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C言語の構造体からオブジェクト指向に

前回の構造体の説明から、ポインタ渡しの説明を行った後、同様のプログラムをC++で書き換えることで、classやメソッドなどの説明を行う。

構造体でオブジェクト指向もどき

例えば、名前と電話番号の構造体で処理を記述する場合、 以下の様な記載を行うことで、データ設計者とデータ実装者で分けて 仕事ができることを説明。

struct Person {
   char name[10] ;
   int  phone ;
} ;
void readPerson( struct Person* p ) {
   // ポインタの参照で表記
   scanf("%s%d" ,
   (*p).name , &(*p).phone ) ;
}
void printPerson( struct Person* p ) {
   // アロー演算子で表記
   printf( "%s %d¥n" ,
   p->name , p->phone ) ;
}
void main() {
   struct Person table[ 10 ] ;
   for( int i = 0 ; i < 10 ; i++ ) {
      readPerson( &table[i] ) ;
      printPerson( &table[i] ) ;
   }
}

このプログラムの書き方では、mainの中を読むだけもで、 データ入力とデータ出力を行うことはある程度理解できる。 この時、データ構造の中身を知らなくてもプログラムが理解でき、 データ実装者はプログラムを記述できる。これをデータ構造の隠蔽化という。 一方、readPerson()や、printPerson()という関数の中身についても、 入力・出力の方法をどうするのか知らなくても、 関数名から動作は推測できプログラムも書ける。 これを手続きの隠蔽化という。

C++のクラスで表現

上記のプログラムをそのままC++に書き直すと以下のようになる。

class Person {
private: // クラス外からアクセスできない部分
   char name[10] ; // メンバーの宣言
   int  phone ;
public: // クラス外から使える部分
   void read() { // メソッドの宣言
      // pのように対象のオブジェクトを明記する必要はない。
      scanf( "%s%d" , name , &phone ) ;
   }
   void print() {
      printf( "%s %d¥n" , name , phone ) ;
   }
} ;
void main() {
   Person table[ 10 ] ;
   for( int i = 0 ; i < 10 ; i++ ) {
      table[i].read() ;  // メソッドの呼び出し
      table[i].print() ;  // オブジェクト.メソッド()
   }
   // 文法エラーの例
   printf( "%d¥n" , table[0].phone ) ;
   // phoneはprivateなので参照できない。
}

用語の解説:C++のプログラムでは、データ構造とデータの処理を、並行しながら記述する。 データ構造に対する処理は、メソッド(method)と呼ばれる。 データ構造とメソッドを同時に記載したものは、クラス(class)と呼ぶ。 そのclassに対し、具体的な値や記憶域が割り当てられたものをオブジェクト(object)と呼ぶ。

コンストラクタとデストラクタ

プログラムを記述する場合、そのデータ構造を使うにあたり、 初期値が代入を忘れその値を参照すると、予想外の動きの原因となってしまうことが多い。

そこでオブジェクト指向では、データ構造の初期化手続き(同様に処理が終わった後の事後手続き)を 明確に記載するための初期化のコンストラクタ(と事後処理はデストラクタ)の文法がある。

class Person {
private:
   char name[10] ;
   int  phone ;
public:
   Person( char s[] , int tel ) { // コンストラクタ
      strcpy( name , s ) ;
      phone = tel ;
   }
   void print() {
      printf( "%s %d¥n" , name , phone ) ;
   }
} ;
void main() {
   // オブジェクト宣言とコンストラクタでの初期化
   Person saitoh( "tsaitoh" , 272925 ) ;
   saitoh.print() ;
}

コンストラクタを宣言する場合には、返り値無しのクラス名を関数名として記述する。 デストラクタを宣言する場合には、先頭に「~」をつけたクラス名で無引数で記述する。 簡単な例として、文字列をヒープ領域に保存する処理を示す。

// デストラクタが便利な例
class String {
private:
   char* str ;
public:
   // コンストラクタ
   String( char*s ) {
      // ヒープメモリ上に文字列を確保
      str = (char*)malloc( strlen( s ) + 1 ) ;
      strcpy( str , s ) ;
   }
   // デストラクタ
   ~String() {
      free( str ) ; // freeしないとメモリーリークになる。
   }
   void print() {
      printf( "%s" , str ) ;
   }
} ;
void main() {
   String s( "abcdefg" ) ;
   s.print() ;
}  // mainを抜ける段階でsは不要となる。
// ここで自動的にデストラクタ呼び出し~String()をしてくれる。

