リスト構造と処理
データ処理において、配列は基本的データ構造だが、動的メモリ確保の説明で述べたように、基本の配列では大きさを変更することができない。これ以外にも、配列は途中にデータを挿入・削除を行う場合、の処理時間を伴う。以下にその問題点を整理し、その解決策であるリスト構造について説明する。
配列の利点と欠点
今までデータの保存には、配列を使ってきたが、配列は添字で場所を指定すれば、その場所のデータを簡単に取り出すことができる。配列には苦手な処理がある。
例えば、配列の中から目的のデータを高速に探す方式として、2分探索法を用いる。処理に要する時間としては となる。
// この関数は見つかったら、見つかった場所、見つからない場合は -1 を返す。 int find( int array[] , int left , int right , int key ) { // データは left から right-1までに入っているとする。 while( left < right ) { int mid = (left + right) / 2 ; // 中央の場所 if ( array[ mid ] == key ) return mid ; // 見つかった else if ( array[ mid ] > key ) right = mid ; // 左半分にある else left = mid + 1 ; // 右半分にある } return -1 ; // 見つからない } int a[] = { 12 , 34 , 41 , 53 , 62 , 79 , 80 } ; int main() { int ans = find( a , 0 , 7 , 62 ) ; // 配列 a[] から 62 を探す printf( "%d¥n" , ans ) ; // 4が表示される return 0 ; }
しかし、この配列の中に新たに要素を追加しようとするならば、データは昇順に並んでいる必要があることから、以下のようになるだろう。
void entry( int array[] , int* psize , int key ) { // データを入れるべき場所を探す処理 for( int i = 0 ; i < *psize ; i++ ) // O(N) の処理だけど、 if ( array[ i ] > key ) // O(log N) でも書けるけど break ; // 今回は単純に記載する。 if ( i < *psize ) { // 要素を1つ後ろにずらす処理(A) for( int j = *psize ; j > i ; j-- ) // O(N)の処理 array[ j ] = array[ j - 1 ] ; array[ i ] = key ; } else { array[ *psize ] = key ; } (*psize)++ ; } /// よくある間違い /// /// 上記処理の(A)の部分を以下のように記載した /// /// 問題点はなにか答えよ /// // for( int j = i ; j < size ; j++ ) // array[ j + 1 ] = array[ j ] ; // array[ i ] = key ; int main() { int a[ 100 ] ; int size = 0 ; int x ; // 入力された値を登録していく繰り返し処理 while( scanf( "%d" , &x ) == 1 ) { // x を追加する。 entry( a , &size , x ) ; } return 0 ; }
これで判るように、昇順に並んだ配列にデータを追加する場合、途中にデータを入れる際にデータを後ろにずらす処理が発生する。
この例は、データを追加する場合であったが、不要となったデータを取り除く場合にも、データの場所の移動が必要である。
このことから、昇順に並べられた配列は、データの追加処理の発生頻度が少ない場合は、2分探索法で効率が良いが、データの追加や削除が頻繁に発生する時はあまり効率が良くない。
順序が重要なデータ列で途中へのデータ挿入削除を高速化
例えば、アパート入居者に回覧板を回すことを考える。この中で、入居者が増えたり・減ったりした場合、どうすれば良いか考える。
以下の説明のような方法であれば、自分の所に回覧板が回ってきたら、次の入居者の部屋番号さえわかっていれば、スムーズに回覧板を回すことができる。
101 102 103 104 105 106 アパートの番号 [ 105 | 106 | -1 | 102 | 104 | 103 ] 回覧板を回す次の人の部屋番号 101号室の次は、105号室、 105号室の次は、104号室、 : 106号室の次は、103号室、 103号室の次は、おしまい(-1)
このように「次のデータの場所」という概念を使うと、データの順序を持って扱うことができる。これをプログラムにしてみよう。
struct LIST { int data ; // 実際のデータ int next ; // 次のデータの配列の添字 } ; struct LIST array[] = { /*0*/ { 11 , 2 } , /*1*/ { 67 , 3 } , // 末尾にデータ34を加える /*2*/ { 23 , 4 } , // { 23 , 5 } , /*3*/ { 89 , -1 } , // 末尾データの目印 /*4*/ { 45 , 1 } , /*5*/ { 0 , 0 } , // { 34 , 4 } , } ; int main() { for( int idx = 0 ; idx >= 0 ; idx = array[ idx ].next ) { printf( "%d¥n" , array[ idx ].data ) ; } return 0 ; }
この方法を取れば、途中にデータ入れたり、抜いたりする場合に、データの移動を伴わない。(O(N)の処理が発生しない)
しかし、配列をベースにしているため、配列の上限サイズを超えて格納することはできない。そこで、必要に応じてメモリを確保するテクニックを導入する。
リスト構造
リスト構造は、データと次のデータへのポインタで構成され、必要に応じてメモリを確保することで、配列を使わない。また、次のデータへのポインタでつなげているため、途中へのデータ挿入が簡単にできるようにする。
struct List { int data ; // データ struct List* next ; // 次のデータへのポインタ } ; int main() { struct List* top ; // 配列の先頭のデータ struct List* p ; top = (struct List*)malloc( sizeof( struct List ) ) ; top->data = 111 ; top->next = (struct List*)malloc( sizeof( struct List ) ) ; top->next->data = 222 ; top->next->next = (struct List*)malloc( sizeof( struct List ) ) ; top->next->next->data = 333 ; top->next->next->next = NULL ; // 必ず、末尾データの目印をつける! for( p = top ; p != NULL ; p = p->next ) { printf( "%d¥n" , p->data ) ; } return 0 ; }
