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デザコンAM部門に参加

今日は、高専のデザインコンテスト。

参加部門は3DプリンタのAMデザイン部門だけど、コロナでZoom開催です。例年盛り上がる「ぶっ壊れるまで」の構造デザイン部門はナシで、空間デザイン部門などが開催されています。

3Dプリンタを使ったデザインを提案するAMデザイン部門には、専攻科の創造デザイン演習の授業の中で取り組んだ3つの作品を応募し、その中で「補強にもおしゃれにも役立つネイルチップ」(専攻科1年,山本,西島,定兼,廣谷)が本戦参加となりました。

1日目のプレゼンテーション風景

本戦参加6チームのうち、当日朝のくじ引きで発表順は最後になりました。

2日目のディスカッション風景

2日目は、初日と逆順となり、最初にディスカッションとなりました。

基本アイデアについては、高く評価してもらえましたが、試作した3Dプリントで実現したいコンセプトの物を作ることができていなかったため、その点が残念だったとの講評をいただきました。

MacPorts Big Sur 版コンパイル中

macOS の Big Sur を入れたけど、MacPorts が動かなくなっていた。丁度、CTFや構文解析の実験の最中で、いちいち自宅サーバなどに入って説明してたところ。1月ほど前には、まだ Big Sur 版が出てなかったけど、あらためて確認したら公開されていたので、早々に入れ直し。

最新の .pkg 版のインストーラで入れて、あとは、port selfupgrade ; port upgrade outdated で、ひたすら待つ。

CTF実験: unix 系開発環境のインストール

CTFでは、様々な unix 系の開発環境のコマンドが用いられる。

これらの環境を構築するためのメモを記載。

Windows の場合

macOS の場合

macOS で unix 系の開発環境を使う場合には、homebrew や MacPorts を用いることが多い。

CTFでよく使われるunix系パッケージ

((ファイル系))
file - ファイルの種別判定
zip  - zip,unzip(ファイル圧縮解凍)
gzip - gzip,gunzip(ファイル圧縮解凍-GNU)
nkf  - nkf(日本語漢字フィルタ)
hexcurse - hexcurse(バイナリエディタ)

((OS系))
gcc  - gcc(コンパイラ-GNU)
gdb  - gdb(デバッガ-GNU)
binutils - objdump(逆アセンブラ) ,
         - nm(オブジェクトファイルのシンボル出力) ,
         - strings(文字部分の出力)

((ネットワーク系))
telnet - telnet(telnetクライアント)
netcat-openbsd - nc(TCP/IP 汎用ツール)
bind9-dnsutils - nslookup, dig(DNS参照ツール)
whois - whois(ディレクトリサービスクライアント)

((ブラウザ系))
w3m  - w3m(テキストブラウザ)
wget - wget(テキストブラウザ+ダウンローダ)
curl - curl(ダウンローダ)

((使用上要注意))
nmap - nmap(ネットワーク調査ツール)
wireshark - wireshark(パケットキャプチャ)
          - windows用とかmac用のバイナリの方が便利

各unix系のインストールコマンド

((WSL2の場合))
$ sudo apt-get install gcc binutils

((Homebrew の場合))
$ sudo brew install gcc binutils

((MacPorts の場合))
$ sudo port install gcc binutils

専攻科実験: unix系 開発環境のインストール

コンパイラの技術と関数電卓プログラムの実験では、unix系の開発環境で一般的なコンパイラ作成用のツール flex , bison を用いる。これらの環境を構築するためのメモを記載。

