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変態コード

Twitterで以下のようなコードが紹介されていた。
ポイントは、a[i] と書くべき所が、*(a + i) と等価であり、*(i + a) = i[a] と書かれている点。

{CAPTION}

でも、昔どこかで見たという点では、以下のコードの方がさらに変態っぽいでしょ。

{CAPTION}

集合とリスト処理

リスト構造は、必要に応じてメモリを確保するデータ構造であり、データ件数に依存しないプログラム が記述できる。その応用として、集合処理を考えてみる。集合処理の記述には、2進数を使った方式リストを用いた方法が一般的である。以下にその処理について示す。

bit演算子

2進数を用いた集合処理を説明する前に、2進数を使った計算に必要なbit演算子について復習してみる。

bit演算子 計算の意味 関連知識
& bit AND 3 & 5
0011)2 & 0101)2= 0001)2
論理演算子
if ( a == 1 && b == 2 ) …
| bit OR 3 | 5
0011)2 | 0101)2= 0111)2
論理演算子
if ( a == 1 || b == 2 ) …
~ bit NOT ~5
~ 00..00,0101)2= 11..11,1010)2
論理否定演算子
if ( !a == 1 ) …
^ bit EXOR 3 ^ 5
0011)2 ^ 0101)2= 0110)2
<< bit 左シフト 3 << 2
0011)2 << 2 = 001100)2
x << y は x * 2y と同じ
>> bit 右シフト 12 >> 2
1100)2 >> 2 = 11)2
x >> y は x / 2y と同じ
#include <stdio.h>

int main() {
   // bit演算子と論理演算子
   printf( "%d¥n" , 12 &  5 ) ;  // 1100 & 0101 = 0100 よって 4が表示される
   printf( "%d¥n" , 12 && 0 ) ;  // 0が表示 論理演算子とbit演算子の違い
   printf( "%d¥n" , 12 |  5 ) ;  // 1100 | 0101 = 1101 よって 13が表示される
   printf( "%d¥n" , 12 || 0 ) ;  // 1が表示 
   // シフト演算子
   printf( "%d¥n" ,  3 << 2 ) ;  // 12が表示
   printf( "%d¥n" , 12 >> 2 ) ;  // 3が表示
   // おまけ
   printf( "%d¥n" , ~(unsigned)12 + 1 ) ;  // 2の補数(NOT 12 + 1) = -12
   return 0 ;
}

2進数を用いた集合計算

リストによる集合の前に、もっと簡単な集合処理を考える。

最も簡単な方法は、要素に含まれる=1 か 含まれない=0 を配列に覚える方法であろう。数字Nが集合に含まれる場合は、配列[N]に1を覚えるものとする。この方法で積集合などを記述した例を以下に示す。ただし、自分で考える練習として穴埋めを含むので注意。

しかし、上述のプログラムでは、要素に含まれる/含まれないという1bitの情報を、整数型で保存しているためメモリの無駄である。

データ件数の上限が少ない場合には、「2進数の列」の各ビットを集合の各要素に対応づけし、要素の有無を0/1で表現する。この方法を用いるとC言語のビット演算命令で 和集合、積集合を計算できるので、処理が極めて簡単になる。

2進数を用いた集合計算

扱うデータ件数が少ない場合には、「2進数の列」の各ビットを集合の各要素に対応づけし、要素の有無を0/1で表現する。この方法を用いるとC言語のビット演算命令で 和集合、積集合を計算できるので、処理が極めて簡単になる。

以下のプログラムは、0〜31の数字を2進数の各ビットに対応付けし、 ba = {1,2,3} , bb = {2,4,6} , bc= {4,6,9} を要素として持つ集合で、ba bb , bb bc , ba  bc の計算を行う例である。

// 符号なし整数を uint_t とする。
typedef unsigned int uint_t ;

// uint_tのbit数
#define UINT_BITS (sizeof( uint_t ) * 8)

// 集合の内容を表示
void bit_print( uint_t x ) {
   for( int i = 0 ; i < UINT_BITS ; i++ )
      if ( (x & (1 << i)) != 0 )
         printf( "%d " , i ) ;
   printf( "\n" ) ;
}
void main() {     // 98,7654,3210
   // ba = {1,2,3} = 00,0000,1110
   uint_t ba = (1<<1) | (1<<2) | (1<<3) ;
   // bb = {2,4,6} = 00,0101,0100
   uint_t bb = (1<<2) | (1<<4) | (1<<6) ;
   // bc = {4,6,9} = 10,0101,0000
   uint_t bc = (1<<4) | (1<<6) | (1<<9) ;

   // 集合積(bit AND)
   bit_print( ba & bb ) ; // ba ∩ bb = {2}                 
   bit_print( bb & bc ) ; // bb ∩ bc = {4,6}
   // 集合和(bit OR)
   bit_print( ba | bc ) ; // ba ∪ bc = {1,2,3,4,6,9}
}

有名なものとして、エラトステネスのふるいによる素数計算を2進数を用いて記述してみる。このアルゴリズムでは、各bitを整数に対応付けし、素数で無いと判断した2進数の各桁に1の目印をつけていく方式である。

uint_t prime = 0 ; // 初期値=すべての数は素数とする。

void filter() {
   // 倍数に非素数の目印をつける
   for( int i = 2 ; i < UINT_BITS ; i++ ) {
      if ( (prime & (1 << i)) == 0 ) {
         // iの倍数には、非素数の目印(1)をつける
         for( int j = 2*i ; j < UINT_BITS ; j += i )
            prime |= (1 << j) ;
      }
   }
   // 非素数の目印の無い値を出力
   for( int i = 2 ; i < UINT_BITS ; i++ ) {
      // 目印のついていない数は素数
      if ( (prime & (1 << i)) == 0 )
         printf( "%d\n" , i ) ;
   }
}

リスト処理による積集合

前述の方法は、リストに含まれる/含まれないを、2進数の0/1で表現する方式である。しかし、2進数であれば、unsigned int で 32要素、unsigned long long int で 64 要素が上限となってしまう。 (32bitコンピュータ,gccの場合)

しかし、リスト構造であれば、リストの要素として扱うことで、要素件数は自由に扱える。また、今までの授業で説明してきた cons() などを使って表現すれば、簡単なプログラムでリストの処理が記述できる。

// 先週までに説明してきたリスト構造と補助関数
struct List {
   int     data ;
   struct List* next ;
} ;
struct List* cons( int x , struct List* n ) {
   struct List* ans ;
   ans = (struct List*)malloc( sizeof( struct List ) ) ;
   if ( ans != NULL ) {
      ans->data = x ;
      ans->next = n ;
   }
   return ans ;
}
void print( struct List* p ) {
   for( ; p != NULL ; p = p->next ) {
      printf( "%d " , p->data ) ;
   }
   printf( "\n" ) ;
}
int find( struct List* p , int key ) {
   for( ; p != NULL ; p = p->next )
      if ( p->data == key )
         return 1 ;
   return 0 ;
}

