ホーム » 2022 » 12月 » 15

日別アーカイブ: 2022年12月15日

2022年12月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

検索・リンク

ハッシュ衝突対策と文字列のハッシュ関数

前回の授業で説明したハッシュ法は、データから簡単な計算(ハッシュ関数)で求まるハッシュ値をデータの記憶場所とする。しかし、異なるデータでも同じハッシュ値が求まった場合、どうすれば良いか?

ハッシュ法を簡単なイメージで説明すると、100個の椅子(ハッシュ表)が用意されていて、1クラスの学生が自分の電話番号の末尾2桁(ハッシュ関数)の場所(ハッシュ値)に座るようなもの。自分のイスに座ろうとしたら、同じハッシュ値の人が先に座っていたら、どこに座るべきだろうか?

オープンアドレス法

先の椅子取りゲームの例え話であれば、先に座っている人がいた場合、最も簡単な椅子に座る方法は、隣が空いているか確認して空いていたらそこに座ればいい。

これをプログラムにしてみると、以下のようになる。このハッシュ法は、求まったアドレスの場所にこだわらない方式でオープンアドレス法と呼ばれる。

// オープンアドレス法
// table[] は大域変数で0で初期化されているものとする。

// 配列に電話番号と名前を保存
void entry( int phone , name ) {
   int idx = hash_func( phone ) ;

   while( table[ idx ].phone != 0 )
      idx = (idx + 1) % HASH_SIZE ; // ひとつ後ろの席
   }                                // idx++ でないのは何故?
   table[ idx ].phone = phone ;
   strcpy( table[ idx ].name , name ) ;
}

// 電話番号から名前を調べる
char* search( int phone ) {
   int idx = hash_func( phone ) ;

   while( table[ idx ].phone != 0 ) {
      if ( table[ idx ].phone == phone )
         return table[ idx ].name ;
      idx = (idx + 1) % HASH_SIZE ; // ひとつ後ろの席
   }                                // idx++ でないのは何故?
   return NULL ; // 見つからなかった
}

注意:このプログラムは、ハッシュ表すべてにデータが埋まった場合、無限ループとなるので、実際にはもう少し改良が必要である。

この実装方法であれば、ハッシュ表にデータが少ない場合は、ハッシュ値を計算すれば終わり。よって、処理時間のオーダはO(1)となる。しかし、ハッシュ表がほぼ埋まっている状態だと、残りわずかな空き場所を探すようなもの。

チェイン法

前に述べたオープンアドレス法は、ハッシュ衝突が発生した場合、別のハッシュ値を求めそこに格納する。配列で実装した場合であれば、ハッシュ表のサイズ以上の データ件数を保存することはできない。

チェイン法は、同じハッシュ値のデータをグループ化して保存する方法。 同じハッシュ値のデータは、リスト構造とするのが一般的。ハッシュ値を求めたら、そのリスト構造の中からひとつづつ目的のデータを探す処理となる。

この処理にかかる時間は、データ件数が少なければ、O(1) となる。しかし、ハッシュ表のサイズよりかなり多いデータ件数が保存されているのであれば、ハッシュ表の先に平均「N/ハッシュ表サイズ」件のデータがリスト構造で並んでいることになるので、O(N) となってしまう。

#define SIZE 100
int hash_func( int ph ) {
   return ph % SIZE ;
}
struct PhoneNameList {
   int phone ;
   char name[ 20 ] ;
   struct PhoneNameList* next ;
} ;
struct PhoneNameList* hash[ SIZE ] ; // NULLで初期化

struct PhoneNameList* cons( int ph ,
                            char* nm ,
                            struct PhoneNameList* nx ) {
   struct PhoneNameList* ans ;
   ans = (struct PhoneNameList*)malloc(
                      sizeof( struct PhoneNameList ) ) ;
   if ( ans != NULL ) {
      ans->phone = ph ;
      strcpy( ans->name , nm ) ;
      ans->next = nx ;
   }
   return ans ;
}

void entry( int phone , char* name ) {
   int idx = hash_func( phone ) ;
   hash[ idx ] = cons( phone , name , hash[ idx ] ) ;
}
char* search( int phone ) {
   int idx = hash_func( phone ) ;
   struct PhoneNameList* p ;
   for( p = hash[ idx ] ; p != NULL ; p = p->next ) {
      if ( p->phone == phone )
         return p->name ;
   }
   return NULL ;
}

