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抽象クラス(純粋仮想基底クラス)

前回説明した仮想関数では、基底クラスから派生させたクラスを作り、そのデータが混在してもクラスに応じた関数(仮想関数)を呼び出すことができる。

この仮想関数の機能を逆手にとったプログラムの記述方法として、抽象クラス(純粋仮想基底クラス)がある。その使い方を説明する。

JavaのGUIにおける派生の使い方

先週の講義では、派生を使ったプログラミングは、GUI で使われていることを紹介したが、例として Java のプログラミングスタイルを少し紹介する。

例えば、Java で アプレット(ブラウザの中で動かすJavaプログラム)を作る場合の、最小のサンプルプログラムは、以下のようになる。

import java.applet.Applet; // C言語でいうところの、Applet 関連の処理を include
import java.awt.Graphics;

public class App1 extends Applet {  // Applet クラスから、App1 クラスを派生
    public void paint(Graphics g) { // 画面にApp1を表示する必要がある時に呼び出される。
        g.drawString("Hello World." , 100 , 100);
    }
}

この例では、ブラウザのGUIを管理する Applet クラスから、App1 というクラスを派生(extendsキーワード)し、App1 固有の処理として、paint() メソッドを定義している。GUI のプログラミングでは、本来ならマウスが押された場合の処理などを記述する必要があるが、このプログラムでは paint() 以外何も書かれていない。これはマウス処理などは、基底クラスのAppletのマウス処理が継承されるので、省略してもうまく動くようになっている。

純粋仮想基底クラス

純粋仮想基底クラスとは、見かけ上はデータを何も持たないクラスであり、本来なら意味がないデータ構造となってしまう。しかし、派生クラスで要素となるデータと仮想関数で機能を与えることで、基底クラスという共通部分から便利な活用ができる。(実際には、型を区別するための型情報を持っている)

例えば、C言語であれば一つの配列に、整数、文字列、実数といった異なる型のデータを記憶させることは本来ならできない。しかし、以下のような処理を記載すれば、可能となる。

C言語では、1つの記憶域を共有するために共用体(union)を使うが、C++では仮想関数が使えるようになり、型の管理をプログラマーが行う必要のある「面倒で危険な」共用体を使う必要はなくなった。

// 純粋仮想基底クラス
class Object {
public:
   virtual void print() const = 0 ;
   // 中身の無い純粋基底クラスで、
   // 仮想関数を記述しない時の書き方。
} ;

// 整数データの派生クラス
class IntObject : public Object {
private:
   int data ;
public:
   IntObject( int x ) {
      data = x ;
   }
   virtual void print() const {
      printf( "%d\n" , data ) ;
   }
} ;

// 文字列の派生クラス
class StringObject : public Object {
private:
   char data[ 100 ] ;
public:
   StringObject( const char* s ) {
      strcpy( data , s ) ;
   }
   virtual void print() const {
      printf( "%s\n" , data ) ;
   }
} ;

// 実数の派生クラス
class DoubleObject : public Object {
private:
   double data ;
public:
   DoubleObject( double x ) {
      data = x ;
   }
   virtual void print() const {
      printf( "%lf\n" , data ) ;
   }
} ;

// 動作確認
int main() {
   Object* data[3] = {
      new IntObject( 123 ) ,
      new StringObject( "abc" ) ,
      new DoubleObject( 1.23 ) ,
   } ;
   for( int i = 0 ; i < 3 ; i++ ) { // 123
      data[i]->print() ;            // abc
   }                                // 1.23 と表示
   return 0 ;
} ;

このプログラムでは、純粋仮想基底クラスObjectから、整数IntObject, 文字列StringObject, 実数DoubleObject を派生させ、そのデータを new により生成し、Objectの配列に保存している。

仮想関数を使うと、Object型の中に自動的に型情報が保存されるようになる。一般的な実装では、各派生クラス用の仮想関数のポインタテーブル(vtable)へのポインタが使われる。

Javaなどのオブジェクト指向言語では、全てのクラス階層のスーパークラスとして、Object を持つように作られている。

様々な型に適用できるプログラム

次に、純粋仮想基底クラスの特徴を応用したプログラムの作り方を説明する。

例えば、以下のような最大選択法で配列を並び替えるプログラムがあったとする。

int a[5] = { 11, 55, 22, 44, 33 } ;

void my_sort( int array[] , int size ) {
   for( int i = 0 ; i < size - 1 ; i++ ) {
      int max = i ;
      for( int j = i + 1 ; j < size ; j++ ) {
         if ( array[j] > array[max] )
            max = j ;
      }
      int tmp = array[i] ;
      array[i] = array[max] ;
      array[max] = tmp ;
   }
}
int main() {
   my_sort( a , 5 ) ;
}

しかし、この整数を並び替えるプログラムがあっても、文字列の並び替えや、実数の並び替えがしたい場合には、改めて文字列用並び替えの関数を作らなければいけない。しかも、ほとんどが同じような処理で、改めて指定された型のためのプログラムを作るのは面倒である。

C言語のデータの並び替えを行う、qsort() では、関数ポインタを用いることで、様々なデータの並び替えができる。しかし、1件あたりのデータサイズや、データ実体へのポインタを正しく理解する必要がある。

#include <stdio.h>
#include <stdlib.h>
int a[ 4 ] = { 11, 33, 22, 44 } ;
double b[ 3 ] = { 1.23 , 5.55 , 0.11 } ;
// 並び替えを行いたいデータ専用の比較関数を作る。
// a>bなら+1, a=bなら0, a<bなら-1を返す関数
int cmp_int( int* pa , int* pb ) { // int型用コールバック関数
   return *pa - *pb ;
}
int cmp_double( double* pa , double* pb ) { // double型用コールバック関数
   if ( *pa == *pb )
      return 0 ;
   else if ( *pa > *pb )
      return 1 ;
   else
      return -1 ;
}
int main() {                                   // C言語の怖さ
   qsort( a , 4 , sizeof( int ) ,              //   このあたりの引数を書き間違えると
          (int(*)(void*,void*)) cmp_int ) ;    //   とんでもない目にあう。
   qsort( b , 3 , sizeof( double ) ,
          (int(*)(void*,void*)) cmp_double ) ;
} 