Windows の場合

((ubuntuの場合))
$ sudo apt-get install gcc flex bison make

macOS の場合

macOS で unix 系の開発環境を使う場合には、homebrew や MacPorts を用いることが多い。

((Homebrew の場合))
$ sudo brew install gcc flex bison make

((MacPorts の場合))
$ sudo port install gcc flex bison make 

専攻科実験・コンパイラと関数電卓プログラム作成

骨伝導ヘッドセットを導入

Web会議で耳の疲れが少ないヘッドセットということで、骨伝導ヘッドフォンを導入してみた。

最初の感想は、予想以上に明瞭に聞こえる。ただし、試しに音楽をかけると、低音がほとんど聞こえない。音楽マニアでもなし、いい耳してるわけでもないので、わかりやすく試すということで AirPods もつけて、普通に音楽をかけて音源選択してみた。

その差は歴然。ま、あたりまえですな。でも、会議では耳が蒸れるとか、耳が痛くなることはなくなりそうだな。

{CAPTION}

演算子と2分木による式の表現

2分木の応用として式の表現の説明を行うけど、その前に計算式の一般論の説明を行う。

逆ポーランド記法

一般的に 1*2 + 3*4 と記載すると、数学的には演算子の優先順位を考慮して、(1*2)+(3*4) のように乗算を先に行う。このような優先順位を表現する時に、()を使わない方法として、逆ポーランド記法がある。

演算子の書き方には、前置記法、中置記法、後置記法があり、後置記法は、「2と3を掛ける、それに1を加える」と捉えると、日本語の処理と似ている。

中置記法 1+2*3
前置記法 +,1,*,2,3
後置記法 1,2,3,*,+  # 1と「2と3をかけた値」をたす。

後置記法は、一般的に逆ポーランド記法(Reverse Polish Notation)とも呼ばれ、式を機械語の命令に置き換える際に役立つ。

演算子の右結合・左結合

例えば、”1/2*3″という式が与えられたとする。この結果は、1/6だろうか?3/2だろうか?

一般的な数学では、優先順位が同じ演算子が並んだ場合、左側から計算を行う。つまり”1/2*3″は、”(1/2)*3″を意味する。こういった左側の優先順位が高い演算子は左結合の演算子という。

ただしC言語では、”a = b = c = 0″ と書くと、”a = (b = (c = 0))” として扱われる。こういった代入演算子は、 右結合の演算子である。

理解度確認

以下の式を指定された書き方で表現せよ。

逆ポーランド記法 1,2,*,3,4,*,+ を中置記法で表現せよ。
中置記法 (1+2)*3-4*5 を逆ポーランド記法で表現せよ。

以前の情報処理技術者試験では、スタックの概念の理解の例題として、逆ポーランド記法への変換アルゴリズムのプログラム作成が出題されることが多かったが、最近は出題されることはなくなってきた。

逆ポーランド記法の式の実行

この逆ポーランド記法で書かれた式から結果を求めるプログラムは以下のように記述できる。このプログラムでは式を簡単にするため、数値は1桁の数字のみとする。

// 単純な配列を用いたスタック
int stack[ 10 ] ;
int sp = 0 ;

void push( int x ) {
   stack[ sp++ ] = x ;
}
int pop() {
   return stack[ --sp ] ;
}

// 逆ポーランド記法の計算
int rpn( char* p ) {
   for( ; *p != '\0' ; p++ ) {
      if ( isdigit( *p ) ) {
         //         ~~(A)
         // 数字はスタックに積む
         push( *p - '0' ) ;
         //    ~~~~~~~~(B)
      } else if ( *p == '+' ) {
         // 演算子+は上部2つを取出し
         int r = pop() ;
         int l = pop() ;
         // 加算結果をスタックに積む
         push( l + r ) ;
      } else if ( *p == '*' ) {
         // 演算子*は上部2つを取出し
         int r = pop() ;
         int l = pop() ;
         // 乗算結果をスタックに積む
         push( l * r ) ;
      }//~~~~~~~~~~~~~(C)
   }
   // 最終結果がスタックに残る
   return pop() ;
}

void main() {
   printf( "%d\n" , rpn( "123*+" ) ) ;
}

逆ポーランド記法の式の実行は、上記のようにスタックを用いると簡単にできる。このようなスタックと簡単な命令で複雑な処理を行う方法はスタックマシンと呼ばれる。Java のバイトコードインタプリタもこのようなスタックマシンである。