補助関数
上記のプログラムでは、(struct…)malloc(sizeof(…))を何度も記載し、プログラムが分かりにくいので、以下に示す補助関数を使うと、シンプルに記載できる。
struct List* cons( int x , struct List* n ) { struct List* ans ; ans = (struct List*)malloc( sizeof( struct List ) ) ; if ( ans != NULL ) { ans->data = x ; ans->next = n ; } return ans ; } struct List* top ; top = cons( 111 , cons( 222 , cons( 333 , NULL ) ) ) ;
補助関数の名前の cons は、constructor の略であり、古くから使われている List Processor(LISP) というプログラム言語でのリスト(セル)を生成する関数が cons 。
LISPと関数型プログラミング言語
LISPの歴史は長く、最古のFORTRAN,COBOLに次ぐ3番目ぐらい。最初は、人工知能のプログラム開発のための関数型プログラミング言語として作られた。特徴として、データもプログラムもすべてリスト構造(S式)で表すことができ、プログラムは関数型に基づいて作られる。
関数型プログラミングは、Ruby や Python でも取り入れられている。関数型プログラミングは、処理を関数をベースに記述することで「副作用を最小限にすることができ」、極端な話をすればループも再帰呼出しで書けばいい…。
LISPの処理系は、最近では Scheme などが普通だが、プログラムエディタの Emacs は、内部処理が LISP で記述されている。
表計算ソフトの使い方(絶対参照・相対参照)
前回課題の答え合わせ
前回のレポートでは、sin(83度)(例)といった数値の有効数字を考えるというものを考えてもらったので、この有効数字をどう記載すべきか考えてみる。
課題を示す Excel ファイルでは、75度~89度あたりの角度で出題をするようにしてあった。注意しないといけない点は、sinは90度に近づくほど、1に近づく。このため、0.99…といった数値が求まるが、角度がちょっと変化しても、0.99といった部分はほぼ変化しない。だから、83が有効数字2桁ということで、0.99 といった有効数字2桁の書き方では、ちょっと不十分かもしれない。
そこで、83度(有効数字2桁)が小数点以下を丸められた数値と仮定する。この場合、元の数値は 82.5度~83.5度 の可能性がある。これらの値のsinを計算すると、0.9914から0.9935の間であり、小数点以下3桁目は、1~3 の値であり、結果を 0.992 (有効数字3桁) と記載しても良いかもしれない。
sin(82.5°) = 0.991444861 sin(83.0°) = 0.992546152 sin(83.5°) = 0.993571856
表計算ソフトの使い方
情報制御基礎では、プログラムで計算する所を、Excel のような表計算ソフトを用いて検証してもらったりする予定なので、Excel で計算式を使う方法を説明する。
セルの場所と簡単な式
簡単な、品名・単価・個数・価格の表を考える。以下の表のように、列の名前と、品名・単価・個数まで入力した後、単価と個数をかけた価格を求めるとする。
Excel では、表の列には左から、A,B,C,D… , 表の行には上から1,2,3,4,5 と番号が振られていて、特定の列・特定の行のデータを表す時には、列行を組み合わせ、A1に品名、B3に¥80、C5に4 が入っている。
例えば、D2 に、ノート単価120円、ノート個数3個をかけた値を入れたい場合は、D2の場所に、
=B2*C2
を書き込めば、その場所には360が表示される。
Excelでは、入力する文字列の先頭が”=”の場合は、残り部分は計算式として扱われる。
D3には、”=B3*C3″を入力すれば、160 が表示される。しかし、この様な式を何度も入力するのは面倒である。
この場合、セル・カーソルを、D2 に合わせ、[右ボタン]-[コピー]を行い、D3 で[右ボタン]-[貼り付けオプション]-[貼り付け]を行えば、”=B3*C3″が入力される。
ここで注意しないといけないのが、式を張り付ける場合には、貼り付け先のセルの場所が一つ下の行なので、行番号を表す2の部分が1つ下の行番号3に書き換えられて、貼り付けが行われる。(相対参照)
関数式
例えば、下左図のような、数字とその平方根の表を作る場合、A2 に 1、B2に =sqrt( A2 ) を入力、A3 に =A2+1 を入力したあと、B2の式をB3にコピー&ペーストし、A3,B3 を A4~A6にペーストすればいい。
B2に入力したような、sqrt( A2 ) のようなものは、関数式と呼ばれる。
また、A3,B3 といった複数の行・列をまとめた範囲を示す時は、A3:B3 といった表記方法であらわす。
絶対参照と相対参照
最初の例に戻って、単価と個数の積で今度は税率を加えて計算する例を考える。また、税率は後で変化するかもしれないので、B1 のセルに税率を記入しておく場合を考える。
この場合、D3 には、” =B3*C3*(1+B1) ” を入力すればいい。
ただ、このように式を入力すると、D3 の計算式を、D4,D5,D6 にコピーすると、セル D4 には =B4*C4*(1+B2) が入力されてしまい、B2 には単価という文字が記載されているため、正しい結果が求まらない。
こういった場合には、絶対参照を用いる。D3 に記入する式を
=B3*C3*(1+$B$2)
とし、この D3 の式を D4 にコピー&ペーストすると、列記号、行番号の前に$がついた部分の式は、貼り付け場所に応じて変化しない。
このような、$B$2 といったセルの参照は、絶対参照と呼ぶ。これに対し、B2 といったセル参照は、貼り付け場所に応じて書き換えられるので、相対参照と呼ぶ。
絶対参照と相対参照が混ざった、$B2, B$2 といった書き方もある。
式の入力時にF4ボタンを押す度に、B2→$B$2→B$2→$B2→B2 と変化する
$B2 は、式をコピーすると列部分はBのまま、行部分は場所に合わせて変化する。
B$2 は、式をコピーすると列部分は場所に合わせて変化し、行部分は2のままとなる。
レポート課題(第5回)
Excel で、xを0〜180度まで変化させたときのsin(x),位相をyとした時のsin(x+y)の値の表を作り、グラフ機能で表示せよ。この時、計算式の入力をどのように行なったのか(相対参照や絶対参照をどのように使ったのか)説明を、グラフの下に入力欄を設け記入せよ。
そして出来上がった Excel のファイルを、Teams のこちらのフォルダに提出せよ。
UMLの概要
巨大なプロジェクトでプログラムを作成する場合、設計の考え方を図で示すことは、直感的な理解となるため重要であり、このために UML がある。以下にその考え方と記述方法を説明していく。
プログラムの考え方の説明
今まで、プログラムを人に説明する場合には、初心者向けの方式としてフローチャートを使うのが一般的であろう。しかし、フローチャートは四角の枠の中に説明を書ききれないことがあり、使い勝手が悪い。他には、PAD と呼ばれる記述法もある。この方法は、一連の処理を表す縦棒の横に、処理を表す旗を並べるようなイメージで記載する。