このように、自分が作っておいた関数のポインタを、関数に渡して呼び出してもらう方法は、コールバックと呼ぶ。
JavaScript などの言語では、こういったコールバックを使ったコーディングがよく使われる。

// コールバック関数 f を呼び出す関数
function exec_callback( var f ) {
   f() ;
}
// コールバックされる関数 foo()
function foo() {
   console.log( "foo()" ) ;
}
// foo() を実行する。
exec_callback( foo ) ;
// 無名関数を実行する。
exec_callback( function() {
                  console.log( "anonymous" ) ;
               } ) ;

任意のデータを並び替え

class Object {
public:
   virtual void print() const = 0 ;
   virtual int  cmp( Object* ) = 0 ;
} ;

// 整数データの派生クラス
class IntObject : public Object {
private:
   int data ;
public:
   IntObject( int x ) {
      data = x ;
   }
   virtual void print() const {
      printf( "%d\n" , data ) ;
   }
   virtual int cmp( Object* p ) {
      int pdata = ((IntObject*)p)->data ;  // 本当はこのキャストが危険
      return data - pdata ;                //  ↓安全な実装したいなら↓
   }                                       // IntObject* pi = dynamic_cast<IntObject*>(p) ;
} ;                                        // return pi != NULL ? data - pi->data : 0 ;

// 文字列の派生クラス
class StringObject : public Object {
private:
   char data[ 100 ] ;
public:
   StringObject( const char* s ) {
      strcpy( data , s ) ;
   }
   virtual void print() const {
      printf( "%s\n" , data ) ;
   }
   virtual int cmp( Object* p ) {
      char* pdata = ((StringObject*)p)->data ;
      return strcmp( data , pdata ) ; // 文字列比較関数
   }
} ;

// 実数の派生クラス
class DoubleObject : public Object {
private:
   double data ;
public:
   DoubleObject( double x ) {
      data = x ;
   }
   virtual void print() const {
      printf( "%lf\n" , data ) ;
   }
   virtual int cmp( Object* p ) {
      double pdata = ((DoubleObject*)p)->data ;
      if ( data == pdata )
         return 0 ;
      else if ( data > pdata )
         return 1 ;
      else
         return -1 ;
   }
} ;

// Objectからの派生クラスでcmp()メソッドを
//   持ってさえいれば、どんな型でもソートができる。
void my_sort( Object* array[] , int size ) {
   for( int i = 0 ; i < size - 1 ; i++ ) {
      int max = i ;
      for( int j = i + 1 ; j < size ; j++ ) {
         if ( array[j]->cmp( array[max] ) > 0 )
            max = j ;
      }
      Object* tmp = array[i] ;
      array[i] = array[max] ;
      array[max] = tmp ;
   }
}
// 動作確認
int main() {
   Object* idata[3] = {
      new IntObject( 11 ) ,
      new IntObject( 33 ) ,
      new IntObject( 22 ) ,
   } ;
   Object* sdata[3] = {
      new StringObject( "abc" ) ,
      new StringObject( "defghi" ) ,
      new StringObject( "c" ) ,
   } ;
   my_sort( idata , 3 ) ; // 整数のソート
   for( int i = 0 ; i < 3 ; i++ )
      idata[i]->print() ;
   my_sort( sdata , 3 ) ; // 文字列のソート
   for( int i = 0 ; i < 3 ; i++ )
      sdata[i]->print() ;
   return 0 ;
} ;

このような方式でプログラムを作っておけば、新しいデータ構造がでてきてもソートのプログラムを作らなくても、比較専用の関数 cmp() を書くだけで良い。

ただし、この並び替えの例では、Object* を IntObject* に強制的に型変換している。

また、このプログラムでは、データを保管するために new でポインタを保管し、データの比較をするために仮想関数の呼び出しを行うことから、メモリの使用効率も処理効率でもあまりよくない。

こういう場合、最近の C++ ではテンプレート機能が使われる。

template <typename T>
void my_sort( T a[] , int size ) {
  for( int i = 0 ; i < size - 1 ; i++ ) {
    int max = i ;
    for( int j = i + 1 ; j < size ; j++ ) { if ( a[j] > a[max] )
        max = j ;
    }
    T  tmp = a[i] ;
    a[i] = a[max] ;
    a[max] = tmp ;
  }
}

int main() {
  int idata[ 5 ] = { 3, 4, 5 , 1 , 2 } ;
  double fdata[ 4 ] = { 1.23 , 0.1 , 3.4 , 5.6 } ;

  // typename T = int で int::mysort() が作られる
  my_sort( idata , 5 ) ;
  for( int i = 0 ; i < 5 ; i++ )
    printf( "%d " , idata[i] ) ;
  printf( "\n" ) ;

  // typename T = double で double::mysort() が作られる
  my_sort( fdata , 4 ) ;
  for( int i = 0 ; i < 4 ; i++ )
    printf( "%lf " , fdata[i] ) ;
  printf( "\n" ) ;
  return 0 ;
}

C++のテンプレート機能は、my_sort( int[] , int ) で呼び出されると、typename T = int で、整数型用の my_sort() の処理が自動的に作られる。同じく、my_sort( double[] , int ) で呼び出されると、typename = double で 実数型用の my_sort() が作られる。