文字列のハッシュ値

ここまでで説明した事例は、電話番号をキーとするものであり、余りを求めるだけといったような簡単な計算で、ハッシュ値が求められた。しかし、一般的には文字列といったような名前から、ハッシュ値が欲しいことが普通だろう。

ハッシュ値は、簡単な計算で、見た目デタラメな値が求まればいい。 (ただしく言えば、ハッシュ値の出現確率が極力一様であること)。一見規則性が解らない値として、文字であれば文字コードが考えられる。複数の文字で、これらの文字コードを加えるなどの計算をすれば、 偏りの少ない値を取り出すことができる。

int hash_func( char s[] ) {
   int sum = 0 ;
   for( int i = 0 ; s[i] != '¥0' ; i++ ) {
      sum = sum + s[i] ;
   }
   return sum % SIZE ;
}

文字列順で異なる値となるように

前述のハッシュ関数は、”ABC”さんと”CBA”さんでは、同じハッシュ値が求まってしまう。文字列順で異なる値が求まるように改良してみる。

int hash_func( char s[] ) {
   int sum = 0 ;
   for( int i = 0 ; s[i] != '¥0' ; i++ ) {
      sum = sum*2 + s[i] ;
      // sum = (sum * 小さい素数 + s[i]) % 大きい素数 ;
   }
   return sum % SIZE ;
}

上記のプログラムの、sum = sum*2 + s[i] では、2倍していった数を最後に SIZE で割っているだけなので、文字が長い場合文字コードの値の違いが sum の中に残らない場合も考えられる。こういった場合には、以下のような方法も考えられる。大きな素数で割ることで、余りの中に、元の数の値の違いの影響が残る。これは、疑似乱数生成での剰余法(or 線形合同法)の考え方を取り入れた方法ともいえる。

#define PRIME_B 大きな素数
#define PRIME_A 小さな素数

int hash_func( char s[] ) {
   int sum = 0 ;
   for( int i = 0 ; s[i] != '¥0' ; i++ ) {
      sum = (sum * PRIME_A + s[i]) % PRIME_B ;
   }
   return sum % SIZE ;
}

ポート番号とメールが届くまで

ポート番号

サーバとなるコンピュータでは、1台のコンピュータで様々なサービスを提供することから、サービスを区別する必要がある。このためにポート番号が使われる。1台毎のコンピュータに割り当てられたIPアドレスを電話番号に例えるなら、ポート番号は内線電話番号に例えることができる。

サーバと通信する場合、サービスを提供するプログラムに応じて標準的なポート番号が決められている。サーバに届いたパケットは、ポート番号に応じてサービスプログラムを起動する。以下の表によく使われるポート番号の一例をあげる。

 

ポート番号 プロトコル 概要
20 ftp ファイル転送(データ)
21 ftp ファイル転送(命令)
22 ssh リモート接続(暗号対策あり)
23 telnet リモート接続(暗号化なし)
25 smtp 電子メール送信
465 smtps 電子メール送信(暗号化)
53 DNS ドメインネームサービス
80 http Web
443 https Web(暗号化)
110 pop3 メールダウンロード
995 pop3s メールダウンロード(暗号化)
143 imap メール閲覧
993 imaps メール閲覧(暗号化)
137,138,139 netbios Windows のファイル共有

 