しかし、これらの記法は、手順を記載するためのものであり、オブジェクト指向のようなデータ構造を説明するための図が必要となってきた。
個人的な経験では、企業にてプログラムを作っていた頃(1990頃)、UML などの考え方は普及していなかった。処理を説明するためのフローチャートでも、通信関係のプログラムでは、送信側と受信側の相互関係を説明する場合、フローチャートでは相互のタイミングなどの説明は困難であった。また、通信では、リトライ・タイムアウトといった状態も発生するが、その場合だと状態遷移図なども併記する必要があり、フローチャートの限界を感じていた。
また、データ構造については、オブジェクト指向も普及前であればデータ要素の一覧表が中心であった。書式などの統一もされていないので、同じチーム内で誤解などを解消するための意思統一が重要であった。
プログラムのドキュメント
学生のみなさんは、プログラムの説明の文書はどのように残しているだろうか?
私が仕事をしていた頃は、プログラムと別にドキュメントをワープロで残そうとすると、プログラム変更に合わせて編集することが難しく、プログラムとドキュメントの乖離が発生する。このため、プログラムの中にコメントの形で残すことが重要であった。特にデータ構造の説明は、ヘッダファイルの中に大量のコメントで残すことが多かった。
TeXを改発した Knuth は、文芸的プログラミングとして、プログラム中にドキュメントを併記するための WEB を同時に開発している。このシステムでは、プログラムとドキュメントを併記したソースプログラムから、ドキュメントを取り出すプログラムと、ソースコードを取り出すプログラムがあり、情報の一体性を高めている。
Perl では、プログラムソースの中にPODという書式でドキュメントを埋め込むことができ、perldoc といったコマンドで、プログラムソースからマニュアルを抽出し参照することができる。
最近では、プログラムのエディタで Markdown という、マークアップ言語でドキュメントを残す場合も多いだろう。これであれば、プレーンテキストで書いたドキュメントを、HTMLやLaTeXといった読みやすいドキュメントに変換も容易である。
UML(Unified Modeling Language)記法が生まれるまで
巨大なプロジェクトでプログラムを作る場合、対象となるシステムを概念として表現する場合、オブジェクト指向分析(OOA: Object Oriented Analysis)やオブジェクト指向設計(OOD: Object Oriented Design)とよばれるソフトウェア開発方法が重要となる。(総称して OOAD – Object Oriented Analysis and Design)
これらの開発方法をとる場合、(1)自分自身で考えを整理したり、(2)グループで設計を検討したり、(3)ユーザに仕様を説明したりといった作業が行われる。この時に、自分自身あるいはチームメンバーあるいはクライアントに直感的に図を用いて説明する。この時の図の書き方を標準化したものが UML であり、(a)処理の流れを説明するための振る舞い図(以前であればフローチャートやPAD)と、(b)データ構造を説明するための構造図を用いる。
UMLは、ランボーによるOMT(Object Modeling Technique どちらかというとOOA中心)と、 ヤコブソンによるオブジェクト指向ソフトウェア工学(OOSE)を元に1990年頃に 発生し、ブーチのBooch法(どちらかというとOOD中心)の考えをまとめ、 UML(Unified Modeling Language)としてでてきた。
UMLでよく使われる図を列記すると、以下の物が挙げられる。
- 構造図
- クラス図
- コンポーネント図
- 配置図
- オブジェクト図
- パッケージ図
- 振る舞い図
- アクティビティ図
- ユースケース図
- ステートチャート図(状態遷移図)
- 相互作用図
- シーケンス図
- コミュニケーション図(コラボレーション図)
UMLを正しく使うことができるようになれば、UMLで仕様書を書けばそれがそのままプログラムになることが理想的な姿かもしれない。ソフトウェア開発やソフトウェアの保守にソフトウェアツールを利用することは、CASE(Computer Aided Software Engineering)と呼ばれ、そのようなツールをCASEツールと呼ぶ。地元福井の永和システムマネジメントでは、astar* というCASEツールを開発している。
その他の関連雑談のためのリンク
- 中国・インド・フィリピンにソフトウェア開発をアウトソーシングして分かったこと
- Git – 分散型バージョン管理システム
情報処理演習室のルータを交換
EI棟3F演習室で、Aruba の WiFi 環境のための Buffalo ルータを使っていたけど、警告メッセージが出始めたので、確認したらルータの管理画面さえ表示できなくなってきた。古いルータだったので寿命と思われる。
かといって、このルータは、4EI教室,5EI教室,2F実験室,3F演習室,4F創成LABを束ねる Aruba WiFi の上流にあたるため、実験室がことごとく使えなくなる。そこで、手持ちのマニアックな Edgerouter-X に入れ替える。
C言語での入出力処理のおさらい
テストのプログラム作成の問題で、入力処理の書き方が適切でないものが多いので、基本とテクニックの解説。
scanf()の使い方
// scanf( "フォーマット" , 引数... ) ; // データの型とフォーマット // int %d (10進数として入力) - Digit // %o (8進数として入力) - Octal digit // %x (16進数として入力) - heXa-decimal digit // - short int %hd - half-size digit // - long int %ld - long-size digit // // float %f // double %lf - long-size float // // char[] %s // char %c // 基本 scanf() はポインタ渡し。文字列(char配列)は配列の先頭アドレスを渡す int x ; scanf( "%d" , &x ) ; // ポインタを渡し、xの場所に書き込んでもらう。 char str[ 10 ] ; scanf( "%s" , str ) ; // strは配列の先頭の場所。 & は不要。
通常のscanfの%d,%sなどは、データ区切りは空白や改行となる。
%s で “tohru saitoh”といった空白の入った文字列を入力するには、一工夫が必要。
printf()の使い方
// printf( "フォーマット" , 引数... ) ; // データの型とフォーマット // 基本は、scanf() と同じ。 // float 型の出力 // %f 固定小数点表示 1.23 のような出力 // %e 指数表示 1.23e+10 のような出力 // %g 固定小数点%fと指数表示%eのどちらか // 桁数指定 // %5d - 必ず5桁で出力 " 123" // %05d - 5桁の空白部は0で埋める "00123" // %5.2f - 全体5桁、小数点以下2桁 " 1.23" // %5s - 文字列を5桁で出力 " abc" // 左寄せ // %-5s - 文字列を左寄せ5桁で出力"abc "