例えば、積集合(a ∩ b)を求めるのであれば、リストa の各要素が、リストb の中に含まれるか find 関数でチェックし、 両方に含まれたものだけを、ans に加えていく…という考えでプログラムを作ると以下のようになる。

// 集合積の計算
struct List* set_prod( struct List* a , struct List* b ) {
   struct List* ans = NULL ;
   for( ; a != NULL ; a = a->next ) {
      // aの要素がbにも含まれていたら、ansに加える
      if ( find( b , a->data ) )
         ans = cons( a->data , ans ) ;
   }
   return ans ;
}
void main() {
   struct List* a = cons( 1, cons( 2, cons( 3, NULL ) ) ) ;
   struct List* b = cons( 2, cons( 4, cons( 6, NULL ) ) ) ;
   struct List* c = cons( 4, cons( 6, cons( 9, NULL ) ) ) ;
   print( set_prod( a , b ) ) ;
   print( set_prod( b , c ) ) ;
}

例題として、和集合差集合などを考えてみよう。

リストの共有と削除の問題

リスト処理では、mallocを使うが、メモリリークをさせないためには、使用後のリストの廃棄は重要である。リストの全要素を捨てる処理であれば、以下のようになるであろう。

void list_free( struct List* p ) {
   while( p != NULL ) {
      struct List* d = p ;
      p = p->next ;
      free( d ) ; // 順序に注意
   }
}

一方、前説明の和集合(a ∪ b)のプログラムを以下のように作った場合、list_freeの処理は問題となる。

// 集合和
struct List* set_union( struct List*a, struct List*b ) {
   struct List* ans = b ;
   for( ; a != NULL ; a = a->next )
      if ( !find( b , a->data ) )
         ans = cons( a->data , ans ) ;
   return ans ;
}
void main() {
   struct List*a = cons( 1, cons( 2, cons( 3, NULL ) ) ) ;
   struct List*b = cons( 2, cons( 3, cons( 4, NULL ) ) ) ;
   struct List*c = set_union( a , b ) ;
   // a,b,cを使った処理
   // 処理が終わったので、a,b,cを捨てる
   list_free( a ) ;
   list_free( b ) ;
   list_free( c ) ;
   // c = { 1 , (bのリスト) }
   // (b)の部分は先のlist_free(b)で解放済み
}

このような、リストb,リストcで共有されている部分があると、データの廃棄処理をどのように記述すべきなのか、問題となる。

これらの解決方法としては、(1) set_union() の最初で、ans=b となっている部分を別にコピーしておく、(2) 参照カウンタ法を用いる、(3) ガベージコレクタのある言語を用いる…などがある。(2),(3)は後期授業で改めて解説を行う。

// 同じ要素を含む、新しいリストを作る
struct List* copy( struct List*p ) {
   struct List*ans = NULL ;
   for( ; p != NULL ; p = p->next )
      ans = cons( p->data , ans ) ;
   return ans ;
}
struct List* set_union( struct List*a, struct List* b ) {
   struct List* ans = copy( b ) ;
   // この後は自分で考えよう。
}

理解確認

  • 2進数を用いた集合処理は、どのように行うか?
  • リスト構造を用いた集合処理は、どのように行うか?
  • 積集合(A ∩ B)、和集合(A ∪ B)、差集合(A – B) の処理を記述せよ。

スタックと待ち行列

前回の授業では、リストの先頭にデータを挿入する処理と、末尾に追加する処理について説明したが、この応用について説明する。

計算処理中に一時的なデータの保存として、stackとqueueがよく利用される。それを配列を使って記述したり、任意の大きさにできるリストを用いて記述することを示す。

スタック

配列を用いたスタック

一時的な値の記憶によく利用されるスタック(stack)は、データの覚え方の特徴からLIFO( Last In First out )とも呼ばれる。配列を使って記述すると以下のようになるであろう。

#define STACK_SIZE 32
int stack[ STACK_SIZE ] ;
int sp = 0 ;

void push( int x ) { // データをスタックの一番上に積む
    stack[ sp++ ] = x ;
}
int pop() { // スタックの一番うえのデータを取り出す
    return stack[ --sp ] ;
}
void main() {
    push( 1 ) ; push( 2 ) ; push( 3 ) ;
    printf( "%d\n" , pop() ) ; // 3
    printf( "%d\n" , pop() ) ; // 2
    printf( "%d\n" , pop() ) ; // 1
}

++,–の前置型と後置型の違い

// 後置インクリメント演算子
int i = 100 ;
printf( "%d" , i++ ) ;
// これは、
printf( "%d" , i ) ;
i++ ;
// と同じ。100が表示された後、101になる。

// 前置インクリメント演算子
int i = 100 ;
printf( "%d" , ++i ) ;
//   これは、
i++ ;
printf( "%d" , i ) ;
// と同じ。101になった後、101を表示。

リスト構造を用いたスタック

しかし、この中にSTACK_SIZE以上のデータは貯えられない。同じ処理をリストを使って記述すれば、配列サイズの上限を気にすることなく使うことができるだろう。では、リスト構造を使ってスタックの処理を記述してみる。

struct List* stack = NULL ;

void push( int x ) { // リスト先頭に挿入
    stack = cons( x , stack ) ;
}
int pop() { // リスト先頭を取り出す
    int ans = stack->data ;
    struct List* d = stack ;
    stack = stack->next ;
    free( d ) ;
    return ans ;
}

キュー(QUEUE)

2つの処理の間でデータを受け渡す際に、その間に入って一時的にデータを蓄えるためには、待ち行列(キュー:queue)がよく利用される。 データの覚え方の特徴からFIFO(First In First Out)とも呼ばれる。

配列を用いたQUEUE / リングバッファ

配列にデータを入れる場所(wp)と取り出す場所のポインタ(rp)を使って蓄えれば良いが、配列サイズを超えることができないので、データを取り出したあとの場所を循環して用いるリングバッファは以下のようなコードで示される。

#define QUEUE_SIZE 32
int queue[ QUEUE_SIZE ] ;
int wp = 0 ; // write pointer(書き込み用)
int rp = 0 ; // read  pointer(読み出し用)

void put( int x ) { // 書き込んで後ろ(次)に移動
    queue[ wp++ ] = x ;
    if ( wp >= QUEUE_SIZE )  // 末尾なら先頭に戻る
        wp = 0 ;
}
int get() { // 読み出して後ろ(次)に移動
    int ans = queue[ rp++ ] ;
    if ( rp >= QUEUE_SIZE )  // 末尾なら先頭に戻る
        rp = 0 ;
    return ans ;
}
void main() {
    put( 1 ) ; put( 2 ) ; put( 3 ) ;
    printf( "%d\n" , get() ) ; // 1
    printf( "%d\n" , get() ) ; // 2
    printf( "%d\n" , get() ) ; // 3
}

このようなデータ構造も、get() の実行が滞るようであれば、wp が rp に循環して追いついてしまう。このため、上記コードはまだエラー対策としては不十分である。どのようにすべきか?

