KOSENセキュリティコンテスト2019
KOSENセキュリティコンテスト2019が2019/10/26(土)石川高専にて開催されています。ネットワーク開催なので、福井高専の演習室から2チームがリモート参加しています。
- 「妖怪旗よこせ」チーム
- 「旗何本取れる?」チーム
2分探索木にデータ追加と演習
2分探索木にデータを追加
前回の授業では、データの木構造は、補助関数 tcons() により直接記述していた。実際のプログラムであれば、データに応じて1件づつ木に追加するプログラムが必要となる。この処理は以下のようになるだろう。
struct Tree* top = NULL ; // 2分探索木にデータを追加する処理 void entry( int d ) { struct Tree** tail = &top ; while( *tail != NULL ) { if ( (*tail)->data == d ) // 同じデータが見つかった break ; else if ( (*tail)->data > d ) tail = &( (*tail)->left ) ; // 左の枝に進む else tail = &( (*tail)->right ) ; // 右の枝に進む } if ( (*tail) == NULL ) *tail = tcons( d , NULL , NULL ) ; } int main() { char buff[ 100 ] ; int x ; while( fgets( buff , sizeof( buff ) , stdin ) != NULL ) if ( sscanf( buff , "%d" , &x ) != 1 ) break ; entry( x ) ; return 0 ; }
このプログラムでは、struct Tree** tail というポインタへのポインタ型を用いている。tail が指し示す部分をイメージするための図を以下に示す。
理解確認
- 関数entry() の14行目の if 判定を行う理由を説明せよ。
- 同じく、8行目の tail = &( (*tail)->left ) の式の各部分の型について説明せよ。
- sscanf() の返り値を 1 と比較している理由を説明せよ。
- entry() でデータを格納する処理時間のオーダを説明せよ。
// 前述プログラムは、データ追加先が大域変数なのがダサい。 // 局所変数で追加処理ができるように、したいけど... void entry( struct Tree* top , int d ) { struct Tree** tail = &top ; while( *tail != NULL ) { : // 上記の entry() と同じとする } void main() { // 追加対象の top は局所変数 struct Tree* top = NULL ; char buff[ 100 ] ; int x ; while( fgets(buff,sizeof(buff),stdin) != NULL ) { if ( sscanf( buff , "%d" , &x ) != 1 ) break ; entry( top , x ) ; } }上記のプログラム↑は動かない。なぜ?
このヒントは、このページ末尾に示す。
演習課題
以下のようなデータを扱う2分探索木のプログラムを作成せよ。以下の箇条書き番号の中から、(出席番号 % 3+1)のデータについてプログラムを作ること。
- 名前(name)と電話番号(phone)
- 名前(name)と誕生日(year,mon,day)
- 名前(name)とメールアドレス(mail)
プログラムは以下の機能を持つこと。
- 1行1件でデータを入力し、2分木に追加できること。
- 全データを昇順(or降順)で表示できること。
- 検索条件を入力し、目的のデータを探せること。
レポートでは、(a)プログラムリスト,(b)その説明,(c)動作検証結果,(d)考察 を記載すること。考察のネタが無い人は、このページの理解確認の内容について記述しても良い。
// プログラムのおおまかな全体像の例 struct Tree { // // この部分を考えて // 以下の例は、名前と電話番号を想定 } ; struct Tree* top = NULL ; void tree_entry( char n[] , char ph[] ) { // n:名前,ph:電話番号 を追加 } void tree_print( struct Tree* p ) { // 全データを表示 } struct Tree* tree_search_by_name( char n[] ) { // n:名前でデータを探す } int main() { char name[ 20 ] , phone[ 20 ] ; char buff[ 1000 ] ; struct Tree* p ; // データを登録する処理(空行を入力するまで繰り返し) while( fgets( buff , sizeof( buff ) , stdin ) != NULL ) { if ( sscanf( buff , "%s%s" , name , phone ) != 