Cプログラママニア向けの考察

上記のプログラムでは、int r=pop();…push(l+r); で記載しているが、

push( pop() + pop() ) ;

とは移植性を考慮して書かなかった。理由を述べよ。

最初の関数電卓

初期の関数電卓では複雑な数式を計算する際に、演算子の優先順位を扱うのが困難であった。このため、HP社の関数電卓では、式の入力が RPN を用いていた。(HP-10Cシリーズ)

2項演算と構文木

演算子を含む式が与えられたとして、古いコンパイラではそれを逆ポーランド変換して計算命令を生成していた。しかし最近の複雑な言語では、計算式や命令を処理する場合、その式(または文)の構造を表す2分木(構文木)を生成する。。

   +
  / \
 1   *
    / \
   2   3

演算子の木のノードで、末端は数値であることに注目し、右枝・左枝がNULLなら数値(data部にはその数値)、それ以外は演算子(data部には演算子の文字コード)として扱うとして、上記の構文木のデータを作る処理と、その構文木の値を計算するプログラムを示す。

struct Tree {
   int  data ;
   struct Tree* left ;
   struct Tree* right ;
} ;
struct Tree* tree_int( int x ) // 数値のノード
{
   struct Tree* n ;
   n = (struct Tree*)malloc( sizeof( struct Tree ) ) ;
   if ( n != NULL ) {
      n->data = x ;
      n->left = n->right = NULL ;
   }
   return n ;
}
struct Tree* tree_op( int op , // 演算子のノード
                   struct Tree* l , struct Tree* r ) {
   struct Tree* n ;
   n = (struct Tree*)malloc( sizeof( struct Tree ) ) ;
   if ( n != NULL ) {     // ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~(D)
      n->data  = op ;
      n->left  = l ;
      n->right = r ;
   }
   return n ;
}
// 与えられた演算子の木を計算する関数
int eval( struct Tree* p ) {
   if ( p->left == NULL && p->right == NULL ) {
      // 数値のノードは値を返す
      return p->data ;
   } else {
      // 演算子のノードは、左辺値,右辺値を求め
      // その計算結果を返す
      switch( p->data ) {
      case '+' : return eval( p->left ) + eval( p->right ) ;
      case '*' : return eval( p->left ) * eval( p->right ) ;
      }              // ~~~~~~~~~~~~~~~(E)      ~~~~~~~~(F)
   }
}

void main() {
   struct Tree* exp =  // 1+(2*3) の構文木を生成
      tree_op( '+' ,
               tree_int( 1 ) ,
               tree_op( '*' ,
                        tree_int( 2 ) ,
                        tree_int( 3 ) ) ) ;
   printf( "%d¥n" , eval( exp ) ) ;
}

理解度確認

  • push(),pop() のスタックは、保存と取り出しの順序を表す単語の頭文字4つを使って何と呼ばれるか?
  • 上記プログラム中の(A)~(F)の型を答えよ。

GROUP BY HAVINGとビューテーブル

GROUP BY HAVING

GROUP BY-HAVING では、指定されたカラムについて同じ値を持つレコードがグループ化される。SELECT 文に指定される集約関数は、グループごとに適用される。HAVING は、ある条件を満たす特定のグループを選択するための条件で、WHERE と違い、集約関数が使える。

SELECT SG.商品番号, SUM(SG.在庫量)
  FROM SG
  GROUP BY SG.商品番号 HAVING SUM(SG.在庫量) >= 500 ;

このSQLを実行すると、SG のテーブルから、商品番号が同じものだけをあつめてグループ化される。そのグループごとに在庫量のデータの合計SUMを集約し、500以上のデータが出力される。