リスト構造を用いたQUEUE

前述のリングバッファもget()しないまま、配列上限を越えてput()を続けることはできない。

この配列サイズの上限問題を解決したいのであれば、リスト構造を使って解決することもできる。この場合のプログラムは、以下のようになるだろう。

struct List* queue = NULL ;
struct List** tail = &queue ;

void put( int x ) { // リスト末尾に追加
    *tail = cons( x , NULL ) ;
    tail = &( (*tail)->next ) ;
}
int get() { // リスト先頭から取り出す
    int ans = queue->data ;
    struct List* d = queue ;
    queue = queue->next ;
    free( d ) ;
    return ans ;
}

ただし、上記のプログラムは、データ格納後にget()で全データを取り出してしまうと、tail ポインタが正しい位置になっていないため、おかしな状態になってしまう。
また、このプログラムでは、rp,wp の2つのポインタで管理することになるが、 2重管理を防ぐために、リストの先頭と末尾を1つのセルで管理する循環リストが使われることが多い。

理解確認

  • 配列を用いたスタック・待ち行列は、どのような処理か?図などを用いて説明せよ。
  • リスト構造を用いたスタック・待ち行列について、図などを用いて説明せよ。
  • スタックや待ち行列を、配列でなくリスト構造を用いることで、どういう利点があるか?欠点があるか説明せよ。

リストへの追加処理

最初のリスト生成の説明では、補助関数 cons を用いて、直接リストを生成していた。
しかし、実際にはデータを入力しながらの処理となるであろう。

最も単純なリスト先頭への挿入

struct List {
   int          data ;
   struct List* next ;
} ;

// 保存するリストの先頭
struct List* top = NULL ;

void print( struct List* p ) {
   for( ; p != NULL ;  p = p->next )
      //  ~~~~~~~~~(A)     ~~~~~~~(B)
      printf( "%d " ,  p->data ) ;
           // ~~~~~(C) ~~~~~~~(D)
   printf( "¥n" ) ;
}//~~~~~~~~~~~~~~(E)
int main() {
   int x ;
   while( scanf( "%d" , &x ) == 1 ) {
      //  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~(F)
      top = cons( x , top ) ;
   }     // ~~~~~~~~~~~~~~~(G)
   print( top ) ; // 前回示したリスト全要素表示
// ~~~~~~~~~~~~(H)
   return 0 ; // (生成したリストの廃棄処理は省略)
}
// (1) 入力で、11 , 22 を与えるとどうなる? - 下図参照
// (2) 練習問題(A)~(H)の型は?
// (3) 入力で、11,22 の後に 33 を与えるとどうなる?

ここで示したコードは、新しい要素を先頭に挿入していく処理となる。このため、作られたリストは、与えられた要素順とは逆順となる。この方法は、リストを管理するポインタが1つで分かりやすい

授業では、C言語のプログラムを示しているが、C++を使うと LIST 処理もシンプルに記述できるようになっている。参考資料として、C++で同様の処理を示す。テンプレートを使ったコンテナクラスを使うと、struct List {…} といった記述は不要で、std::forward_list<int> という型を使うだけで書けてしまう。

// C++ コンテナクラスで書くと...(auto を使うには C++11 以上)
#include <iostream>
#include <forward_list>
#include <algorithm>
int main() {
   std::forward_list<int> top ;
   int x ;
   while( std::cin >> x )
      top.push_front( x ) ;
   for( auto i = top.cbegin() ; i != top.cend() ; ++i )
      std::cout << *i << std::endl ;
   return 0 ;
}

要素を末尾に追加して追加順序で保存

前に示した方法は、逆順になるので、追加要素が常に末尾に追加される方法を示す。

struct List* top = NULL ;
struct List** tail = &top ;

int main() {
   int x ;
   while( scanf( "%d" , &x ) == 1 ) {
      //  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~(A)
      *tail = cons( x , NULL ) ;
      tail = &((*tail)->next) ;
   }//~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~(B) 下記の解説参照
   print( top ) ; // 前回示したリスト全要素表示
// ~~~~~~~~~~~~(C)
   return 0 ;  // (生成したリストの廃棄処理は省略)  
}
// (1) 入力で 11,22 を与えるとどうなる? - 下図参照 
// (2) 練習問題(A),(C)の型は?
// (3) 11,22の後に、さらに 33 を与えるとどうなる?

この方法は、次回にデータを追加する場所(末尾の目印のNULLが入っているデータの場所)を覚える方式である。ただし、リストへのポインタのポインタを使う方法なので、少しプログラムがわかりづらいかもしれない。

理解の確認のために、末尾のポインタを動かす部分の式を、型で解説すると以下のようになる。

途中でデータ挿入・データ削除

リスト構造の特徴は、途中にデータを入れたり、途中のデータを抜くのが簡単にできる所。そのプログラムは以下のようになるだろう。

void insert( struct List*p , int data ) {
   // p    は要素を入れる前のポインタ
   // data は追加する要素
   //      あえて、補助関数consを使わずに書いてみる
   struct List* n ;
   n = (struct List*)malloc( sizeof( struct List ) ) ;
       ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~(A)
   if ( n != NULL ) {
      n->data = data ;
                ~~~~(B)
      n->next = p->next ;
                ~~~~~~~(C)
      p->next = n ;
   }
   // consを使って書けば、簡単
   //  p->next = cons( data , p->next ) ;
}

int main() {
   struct List* top = cons( 11 , cons( 22 , cons( 44 , NULL ) ) ) ;
   //                                      ↑
   insert( top->next , 33 ) ;           // ここに33を挿入したい

   return 0 ;  // (生成したリストの廃棄処理は省略)
}

void remove_after( struct List* p ) {
   struct List* del = p->next ;
   p->next = del->next ;
   free( del ) ;
}

int main() {
   struct List* top = cons( 11 , cons( 22 , cons( 33 , cons( 44 , NULL ) ) ) ) ;
   remove_after( top->next ) ;                //  ↑
   return 0 ;  // リストの廃棄処理は省略)       // これを消したい
}

理解度確認

上記プログラムinsert() の中の、下線部(A),(B),(C)の型は何か答えよ。

レポート課題

以下に示すようなデータを扱うリスト構造を作り、そのリストを扱うプログラムを作成せよ。
( 出席番号 % 3 ) の番号の課題に取り組むこと。

  1. 緯度(latitude)経度(longitude)とその場所の都市名(city)
  2. 名前(name)と誕生日(month,day)(1つの変数に2月7日を0207のように保存するのは禁止)
  3. 複素数(re,im)

このようなプログラムを作るのであれば、以下の例を参考に。

struct NameAgeList {
   char                name[ 20 ] ; // 名前
   int                 age ;        // 年齢
   struct NameAgeList* next ;       // 次のデータへのポインタ
} ;
struct NameAgeList* na_cons( char* nm, int ag,
                             struct NameAgeList*p )
{  struct NameAgeList* ans ;
   ans = (struct NameAgeList*)malloc(
               sizeof( struct NameAgeList ) ) ;
   if ( ans != NULL ) {
      strcpy( ans->name , nm ) ;
      ans->age  = ag ;
      ans->next = p ;
   }
   return ans ;
}

int main() {
   struct NameAgeList* top = NULL ;
   struct NameAgeList* p ;
   char buff[ 1024 ] ;
   // 1行読み込みの繰り返し
   while( fgets( buff , sizeof( buff ) , stdin ) != NULL ) {
      char nm[ 100 ] ;
      int ag ;
      // 1行の中から名前と年齢があったら na_cons で挿入保存
      if ( sscanf( buff , "%s%d" , nm , &ag ) == 2 ) {
         top = na_cons( nm , ag , top ) ;
      }     
   }
   // 読み込んだデータを全部出力
   for( p = top ; p != NULL ; p = p->next )
      printf( "%s %d¥n" , p->name , p->age ) ;
   return 0 ;  // リストの廃棄処理は省略)
}