テンプレート機能では、各型用のコードが自動的に複数生成されるという意味では、出来上がったコードがコンパクトという訳ではない。

派生と継承と仮想関数

前回の派生と継承のイメージを改めて記載する。

// 基底クラス
class Person {
private:
   char name[ 20 ] ;
   int  age ;
public:
   Person( const char s[] , int x )
     : age( x ) {
      strcpy( name , s ) ;
   }
   void print() {
      printf( "%s %d\n" , name , age ) ;
   }
} ;
// 派生クラス(Student は Person から派生)
class Student : public Person {
private:
   char dep[ 20 ] ;
   int  grade ;
public:
   Student( const char s[] , int x ,
            const char d[] , int g )
            : Person( s , x ) // 基底クラスのコンストラクタ
   {  // 追加された処理
      strcpy( dep , d ) ;
      grade = g ;
   }
   void print() {
      Person::print() ;       // 基底クラスPersonで名前と年齢を表示
      printf( "- %s %d\n" , dep , grade ) ;
   }
} ;
int main() {
   Person saitoh( "t-saitoh" , 55 ) ;
   Student yama( "yamada" , 21 , "ES" , 1 ) ;
   Student nomu( "nomura" , 22 , "PS" , 2 ) ; 
   saitoh.print() ; // 表示 t-saitoh 55
   yama.print() ;   // 表示 yamada 21
                    //      - ES 1
   nomu.print() ;   // 表示 nomura 22
   return 0 ;       //      - PS 2
}

このような処理でのデータ構造は、次のようなイメージで表される。

派生クラスでの問題提起

基底クラスのオブジェクトと、派生クラスのオブジェクトを混在してプログラムを記述したらどうなるであろうか?
上記の例では、Person オブジェクトと、Student オブジェクトがあったが、それをひとまとめで扱いたいこともある。

以下の処理では、Person型の saitoh と、Student 型の yama, nomu を、一つの table[] にまとめている。

int main() {
   Person saitoh( "t-saitoh" , 55 ) ;
   Student yama( "yamada" , 21 , "ES" , 1 ) ;
   Student nomu( "nomura" , 22 , "PS" , 2 ) ;

   Person* table[3] = {
      &saitoh , &yama , &nomu ,
   } ;
   for( int i = 0 ; i < 3 ; i++ ) {
      table[ i ]->print() ;
   }
   return 0 ;
}

C++では、Personへのポインタの配列に代入する時、Student型ポインタは、その基底クラスへのポインタとしても扱える。ただし、このように記述すると、table[] には、Person クラスのデータして扱われる。

このため、このプログラムを動かすと、以下のように、名前と年齢だけが3人分表示される。

t-saitoh 55
yamada   21
nomura   22

派生した型に応じた処理

上記のプログラムでは、 Person* table[] に、Person*型,Student*型を混在して保存をした。しかし、Person*として呼び出されると、yama のデータを表示しても、所属・学年は表示されない。上記のプログラムで、所属と名前を表示することはできないのだろうか?

// 混在したPersonを表示
for( int i = 0 ; i < 3 ; i++ )
   table[i]->print() ;
// Student は、所属と名前を表示して欲しい
t-saitoh 55
yamada 21
- ES 1
nomura 22
- PS 2

上記のプログラムでは、Person型では、後でStudent型と区別ができないと困るので、Person型に、Person型(=0)なのか、Student型(=1)なのか区別するための type という型の識別番号を追加し、type=1ならば、Student型として扱うようにしてみた。

// 基底クラス
class Person {
private:
   int  type ; // 型識別情報
   char name[ 20 ] ;
   int  age ;
public:
   Person( int tp , const char s[] , int x )
     : type( tp ) , age( x ) {
      strcpy( name , s ) ;
   }
   int type_person() { return type ; }
   void print() {
      printf( "%s %d\n" , name , age ) ;
   }
} ;
// 派生クラス(Student は Person から派生)
class Student : public Person {
private:
   char dep[ 20 ] ;
   int  grade ;
public:
   Student( int tp , const char s[] , int x ,
            const char d[] , int g )
            : Person( tp , s , x ) // 基底クラスのコンストラクタ
   {  // 追加された処理
      strcpy( dep , d ) ;
      grade = g ;
   }
   void print() {
      Person::print() ;       // 基底クラスPersonで名前と年齢を表示
      printf( "- %s %d\n" , dep , grade ) ;
   }
} ;
int main() {
   // type=0 は Person 型、type=1は Student 型
   Person saitoh( 0 , "t-saitoh" , 55 ) ;
   Student yama( 1 , "yamada" , 21 , "ES" , 1 ) ;
   Student nomu( 1 , "nomura" , 22 , "PS" , 2 ) ;

   Person* table[3] = {
      &saitoh , &yama , &nomu ,
   } ;
   for( int i = 0 ; i < 3 ; i++ ) {
      switch( table[i]->type_person() ) {
      case 0 :
         table[i]->print() ;
         break ;
      case 1 :
         // 強制的にStudent*型として print() を呼び出す。
         //   最近のC++なら、(static_cast<Student*>(table[i]))->>print() ;
         ((Student*)table[i])->print() ;
         break ;
      }
   }
   return 0 ;
}

しかし、このプログラムでは、プログラマーがこのデータは、Personなので type=0 で初期化とか、Studentなので type=1 で初期化といったことを記述する必要がある。

また、関数を呼び出す際に、型情報(type)に応じて、その型にふさわしい処理を呼び出すための switch 文が必要になる。

もし、派生したクラスの種類がいくつもあるのなら、(1)型情報の代入は注意深く書かないとバグの元になるし、(2)型に応じた分岐処理は巨大なものになるだろう。実際、オブジェクト指向プログラミングが普及する前の初期の GUI プログラミングでは、巨大な switch 文が問題となっていた。