オブジェクト指向ガイダンス

専攻科2年のオブジェクト指向の最初の講義で、前半ガイダンスで後半、C言語の構造体などの復習。

オブジェクト指向に関連する歴史

簡単にオブジェクト指向プログラミング(Object Oriented Programming – 略してOOP)が出てくるまでの歴史的流れを最初に説明。

最初のプログラム言語のFortran(科学技術計算向け)の頃は、処理を記述するだけだったけど、 COBOL(商用計算向け)ができた頃には、データをひとまとめで扱う「構造体」(C言語ならstruct …}の考えができた。 その後のALGOLの頃には、処理をブロック化して扱うスタイル(C言語なら{ 文 … }の複文で 記述する方法ができて、処理の構造化・データの構造化ができる。これが「構造化プログラミング(structured programming)」 の始まりとなる。

Wikipediaの記事だと、構造化プログラミングは手続きの構造化のことしか書いてないなぁ… 個人的にはOOPの話の一環として話すため、データ構造化も構造化プログラミングの一部としています。

この後、様々なプログラム言語が開発され、C言語などもできてきた。 一方で、シミュレーションのプログラム開発(例simula)では、 シミュレーション対象(object)に対して、命令するスタイルの書き方が生まれ、 データに対して命令するという点で、擬人法のようなイメージで直感的にも分かりやすかった。 これがオブジェクト指向の始まりとなる。

この考え方を導入した言語の1つが Smalltalk であり、この環境では、プログラムのエディタも Smalltalk で記述したりして、オブジェクト指向がGUIのプログラムと親和性が良いことから普及が拡大する。

C言語にこのオブジェクト指向を取り入れて、C++が開発される。さらに、この文法をベースとした、 Javaなどが開発される。最近の新しい言語では、どれもオブジェクト指向の考えが使われている。

構造体の導入

C++でのオブジェクト指向は、構造体の表記がベースになっているので、まずは構造体の説明。

// 構造体の宣言
struct Person {
   char name[ 20 ] ; // 要素1
   int  phone ;    // 要素2
} ;
// 構造体変数の宣言
struct Person saitoh ;
struct Person data[ 10 ] ;
// 実際にデータを参照 構造体変数.要素名
strcpy( saitoh.name , "t-saitoh" ) ;
saitoh.phone = 272925 ;
for( int i = 0 ; i < 10 ; i++ ) {
   scanf( "%d%s" , data[ i ].name , &(data[ i ].phone) ) ;
}

値渡し、ポインタ渡し、参照渡し

構造体の使い方の話では、関数との構造体のデータ渡しでポインタなどが出てくるので、 値渡し・ポインタ渡し・参照渡しの復習。(参照渡しはC++で導入された考え方)

C言語の基本は、値渡し。呼び出し側の実引数は、関数側の仮引数に値がコピーされる。 このため、呼び出し側の変数(下の例ではa)の中身は変化しない。 よって、関数の呼び出しで呼び出し側の変数が勝手に中身が変わらないので、予想外の変数の中身の変化が無く分かりやすい。

// 値渡し(call by value)の例
void foo( int x ) {
   x++ ;
   printf( "%d¥n" , x ) ;
}
void main() {
   int a = 123 ;
   foo( a ) ;  // 124が表示
   foo( a ) ;  // 124が表示
}

しかし、上の例では、foo()の呼び出しで、変数aの中身が変化してくれたほうが都合が良い場合もある。 この場合は、C言語ではポインタを使って記述する。 このように、関数を呼び出して、手元の変数が変化することは、副作用と呼ばれる。 副作用の多いプログラムは、変数の値の管理がわかりにくくなるので、副作用は最小限に記述すべき。

// ポインタ渡し(call by pointer)の例
void foo( int *px ) {
   (*px)++ ;
   printf( "%d¥n" , (*px) ) ;
}
void main() {
   int a = 123 ;
   foo( &a ) ;  // 124が表示
   foo( &a ) ;  // 125が表示
}

しかし、ポインタを多用すると、ポインタを動かしてトラブルも増えることから、ポインタはあまり使わない方が良い。 そこで、C++では参照型というものがでてきた。

// 参照型(call by reference)の場合
void foo( int &x ) {
   x++ ;
   printf( "%d¥n" , x ) ;
}
void main() {
   int a = 123 ;
   foo( a ) ;  // 124が表示
   foo( a ) ;  // 125が表示
}

参照型は、ポインタを使っていないように見えるけれども、機械語レベルでみればポインタを使ったものと同じ。

オブジェクト指向の講義メモ

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