scanf(),printf()は成功した項目数を返す
scanf(),printf() は、返り値を使わないように思うけど、実際は入力に成功した項目件数、出力に成功した項目件数を返す。
int x ; char str[ 10 ] ; int ans ; ans = scanf( "%d%s" , &x , str ) ; printf( "%d¥n" , ans ) ; // 入力に成功すれば2。 ans = printf( "%d%s¥n" , x , str ) ; printf( "%d¥n" , ans ) ; // 出力に成功すれば2。
特に、ファイルからの入力であれば、途中でデータがなくなって、これ以上データが入力できない時には、scanfの返り値を用いる。
char name[ 100 ] ; int age ; while( scanf( "%s%d" , name , &age ) == 2 ) { printf( "%s %d¥n" , name , age ) ; }
Microsoft の scanf_s() は安全な入力関数
C言語の標準関数 scanf() の %s では、バッファオーバーフローを検出できない。Microsoft の Visual Studio の C言語では、こういった危険な scanf(“%s”) は危険なので、scanf_s() を使うようになっている。ただし、他のC言語では使えない場合が多いので要注意。
char name[ 10 ] ; scanf( "%s" , name ) ; // バッファオーバーフロー scanf_s( "%s" , name , sizeof( name ) ) ; // バッファオーバーフローの心配がない
fget()とsscanf()を使った安全な入力
C言語では、1行のデータを読む場合には、gets() 関数がある。しかし、配列サイズを指定できないので、バッファオーバーフローの危険がある。一方、ファイルからの入力関数 fgets() は、入力するデータサイズを指定できるため、fgets を使うべき。
char buff[ 1000 ] ; gets( buff ) ; // バッファオーバーフローの危険性 fgets( buff , sizeof( buff ) , stdin ) ; // 入力に失敗すると NULLを返す
一方、入力した文字列のデータから、scanf() のようにデータを抽出する、sscanf() という関数がある。
char string[] = "123 tohru 1.23" ; int x ; char str[ 10 ] ; double y ; sscanf( string , "%d%s%lf" , &x , str , &y ) ; // x = 123 , str = "tohru" , y = 1.23 // scanfと同様に成功した項目数3が返る。
これらを踏まえ、1行に名前と年齢のデータが記録されていて、データが入力できるだけ繰り返す処理を fgets + sscanf で書くと以下のようになる。
char buff[ 1000 ] ; char name[ 1000 ] ; int age ; while( fgets( buff , sizeof( buff ) , stdin ) != NULL ) { if ( sscanf( buff , "%s%d" , name , &age ) == 2 ) { // buffには必ず1000文字以下なので、nameが1000文字を超えることはない printf( "%s %d¥n" , name , age ) ; } }
なお、このプログラムを動かす場合、これ以上データがない場合には、Windowsであれば “Ctrl-Z” を入力。unixやmacOSであれば”Ctrl-D”を入力すること。
その他の気づいた点
文末の「;」を忘れないで
JavaScript では、単純式の末尾の「;」は、忘れてもそれなりに正しく動く。しかし、C言語では「;」を忘れると、文法エラーになるので要注意。
1: struct A { 2: : 3: } ; ←この行のセミコロンを忘れると、5行目で文法エラーの表示となる。 4: 5: for( ... ) { ←この行を見ても文法エラーの原因はわからない。3行目が原因。 6: : 7: }
局所変数やヒープメモリにはゴミデータが入っている
void foo() { int sum ; ←初期化忘れ int array[ 3 ] = { 11 , 22 , 33 } ; for( int i = 0 ; i < 3 ; i++ ) { sum += array[ i ] ; } }
局所変数やヒープメモリは、関数に入って確保やmallocで確保されるメモリ領域だけど、このメモリ領域には以前の処理で使われていたデータが残っている場合がある。こういった初期化されていないメモリ領域は、悪意を持ったプログラムがデータを盗むために使われる場合もある。必要に応じてちゃんと初期化が必要。
また、大域変数(グローバル変数)は、C言語では 0 で初期化される。(ポインタなら NULL が入っている。)
多重継承の問題
派生や継承について、一通りの説明が終わったので、最後に特殊な継承の問題を説明し、2回目のレポート課題を示す。
動物・鳥類・哺乳類クラス
派生や継承を使うと、親子関係のあるデータ構造をうまく表現できることを、ここまでの授業で示してきた。
しかしながら、以下に述べるような例では、問題が発生する。
// 動物クラス class Animal { private: char name[ 10 ] ; public: Animal( const char s[] ) { strcpy( name , s ) ; } const char* get_name() const { return name ; } virtual void move() = 0 ; virtual void birth() = 0 ; } ; // 鳥類クラス class Bird : public Animal { public: Bird( const char s[] ) : Animal( s ) {} virtual void move() { printf( "%s fry.\n" , get_name() ) ; } virtual void birth() { printf( "%s lay egg.\n" , get_name() ) ; } } ; // 哺乳類クラス class Mammal : public Animal { public: Mammal( const char s[] ) : Animal( s ) {} virtual void move() { printf( "%s walk.\n" , get_name() ) ; } virtual void birth() { printf( "%s lay baby.\n" , get_name() ) ; } } ; int main() { Bird chiken( "piyo" ) ; chiken.move() ; chiken.birth() ; Mammal cat( "tama" ) ; cat.move() ; cat.birth() ; return 0 ; }
ここで、カモノハシを作るのであれば、どうすれば良いだろうか?
鳥類・哺乳類とは別にカモノハシを作る