仮想関数

上記の、型情報の埋め込みと巨大なswitch文の問題の解決策として、C++では仮想関数(Virtual Function)が使える。

型に応じて異なる処理をしたい関数があったら、その関数の前に virtual と書くだけで良い。このような関数を、仮想関数と呼ぶ。

// 基底クラス
class Person {
private:
   char name[ 20 ] ;
   int  age ;
public:
   Person( const char s[] , int x )
     : age( x ) {
      strcpy( name , s ) ;
   }
   virtual void print() {
      printf( "%s %d\n" , name , age ) ;
   }
} ;
// 派生クラス(Student は Person から派生)
class Student : public Person {
private:
   char dep[ 20 ] ;
   int  grade ;
public:
   Student( const char s[] , int x ,
            const char d[] , int g )
            : Person( s , x ) // 基底クラスのコンストラクタ
   {  // 追加された処理
      strcpy( dep , d ) ;
      grade = g ;
   }
   virtual void print() {
      Person::print() ;       // 基底クラスPersonで名前と年齢を表示
      printf( "- %s %d\n" , dep , grade ) ;
   }
} ;
int main() {
   // type=0 は Person 型、type=1は Student 型
   Person saitoh( "t-saitoh" , 55 ) ;
   Student yama( "yamada" , 21 , "ES" , 1 ) ;
   Student nomu( "nomura" , 22 , "PS" , 2 ) ;

   Person* table[3] = {
      &saitoh , &yama , &nomu ,
   } ;
   for( int i = 0 ; i < 3 ; i++ ) {
      table[i]->print() ;
   }
   return 0 ;
}

クラスの中に仮想関数が使われると、C++ では、プログラム上で見えないが、何らかの型情報をオブジェクトの中に保存してくれる。

また、仮想関数が呼び出されると、その型情報を元に、ふさわしい関数を自動的に呼び出してくれる。このため、プログラムも table[i]->print() といった極めて簡単に記述できるようになる。

関数ポインタ

仮想関数の仕組みを実現するためには、関数ポインタが使われる。

以下の例では、返り値=int,引数(int,int)の関数( int(*)(int,int) )へのポインタfpに、最初はaddが代入され、(*fp)(3,4) により、7が求まる。

int add( int a , int b ) {
   return a + b ;
}
int mul( int a , int b ) {
   return a * b ;
}
int main() {
   int (*fp)( int , int ) ;
   fp = add ;
   printf( "%d\n" , (*fp)( 3 , 4 ) ) ; // 3+4=7
   fp = mul ;
   printf( "%d\n" , (*fp)( 3 , 4 ) ) ; // 3*4=12

   int (*ftable[2])( int , int ) = {
      add , mul ,
   } ;
   for( int i = 0 ; i < 2 ; i++ )
      printf( "%d\n" , (*ftable[i])( 3 , 4 ) ) ;
   return 0 ;
}

仮想関数を使うクラスが宣言されると、一般的にそのコンストラクタでは、各クラス毎の仮想関数へのポインタのテーブルが型情報として保存されるのが一般的。仮想関数の呼び出しでは、仮想関数へのポインタを使って処理を呼び出す。このため効率よく仮想関数を動かすことができる。

仮想関数の実装方法

仮想関数の一般的な実装方法としては、仮想関数を持つオブジェクトには型情報として仮想関数へのポインタテーブルへのポインタを保存する。

iPadのパスワードリセット

「貸出していた iPad が返却されたけど、パスワードが分からない…」との相談を受け、パスワードのリセット作業をお手伝い。

その方も、Web記事をみて試したけどダメだった様子。iPad 起動時に○○キーと○○キーを押しながら…との説明だけど、タブレットのケースのおかげで、押しづらい状況。まずはケースから取り出して、作業。それに、合わせ押すキーが機種によって違うので iPhone7, iPhone8, それ以降とかいろいろ試した。

途中、iMyFone lockwiper というソフト(有償)を使うと簡単と書いてあったので、ページを見ると「無料ダウンロード」と書いてあるし、お試し版が使えるかと試してみた。ただ、OSのイメージダウンロードとか時間かかるし、「イメージ解凍中」とか出てずっとまっても動かず、クリックしたら動き出す。ボタン「イメージ解凍開始」って表示にしろよ…。んで、長々と待っていざイメージ書き込み…とおもったら、この時点で「有償ソフトだから登録してね」の表示となる。そーゆー大切なことは最初に出せよ。時間の無駄だった。

自分自身の端末では、パスワード忘れでフルリセットしたことがないので、面倒だったとはいえいい経験だったかな。

再帰処理時間の見積もりとポインタ操作

前回の授業では、再帰処理やソートアルゴリズムの処理時間の見積もりについて説明を行った。

ソート処理の見積もり

この際の練習問題の1つめは、「再帰方程式の理解度確認の回答」にて解説を示す。

最後の練習問題はここで説明を行う。

選択法とクイックソートの処理時間の比較

例として、データ数N=20件で、選択法なら10msec、クイックソートで20msecかかったとする。

これより、選択法の処理時間を、クイックソートの処理時間を、とすると、





よって、

 # ここはlogの底は10の方が計算が楽かな

処理時間が逆転するときのデータ件数は、2つのグラフの交点を求めることになるので、

より、以下の式を解いた答えとなる。これは通常の方程式では解けないが電卓で求めると、N=53.1 ほどかな。(2020/05/26) 真面目に解いたら N=53.017 だった。

実際にも、クイックソートを再帰呼び出しだけでプログラムを書くと、データ件数が少ない場合は選択法などのアルゴリズムの方が処理時間が早い。このため、C言語などの組み込み関数の qsort() などは、データ件数が20とか30とか一定数を下回ったら、再帰を行わずに選択法でソートを行うのが一般的である。

ポインタ処理

ここからは、次のメモリの消費を考慮したプログラムの説明を行うが、ポインタの処理に慣れない人が多いので、ポインタを使ったプログラミングについて説明を行う。

値渡し(call by value)

// 値渡しのプログラム
void foo( int x ) {  // x は局所変数(仮引数は呼出時に
                     // 対応する実引数で初期化される。
   x++ ;
   printf( "%d¥n" , x ) ;
}
void main() {
   int a = 123 ;
   foo( a ) ;  // 124
               // 処理後も main::a は 123 のまま。
   foo( a ) ;  // 124
}

このプログラムでは、aの値は変化せずに、124,124 が表示される。

言い方を変えるなら、呼び出し側main() では、関数の foo() の処理の影響を受けない。このように、関数には仮引数の値を渡すことを、値渡し(call by value)と言う。

でも、プログラムによっては、124,125 と変化して欲しい場合もある。
どのように記述すべきだろうか?