2 ) break ; // 入力で、2つの文字列が無い場合はループを抜ける tree_entry( name , phone ) ; } // 全データの表示 tree_print( top ) ; // データをさがす while( fgets( buff , sizeof( buff ) , stdin ) != NULL ) { if ( sscanf( buff , "%s" , name ) != 1 ) break ; // 入力で、1つの文字列が無い場合はループを抜ける if ( (p = tree_search_by_name( name )) == NULL ) printf( "見つからない¥n" ) ; else printf( "%s %s¥n" , p->name , p->phone ) ; } return 0 ; }
動かないプログラムのヒント
// 前述プログラムは、データ追加先が大域変数なのがダサい。 // 局所変数で追加処理ができるように、したいけど... // ちなみに、こう書くと動く // Tree*を返すように変更 struct Tree* entry( struct Tree* top , int d ) { : // 最初の entry と同じ : return top ; } void main() { // 追加対象のポインタ struct Tree* top = NULL ; while( ... ) { : // entry() の返り値を top に代入 top = entry( top , x ) ; } }
fgets()とsscanf()による入力の解説
前述のプログラムの入力では、fgets() と sscanf() による処理を記載した。この関数の組み合わせが初見の人も多いと思うので解説。
// scanf() で苦手なこと -------------------------// // scanf() のダメな点 // (1) 何も入力しなかったら...という判定が難しい。 // (2) 間違えて、abc みたいに文字を入力したら、 // scanf()では以後の入力ができない。(入力関数に詳しければ別だけどさ) int x ; while( scanf( "%d" , &x ) == 1 ) { entry( x ) ; } // scanf() で危険なこと -------------------------// // 以下の入力プログラムに対して、10文字以上を入力すると危険。 // バッファオーバーフローが発生する。 char name[ 10 ] ; scanf( "%s" , name ) ; // 安全な入力 fgets() ---------------------------// // fgets() は、行末文字"¥n"まで配列 buff[]に読み込む。 // ただし、sizeof(buuf) 文字より長い場合は、途中まで。 char buff[ 100 ] ; while( fgets( buff , sizeof( buff ) , stdin ) != NULL ) { // buff を使う処理 } // 文字列からデータを抜き出す sscanf() -------------// // sscanf は、文字列の中から、データを抜き出せる。 // 入力が文字列であることを除き、scanf() と同じ。 char str[] = "123 abcde" ; int x ; char y[10] ; sscanf( str , "%d%s" , &x , y ) ; // x=123 , y="abcde" となる。 // sscanf() の返り値は、2 (2個のフィールドを抜き出せた)
理解確認
- 標準入力からの1行入力関数 gets() 関数が危険な理由を説明せよ。
4EIインターンシップ報告会
10/21(月)には、4EIの学生が夏休み期間に参加したインターンシップの報告会が行われました。質疑応答を含め5分という短い発表ながら、企業での経験を発表しました。3EIの学生も聴講し、次年度のインターンシップの参考にします。
インターンシップ参加日数の傾向
福井高専のインターンシップでは、原則2週間程度の研修に参加となっていますが、最低でも1週間の研修で単位として認定しています。一方、最近では大学生の就活の一環で(実質早期選考を含む)インターンシップが盛んとなっています。このため、1週間のインターンシップが多くなっています。学生によっては、就職を検討している企業のインターンシップに応募しても、その企業では 1-day インターンシップしか実施していないために、インターンシップの単位に期間が満たないことから、複数の企業のインターンシップに参加する学生が何人かでてきています。
今回の報告会で確認したところトータル参加の日数で、1週間参加=19名、2週間参加=10名、3週間参加=1名でした。
高専祭・電子情報の展示
今日10/18(金)から、19(土),20(日)にかけて、高専祭が始まりました。
電子情報の5年生が頑張って自作のゲームなどを展示しています。
nfsのソフトマウント