class SeaBream : public Animal { public: Mammal( const char s[] ) : Animal( s ) {} virtual void move() { printf( "%s walk.\n" , get_name() ) ; } virtual void birth() { printf( "%s lay egg.\n" , get_name() ) ; } } ;
この例では、簡単な処理だが、move() の中身が複雑であれば、改めて move() を宣言するのではなく、継承するだけの書き方ができないだろうか?
多重継承
C++ には、複数のクラスから、派生する多重継承という機能がある。であれば、鳥類と哺乳類から進化したのだから、以下のように書きたい。
class SeaBream : public Bird , Mammal { } ;
しかし、カモノハシに move() を呼び出すと、鳥類の move() と哺乳類の move() のどちらを動かすか曖昧になる。また、派生クラスは親クラスのデータ領域と、派生クラスのデータ領域を持つため、鳥類の name[] と、哺乳類の name[] を二つ持つことになる。
足と羽のクラスを作る場合
class Animal { private: char name[ 10 ] ; public: Animal( const char s[] ) { strcpy( name , s ) ; } const char* get_name() const { return name ; } virtual void move() = 0 ; } ; // 羽 class Wing { public: const char* move_method() { return "fly" ; } } ; // class Leg { public: const char* move_method() { return "walk" ; } } ; class Bird : public Animal , Wind { public: Bird( const char s[] ) : Animal( s ) {} virtual void move() { printf( "%s %s.\n" , get_name() , move_method() ) ; } } ; class Mammal : public Animal , Leg { public: Mammal( const char s[] ) : Animal( s ) {} virtual void move() { printf( "%s %s.\n" , get_name() , move_method() ) ; } } ;
C++では、以下のような方法で、ダイヤモンド型の継承問題を解決できる。
class Animal { private: char name[ 10 ] ; public: Animal( const char s[] ) { strcpy( name , s ) ; } const char* get_name() const { return name ; } virtual void move() = 0 ; virtual void birth() = 0 ; } ; // 鳥類クラス class Bird : public virtual Animal { public: Bird( const char s[] ) : Animal( s ) {} virtual void move() { printf( "%s fry.\n" , get_name() ) ; } virtual void birth() { printf( "%s lay egg.\n" , get_name() ) ; } } ; // 哺乳類クラス class Mammal : public virtual Animal { public: Mammal( const char s[] ) : Animal( s ) {} virtual void move() { printf( "%s walk.\n" , get_name() ) ; } virtual void birth() { printf( "%s lay baby.\n" , get_name() ) ; } } ; class SeaBream : public virtual Bird , virtual Mammal { public: SeaBream( const char s[] ) : Animal( s ) {} void move() { Mammal::move() ; } void birth() { Bird::birth() ; } } ;
ただし、多重継承は親クラスの情報と、メソッドを継承する。この場合、通常だと name[] を二つ持つことになるので、問題が発生する。そこで、親クラスの継承に virtual を指定することで、ダイヤモンド型継承の 2つの属性をうまく処理してくれるようになる。
しかし、多重継承は処理の曖昧さや効率の悪さもあることから、採用されていないオブジェクト指向言語も多い。特に Java は、多重継承を使えない。その代わりに interface という機能が使えるようになっている。
様々な2次元配列
#include <stdio.h> #include <stdlib.h> #include <string.h> int main() { int i3x4[ 3 ][ 4 ] = { { 11 , 12 , 13 , 14 } , { 21 , 22 , 23 , 24 } , { 31 , 32 , 33 , 34 } , } ; int i12[ 12 ] = { 11 , 12 , 13 , 14 , 21 , 22 , 23 , 24 , 31 , 32 , 33 , 34 , } ; int *pi[ 3 ] ; pi[ 0 ] = (int*)malloc( sizeof( int ) * 4 ) ; memcpy( pi[ 0 ] , i3x4[ 0 ] , sizeof( int ) * 4 ) ; pi[ 1 ] = (int*)malloc( sizeof( int ) * 4 ) ; memcpy( pi[ 1 ] , i3x4[ 1 ] , sizeof( int ) * 4 ) ; pi[ 2 ] = (int*)malloc( sizeof( int ) * 4 ) ; memcpy( pi[ 2 ] , i3x4[ 2 ] , sizeof( int ) * 4 ) ; for( int y = 0 ; y < 3 ; y++ ) { for( int x = 0 ; x < 4 ; x++ ) printf( "%d " , i3x4[ y ][ x ] ) ; printf( "\n" ) ; } for( int y = 0 ; y < 3 ; y++ ) { for( int x = 0 ; x < 4 ; x++ ) printf( "%d " , i12[ y*4 + x ] ) ; printf( "\n" ) ; } for( int y = 0 ; y < 3 ; y++ ) { for( int x = 0 ; x < 4 ; x++ ) printf( "%d " , pi[ y ][ x ] ) ; printf( "\n" ) ; } return 0 ; }
様々なデータの覚え方のレポート課題
