情報を利用して、ウィルス付きメールを自動的に送ることが多い。(メールソフトを使うなど、人の操作が必要なもの)
ウィルスは元々、愉快犯によるものが一般的であったが、感染したパソコンのファイルを暗号化し、暗号化を復元するために、ネットバンキングへのお金の振り込みを要求(身代金=ransom)するようなランサムウェアが増えている。
ウォームとは、脆弱性のあるネットワークプログラムに、バッファオーバーフローを引き起こすようなデータを送りつけて、ウィルスを送りつけたり、そのコンピュータを踏み台にしてネットワークを利用した攻撃をさらに行うもの。(ネットワークを介して悪意のあるプログラムを起動させるもの)
通常、インターネットからの攻撃を防ぐために、各組織ではFireWall(後述)を設置している。一方、FireWallの内側では、防御されていることから内部のコンピュータからの攻撃に甘く、無防備であることが多い。そこで、FireWall の内側のコンピュータに、メールなどの添付ファイルでマルウェアを送付・感染させることで、FireWall内で被害が拡大することもある。
このような、FireWall 内部での感染・被害拡大を狙ったマルウェアは、トロイの木馬型と呼ばれる。
ネットワークを介した攻撃では、攻撃対象のコンピュータを乱数で得られたIPアドレスや、そのアドレスを1つづつ増やしながら攻撃を行うことが多い。こういった攻撃は絨毯攻撃と呼ぶ。
ボットとは、感染しても表面上は何もせず、クラッカーの動かすインターネットの掲示板などを監視し、そこに書かれた命令を見て spam 送信や、DoS攻撃を行うものがある。
DoS攻撃(Denial of Service attack) – サーバなどに大量のデータを送りつけたりすることで、サーバがその処理に手間取り、他の利用者のサービスに悪影響を引き起こさせる攻撃。
最近では、ウィルスやウォームの区別が難しいため、マルウェアと呼ぶ。
ファイアウォール
サーバで動かしているプログラムにバッファオーバーフローのような不備が残っていて、全世界のどこからでもこういった不備があるプログラムに簡単に接続できたとしたら、極めて危険である。
サーバで動くプログラムは、接続するためのポート番号が決まっているので、相手のコンピュータのIPアドレスが分かったら攻撃を仕掛けてくるかもしれない。
FireWall は、これらの接続をできなくするための方法で、例えば学内のWebサーバへの攻撃を防ぎたいのなら、ルータで「宛先ポート番号が80のパケットは廃棄」といった設定をすればよい。また、危険な攻撃を加えてくるコンピュータのIPアドレスがわかっている場合は、「送信元IPアドレスXX.XX.XX.XXのパケットは廃棄」という設定をすればよい。こういった、ポート番号やIPアドレスを見てパケットを遮断するルータは、FireWall(防火壁)と呼ばれる。
よくある設定であれば、ポート番号23(telnet),137,139(Windows ファイル共有),513(リモートデスクトップ)を禁止など(ブラックリスト型)、基本は全面禁止だけどポート番号22(ssh)は許可(ホワイトリスト型)など。
セキュリティ対策
- OSの更新・インストールアプリケーションの更新
バッファオーバーフローのような脆弱性が無いようにソフトウェアを更新することが重要。
Windows で、インストールされているソフトの更新では、winget が便利!!