// 大域変数を使う場合
int x ;
void foo() {
   x++ ;
   printf( "%d¥n" , x ) ;
}
void main() {
   x = 123 ;
   foo() ;  // 124
   foo() ;  // 125
}

しかし、このプログラムは大域変数を使うために、間違いを引き起こしやすい。

// 大域変数が原因で予想外の挙動をしめす簡単な例
int i ;
void foo() {
   for( i = 0 ; i < 2 ; i++ )
      printf( "A" ) ;
}
void main() {
   for( i = 0 ; i < 3 ; i++ )  // このプログラムでは、AA AA AA と
      foo() ;                   // 表示されない。
}

ポインタ渡し(call by pointer)

C言語で引数を通して、呼び出し側の値を変化して欲しい場合は、(引数を経由して関数の副作用を受け取るには)、変更して欲しい変数のアドレスを渡し、関数側では、ポインタ変数を使って受け取った変数のアドレスの示す場所の値を操作する。このような値の受け渡し方法は、ポインタ渡し(call by pointer)と呼ぶ。

// ポインタ渡しのプログラム
void foo( int* p ) {  // p はポインタ
   (*p)++ ;
   printf( "%d¥n" , *p ) ;
}
void main() {
   int a = 123 ;
   foo( &a ) ;  // 124
                // 処理後 main::a は 124 に増えている。
   foo( &a ) ;  // 124
}               // さらに125と増える。

C言語では、関数から結果をもらうには、通常は関数の返り値を使う。しかし、返り値は1つの値しか受け取ることができないので、上記のようにポインタを使って、呼び出し側は:結果を入れてもらう場所を伝え、関数側は:指定されたアドレスに結果を書む。

変数の寿命とスコープ

変数の管理では、変数の寿命スコープの理解が重要。

静的変数:変数は、プログラムの起動時に初期化、プログラムの終了時に廃棄。
動的変数:変数は、関数に入るときに初期化、関数を抜けるときに廃棄。
もしくは、ブロックに入るときに初期化、ブロックを抜けるときに廃棄。

大域変数:大域変数は、プログラム全体で参照できる。
局所変数:関数の中 or そのブロックの中でのみ参照できる。

ブロックの中で変数が宣言されると、そのブロックの外の変数とは別の入れ物となる。そのブロックの中では、新たに宣言された変数が使われる。

int i = 111 ;    // 静的大域変数

void foo() {
   int i = 222 ; // 動的局所変数
   i++ ;
   printf( "%d\n" , i ) ;
}
void bar() {
   static int i = 333 ; // 静的局所変数(プログラム起動時に初期化)
   i++ ;
   printf( "%d\n" , i ) ;
}
void hoge( int x ) {    // x: 動的局所変数(値渡し)
   x++ ;
   printf( "%d\n" , x ) ;
}
void fuga( int* p ) {   // p: 動的局所変数(ポインタ渡し)
   (*p)++ ;
   printf( "%d\n" , (*p) ) ;
}
int main() {
   int i = 444 , j = 555 ;
   foo() ;      // 223 (副作用ナシ)
   bar() ;      // 334
   hoge( i ) ;  // 445 (副作用ナシ)
   fuga( &j ) ; // 556
   printf( "%d\n" , i ) ;
   foo() ;      // 223 (副作用ナシ)
   bar() ;      // 335
   hoge( i ) ;  // 445 (副作用ナシ)
   fuga( &j ) ; // 557

   printf( "%d\n" , i ) ;                     // 444
   for( int i = 0 ; i < 2 ; i++ ) { // (a)    // A:0
      printf( "A:%d\n" , i ) ;                // B:0
      for( int i = 0 ; i < 2 ; i++ ) { // (b) // B:1
         printf( "B:%d\n" , i ) ;             // A:1
      }                                       // B:0
   }                                          // B:1

   printf( "%d\n" , i ) ;  // 333 ← 要注意C言語のバージョンによっては
                           //       2 になる場合あり。(a)の変数iの値
   return 0 ;
}

5G-4G-WiFi速度テスト

大講義室で、5G(KDDI)の接続ができるので、iPhone12端末にて速度テスト。

fast.com で測定したら、4G/5G/WiFiであんまり変わらない値になり、上流の限界と思われるので別サイトで測定してみた。

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フローチャートと整数型

学際科目の情報制御基礎において、プログラムの基本としてフローチャートと基本的な処理を説明し、数値型の注意点を説明。

フローチャートの基本

プログラムの処理の順序を理解するには、初心者であればフローチャート(流れ図)を使う。

処理の1つ1つを箱で表し、流れを箱の間の矢印で示すことでアルゴリズム(プログラムの考え方)や処理順序を表現する。処理単位の箱は、命令の種類によって箱の書き方が決まっている。

上図右側のフローチャートの例では、以下の説明のように実行され、0,1,2,…,9 が表示され、最終的に変数 i が10以上になり処理を停止する。

(1) 変数 i に 0 を保存
(2) 変数 i は10未満なら(3)、10以上なら終了
(3) 変数 i を表示
(4) i = i + 1 右辺の計算結果を、左辺に代入iが0から1に変化
(5) 処理(2)から繰り返し。

上記のようなプログラムは、C言語であれば以下のようになる。

#include <stdio.h>                 | 入出力関数を使うための準備

int main() {                       | 最初に main() という関数が呼び出される。
   int i ;                         | 変数 i の入れ物を準備
   for( i = 0 ; i < 10 ; i++ ) {   | 最初に i = 0 を行い、i < 10 の条件を満たす間繰り返し、
                                   |       繰り返しの度に i を1つ増やす
      printf( "%d\n" , i ) ;       |    i の値を表示
   }
   return 0 ;                      | 正しく終わったら0を返す。
}