自室の Linux サーバでは、自分が管理している Azure 上のサーバのデータバックアップを取っているが、ハードディスク容量が巨大な訳でもないので、iMac に接続された Drobo (複数ディスクの改良RAID?) に保存させている。
このネットワーク越しのバックアップでのディスクアクセスになるが、iMac を時々再起動させると、その間に icinga のディスクチェック処理が走った際に、アクセスできないために df プロセスが大量に残るトラブルが発生していた。リトライするため CPU 負荷も高い状態で、一番簡単なのは サーバの再起動。(iMacを再起動したら、その後にLinuxサーバを再起動….無駄や…)
最初は、check_disk 処理で余計なところを見させないために、特定マウント先を無視するオプションを加えていたが、df がマウント先をしつこくアクセスをリトライするのが原因。
よく考えたら、ネットワーク越しのマウントだから、ハードマウント(ディスクアクセスに失敗したら何度もリトライ)ではなく、ソフトマウント(複数回リトライしたら諦める)にする必要がある。
ということで、automount オプションに、”soft” オプションを加えて解決。
2分探索木
配列やリスト構造のデータの中から、目的となるデータを探す場合、配列であれば2分探索法が用いられる。これにより、配列の中からデータを探す処理は、O(log N)となる。(ただし事前にデータが昇順に並んでいる必要あり)
// 2分探索法 int array[ 8 ] = { 11, 13 , 27, 38, 42, 64, 72 , 81 } ; int bin_search( int a[] , int key , int L , int R ) { // Lは、範囲の左端 // Rは、範囲の右端+1 (注意!!) while( R > L ) { int m = (L + R) / 2 ; if ( a[m] == key ) return key ; else if ( a[m] > key ) R = m ; else L = m + 1 ; } return -1 ; // 見つからなかった } void main() { printf( "%d¥n" , bin_search( array , 0 , 8 ) ) ; }
一方、リスト構造ではデータ列の真ん中のデータを取り出すには、先頭からアクセスするしかないのでO(N)の処理時間がかかり、極めて効率が悪い。リスト構造のようにデータの追加が簡単な特徴をもったまま、もっとデータを高速に探すことはできないものか?
2分探索木
ここで、データを探すための効率の良い方法として、2分探索木(2分木)がある。以下の木のデータでは、分離する部分に1つのデータと、左の枝(下図赤)と右の枝(下図青)がある。
この枝の特徴は何だろうか?この枝では、中央のデータ例えば42の左の枝には、42未満の数字の枝葉が繋がっている。同じように、右の枝には、42より大きな数字の枝葉が繋がっている。この構造であれば、64を探したいなら、42より大きい→右の枝、72より小さい→左の枝、64が見つかった…と、いう風にデータを探すことができる。
特徴としては、1回の比較毎にデータ件数は、(N-1)/2件に減っていく。よって、この方法であれば、O(log N)での検索が可能となる。これを2分探索木とよぶ。
このデータ構造をプログラムで書いてみよう。
struct Tree { struct Tree* left ; int data ; struct Tree* right ; } ; // 2分木を作る補助関数 struct Tree* tcons( struct Tree* L , int d , struct Tree* R ) { struct Tree* n = (struct Tree*)malloc( sizeof( struct Tree ) ) ; if ( n != NULL ) { /* (A) */ n->left = L ; n->data = d ; n->right = R ; } return n ; } // 2分探索木よりデータを探す int tree_search( struct List* p , int key ) { while( p != NULL ) { if ( p->data == key ) return key ; else if ( p->data > key ) p = p->left ; else p = p->right ; } return -1 ; // 見つからなかった } struct Tree* top = NULL ; void main() { // 木構造をtcons()を使って直接生成 (B) top = tcons( tcons( tcons( NULL , 13 , NULL ) , 27 , tcons( NULL , 38 , NULL ) ) , 42 , tcons( tcons( NULL , 64 , NULL ) , 72 , tcons( NULL , 81 , NULL ) ) ) ; printf( "%d¥n" , tree_search( top , 64 ) ) ; }
この方式の注目すべき点は、struct Tree {…} で宣言しているデータ構造は、2つのポインタと1つのデータを持つという点では、双方向リストとまるっきり同じである。データ構造の特徴の使い方が違うだけである。