- 不審なメールは開かない
添付ファイルにマルウェアがしかけられている可能性。リンクや画像ファイルを開くと、実際に使われているメールアドレスとして迷惑メールが増える可能性がある。 - 危険なWebサイトをアクセスしない
OSやブラウザの脆弱性から、マルウェア被害の可能性。 - パソコンで不要なサービスを動かさない
ファイル共有や、リモート接続のサーバを不用意に動かさない。 - ウィルス対策ソフトをインストール&更新
ウィルス対策ソフトは、新しく発生したマルウェアの命令などのパターンを保存しておき、同じパターンのものをマルウェアとして判定する。- マルウェアは日々新しいものが作られるため、ウィルス対策ソフトのメーカーから、常に新しいマルウェアのパターンをダウンロード&更新が重要。
- OSの脆弱性が見つかった場合、ウィルス対策ソフトのメーカーがマルウェアパターンを登録する前にマルウェアが届く場合がある。ゼロディ攻撃
- 特定の企業を攻撃する場合は、その企業専用のウィルスを作る場合もある。このためマルウェアパターンが無いため、ウィルス感染の可能性がある。標的型攻撃
- 最近では、ブラウザによるWebアクセスからの感染を防ぐために危険なURLへのアクセスを監視したり、危険なIPアドレス・ポート番号へのアクセスを監視する機能も含まれている。
- このパソコンは重要な情報が入っていないから、ウィルスに感染しても放置するのは危険。他のコンピュータを攻撃する踏み台、DoS攻撃のボット、トロイの木馬となって危険の元となる。
一般的に、Apple社のiPhone iOS では、ウィルス対策ソフトは不要である。これは、App Store でアプリを公開するためには、プログラムのソースコードを提出した上での審査があり、デバイスも、App Store 以外からのアプリをインストールできないため、マルウェアのインストールがほぼ不可能なためである。一方、Google社のAndroidは、アプリの審査が甘く、Google Play アプリ以外からのソフトのインストールも可能であり、ウィルス対策ソフトが必要である。
理解度確認
- Formsによる理解度確認テスト
- 標的型攻撃メールがウィルス対策ソフトでは防ぐことが難しい理由を述べよ。
- ファイアウォールでは、どういった処理を行うのか説明せよ。
リモート接続と暗号化
最初に、前回講義が雪のために休校となり、その間の理解度確認で体験してもらった問題の解説の後、リモート接続と暗号化について説明を行う。
リモート接続
サーバなどの管理をしていると、インターネットの先にあるコンピュータを操作したい場合が多い。こういった場合には、リモート接続機能を用いる。
リモート接続による相手側のコンピュータを操作する場合、相手側のコンピュータには リモート接続 用のサーバプログラムを起動しておく。こういったリモート接続を利用するのは、”unix” の利用者が多いが、”unix” では、サーバ のプログラムは、一般的にデーモン(daemon/守護神)と呼ばれる。[daemonとdemonの違い]
telnet と rlogin
telnet は、最も基本的なリモート接続の方法であり、TCP の 23 番ポートを使う。telnetのサーバ(telnetd – telnet daemon)は、送られてくるタイプされた文字を unix の shell (キーボードでの命令を実行するプログラム) に渡し、shell の実行結果の文字を接続元に送り返す。
telnet のクライアントの基本的動作は、タイプされた文字を送って、受信した文字データを表示するだけなので、通信の動作の確認にもよく使われる。
例えば、Webサーバは、80番ポートに”GET /ページの場所”を送ると、HTMLデータが受信できる。この手順を telnet で行う場合は、以下の様に行う。
rlogin は、TCP の 513 番ポートを使うリモート接続用のソフトで、サーバで rlogind を起動しておく。unix で rlogin クライアントを使うと、リモート側で命令を実行したりファイルをコピーすることができる。
こういったリモート接続ができると、ネットワークの向こう側のコンピュータを自由に操作できる一方で、login のパスワードが破られるとコンピュータを悪用されたり情報を盗まれる可能性がある。
特に、telnet , rlogin では、通信の内容が暗号化されないため、パケット盗聴(後述)されると、サーバを悪用されてしまう。このため telnet や rlogin による遠隔処理は、使うべきではない。
どうしても使うのであれば、ルータや firewall で、ポート番号 23 , 513 などは、遮断し接続するネットワークを限定するのが一般的である。
ssh(secure shell)
暗号化されない rlogin の通信を暗号化により安全に実行できるようにしたものが、ssh (secure shell) である。
ssh は、通常では TCP の 22 番ポートを使う。しかし、暗号化されていたとしてもパスワード破りなどの危険性があるため、ポート番号を変更したり、特定のコンピュータに対してのみ接続許可を与え、安全対策を行う。