リスト処理

リスト構造

リスト構造は、データと次のデータへのポインタで構成され、必要に応じてメモリを確保することで、配列の上限が制限にならないようにする。また、次のデータへのポインタでつなげているため、途中へのデータ挿入が簡単にできるようにする。

まずは、メモリ確保とポインタをつなげるイメージを確実に理解してもらうために、1つ1つのデータをポインタでつなげる処理を示す。

#include <stdio.h>
#include <stdlib.h>

// List構造の宣言
struct List {
   int          data ;  // データ保存部
   struct List* next ;  // 次のデータへのポインタ
} ;

int main() {
   struct List* top ;   // データの先頭
   struct List* p ;

   // (1)
   top = (struct List*)malloc( sizeof( struct List ) ) ;
   top->data = 111 ;
   // (2)
   top->next = (struct List*)malloc( sizeof( struct List ) ) ;
   top->next->data = 222 ;
   // (3)
   top->next->next = (struct List*)malloc( sizeof( struct List ) ) ;
   top->next->next->data = 333 ;
   top->next->next->next = NULL ; // 末尾データの目印

   for( p = top ; p != NULL ; p = p->next ) {
      printf( "%d¥n" , p->data ) ;
   }
   return 0 ;
}

このようなメモリーの中のポインタの指し示す番地のイメージを、具体的な番地の数字を書いてみると、以下のような図で表せる。先頭の111が入った部分が1000番地であったなら、topというポインタには1000番地が入っている。

NULLって何?

前回の授業で説明した、次の配列の添え字の番号を使う方式では、データの末尾を示すためには、-1 を使った。-1 は、配列の添え字で通常ありえない値であり、次のデータはないという目印とした。

同じように、C言語では、通常あり得ないポインタとして、0 番地を示す NULL が定義されている。NULLポインタの先を参照してはいけない。このリスト処理では、末尾を表す目印として使っている。

#define NULL 0

補助関数

上記のプログラムでは、(struct…)malloc(sizeof(…))を何度も記載し、プログラムが分かりにくいので、以下に示す補助関数を使うと、シンプルに記載できる。

struct List* cons( int x , struct List* n ) {
   struct List* ans ;
   ans = (struct List*)malloc( sizeof( struct List ) ) ;
   if ( ans != NULL ) {
      ans->data = x ;
      ans->next = n ;
   }
   return ans ;
}

int main() {
   struct List* top ;
   top = cons( 111 , cons( 222 , cons( 333 , NULL ) ) ) ;
   :
   return 0 ; // Listの開放free()は省略
}

補助関数の名前の cons は、constructor の略であり、古くから使われている List Processor(LISP) というプログラム言語でのリスト(セル)を生成する関数が cons 。

typedefを使った書き方

List構造の宣言は、古い書き方では typedef を使うことも多い。typedef は、型宣言において新しい型の名前をつける命令。

// typedef の使い方
//    typedef 型宣言 型名 ;
typedef unsigned int uint32 ; // 符号なし32bit整数をシンプルに書きたい
uint32 x = 12345 ;

typedef struct LIST {     // 構造体のタグ名と新しくつける型名と重複できない
      int   data ;        // のでこの時点のタグ名は "LIST" としておく
      struct LIST* next ;
   } List ;

List* cons( int x , List* n ) {  // C++なら struct List { ... } ; と書く
   List* ans ;                   // だけでこういう表記が可能
   ans = (List*)malloc( sizeof( List ) ) ;
   :
   ((略))
}
int main() {
   List* top ;
   top = cons( 111 , cons( 222 , cons( 333 , NULL ) ) ) ;
   :
   ((略))
}

最近のC言語(C++)では、構造体のタグ名がそのまま型名として使えるので、こういう書き方をする必要はなくなってきている。

// 最近のC++なら...
struct List {
public:
   int   data ;
   List* next ;
public:
   List( int x , List* n )
     : data( x ) , next( n ) {}
} ;

int main() {
   List* top = new List( 111 , new List( 222 , new List( 333 , NULL ) ) ) ;
   :
   // Listの開放deleteは省略
}

LISPと関数型プログラミング言語

LISPの歴史は長く、最古のFORTRAN,COBOLに次ぐ3番目ぐらいに遡る。最初は、人工知能(AI)のプログラム開発のための関数型プログラミング言語として作られた。特徴として、データもプログラムもすべてリスト構造(S式)で表すことができ、プログラムは関数型に基づいて作られる。

関数型プログラミングは、Ruby や Python でも取り入れられている。関数型プログラミングは、処理を関数をベースに記述することで「副作用を最小限にすることができ」、極端な話をすればループも再帰呼出しの関数で書けばいい…。

LISPの処理系は、最近では Scheme などが普通だが、プログラムエディタの Emacs は、内部処理が LISP で記述されている。

古いAI※※と最近のAIの違い

最近では、AI(Artificial Intelligence) という言葉が復活してきたが、LISP が開発された頃の AI と最近注目されている AI は、微妙に異なる点がある。

LISPが開発された頃の AI は、関数型のプログラム言語で論理的思考を表現することが目標であった。頭脳を左脳と右脳の違いで表現することが多いが、どちらかというとLISPの時代のAI「分析的で論理的に優れ、言語力や計算機能が高い」とされる左脳を作り出すことを目指していた。しかしながら、この時代では、漠然としたパターンを認識したりするような「感覚的、直感的な能力に優れ総合判断力を司る右脳」のような処理は苦手であった。

しかしながら、最近注目されている AI は、脳神経を真似たニューラルネットワークから発展した機械学習ディープラーニングという技法により今まで難しかった右脳の機能を実現することで、最近のAIでは左脳と右脳の機能を兼ね備えたものとなっている。

将棋のプログラミングで例えるなら、左脳(古いAI)に例えられるのが正確に先の手を読む機能であり、右脳に例えられる機能が大局観(全体の良し悪しを見極める判断能力)といえる。

簡単なリスト処理の例

先に示したリスト構造について簡単なプログラム作成を通して、プログラミングに慣れてみよう。

// 全要素を表示する関数
void print( struct List* p ) {
   for( ; p != NULL ; p = p->next )
      printf( "%d " , p->data ) ;
   printf( "¥n" ) ;
}
// データ数を返す関数
int count( struct List* p ) {
   int c = 0 ;
   for( ; p != NULL ; p = p->next )
      c++ ;
   return c ;
}
int main() {
   struct List* top = cons( 111 , cons( 444 , cons( 333 , NULL ) ) ) ;
   print( top ) ;
   printf( "%d¥n" , count( top ) ) ; 
   return 0 ;
}