通信パケットには、送信元IPアドレス送信元ポート番号送信先IPアドレス送信先ポート番号の情報がある。
パソコンがサーバと通信する場合は、(1)自分のIPアドレスを送信元IPアドレス、(2)その時に使われていないポート番号をランダムに選び、送信元ポート番号とする。(3)通信相手のIPアドレスと、(4)通信先のサービスのポート番号をセットして、パケットを送付する。サーバは、サービスを要求してきたクライアントの送信先ポート番号をみて、対応するサーバのプログラムを起動する。プログラムの結果を送り返す時は、送信元と送信先のIPアドレス、ポート番号を入替えてパケットを送信する。

1024未満のポート番号(ウェルノウンポート番号)は、サービスを受けとるために用途が決められているので、通常の通信プログラムでは使われない。これ以外のポート番号は、通信の送信元のポート番号として使われ、エフェメラルポート番号と呼ばれる。

ファイアウォール

ネットワークのサービスの中には、組織外に見せたくないものも多い。また、インターネットでは、悪意のあるプログラマが通信して攻撃を加えてくるかもしれない。こういった場合には、ルータなどで、パケットの送信相手のポート番号や、送信元のIPアドレスをみて、パケットを廃棄する場合がある。こういう、ネットワークからの攻撃を防ぐ装置は、ファイアウォール(防火壁)と呼ばれる。

メールが届くまで

電子メールは、非常に迅速にメッセージを相手に届けることができ、そのメッセージを蓄積・加工・編集・転送できる。また、音声や画像といった情報も、複雑な文字情報に置き換えることで、転送できるようになっている。

メールは、利用者のコンピュータに直接届けられるわけではなく、多くの場合はメールを蓄積するメールサーバに送られる。利用者がメールを読む場合、メールサーバから自分の端末に蓄積されたメッセージを読み込み、メッセージを確認する。このメールのやり取りにおいて、メールを送る時、あるいはメールサーバ間でメールを中継するときには、SMTP(Simple Mail Transfer Protocol) が用いられる。一方、メールサーバからメール
を読み出すときには、POP(Post Office Protocol)IMAP(Internet Message Access Protocol) と呼ばれるプロトコルが用いられる。最近では、IMAPを使ったメールの読み書きをブラウザの中で実行できる WebMail が使われることが増えている。

メールが届くまでの流れは、aさんが”foo@bar.jp”に送る場合、

  1. aさんは、自分の組織のメールサーバに、SMTPでメールを送る。
  2. メールサーバは、メールアドレスのコンピュータ名部分”bar.jp”をDNSに問合せ、そのIPアドレスを調べ、そのコンピュータにSMTPでメールを送る。
  3. “bar.jp”のメールサーバは、メールアドレスのユーザ名部分を取り出し、各ユーザ毎にメールを保存する。
  4. “foo”さんは、自分宛のメールを確認するために、POPまたはIMAPで自分のメールサーバ”bar.jp”に接続し、ユーザ名,パスワードで認証して自分宛のメールを受け取る。

上記の手順2で、相手のメールサーバに直接送れない場合は、コンピュータ名のMXレコードをDNSに問合せを行い、そこで得られたメールサーバに中継を依頼する。

$ nslookup -query=MX fukui-nct.ac.jp.
Non-authoritative answer:
fukui-nct.ac.jp mail exchanger = 10 fukuinct-ac-jp01c.mail.protection.outlook.com.

POPは、一般的に、メールサーバから自分のメールをダウンロードして削除してしまうため、メールはダウンロードしたコンピュータにしか残らない。このため、様々なコンピュータでメールを読む人には不便となってきた。IMAPでは、メールを読んでも、サーバに残しておく方式であり、別のコンピュータを使う時にもサーバに残っているメールを読むことができる。

通常、SMTPでメールを送る際には、ユーザ認証が行われない。このため、ウィルスに感染したプログラムから迷惑メールを出すことに利用されることが多い。そこで、SMTP送信の前にPOP/IMAP接続しユーザ認証を行った時だけメールを送れる、POP before SMTP(or IMAP before SMTP)といった方式をとる場合もある。

理解度確認

  • メールの送信から受信までの処理を、それに使われるプロトコルを交えて説明せよ。

システム

最新の投稿(電子情報)

アーカイブ

カテゴリー