練習問題1

以下のフローチャートの処理A,処理B,処理C,処理Dの実行結果を答えよ。

  • 電気電子工学科,電子情報工学科の学生は、出席番号が偶数は処理C,奇数は処理Dについて回答せよ。
  • それ以外の学科の学生は、出席番号が偶数は処理A,奇数は処理Bの結果について回答せよ。
  • このプログラムではどういった意味の値を求めようとしているのか答えよ。

情報量の単位

データを覚える最小単位は、0と1の2通りで表される1bit (ビット)と呼ぶ。単位として書く場合には b で表す。さらに、その1bitを8個組み合わせると、256通りの情報を保存できる。256通りあれば一般的な英数字などの記号を1文字保存する入れ物として便利であり、この単位を 1byte (バイト) と呼ぶ。単位として書く場合には B で表す。

通信関係の人は8bit=1byteを1オクテットと呼ぶことも多い。日本語を表現するには、かなや漢字を使うため16bit = 2byte = 1word(ワード) で表現することが多い。(ただしワードは32bitを意味することもあるので要注意, double word=32bit, quad word=64bit という呼び方もある。)

物理では単位が大きくなると、103=kキロ,106=Mメガ,109=Gギガ,1012=Tテラ を使うが、コンピュータの世界では、103≒210=1024 なので、1kB(キロバイト)というと1024Bを意味することが多い。明確に区別する時は、1024B(バイト)=1KiB(キビバイト), 10242B=1MiB, 10243B=1GiB などと記載する。

2進数,8進数,16進数

プログラムの中で整数値を覚える場合は、2進数の複数桁で記憶する。例えば、2進数3桁(3bit)であれば、000, 001, 010, 011, 100, 101, 110, 111 で、10進数であれば 0~7 の8通りの値が扱える。(8進数)

2進数4桁(4bit)であれば、0000, 0001, 0010, 0011, 0100, 0101, 0110, 0111, 1000, 1001, 1010, 1011, 1100, 1101, 1110, 1111 の16通りを表現できる(16進数)。これを1桁で表現するために、0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,A,B,C,D,E,F を使って表現する。

例  8進数    16進数
    0123    0x123     ※C言語では、
  +  026   + 0xEA      8進数を表す場合、先頭に0をつけて表す。
 -------- --------     16進数を表す場合、先頭に0xをつけて表す。
    0151    0x20D      0x3+0xA = 0xD
                       0x2+0xE = 2+14 = 16 = 0x0 + 桁上がり
                       0x1+桁上がり = 0x2

整数型と扱える値の範囲

コンピュータの開発が進むにつれ計算の単位となるデータ幅は、8bit, 16bit, 32bit, 64bit と増えていった。整数型データには、正の値しか覚えられない符号無し整数と、2の補数で負の数を覚える符号付き整数に分けられる。

プログラムを作るためのC言語では、それぞれ 8bitの文字型(char)、16bitの short int型、32bitの int 型、64bitの long int 型(C言語では long int で宣言すると32bitの場合も多いので要注意)があり、それぞれに符号なし整数(unsigned), 符号あり整数(signed: C言語の宣言では書かない)がある。

精度 符号あり 符号なし
8bit(1byte) char (int8_t) unsigned char (uint8_t)
16bit(2byte) short int (int16_t) unsigned short int (uint16_t)
32bit(4byte) int (int32_t) unsigned int (uint32_t)
64bit(8byte) long int (int64_t) unsigned long int (uint64_t)

符号付きのデータは、負の数は2の補数によって保存され、2進数の最上位bit(符号ビット)負の数であれば1、正の数であれば0となる。

整数型で扱える数

(例) 符号なしの1byte(8bit)であれば、いくつの数を扱えるであろうか?

符号なしの N bit の整数であれば2N通りの値を表現でき、0(2N-1) までの値が扱える。

bit数 符号なし(unsigned)
8 unsigned char 0~28-1 0~255
16 unsigned short int 0~216-1 0~65535
32 unsigned int 0~232-1 0~4294967295

符号付きの N bit の整数であれば、最上位ビットが符号に使われるので、正の数なら残りの(N-1)bitで扱うため 0〜2N-1-1を表現できる。負の数は2N-1通りを表現できるので、N bit の符号つき整数は、-2N-1 〜0〜 2N-1-1の範囲の値を覚えられる。

bit数 符号あり(signed)
8 char -27~0~27-1 -128~127
16 short int -215~0~215-1 -32768~32767
32 int -231~0~231-1 -2147483648~2147483647

2の冪乗の概算

プログラムを作る場合、2のべき乗がだいたいどの位の値なのか知りたいことが多い。この場合の計算方法として、2つの方法を紹介する。

  • 232 = (210)3 × 22 = 10243 × 4 ≒ 4,000,000,000
  • 232をN桁10進数で表すとすれば なので、両辺のlog10を求める。

      (つまり、bit数に0.3をかければ10進数の桁数が求まる。)

数値の範囲の問題で動かないプログラム

この話だけだと、扱える数値の上限について実感がわかないかもしれないので、以下のプログラムをみてみよう。(C言語の詳細は説明していないので、問題点がイメージできるだけでいい。)

組み込み系のコンピュータでは、int 型で宣言される変数でも、16bitの場合もある。以下のプログラムは期待した値が計算できない例である。以下の例では、16bit int型として short int で示す。

// ✳️コード1
#include <stdio.h>
#include <math.h>

int main() { // 原点から座標(x,y)までの距離を求める
   short int x  = 200 ;
   short int y  = 200 ;
   short int r2 = x*x + y*y ;  // (x,y)までの距離の2乗
   short int r  = sqrt( r2 ) ; // sqrt() 平方根
   printf( "%d\n" , r ) ;      // 何が求まるか?
   return 0 ;                  // (例) 282ではなく、120が表示された。
}

コンピュータで一定時間かかる処理を考えてみる。

// コード2.1
// 1 [msec] かかる処理が以下のように書いてあったとする。
short int i ;
for( i = 0 ; i < 1000 ; i++ )
   NOP() ; // NOP() = 約1μsecかかる処理とする。

// ✳️コード2.2
// 0.5 [sec]かかる処理を以下のようにかいた。
short int i ;
for( i = 0 ; i < 500000 ; i++ )
   NOP() ;
// でもこの処理は16bitコンピュータでは、1μsecもかからずに終了する。なぜか?