リモートデスクトップ
Windows では、コンピュータの操作では、マウス操作が中心(GUI: Graphical User Interface)となる。これに比べ、telnet,rlogin,ssh などの方法では、キーボードによる操作が中心(CUI: Character User Interface)であり、初心者には難しい。マウス操作などが必要であればリモートデスクトップ(remote desktop)が用いられる。
remote desktop では、サーバのディスプレイ画面の情報をクライアントに送り、クライアントの操作(キーボード入力やマウス操作)がサーバに送られ、サーバのコンピュータを自由に操作ができる。
sshやリモートデスクトップは、遠隔地のコンピュータを自由に操作できることから、様々なコンピュータを管理している場合、広く使われている。しかしながら、クラッキングなどの悪用の危険があるため、sshサーバ、リモートデスクトップサーバなどのソフトは、通常利用者は起動しないこと。
クラッキングなどを行う場合、ウィルスを使ってリモート接続のためのソフトを動かされると、相手のコンピュータを自由に使える。このような、本来の使い方ではない侵入経路は、バックドアなどと呼ばれる。
暗号化
Ethernet では1本の通信線を共有したり、WiFiのような無線通信では、通信データの盗聴が簡単にできてしまう。クラッカーは、通信データの中から”login, password” といった文字を検索し、その近辺の文字を探すことでパスワードを盗み出す。
このようなことを防ぐために通信データの暗号化は重要な方法である。
暗号化アルゴリズム
暗号化の最も原始的な方法が、置換式 と呼ばれる方法で、特定の文字を別な文字に変更する。rot13は、A→N,B→Oに置き換える暗号。コナン・ドイル原作のシャーロック・ホームズに出てくる踊る人形などもこれに相当する。これらの方法では、アルファベットの文字の出現頻度から元の文を想像することで解読されてしまう。
エニグマ(Enigma)は、第2次世界大戦でナチス・ドイツが用いたロータ式暗号機であり、置換式の解読方法が不可能であった。しかし、イギリスのアラン・チューリングが電気式の解読器(ボンブ)を開発することで暗号解読が可能となった。この解読器が現在のコンピュータの原型となっている。
チューリングによる暗号解読は、映画「イミテーションゲーム」を参照。
最近では、様々な暗号化アルゴリズムが開発されており、古くは “DES, AES“といったアルゴリズムが使われていたが、コンピュータの性能の向上と共に、解読に必要な時間が短くなったことから、RSA といった新しい暗号化方式が考えられ、さらに暗号化の鍵を長くすることで解読に要する時間を長くするようになっている。
パスワード解読方法
ログインなどで使われるパスワードは、どのように破られるのだろうか?
- ブルートフォース攻撃:単純に全ての文字を試す方式。文字の組み合わせ問題なので、パスワード文字列長をNとした場合、数字だけ(10N)とか英字だけ(26N)といった組み合わせでは、短時間に解読されてしまう。数字,大文字,小文字,記号などを交えたパスワードが理想。
- 英単語辞書を用いた辞書攻撃:パスワードが長い場合、文字列の全ての組み合わせを試すには長い時間が必要となる。しかし、パスワードはユーザが記憶して使うことから覚えやすい単語が使われる。このため英単語辞書の文字を組み合わせることで、解読時間を短くできる場合がある。
- 漏えいパスワードによる辞書攻撃:サーバへのリモート接続などができてしまった場合、パスワード情報が盗まれる場合がある。この時、別なサイトに同じパスワードを使っていると、その漏えいしたパスワードで別のサイトも接続ができてしまう。これらのことから、同じパスワードを使いまわすことは避けるべきである。
- ソーシャル攻撃:パスワードには、簡単に覚えられるように自宅の電話番号、誕生日、家族の名前といったものを使う人が多い。このため、SNS で相手に友達登録をしてもうことで、こういった情報を手に入れ、パスワードを破る方法。最近の有名人の個人情報漏洩はこの手の攻撃が多い。
ソーシャル攻撃は、”元クラッカー” ケビン・ミトニックが有名
攻撃が難しい暗号化へ
先に述べたような、login に使うパスワードなどは、ブルートフォース攻撃をうけると解読は時間の問題となる。これらの対策として毎回違う鍵(パスワード)を使えばいい。
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- 暗号表:置換式で読み取られるのを防ぐために、置換する文字の表を沢山作っておき、別の方法でその度毎に置換表を変更する
- ワンタイムパスワード:使い捨てのパスワードをあらかじめ沢山作っておき、接続の度に次のパスワードを用いる方式。あるいは、時間から特殊な計算方法で生成されるパスワード。時間と共に変化するのでその度毎に違うパスワードとなる。毎回違うパスワードを入力するため、パスワード表を常に持ち歩いたり、入力が面倒なので数字だけを使うことが多く、この方法だけでは使いにくい。
理解度確認
- ファイアウォールの仕組みを説明せよ。