理解度確認
- 上記プログラム中の、補助関数tcons() の(A)の部分 “if ( n != NULL )…” の判定が必要な理由を答えよ。
- 同じくmain() の (B) の部分 “top = tcons(…)” において、末端部に NULL を入れる理由を答えよ。
2分木に対する処理
2分探索木に対する簡単な処理を記述してみよう。
// データを探す int search( struct Tree* p , int key ) { // 見つかったらその値、見つからないと-1 while( p != NULL ) { if ( p->data == key ) return key ; else if ( p->data > key ) p = p->left ; else p = p->right ; } return -1 ; } // データを全表示 void print( struct Tree* p ) { if ( p != NULL ) { print( p->left ) ; printf( "%d¥n" , p->data ) ; print( p->right ) ; } } // データ件数を求める int count( struct Tree* p ) { if ( p == NULL ) return 0 ; else return 1 + count( p->left ) + count( p->right ) ; } // データの合計を求める int sum( struct Tree* p ) { if ( p == NULL ) return 0 ; else return p->data + count( p->left ) + count( p->right ) ; } // データの最大値 int max( struct Tree* p ) { while( p->right != NULL ) p = p->right ; return p->data ; }
これらの関数では、木構造の全てに対する処理を実行する場合には、再帰呼び出しが必要となる。
データベースの用語など
データベースの機能
データベースを考える時、利用者の視点で分類すると、(1) データベースの管理者(データベース全体の管理)、(2) 応用プログラマ(SQLなどを使って目的のアプリケーションに合わせた処理を行う)、(3) エンドユーザ(データベース処理の専門家でなく、DBシステムのGUIを使ってデータベースを操作する)となる。
データベース管理システム(DBMS)では、データとプログラムを分離してプログラムを書けるように、データ操作言語(SQL)で記述する。
また、データは独立して扱えるようにすることで、データへの物理的なアクセス方法があっても、プログラムの変更が不要となるようにします。
データベースは、利用者から頻繁に不定期にアクセスされる。このため、データの一貫性が重要となる。これらを満たすためには、(a) データの正当性の確認、(b) 同時実行制御(排他制御)、(c) 障害回復の機能が重要となる。
これ以外にも、データベースからデータを高速に扱えるためには、検索キーに応じてインデックスファイルを管理してくれる機能や、データベースをネットワーク越しに使える機能などが求められる。
データベースに対する視点
実体のデータをそれぞれの利用者からデータベースを記述したものはスキーマと呼ばれる。そのスキーマも3つに分けられ、これを3層スキーマアーキテクチャと呼ぶ。
- 外部スキーマ – エンドユーザからどんなデータに見えるのか
- 概念スキーマ – 応用プログラマからは、どんな表の組み合わせで見えるのか、表の中身はどんなものなのか。
- 内部スキーマ – データベース管理者から、どんなファイル名でどんな形式でどう保存されているのか
データモデル
データを表現するモデルには、いくつかのモデルがある。
- 階層モデル – 木構造で枝葉に行くにつれて細かい内容
- ネットワークモデル – データの一部が他のデータ構造と関係している。
- 関係モデル – すべてを表形式で表す
データベースの基礎
データベースは、1970年頃に、E.F.コッド博士によりデータベースのための数学的な理論が確立された。
- 集合 A, B – 様々なデータ
- 直積 A✕B = { (x,y) | x∈A , y∈B } 集合A,Bのすべての組み合わせ
- 関係 R(A,B) すべての組み合わせのうち、関係があるもの。直積A,Bの部分集合
例えば、A={ s,t,u } , B={ p,q } (定義域) なら、
A✕B = { (s,p) , (s,q) , (t,p) , (t,q) , (u,p) , (u,q) }
このうち、Aが名前(sさん,tさん,uさん)、Bが性別(p=男性,q=女性)を表すなら、
R(A,B) = { (s,p) , (t,q) , (u,p) } (例)
(例):(sさん,男性) , (tさん,女性) , (uさん,男性)
理解確認
- データベースにおける3層スキーマアーキテクチャについて説明せよ
- 集合A,Bが与えられた時、関係R(A,B) はどのようなものか、数学定義や実例をあげて説明せよ。