リスト処理を自分で考えて作成

以下のようなプログラムを作ってみよう。意味がわかって慣れてくれば、配列の部分の for の回し方が変わっただけということに慣れてくるだろう。

// 全要素の合計
int sum( struct List* p ) {
   // sum( top ) → 888
   自分で考えよう
}
// リストの最大値を返す
int max( struct List* p ) {
   // max( top ) → 444 (データ件数0の場合0を返す)
   自分で考えよう
}
// リストの平均値を返す
double mean( struct List* p ) {
   // (111+444+333)/3=296.0
   自分で考えよう
}
// リストの中から指定した値の場所を返す
int find( struct List* p , int key ) {
   // find( top , 444 ) = 1 (先頭0番目)
   // 見つからなかったら -1
   自分で考えよう
}

再帰呼び出しでリスト処理

リスト処理の応用のプログラムを作るなかで、2分木などのプログラミングでは、リスト処理で再帰呼出しを使うことも多いので、先に示したプログラムを再帰呼び出しで書いたらどうなるであろうか?

// 全データを表示
void print( struct List* p ) {
   if ( p == NULL ) {
      printf( "¥n" ) ;
   } else {
      printf( "%d " , p->data ) ;
      print( p->next ) ; // 末尾再帰
   }
}
// データ数を返す関数
int count( struct List* p ) {
   if ( p == NULL )
      return 0 ;
   else
      return 1 + count( p->next ) ; // 末尾再帰
}
// 全要素の合計
int sum( struct List* p ) {
   // sum( top ) → 888
   自分で考えよう
}
// リストの最大値を返す
int max( struct List* p ) {
   // max( top ) → 444 (データ件数0の場合0を返す)
   自分で考えよう
}
// リストの中から指定した値を探す。
int find( struct List* p , int key ) {
   // find( top , 444 ) = 1 
   // 見つかったら1 , 見つからなかったら 0
   自分で考えよう
}

理解度確認

上記プログラム中の sum() , max() , find() を再帰呼び出しをつかって記述せよ。

リスト構造と処理

データ処理において、配列は基本的データ構造だが、動的メモリ確保の説明で述べたように、基本の配列では大きさを変更することができない。これ以外にも、配列は途中にデータを挿入・削除を行う場合、の処理時間を伴う。以下にその問題点を整理し、その解決策であるリスト構造について説明する。

配列の利点と欠点

今までデータの保存には、配列を使ってきたが、配列は添字で場所を指定すれば、その場所のデータを簡単に取り出すことができる。配列には苦手な処理がある。

例えば、配列の中から目的のデータを高速に探す方式として、2分探索法を用いる。処理に要する時間としては となる。

// この関数は見つかったら、見つかった場所、見つからない場合は -1 を返す。
int find( int array[] , int left , int right , int key ) {
   // データは left から right-1までに入っているとする。
   while( left < right ) {
      int mid = (left + right) / 2 ; // 中央の場所
      if ( array[ mid ] == key )
         return mid ;                // 見つかった
      else if ( array[ mid ] > key )
         right = mid ;               // 左半分にある
      else
         left = mid + 1 ;            // 右半分にある
   }
   return -1 ; // 見つからない
}

int a[] = { 12 , 34 , 41 , 53 , 62 , 79 , 80 } ;
int main() {
   int ans = find( a , 0 , 7 , 62 ) ; // 配列 a[] から 62 を探す
   printf( "%d¥n" , ans ) ;           // 4が表示される
   return 0 ;
}

しかし、この配列の中に新たに要素を追加しようとするならば、データは昇順に並んでいる必要があることから、以下のようになるだろう。

void entry( int array[] , int* psize , int key ) {
   // データを入れるべき場所を探す処理
   for( int i = 0 ; i < *psize ; i++ ) // O(N) の処理だけど、
      if ( array[ i ] > key )          // O(log N) でも書けるけど
         break ;                       // 今回は単純に記載する。
   if ( i < *psize ) {
      // 要素を1つ後ろにずらす処理(A)
      for( int j = *psize ; j > i ; j-- ) //  O(N)の処理
         array[ j ] = array[ j - 1 ] ;
      array[ i ] = key ; 
   } else {
      array[ *psize ] = key ;
   }
   (*psize)++ ;
}
   /// よくある間違い ///
   /// 上記処理の(A)の部分を以下のように記載した ///
   /// 問題点はなにか答えよ ///
   //   for( int j = i ; j < size ; j++ )
   //      array[ j + 1 ] = array[ j ] ;
   //   array[ i ] = key ;

int main() {
   int a[ 100 ] ;
   int size = 0 ;
   int x ;
   // 入力された値を登録していく繰り返し処理
   while( scanf( "%d" , &x ) == 1 ) {
      // x を追加する。
      entry( a , &size , x ) ;
   }
   return 0 ;
}

これで判るように、昇順に並んだ配列にデータを追加する場合、途中にデータを入れる際にデータを後ろにずらす処理が発生する。

この例は、データを追加する場合であったが、不要となったデータを取り除く場合にも、データの場所の移動が必要である。

このことから、昇順に並べられた配列は、データの追加処理の発生頻度が少ない場合は、2分探索法で効率が良いが、データの追加や削除が頻繁に発生する時はあまり効率が良くない。

順序が重要なデータ列で途中へのデータ挿入削除を高速化

例えば、アパート入居者に回覧板を回すことを考える。この中で、入居者が増えたり・減ったりした場合、どうすれば良いか考える。
以下の説明のような方法であれば、自分の所に回覧板が回ってきたら、次の入居者の部屋番号さえわかっていれば、スムーズに回覧板を回すことができる。

  101   102   103   104   105   106   アパートの番号
[ 105 | 106 |  -1 | 102 | 104 | 103 ] 回覧板を回す次の人の部屋番号

101号室の次は、105号室、
105号室の次は、104号室、
  :
106号室の次は、103号室、
103号室の次は、おしまい(-1)

このように「次のデータの場所」という概念を使うと、データの順序を持って扱うことができる。これをプログラムにしてみよう。

struct LIST {
   int data ;  // 実際のデータ
   int next ;  // 次のデータの配列の添字
} ;

struct LIST array[] = {
   /*0*/ { 11 ,  2 } , 
   /*1*/ { 67 ,  3 } ,  // 末尾にデータ34を加える
   /*2*/ { 23 ,  4 } ,  // { 23 , 5 } ,
   /*3*/ { 89 , -1 } ,  // 末尾データの目印
   /*4*/ { 45 ,  1 } ,
   /*5*/ {  0 ,  0 } ,  // { 34 , 4 } ,
} ;

int main() {
   for( int idx = 0 ; idx >= 0 ; idx = array[ idx ].next ) {
      printf( "%d¥n" , array[ idx ].data ) ; 
   }
   return 0 ;
}

この方法を取れば、途中にデータ入れたり、抜いたりする場合に、データの移動を伴わない。(O(N)の処理が発生しない)