CREATE VIEW

今までで述べてきたSQLでは、実際のテーブルを対象に、結合・選択・射影を行う命令であり、これは概念スキーマと呼ばれる、対象となるデータベース全体を理解したプログラマによって扱われる。

しかし、プログラムの分業化を行い、例えば結果の表示だけを行うプログラマにしてみれば、全てのデータベースの表を考えながらプログラムを作るのは面倒である。そこで、結合・選択・射影の演算の結果で、わかりやすい単純な表となったものであれば、初心者のデータベースプログラマでも簡単に結果を扱うことができる。このような外部スキーマを構成するための機能が、ビューテーブルである。

-- 優良業者テーブルを作る --
CREATE VIEW 優良業者 ( 業者番号 , 優良度 , 所在 )
    AS SELECT S.業者番号, S.優良度, S.所在
         FROM S
         WHERE S.優良度 >= 15 ;

-- 優良業者テーブルから情報を探す --
SELECT *
  FROM 優良業者
  WHERE 優良業者.所在 = '福井' ;

ビューテーブルに対する SQL を実行すると、システムによっては予め実行しておいた CREATE VIEW の AS 以下の SQL の実行結果をキャッシュしておいて処理を行うかもしれない。システムによっては SQL の命令を 副クエリを組合せた SQL に変換し、処理を行うかもしれない。しかし、応用プログラマであれば、その SQL がどのように実行されるかは意識する必要はほとんど無いであろう。

ただし、ビューテーブルに対する 挿入・更新・削除といった演算を行うと、データによっては不整合が発生することもあるので注意が必要である。

SQL言語

教科書の流れに沿ってSQLの言語について、再掲

  • スキーマ定義
    • CREATE – 実テーブル、ビューテーブルの定義
    • GRANT – 権限の定義
  • スキーマ操作
    • DROP – 実テーブル、ビューテーブルの削除
    • REVOKE – 権限の削除
    • ALTER – テーブルの変更
    • ADD – カラムの追加
  • データ操作
    • SELECT, INSERT, DELETE, UPDATE – レコードの検索、追加・削除・更新
    • トランザクション処理
      • データベースでは、原子性などを満たすためにデータベースへの更新履歴を保持している。これらの更新履歴をデータベースに反映させ確定する処理がトランザクション処理。
      • COMMIT – データベースの更新処理を確定
      • ROLLBACK – データベースの更新処理を取り消す

ホスト言語とのインタフェースとSQLインジェクション

プログラミング言語によっては、その言語の中でSQLを使うために「組み込み型のSQL」が使えるものがある。
(COBOL,PL/Iなど)

動的メモリ管理が得意な最近のPythonやPHPなどの言語であれば、データベース参照の関数が利用できる。

SQLインジェクション

例えば、PHPでは、SQLからデータを取り出す処理は、以下のようになる。

// 検索するユーザID
$id = "t-saitoh" ;
$pdo = new PDO( '...' ) ; // データベースに接続する関数
$sql = "select name from usertable where id='$id'" ;
$query = $pdo->prepare( $sql ) ;

// 取り出せたデータに関する処理 id がプライマリキーならforeachは1回ループのはず
foreach( $query->fetcAll() as $name ) {
   // $name に取り出した名前が入っている
} 

しかし、$id の部分を、Web の入力フォームなどの値であれば、名前以外の情報が入力される場合もある。

この際に、「 $id = ” ‘ or 1==1 — ‘ ” 」といった値が入っていた場合、SQLで実行される命令は、

$id = "' or 1==1 --'" の場合
$sql = "select name from usertable where id='' or 1==1 -- ''" ;

となってしまい、本来なら1人のデータを抽出する select 命令が、全テーブルに対して該当してしまい、情報漏洩が発生するかもしれない。

「 $id = “‘; drop usertable ; — ‘” 」であれば、usertable が消されてしまい、システムが動かなくなる(サービスを提供できなくする攻撃 = DoS攻撃 – Denial-of-service attack)ことも考えられる。