前回の malloc() + free() の資料で、補足で説明したC++のnew, delete を含め、様々なデータ構造の覚え方の例やメモリイメージを説明し、前期中間のレポート課題を示す。
malloc+freeの振り返り
// 文字列(可変長)の保存 char str[] = "ABCDE" ; char* pc ; pc = (char*)malloc( strlen( str ) + 1 ) ; if ( pc != NULL ) { // ↑正確に書くと sizeof( char ) * (strlen(str)+1) strcpy( pc , str ) ; //////////////////// // pcを使った処理 //////////////////// free( pc ) ; } // // 可変長の配列の保存 int data[] = { 11 , 22 , 33 } ; int* pi ; pi = (int*)malloc( sizeof( int ) * 3 ) ; if ( pi != NULL ) { for( int i = 0 ; i < 3 ; i++ ) pi[ i ] = data[ i ] ; //////////////////// // piを使った処理 //////////////////// free( pi ) ; } // // 1件の構造体の保存 struct Person { char name[ 10 ] ; int age ; } ; struct Person* pPsn ; pPsn = (struct Person*)malloc( sizeof( struct Person ) ) ; if ( pPsn != NULL ) { strcpy( pPsn->name , "t-saitoh" ) ; pPsn->age = 55 ; //////////////////// // pPsnを使った処理 //////////////////// free( pPsn ) ; }
(おまけ)C++の場合
malloc+freeでのプログラミングは、mallocの結果を型キャストしたりするので、間違ったコーディングの可能性がある。このため、C++ では、new 演算子, delete 演算子というものが導入されている。
// 同じ処理をC++で書いたら // 文字列の保存 char str[] = "ABCDE" ; char* pc = new char[ strlen( str ) + 1 ] ; strcpy( pc , str ) ; // pcを使った処理 delete[] pc ; // new型[]を使ったらdelete[] // int配列の保存 int data[] = { 11 , 22 , 33 } ; int* pi ; pi = new int[ 3 ] ; for( int i = 0 ; i < 3 ; i++ ) pi[ i ] = data[ i ] ; // piを使った処理 delete[] pi ; // 構造体の保存 struct Person { char name[ 10 ] ; int age ; } ; Person* pPsn ; pPsn = new Person ; strcpy( pPsn->name , "t-saitoh" ) ; pPsn->age = 55 ; // pPsnを使った処理 delete pPsn ; // new型ならdelete注意すべき点は、malloc+freeとの違いは、mallocがメモリ確保に失敗した時の処理の書き方。返り値のNULLをチェックする方法は、呼び出し側ですべてでNULLの場合を想定した書き方が必要になり、処理が煩雑となる。C++の new 演算子は、メモリ確保に失敗すると、例外 bad_alloc を投げてくるので、try-catch 文で処理を書く。(上記例はtry-catchは省略)
安全な1行1件のデータ入力
C言語では、scanf などの関数は、バッファオーバーフローなどの危険性があるため、以下のような処理を使うことが多い。fgets は、指定されたファイルから1行分のデータを読み込む。sscanf は、文字列のなかから、scanf() と同じようなフォーマット指定でデータを読み込む。
fgets は、これ以上の入力データが無い場合には、NULL を返す。
(Windowsであれば、キー入力でCtrl+Z を入力、macOSやLinuxであれば、Ctrl+Dを入力)
sscanf() は、読み込めたデータ件数を返す。
int main() { char buff[ 1024 ] ; for( int i = 0 ; i < 3 ; i++ ) { if ( fgets( buff , sizeof( buff ) , stdin ) != NULL ) { char name[ 1024 ] ; int age ; if ( sscanf( buff , "%s%d" , name , &age ) == 2 ) { // 名前と年齢の2つのデータが正しく読み込めたとき ... } } } return 0 ; }
様々なデータの覚え方
配列サイズ固定・名前が固定長
例えば、このデータ構造であれば、table1[] の場合、長い名前にある程度対応できるように nameの配列を100byteにしたりすると、データ件数が少ない場合には、メモリの無駄も多い。
そこで、実際に入力された存在するデータだけをポインタで覚える方法 table2[] という保存方法も考えられる。
// 固定長データのプログラム #define SIZE 50 // 名前(固定長)と年齢の構造体 struct NameAge { char name[ 32 ] ; int age ; } ; struct NameAge table1[ SIZE ] ; int size1 = 0 ; void entry1( char s[] , int a ) { strcpy( table1[ size1 ].name , s ) ; table1[ size1 ].age = a ; size1++ ; } // ポインタで覚える場合 struct NameAge* table2[ SIZE ] ; int size2 = 0 ; void entry2( char s[] , int a ) { table2[size2] = (struct NameAge*)malloc( sizeof( struct NameAge ) ) ; if ( table2[size2] != NULL ) { // なぜ != NULL のチェックを行うのか、説明せよ strcpy( table2[size2]->name , s ) ; table2[size2]->age = a ; size2++ ; } } // データ出力 void print_NA( struct NameAge* p ) { printf( "%s %d¥n" , p->name , p->age ) ; } int main() { // table1に保存 entry1( "t-saitoh" , 55 ) ; entry1( "tomoko" , 44 ) ; print_NA( &table1[0] ) ; print_NA( &table1[1] ) ; // table2に保存 entry2( "t-saitoh" , 55 ) ; entry2( "tomoko" , 44 ) ; print_NA( _________________ ) ; // table2の中身を表示せよ print_NA( _________________ ) ; return 0 ; }