しかし、配列をベースにしているため、配列の上限サイズを超えて格納することはできない。そこで、必要に応じてメモリを確保するテクニックを導入する。

リスト構造

リスト構造は、データと次のデータへのポインタで構成され、必要に応じてメモリを確保することで、配列を使わない。また、次のデータへのポインタでつなげているため、途中へのデータ挿入が簡単にできるようにする。

struct List {
   int          data ;  // データ
   struct List* next ;  // 次のデータへのポインタ
} ;

int main() {
   struct List* top ;      // 配列の先頭のデータ
   struct List* p ;
   top = (struct List*)malloc( sizeof( struct List ) ) ;
   top->data = 111 ;
   top->next = (struct List*)malloc( sizeof( struct List ) ) ;
   top->next->data = 222 ;
   top->next->next = (struct List*)malloc( sizeof( struct List ) ) ;
   top->next->next->data = 333 ;
   top->next->next->next = NULL ; // 必ず、末尾データの目印をつける!

   for( p = top ; p != NULL ; p = p->next ) {
      printf( "%d¥n" , p->data ) ;
   }
   return 0 ;
}

補助関数

上記のプログラムでは、(struct…)malloc(sizeof(…))を何度も記載し、プログラムが分かりにくいので、以下に示す補助関数を使うと、シンプルに記載できる。

struct List* cons( int x , struct List* n ) {
   struct List* ans ;
   ans = (struct List*)malloc( sizeof( struct List ) ) ;
   if ( ans != NULL ) {
      ans->data = x ;
      ans->next = n ;
   }
   return ans ;
}
struct List* top ;
top = cons( 111 , cons( 222 , cons( 333 , NULL ) ) ) ;

補助関数の名前の cons は、constructor の略であり、古くから使われている List Processor(LISP) というプログラム言語でのリスト(セル)を生成する関数が cons 。

LISPと関数型プログラミング言語

LISPの歴史は長く、最古のFORTRAN,COBOLに次ぐ3番目ぐらい。最初は、人工知能のプログラム開発のための関数型プログラミング言語として作られた。特徴として、データもプログラムもすべてリスト構造(S式)で表すことができ、プログラムは関数型に基づいて作られる。

関数型プログラミングは、Ruby や Python でも取り入れられている。関数型プログラミングは、処理を関数をベースに記述することで「副作用を最小限にすることができ」、極端な話をすればループも再帰呼出しで書けばいい…。

LISPの処理系は、最近では Scheme などが普通だが、プログラムエディタの Emacs は、内部処理が LISP で記述されている。

C言語での入出力処理のおさらい

テストのプログラム作成の問題で、入力処理の書き方が適切でないものが多いので、基本とテクニックの解説。

scanf()の使い方

// scanf( "フォーマット" , 引数... ) ;
// データの型とフォーマット
// int       %d (10進数として入力) - Digit
//           %o (8進数として入力)  - Octal digit
//           %x (16進数として入力) - heXa-decimal digit
//        - short int %hd - half-size digit
//        - long  int %ld - long-size digit
//
// float     %f
// double    %lf - long-size float
//
// char[]    %s
// char      %c

// 基本 scanf() はポインタ渡し。文字列(char配列)は配列の先頭アドレスを渡す
int x ;
scanf( "%d" , &x ) ;  // ポインタを渡し、xの場所に書き込んでもらう。
char str[ 10 ] ;
scanf( "%s" , str ) ; // strは配列の先頭の場所。 & は不要。

通常のscanfの%d,%sなどは、データ区切りは空白や改行となる。
%s で “tohru saitoh”といった空白の入った文字列を入力するには、一工夫が必要。

printf()の使い方

// printf( "フォーマット" , 引数... ) ;
// データの型とフォーマット
// 基本は、scanf() と同じ。
// float 型の出力
//       %f 固定小数点表示 1.23 のような出力
//       %e 指数表示 1.23e+10 のような出力
//       %g 固定小数点%fと指数表示%eのどちらか
// 桁数指定
//       %5d   - 必ず5桁で出力         "  123"
//       %05d  - 5桁の空白部は0で埋める "00123"
//       %5.2f - 全体5桁、小数点以下2桁 " 1.23"
//       %5s   - 文字列を5桁で出力     "  abc"
// 左寄せ
//       %-5s  - 文字列を左寄せ5桁で出力"abc  "

scanf(),printf()は成功した項目数を返す

scanf(),printf() は、返り値を使わないように思うけど、実際は入力に成功した項目件数、出力に成功した項目件数を返す。

int x ;
char str[ 10 ] ;
int ans ;

ans = scanf( "%d%s" , &x , str ) ;
printf( "%d¥n" , ans ) ; // 入力に成功すれば2。
ans = printf( "%d%s¥n" , x , str ) ;
printf( "%d¥n" , ans ) ; // 出力に成功すれば2。

特に、ファイルからの入力であれば、途中でデータがなくなって、これ以上データが入力できない時には、scanfの返り値を用いる。

char name[ 100 ] ;
int  age ;
while( scanf( "%s%d" , name , &age ) == 2 ) {
   printf( "%s %d¥n" , name , age ) ;
}

Microsoft の scanf_s() は安全な入力関数

C言語の標準関数 scanf() の %s では、バッファオーバーフローを検出できない。Microsoft の Visual Studio の C言語では、こういった危険な scanf(“%s”) は危険なので、scanf_s() を使うようになっている。ただし、他のC言語では使えない場合が多いので要注意。

char name[ 10 ] ;
scanf( "%s" , name ) ; // バッファオーバーフロー

scanf_s( "%s" , name , sizeof( name ) ) ;
// バッファオーバーフローの心配がない

fget()とsscanf()を使った安全な入力

C言語では、1行のデータを読む場合には、gets() 関数がある。しかし、配列サイズを指定できないので、バッファオーバーフローの危険がある。一方、ファイルからの入力関数 fgets() は、入力するデータサイズを指定できるため、fgets を使うべき。

char buff[ 1000 ] ;
gets( buff ) ; // バッファオーバーフローの危険性

fgets( buff , sizeof( buff ) , stdin ) ;
// 入力に失敗すると NULLを返す

一方、入力した文字列のデータから、scanf() のようにデータを抽出する、sscanf() という関数がある。

char  string[] = "123 tohru 1.23" ;
int   x ;
char  str[ 10 ] ;
double y ;

sscanf( string , "%d%s%lf" , &x , str , &y ) ;
// x = 123 , str = "tohru" , y = 1.23 
// scanfと同様に成功した項目数3が返る。

これらを踏まえ、1行に名前と年齢のデータが記録されていて、データが入力できるだけ繰り返す処理を fgets + sscanf で書くと以下のようになる。

char buff[ 1000 ] ;
char name[ 1000 ] ;
int  age ;

while( fgets( buff , sizeof( buff ) , stdin ) != NULL ) {
   if ( sscanf( buff , "%s%d" , name , &age ) == 2 ) {
      // buffには必ず1000文字以下なので、nameが1000文字を超えることはない
      printf( "%s %d¥n" , name , age ) ;
   }
}