こういった攻撃手法は、SQLに本来の意図ではないSQL命令を紛れ込ませる攻撃ということで、SQLインジェクションという。

SQLインジェクションで発生した有名な事件では、以下のようなものがある。

対策としては、ユーザが入力したデータを用いて SQL 命令を実行する場合は、ユーザ入力をSQLとして悪用されないように、シングルクオートなどをエスケープするなどの処理が必要となる。さまざまな手法があるので、SQL無効化の専用関数を用いるべき。

また、データベースシステムは、ネットワーク経由でSQLによる処理を行うが、データベースサーバ自体がインターネットに接続されていて、パスワード攻撃によりデータベース本体に不正アクセスが行われる場合もある。一般的なデータベースを用いたシステムは、フロントエンドのWebサーバ、スレーブDBサーバ、マスタDBサーバの三層構成をとることが多いが、バックエンドのデータベースは、インターネットから隔離しフロントエンドのWebサーバのみ接続できるようにするのが一般的である。

データベースに接続する場合はパスワードにより利用者を限定することができるが、データベースシステム自体がインターネットに接続されていると、パスワード総当たり攻撃(ブルートフォース攻撃)や、パスワードスプレー攻撃(総当たり攻撃は、短時間でパスワード失敗が多発するのでシステムで接続拒否するのが一般的。これを回避するために時間をかけて総当たり攻撃をする手法)により、情報漏洩が発生する。

コンパイラの技術と関数電卓プログラム(2)

前半では、1文字の数字と簡単な演算子で表現される計算式を再帰下降パーサで計算する処理で、演習を行った。

後半は、さらに実際のコンパイラに近いものとして、 C言語で広く使われている、字句解析ツール(lexical analyzer : lex or flex)、 構文解析ツール(parser : yacc or bison) を使って、 さらに現実的な関数電卓プログラムを作ってみる。

lex or flex による字句解析

lexは、字句解析のプログラムを自動生成するツール“%%”行の内側に、正規表現によるルールとその処理(アクション)を書き並べる。 また、“%{ … %}”の内側に、その処理に必要なC言語のソースを書き、 lex で処理を行うと、lex.yy.c というC言語のソースを出力する。

lex.yy.c の中には、yylex() という関数が自動的に作られ、次に示す構文解析ツール(yacc or bison)から呼び出される。

# flex は、lex の改良版。

(( mycalc.l ))
%{
// lexの %{ %} の内側は、C言語のプログラム
#include <stdio.h>
// yaccが出力するヘッダファイル
#include "y.tab.h"

int yywrap( void )
{
   // 1: スキャナ終了
   // 0: yyin を切り替えて継続
   return 1 ;
}
%}
%%
// %% から %% までは、lex の正規表現とその処理を記述する場所。
"+"  return ADD ; // 演算子の種類を示す定数 ADD,SUB,...が定義される
"-"  return SUB ;
"*"  return MUL ;
"/"  return DIV ;
"\n" return CR  ;
[0-9][0-9]* {
   // 入力はyytextに格納されている。
   int temp ;
   sscanf( yytext , "%d" , &temp ) ;
   yylval.int_value = temp ;
   // 返り値は、字句(トークン)の種別を表す定数
   return INT_LITERAL;  // 整数リテラルを返す
}
%%

このプログラムを、lex で処理させると、正規表現“+” 記号ADD という定数記号を割り振るとか、正規表現の数字列” [0-9][0-9]* “をみつけると、その正規表現に対する{〜}までに書かれたアクションを処理するため、文字列から数値を生成(sscanf)して、その場合の記号に INT_LITERAL という定数記号を割り振る…といった処理のプログラムを自動生成してくれる。(INT_LITERALは構文解析側で定義する定数)

yacc or bison

yacc ( Yet Another Compiler Compiler ) もしくはその改良版の bison は、構文解析のプログラムを自動生成してくれるツールである。構文をBNF記法で記載すると、字句解析ツール(lex等)を呼び出しながら構文に合わせたトークンの出現に応じた状態遷移のための「遷移テーブル」を自動生成し、 その遷移テーブルを用いた処理のプログラムをC言語で出力してくれる。