上記の例は、性能の低い16bit コンピュータの問題で、最近は32bit 整数型のコンピュータが普通だし、特に問題ないと思うかもしれない。でも、32bit でも扱える数の範囲で動かなくなるプログラムを示す。

OS(unix) では、1970年1月1日からの経過秒数で時間(unix時間)を扱う。ここで、以下のプログラムは、正しい値が計算できなかった有名な例である。(2004年1月11日にATMが動かなくなるトラブルの原因だった)

// ✳️コード3.1
int t1 = 1554735600 ; // 2019年4月09日,00:00
int t2 = 1555340400 ; // 2019年4月16日,00:00

// この2日の真ん中の日を求める。
//  t1       |        t2
//  |--------+--------|
//  |      t_mid      |
//  以下のプログラムは、正しい 2019年4月12日12:00 が求まらない。なぜか?
int t_mid = (t1 + t2) / 2;  // (例) 1951年03月25日 08:45 になった。

// コード3.2
//  以下のプログラムは正しく動く。 time_t 型(時間処理用の64bit整数)を使えば問題ない。
time_t t1 = 1554735600 ; // 2019年4月09日,00:00
time_t t2 = 1555340400 ; // 2019年4月16日,00:00

// time_t型が32bitであったとしても桁溢れない式
time_t t_mid = t1 + (t2 - t1) / 2 ;

練習問題2

以下の整数の範囲を具体的な値で答えよ。
出席番号・自分の誕生日(の日にち)に合わせて該当する2問について答えること。

  1. 7bitの符号なし整数で扱える数値の範囲 (出席番号が偶数)
  2. 12bitの符号あり整数で扱える数値の範囲 (出席番号が奇数)
  3. 20bitの符号なし整数で扱える数値の範囲 (誕生日の日づけが偶数)
  4. 24bitの符号あり整数で扱える数値の範囲 (誕生日の日づけが奇数)

練習問題3

先に示した数値の範囲が原因で動かないプログラム(コード1,コード2.2,コード3.1)の中から1つを選んで、計算結果が正しく求まらない原因を、具体的な値を示しながら説明せよ。

練習問題1,練習問題2,練習問題3について、レポートとして提出せよ。

Teamsのこちらの共有フォルダに、回答記入用のひな型がおいてあるので、この書式を参考に各自レポートにまとめ、同フォルダに提出してください。

派生と継承

隠ぺい化の次のステップとして、派生・継承を説明する。オブジェクト指向プログラミングでは、一番基本となるデータ構造を宣言し、その基本構造に様々な機能を追加した派生クラスを記述することでプログラムを作成する。今回は、その派生を理解するためにC言語で発生する問題点を考える。

説明が中途半端になるので、講義後半は先週のレポート課題の時間とする。

派生を使わずに書くと…

元となるデータ構造(例えばPersonが名前と年齢)でプログラムを作っていて、 途中でその特殊パターンとして、所属と学年を加えた学生(Student)という データ構造を作るとする。

// 元となる構造体(Person) / 基底クラス
struct Person {
   char name[ 20 ] ; // 名前
   int  age ;        // 年齢
} ;
// 初期化関数
void set_Person( struct Person* p ,
                 char s[] , int x ) {
   strcpy( p->name , s ) ;
   p->age = x ;
}
// 表示関数
void print_Person( struct Person* p ) {
   printf( "%s %d\n" , p->name , p->age ) ;
}
int main() {
   struct Person saitoh ;
   set_Person( &saitoh , "t-saitoh" , 50 ) ;
   print_Person( &saitoh ) ;
   return 0 ;
}

パターン1(そのまんま…)

上記のPersonに、所属と学年を加えるのであれば、以下の方法がある。 しかし以下パターン1は、要素名がname,ageという共通な部分があるようにみえるが、 プログラム上は、PersonとPersonStudent1は、まるっきり関係のない別の型にすぎない。

このため、元データと共通部分があっても、同じ処理を改めて書き直しになる。

// 元のデータに追加要素(パターン1)
struct PersonStudent1 {
   // Personと同じ部分
   char name[ 20 ] ; // 名前
   int  age ;        // 年齢

   // 追加部分
   char dep[ 20 ] ;  // 所属
   int  grade ;      // 学年
} ;
void set_PersonStudent1( struct PersonStudent1* p ,
                         char s[] , int x ,
                         char d[] , int g ) {
   // set_Personと同じ処理を書いている。
   strcpy( p->name , s ) ;
   p->age = x ;

   // 追加された処理
   strcpy( p->dep , d ) ;
   p->grade = g ;
}

// 名前と年齢 / 所属と学年を表示
void print_PersonStudent1( struct PersonStudent1* p ) {
   // print_Personと同じ処理を書いている。
   printf( "%s %d\n" , p->name , p->age ) ;
   printf( "- %s %d¥n" , p->dep , p->grade ) ;
}

int main() {
   struct PersonStudent1 yama1 ;
   set_PersonStudent1( &yama1 ,
                       "yama" , 22 , "PS" , 2 ) ;
   print_PersonStudent1( &yama1 ) ;
   return 0 ;
}

パターン2(元データの処理を少し使って…)

パターン1では、機能が追加された新しいデータ構造のために、同じような処理を改めて書くことになりプログラムの記述量を減らせない。面倒なので、 元データ用の関数をうまく使うように書いてみる。

// 元のデータに追加要素(パターン2)
struct PersonStudent2 {
   // 元のデータPerson
   struct Person person ;

   // 追加部分
   char          dep[ 20 ] ;
   int           grade ;
} ;

void set_PersonStudent2( struct PersonStudent2* p ,
                         char s[] , int x ,
                         char d[] , int g ) {
   // Personの関数を部分的に使う
   set_Person( &(p->person) , s , x ) ;

   // 追加分はしかたない
   strcpy( p->dep , d ) ;
   p->grade = g ;
}

void print_PersonStudent2( struct PersonStudent2* p ) {
   // Personの関数を使う。
   print_Person( &p->person ) ;
   printf( "- %s %d¥n" , p->dep , p->grade ) ; 
}

int main() {
   struct PersonStudent2 yama2 ;
   set_PersonStudent2( &yama2 ,
                       "yama" , 22 , "PS" , 2 ) ;
   print_PersonStudent2( &yama2 ) ;
   return 0 ;
}

このパターン2であれば、元データ Person の処理をうまく使っているので、 プログラムの記述量を減らすことはできるようになった。

しかし、print_PersonStudent2() のような処理は、名前と年齢だけ表示すればいいという場合、元データ構造が同じなのに、 いちいちプログラムを記述するのは面倒ではないか?