配列サイズ固定・名前が可変長
しかしながら、前回の授業で説明したように、際限なく長い名前があるのであれば、以下の様に名前は、ポインタで保存し、データを保存する時に strdup(…) を使って保存する方法もあるだろう。
// 名前が可変長のプログラム // 名前(固定長)と年齢の構造体 struct NamePAge { char* name ; // ポインタで保存 int age ; } ; struct NamePAge table3[ SIZE ] ; int size3 = 0 ; void entry3( char s[] , int a ) { table3[ size3 ].name = strdup( s ) ; // ★★★★ table3[ size3 ].age = a ; size3++ ; } // ポインタで覚える場合 struct NamePAge* table4[ SIZE ] ; int size4 = 0 ; void entry4( char s[] , int a ) { table4[size4] = (struct NamePAge*)malloc( ____________________ ) ; if ( table4[size4] != NULL ) { // ↑適切に穴埋めせよ table4[size4]->name = strdup( s ) ; // ★★★★ _________________________________ ; // ←適切に穴埋めせよ size4++ ; } } // データ出力 void print_NPA( struct NameAge* p ) { printf( "%s %d¥n" , ____________ , ____________ ) ; } // ↑適切に穴埋めせよ int main() { // table3に保存 entry3( "t-saitoh" , 55 ) ; entry3( "jyugemu jyugemu ..." , 44 ) ; print_NPA( _________________ ) ; // table3[] の中身を表示せよ。 print_NPA( _________________ ) ; // table4に保存 entry4( "t-saitoh" , 55 ) ; entry4( "jyugemu jyugemu ..." , 44 ) ; print_NPA( table4[0] ) ; print_NPA( table4[1] ) ; return 0 ; }
データ件数が可変長ならば
前述のプログラムでは、データ件数全体は、SIZE という固定サイズを想定していた。しかしながら、データ件数自体も数十件かもしれないし、数万件かもしれないのなら、配列のサイズを可変長にする必要がある。
struct NamePAge* table5 ; int size5 = 0 ; void entry5( char s[] , int a ) { strcpy( table5[ size5 ].name , s ) ; table5[ size5 ].age = a ; size5++ ; } int main() { // table5に保存 table5 = (struct NameAge*)malloc( sizeof( struct NameAge ) * 2 ) ; if ( table5 != NULL ) { entry5( "t-saitoh" , 55 ) ; entry5( "tomoko" , 44 ) ; } return 0 ; }
メモリの管理に十分気を付ける必要があるが、名前の長さも配列全体のサイズも可変長であれば、以下のようなイメージ図のデータを作る必要があるだろう。(JavaScriptやJavaといった言語ではデータのほとんどがこういったポインタで管理されている)
レポート課題
授業での malloc , free を使ったプログラミングを踏まえ、以下のレポートを作成せよ。
以下のデータのどれか1つについて、データを入力し、何らかの処理を行うこと。
課題は、原則として、(自分の出席番号%3)+1 についてチャレンジすること。
- 名前と電話番号
- 名前と生年月日
- 名前と身長・体重
このプログラムを作成するにあたり、以下のことを考慮しmallocを適切に使うこと。
名前は、長い名前の人が混ざっているかもしれない。
保存するデータ件数は、10件かもしれない1000件かもしれない。(データ件数は、処理の最初に入力すること。)
ただし、mallocの理解に自信がない場合は、名前もしくはデータ件数のどちらか一方は固定値でも良い。
レポートには、(a)プログラムリスト, (b)プログラムの説明, (c)正しく動いたことがわかる実行例, (d)考察 を記載すること。
考察には、自分のプログラムが正しく動かない事例はどういう状況でなぜ動かないのか…などを検討したり、プログラムで良くなった点はどういう所かを説明すること。
実数の取り扱い
実数型(float / double)
実数型は、単精度実数(float型)と、倍精度実数(double型)があり、それぞれ32bit,64bitでデータを扱う。
指数表現は、大きい値や小さい値を表現する場合に使われ、物理などで1.2345×10-4といった、仮数×基数指数で表現する方法。数学や物理では基数に10を用いるが、コンピュータの世界では基数を2とすることが多い。
単精度型(float)では、符号1bit,指数部8bit,仮数部23bitで値を覚え、数値としては、以下の値を意味する。(精度が低いので普通のコンピュータではあまり使われることはない)
符号✕ 1.仮数部 ✕ 2(指数数部-127)
符号部は、正の値なら0, 負の値なら1 を用いる。
仮数部が23bitなので、有効桁(正しい桁の幅)は約7桁となる。
例えば、float型で扱える最大数は、以下のようになる。
0,1111,1111,111,1111,1111,1111,1111,1111 = 1.1111…×2128 ≒ 2129 ≒ 1038
倍精度型(double)では、符号1bit,指数部11bit,仮数部52bitで値を覚え、数値としては、以下の意味を持つ。
符号✕ 1.仮数部 ✕ 2(指数部-1023)
これらの実数で計算を行うときには、0.00000001011×210といった値の時に、仮数部に0が並んだ状態を覚えると、計算の精度が低くなるので、1.01100000000×22のように指数部の値を調整して小数点の位置を補正しながら行われる。
double型の場合、52bit=10進数16桁相当の有効桁、最大数で、1.1111…×21024≒10308
倍精度型を使えば、正しく計算できるようになるかもしれないが、実数型はただの加算でも仮数部の小数点の位置を合わせたりする処理が必要で、浮動小数点専用の計算機能を持っていないような、ワンチップコンピュータでは整数型にくらべると10倍以上遅い場合もある。
実数の注意点
C言語でプログラムを作成していて、簡単な数値計算のプログラムでも動かないと悩んだことはないだろうか?解らなくて友達のプログラムを真似したら動いたけど、なぜ自分のプログラムは動かなかったのか深く考えたことはあるだろうか?