なお、このプログラムを動かす場合、これ以上データがない場合には、Windowsであれば “Ctrl-Z” を入力。unixやmacOSであれば”Ctrl-D”を入力すること。

その他の気づいた点

文末の「;」を忘れないで

JavaScript では、単純式の末尾の「;」は、忘れてもそれなりに正しく動く。しかし、C言語では「;」を忘れると、文法エラーになるので要注意。

1: struct A {
2:    :
3: } ;          ←この行のセミコロンを忘れると、5行目で文法エラーの表示となる。
4:
5: for( ... ) { ←この行を見ても文法エラーの原因はわからない。3行目が原因。
6:    :
7: }

局所変数やヒープメモリにはゴミデータが入っている

void foo() {
   int sum ;  ←初期化忘れ
   int array[ 3 ] = { 11 , 22 , 33 } ;
   for( int i = 0 ; i < 3 ; i++ ) {
      sum += array[ i ] ;
   }
}

局所変数やヒープメモリは、関数に入って確保やmallocで確保されるメモリ領域だけど、このメモリ領域には以前の処理で使われていたデータが残っている場合がある。こういった初期化されていないメモリ領域は、悪意を持ったプログラムがデータを盗むために使われる場合もある。必要に応じてちゃんと初期化が必要。

また、大域変数(グローバル変数)は、C言語では 0 で初期化される。(ポインタなら NULL が入っている。)

様々な2次元配列

#include <stdio.h>
#include <stdlib.h>
#include <string.h>

int main() {
        int i3x4[ 3 ][ 4 ] = {
                { 11 , 12 , 13 , 14 } ,
                { 21 , 22 , 23 , 24 } ,
                { 31 , 32 , 33 , 34 } ,
        } ;
        int i12[ 12 ] = {
                11 , 12 , 13 , 14 ,
                21 , 22 , 23 , 24 ,
                31 , 32 , 33 , 34 ,
        } ;

        int *pi[ 3 ] ;
        pi[ 0 ] = (int*)malloc( sizeof( int ) * 4 ) ;
        memcpy( pi[ 0 ] , i3x4[ 0 ] , sizeof( int ) * 4 ) ;
        pi[ 1 ] = (int*)malloc( sizeof( int ) * 4 ) ;
        memcpy( pi[ 1 ] , i3x4[ 1 ] , sizeof( int ) * 4 ) ;
        pi[ 2 ] = (int*)malloc( sizeof( int ) * 4 ) ;
        memcpy( pi[ 2 ] , i3x4[ 2 ] , sizeof( int ) * 4 ) ;

        for( int y = 0 ; y < 3 ; y++ ) {
                for( int x = 0 ; x < 4 ; x++ )
                        printf( "%d " , i3x4[ y ][ x ] ) ;
                printf( "\n" ) ;
        }
        for( int y = 0 ; y < 3 ; y++ ) {
                for( int x = 0 ; x < 4 ; x++ )
                        printf( "%d " , i12[ y*4 + x ] ) ;
                printf( "\n" ) ;
        }
        for( int y = 0 ; y < 3 ; y++ ) {
                for( int x = 0 ; x < 4 ; x++ )
                        printf( "%d " , pi[ y ][ x ] ) ;
                printf( "\n" ) ;
        }
        return 0 ;
}

様々なデータの覚え方のレポート課題

前回の malloc() + free() の資料で、補足で説明したC++のnew, delete を含め、様々なデータ構造の覚え方の例やメモリイメージを説明し、前期中間のレポート課題を示す。

malloc+freeの振り返り

// 文字列(可変長)の保存
char  str[] = "ABCDE" ;
char* pc ;
pc = (char*)malloc( strlen( str ) + 1 ) ;
if ( pc != NULL ) { // ↑正確に書くと sizeof( char ) * (strlen(str)+1)
   strcpy( pc , str ) ;
   ////////////////////
   // pcを使った処理
   ////////////////////
   free( pc ) ;
}
//
// 可変長の配列の保存
int  data[] = { 11 , 22 , 33 } ;
int* pi ;
pi = (int*)malloc( sizeof( int ) * 3 ) ;
if ( pi != NULL ) {
   for( int i = 0 ; i < 3 ; i++ )
      pi[ i ] = data[ i ] ;
   ////////////////////
   // piを使った処理
   ////////////////////
   free( pi ) ;
}
//
// 1件の構造体の保存
struct Person {
   char name[ 10 ] ;
   int  age ;
} ;
struct Person* pPsn ;
pPsn = (struct Person*)malloc( sizeof( struct Person ) ) ;
if ( pPsn != NULL ) {
   strcpy( pPsn->name , "t-saitoh" ) ;
   pPsn->age = 55 ;
   ////////////////////
   // pPsnを使った処理
   ////////////////////
   free( pPsn ) ;
}

(おまけ)C++の場合

malloc+freeでのプログラミングは、mallocの結果を型キャストしたりするので、間違ったコーディングの可能性がある。このため、C++ では、new 演算子, delete 演算子というものが導入されている。

// 同じ処理をC++で書いたら
// 文字列の保存
char  str[] = "ABCDE" ;
char* pc = new char[ strlen( str ) + 1 ] ;
strcpy( pc , str ) ;
// pcを使った処理
delete[] pc ;  // new型[]を使ったらdelete[]

// int配列の保存
int  data[] = { 11 , 22 , 33 } ;
int* pi ;
pi = new int[ 3 ] ;
for( int i = 0 ; i < 3 ; i++ )
   pi[ i ] = data[ i ] ;
// piを使った処理
delete[] pi ;

// 構造体の保存
struct Person {
   char name[ 10 ] ;
   int  age ;
} ;
Person* pPsn ;
pPsn = new Person ;
strcpy( pPsn->name , "t-saitoh" ) ;
pPsn->age = 55 ;
// pPsnを使った処理
delete pPsn ; // new型ならdelete

注意すべき点は、malloc+freeとの違いは、mallocがメモリ確保に失敗した時の処理の書き方。返り値のNULLをチェックする方法は、呼び出し側ですべてでNULLの場合を想定した書き方が必要になり、処理が煩雑となる。C++の new 演算子は、メモリ確保に失敗すると、例外 bad_alloc を投げてくるので、try-catch 文で処理を書く。(上記例はtry-catchは省略)

安全な1行1件のデータ入力

C言語では、scanf などの関数は、バッファオーバーフローなどの危険性があるため、以下のような処理を使うことが多い。fgets は、指定されたファイルから1行分のデータを読み込む。sscanf は、文字列のなかから、scanf() と同じようなフォーマット指定でデータを読み込む。

fgets は、これ以上の入力データが無い場合には、NULL を返す。
(Windowsであれば、キー入力でCtrl+Z を入力、macOSやLinuxであれば、Ctrl+Dを入力)

sscanf() は、読み込めたデータ件数を返す。

int main() {
   char buff[ 1024 ] ;
   for( int i = 0 ; i < 3 ; i++ ) {
      if ( fgets( buff , sizeof( buff ) , stdin ) != NULL ) {
         char name[ 1024 ] ;
         int  age ;
         if ( sscanf( buff , "%s%d" , name , &age ) == 2 ) {
            // 名前と年齢の2つのデータが正しく読み込めたとき
            ...
         }
      }
   }
   return 0 ;
}