先に示した字句解析プログラム(lex)は、様々なトークン(C言語なら演算子やキーワード)とデータ(C言語なら数値や文字列)を返す。このデータには様々な場合考えられるので、 そのトークンに合わせたデータの型を “%union” の中に記載する(中身はC言語の共用体)。 “%%”〜”%%” の間には、BNF記法の(ルール)と、それに対応する処理(アクションは“{ }”の中の部分)を記載する。最初の“%{ … %}”の間には、それ以外の処理に必要なC言語の処理を記載する。

# bison(水牛)は、yacc(山牛)の改良版。

(( mycalc.y ))
%{
#include <stdio.h>
#include <stdlib.h>

// yacc が定義する内部関数のプロトタイプ宣言
#define YYDEBUG 1
extern  int  yydebug ;
extern  int  yyerror( char const* ) ;
extern  char *yytext ;
extern  FILE *yyin ;

// 最初に呼び出される関数yyparse()
extern  int  yyparse( void ) ;

// 字句解析を呼び出す関数yylex()
extern  int  yylex( void ) ;
%}

// 字句(トークン)の定義
%union {
   int  int_value;
}
%token <int_value>  INT_LITERAL
%token ADD SUB MUL DIV CR
%type  <int_value>   expression term primary_expression

%%
// 構文の定義
line_list  : line                // 行の繰り返し
           | line_list line
           ;

line       : expression CR       { printf( ">>%d\n" , $1 ) ; }
           ;

// 以下のBNFルールは、単純に再帰に置き換えると
//   無限に再帰して異常終了するものであることに注意
expression : term
           | expression ADD term { $$ = $1 + $3 ; }
           | expression SUB term { $$ = $1 - $3 ; }
           ;

term       : primary_expression
           | term MUL primary_expression { $$ = $1 * $3 ; }
           | term DIV primary_expression { $$ = $1 / $3 ; }
           ;

primary_expression
           : INT_LITERAL
           ;
%%

// 補助関数の定義
int yyerror( char const* str )
{
   fprintf( stderr , "parser error near %s\n" , yytext ) ;
   return 0 ;
}
int main( void )
{
   yydebug = 0 ;        // yydebug=1 でデバッグ情報表示
   yyin = stdin ;
   if ( yyparse() ) {   // 構文解析を開始
      fprintf( stderr , "Error ! Error ! Error !\n" ) ;
      exit( 1 ) ;
   }
}

yacc では、%%-%%の間に書かれたBNF記法によるルールとアクションをプログラムに変換してくれる。BNF記法の要素は、“要素 : ルール1 {アクション1} | ルール2 {アクション2} | … ;” といった構成になっている。要素 expression に対するルール expression$1 ADD$2 term$3では、ルールの各要素をアクションで参照する時には、$1,$2,$3 といった変数を利用できる。ルール「加算式($1) +($2) 乗算式($3)」という文になっている部分を見つけると、そのルールに対応するアクション“{ $$ = $1 + $3 ; }”「$1(加算式部分の値)と、$3(乗算式の部分)の値を加えて、$$(式の結果)に代入する」といった処理を生成してくれる。yyparse() 関数を呼び出すと、構文の一番最上部の line_list に相当する処理が起動される。yyerror()は、構文解析の途中で文法エラーになった時に呼び出される関数。

生成されるパーサの内容に興味があるなら、生成される y.tab.c の内容を読むと良い。

make と Makefile

これらのプログラムでは、字句解析プログラム mycalc.l から生成された lex.yy.c, y.tab.h と, 構文解析プログラム mycalc.y から生成された y.tab.c を組合せて1つの実行ファイルにコンパイルする。 これらの手順は煩雑なので、make ツールを使う。

make は、 Makefile に記載されている“ターゲット”と、それを作るために必要な“依存ファイル”、 “依存ファイル”から”ターゲット”を生成する処理“アクション”から構成される。 make は、ターゲットと依存ファイルの更新時間を比較し、 必要最小限の処理を行う。