単純な合計と平均
整数を入力し、最後に合計と平均を出力するプログラムを以下に示す。
しかし、C言語でこのプログラムを動かすと、10,10,20,-1 と入力すると、合計(sum)40,件数(cnt)3で、平均は13と表示され、13.33333 とはならない。
小数点以下も正しく表示するには、どうすればいいだろうか?
ただし、変数の型宣言を “double data,sum,cnt ;” に変更しないものとする。
// 入力値の合計と平均を求める。 #include <stdio.h> int main() { int data ; int sum = 0 ; int cnt = 0 ; for(;;) { printf( "数字を入力せよ。-1で終了¥n" ) ; scanf( "%d" , &data ) ; if ( data < 0 ) break ; cnt = cnt + 1 ; sum = sum + data ; } printf( "合計 %d¥n" , sum ) ; printf( "平均 %d¥n" , sum / cnt ) ; }
C言語では、int型のsum / int型のcnt の計算は、int 型で計算を行う(小数点以下は切り捨てられる)。このため、割り算だけ実数で行いたい場合は、以下のように書かないといけない。
printf( "平均 %lf¥n" , (double)sum / (double)cnt ) ;
// (double)式 は、sum を一時的に実数型にするための型キャスト
まずは動く例
以下のプログラムは、見れば判るけど、th を 0度〜360度まで5度刻みで変化させながら、y = sin(th) の値を表示するプログラム。
// sin の値を出力 #include <stdio.h> #include <math.h> int main() { double th , y ; for( th = 0.0 ; th <= 360.0 ; th += 5.0 ) { y = sin( th / 180.0 * 3.1415926535 ) ; printf( "%lf %lf¥n" , th , y ) ; } return 0 ; }
動かないプログラム
では、以下のプログラムはどうだろうか?
// case-1 ---- プログラムが止まらない #define PI 3.1415926535 int main() { double th , y ; // 0〜πまで100分割でsinを求める for( th = 0.0 ; th != PI ; th += PI / 100.0 ) { y = sin( th ) ; printf( "%lf %lf¥n" , th , y ) ; } return 0 ; }
// case-2 ---- y の値が全てゼロ int main() { int th ; double y ; for( th = 0 ; th <= 360 ; th += 5 ) { y = sin( th / 180 * 3.1415926535 ) ; printf( "%d %lf¥n" , th , y ) ; } return 0 ; }
どちらも、何気なく読んでいると、動かない理由が判らないと思う。そして、元のプログラムと見比べながら、case-1 では、「!=」を「<=」に書き換えたり、case-2 では、「int th ;」を「double th ;」に書き換えたら動き出す。
では何が悪かったのか…
回答編
数値と誤差
コンピュータで計算すると、計算結果はすべて正しいと勘違いをしている人も多い。ここで、改めて誤差について考える。特に、計器で測定した値であれば、測定値自体に誤差が含まれている。
こういった誤差が含まれる数字を扱う場合注意が必要である。例えば、12.3 と 12.300 では意味が異なる。測定値であやふやな桁を丸めたのであれば、前者は 12.2500〜12.3499 の間の値であり有効数字3桁である。後者は、12.2995〜12.300499 の間の値であり、有効数字5桁である。このため、誤差が含まれる数字の加算・減算・乗算・除算では注意が必要である。
加減乗除算の場合
加減算であれば小数点の位置を揃え、誤差が含まれる桁は有効桁に含めてはいけない。
上記の計算では、0.4567の0.0567の部分は意味がないデータとなる。(情報落ち)
乗除算であれば、有効桁の少ない値と有効桁の多い値の計算では、有効桁の少ない方の誤差が計算結果に出てくるため、通常は、有効桁5桁と2桁の計算であれば、乗除算結果は少ない2桁で書くべきである。
桁落ち
有効桁が大きい結果でも、減算が含まれる場合は注意が必要である。
例えば、以下のような計算では、有効桁7桁どうしでも、計算結果の有効桁は3桁となる。
このような現象は、桁落ちと呼ばれる。
演習問題(4回目)
こちらのフォルダに示す、Excel の表で、有効桁を考えてもらうための演習問題(ランダムに値が作られます)を有効数字を考えながら計算し、答えをレポートにまとめてください。例を以下に示す。