そこで、元データの処理を拡張し、処理の流用ができないであろうか?

基底クラスから派生クラスを作る

オブジェクト指向では、元データ(基底クラス)に新たな要素を加えたクラス(派生クラス)を 作ることを「派生」と呼ぶ。派生クラスを定義するときは、クラス名の後ろに、 「:」「public/protected/private」基底クラス名を書く。

// 基底クラス
class Person {
private:
   char name[ 20 ] ;
   int  age ;
public:
   Person( const char s[] , int x )
     : age( x ) {
      strcpy( name , s ) ;
   }
   void print() {
      printf( "%s %d\n" , name , age ) ;
   }
} ;
// 派生クラス(Student は Person から派生)
class Student : public Person {
private:
   // 追加部分
   char dep[ 20 ] ;
   int  grade ;
public:
   Student( const char s[] , int x ,
            const char d[] , int g )
     : Person( s , x ) // 基底クラスのコンストラクタ
   {  // 追加された処理
      strcpy( dep , d ) ;
      grade = g ;
   }
} ;

int main() {
   Person saitoh( "t-saitoh" , 50 ) ;
   saitoh.print() ;
   Student yama( "yama" , 22 , "PS" , 2 ) ;
   yama.print() ;  // "yama 22"が表示される
   return 0 ;
}

ここで注目すべき点は、main()の中で、Studentクラス”yama”に対し、yama.print() を呼び出しているが、パターン2であれば、print_PersonStudent2()に相当するプログラムを 記述していない。 しかし、この派生を使うと Person の print() が自動的に流用することができる。 これは、基底クラスのメソッドを「継承」しているから、 このように書け、名前と年齢「yama 22」が表示される。

さらに、Student の中に、以下のような Student 専用の新しい print()を記述してもよい。

class Student ...略... {
   ...略...

   // Student クラス専用の print() 
   void print() {
      // 親クラス Person の print() を呼び出す
      Person::print() ;
      // Student クラス用の処理
      printf( "%s %d\n" , dep , grade ) ;
   }
} ;
void main() {
   ...略...
   Student yama( "yama" , 22 , "PS" , 2 ) ;
   yama.print() ;
}

この場合は、継承ではなく機能が上書き(オーバーライト)されるので、 「yama 22 / PS 2」が表示される。

派生クラスを作る際の後ろに記述した、public は、他にも protected , private を 記述できる。

public    だれもがアクセス可能。
protected であれば、派生クラスからアクセスが可能。
          派生クラスであれば、通常は protected で使うのが一般的。
private   派生クラスでもアクセス不可。

C言語で無理やりの派生

C言語でこのような派生と継承を実装する場合には、共用体を使う以下のようなテクニックが使われていた。
unix の GUI である X11 でも共用体を用いて派生を実装していた。

// 基底クラス
struct PersonBase {     // 基底クラス
   char name[ 20 ] ;
   int  age ;
} ;

struct PersonStudent {  // 派生クラス
   struct PersonBase base ;
   char dep[ 20 ] ;
   int  grade ;
} ;
                                   //(base) //(student)
union Person {                     // name  //[name]
   struct PersonBase    base ;     // age   //[age ]
   struct PersonStudent student ;           // dep
} ;                                         // grade

void person_Print( struct PersonBase* p ) {
   printf( "%s %d\n" , p->name , p->age ) ;   
}

int main() {
   struct PersonBase    tsaitoh = { "tsaitoh" , 55 } ;
   struct PersonStudent mitsuki = { { "mitsuki" , 21 } , "KIT" , 4 } ;
   print_Person( &tsaitoh ) ;
   print_Person( (struct Person*)&mitsuki ) ;  // 無理やり print_Person を呼び出す
   return 0 ;
}

仮想関数への伏線

上記のような派生したプログラムを記述した場合、以下のようなプログラムでは何が起こるであろうか?

class Student ... {
   :
   void print() {
      Person::print() ;                    // 名前と年齢を表示
      printf( " %s %d¥n" , dep , grade ) ; // 所属と学年を表示
   }
} ;
int main() {
   Person saitoh( "t-saitoh" , 55 ) ;
   saitoh.print() ;                // t-saitoh 55 名前と年齢を表示

   Student mitsu( "mitsuki" , 20 , "KIT" ,  3 ) ;
   Student ayuka( "ayuka" ,   18 , "EI" ,   4 ) ;
   mitsu.print() ;                 // mitsuki 20 / KIT 3  名前,年齢,所属,学年を表示
   ayuka.print() ;                 // ayuka 18   / EI  4  名前,年齢,所属,学年を表示

   Person* family[] = {
      &saitoh , &mitsu , &ayuka ,  // 配列の中に、Personへのポインタと
   } ;                             // Studentへのポインタが混在している
                                   // 派生クラスのポインタは、
                                   // 基底クラスのポインタとしても扱える
   for( int i = 0 ; i < 3 ; i++ )
      family[ i ]->print() ;       // t-saitoh 55/mitsuki 20/ayuka 18
   return 0 ;                      // が表示される。 
}                                  // # "mitsuki 20/KIT 3" とか "ayuka 18/EI 4"
                                   // # が表示されてほしい?

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