基本的な Makefile の書き方は、

ターゲット: 依存ファイル...
        アクション       # アクションの前はタブ

の様に書き、依存ファイルが更新されていたら、アクションを実行し、ターゲットを更新する。

以下に、今回の課題で使用する Makefile を示す。

(( Makefile ))
# 最終ターゲット
mycalc:	y.tab.o lex.yy.o
        gcc -o mycalc y.tab.o lex.yy.o

# 構文解析処理
y.tab.o: mycalc.y
        bison -dy mycalc.y	# -dy : yacc互換モード
        gcc -c y.tab.c

# 字句解析処理
lex.yy.o: mycalc.l mycalc.y
        flex -l mycalc.l        # -l : lex互換モード
        gcc -c lex.yy.c

# 生成ファイルの削除ルール
clean:; rm mycalc y.tab.c y.tab.h lex.yy.c *.o

(( ファイルの依存関係のイメージ図 ))
mycalc.l           mycalc.y
  |     \           |
lex.yy.c  y.tab.h  y.tab.c
  |            \    |
lex.yy.o        y.tab.o
        \    /
         mycalc

この課題にあたり、後半の実験では flex, bison などの unix 系プログラミング環境を利用する。

macOS の利用者であれば MacPorts や Homebrew 、Windows 利用者であれば、wsl2(Windows subsystem for Linux) や Cygwinなどをインストールし実行すること。

今回の実験であれば、linux(Debian系)ならば、”sudo apt-get install flex bison gcc make” にて、必要なパッケージをインストールして実験を行うこと。

コンパイラの技術と関数電卓プログラム(1-2)

前回の実験資料では、再帰下降パーサについて説明し、サンプルプログラムを示した。

演算子の左結合・右結合

ここで、プログラムの実際の動きについて考えてみる。前回の乗除式の BNF 記法による定義は以下のようであった。

exp_乗徐式 ::= DIGIT '*' exp_乗徐式
            | DIGIT '/' exp_乗徐式
            | DIGIT
            ; 

このBNFによる文法において、1*2*3 を考えると、以下のように解析がすすむ。
しかし、これでは 1*(2*3) であり、右結合にて処理が行われたことになる。

   exp_乗徐式
  /|\
DIGIT| exp_乗徐式
 |  |   /|\   
 |  |DIGIT| exp_乗徐式
 |  |  | | |
 |  |  | | DIGIT
 |  |  | | |
  1  *  2  *  3

左結合とするには

これをC言語で一般的な、(1*2)*3 といった左結合の処理になるように、BNF 記法の文法を下記のように書き換えるかもしれない。

exp_乗徐式 ::= exp_乗徐式 '*' DIGIT
            | exp_乗徐式 '/' DIGIT
            | DIGIT
            ; 

しかし、このBNF記法をそのまま下記のような再帰に置き換えると、再帰が無限に続き異常終了してしまう。

int exp_MUL_DIV( ... ) {
   int left = exp_MUL_DIV( ... ) ;
   if ( **endp == '*' ) {
      (*endp)++ ;
      if ( isdigit( **endp ) ) {
         int right = **endp - '0' ;
         (*endp)++ ;
         return left + right ;
      }
   } else ...
      :
}

左結合のプログラムにする場合は、BNF記法の処理を杓子定規に再帰プログラムで記述する必要はない。

空白除去

プログラム中の空白を無視するのであれば、以下のような補助関数を作っておくと便利かな。使い方は考えること。

void skip( char**ppc ) {
   while( isspace( **ppc ) )
      (*ppc)++ ;
}

システム

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