様々なデータの覚え方

配列サイズ固定・名前が固定長

例えば、このデータ構造であれば、table1[] の場合、長い名前にある程度対応できるように nameの配列を100byteにしたりすると、データ件数が少ない場合には、メモリの無駄も多い。

そこで、実際に入力された存在するデータだけをポインタで覚える方法 table2[] という保存方法も考えられる。

// 固定長データのプログラム
#define SIZE 50

// 名前(固定長)と年齢の構造体
struct NameAge {
   char name[ 32 ] ;
   int  age ;
} ;
struct NameAge table1[ SIZE ] ;
int    size1 = 0 ;

void entry1( char s[] , int a ) {
   strcpy( table1[ size1 ].name , s ) ;
   table1[ size1 ].age = a ;
   size1++ ; 
}
// ポインタで覚える場合
struct NameAge* table2[ SIZE ] ;
int    size2 = 0 ;

void entry2( char s[] , int a ) {
   table2[size2] = (struct NameAge*)malloc( sizeof( struct NameAge ) ) ;
   if ( table2[size2] != NULL ) {  // なぜ != NULL のチェックを行うのか、説明せよ
      strcpy( table2[size2]->name , s ) ;
      table2[size2]->age = a ;
      size2++ ;
   }
}
// データ出力
void print_NA( struct NameAge* p ) {
   printf( "%s %d¥n" , p->name , p->age ) ;
}
int main() {
   // table1に保存
   entry1( "t-saitoh" , 55 ) ;
   entry1( "tomoko" ,   44 ) ;
   print_NA( &table1[0] ) ;
   print_NA( &table1[1] ) ;
   // table2に保存
   entry2( "t-saitoh" , 55 ) ;
   entry2( "tomoko" , 44 ) ;
   print_NA( _________________ ) ;  // table2の中身を表示せよ
   print_NA( _________________ ) ;
   return 0 ;
}

配列サイズ固定・名前が可変長

しかしながら、前回の授業で説明したように、際限なく長い名前があるのであれば、以下の様に名前は、ポインタで保存し、データを保存する時に strdup(…) を使って保存する方法もあるだろう。

// 名前が可変長のプログラム

// 名前(固定長)と年齢の構造体
struct NamePAge {
   char* name ;  // ポインタで保存
   int   age ;
} ;
struct NamePAge table3[ SIZE ] ;
int    size3 = 0 ;

void entry3( char s[] , int a ) {
   table3[ size3 ].name = strdup( s ) ;  // ★★★★
   table3[ size3 ].age = a ;
   size3++ ; 
}
// ポインタで覚える場合
struct NamePAge* table4[ SIZE ] ;
int    size4 = 0 ;

void entry4( char s[] , int a ) {
   table4[size4] = (struct NamePAge*)malloc( ____________________ ) ;
   if ( table4[size4] != NULL ) {            // ↑適切に穴埋めせよ
      table4[size4]->name = strdup( s ) ; // ★★★★
      _________________________________ ; // ←適切に穴埋めせよ
      size4++ ;
   }
}
// データ出力
void print_NPA( struct NameAge* p ) {
   printf( "%s %d¥n" , ____________ , ____________ ) ;
}                      // ↑適切に穴埋めせよ
int main() {
   // table3に保存
   entry3( "t-saitoh" , 55 ) ;
   entry3( "jyugemu jyugemu ..." ,   44 ) ;
   print_NPA( _________________ ) ;  // table3[] の中身を表示せよ。
   print_NPA( _________________ ) ; 
   // table4に保存
   entry4( "t-saitoh" , 55 ) ;
   entry4( "jyugemu jyugemu ..." , 44 ) ;
   print_NPA( table4[0] ) ;
   print_NPA( table4[1] ) ; 
   return 0 ;
}

データ件数が可変長ならば

前述のプログラムでは、データ件数全体は、SIZE という固定サイズを想定していた。しかしながら、データ件数自体も数十件かもしれないし、数万件かもしれないのなら、配列のサイズを可変長にする必要がある。

struct NamePAge* table5 ;
int    size5 = 0 ;

void entry5( char s[] , int a ) {
   strcpy( table5[ size5 ].name , s ) ;
   table5[ size5 ].age = a ;
   size5++ ; 
}

int main() {
   // table5に保存
   table5 = (struct NameAge*)malloc( sizeof( struct NameAge ) * 2 ) ;
   if ( table5 != NULL ) {
      entry5( "t-saitoh" , 55 ) ;
      entry5( "tomoko" ,   44 ) ;
   }
   return 0 ;
}

メモリの管理に十分気を付ける必要があるが、名前の長さも配列全体のサイズも可変長であれば、以下のようなイメージ図のデータを作る必要があるだろう。(JavaScriptやJavaといった言語ではデータのほとんどがこういったポインタで管理されている)

レポート課題

授業での malloc , free を使ったプログラミングを踏まえ、以下のレポートを作成せよ。

以下のデータのどれか1つについて、データを入力し、何らかの処理を行うこと。
課題は、原則として、(自分の出席番号%3)+1 についてチャレンジすること。

  1. 名前と電話番号
  2. 名前と生年月日
  3. 名前と身長・体重

このプログラムを作成するにあたり、以下のことを考慮しmallocを適切に使うこと。

名前は、長い名前の人が混ざっているかもしれない。
保存するデータ件数は、10件かもしれない1000件かもしれない。(データ件数は、処理の最初に入力すること。)

ただし、mallocの理解に自信がない場合は、名前もしくはデータ件数のどちらか一方は固定値でも良い。

レポートには、(a)プログラムリスト, (b)プログラムの説明, (c)正しく動いたことがわかる実行例, (d)考察 を記載すること。

考察には、自分のプログラムが正しく動かない事例はどういう状況でなぜ動かないのか…などを検討したり、プログラムで良くなった点はどういう所かを説明すること。

malloc()とfree()

前回の授業で説明した、alloca() は、スタック領域にデーターを覚えるので、allocaを実行した関数の終了ともに配列領域が消えてしまう。しかし、関数が終わってもそのデータを使いたいといった場合には、malloc()+free()を使う必要がある。

malloc()とfree()

malloc() は、動的(ヒープ領域)にメモリを確保する命令で、データを保存したい時に malloc() を実行し、不要になった時に free() を実行する。

malloc() では、alloca() と同じように、格納したいデータの byte 数を指定する。また、malloc() は、確保したメモリ領域の先頭を返すが、ヒープメモリが残っていない場合 NULL ポインタを返す。処理が終わってデータ領域をもう使わなくなったら、free() で解放する必要がある。

基本的には、確保したメモリ領域を使い終わった後 free() を実行しないと、再利用できないメモリ領域が残ってしまう。こういう処理を繰り返すと、次第にメモリを食いつぶし、仮想メモリ機能によりハードディスクの読み書きで性能が低下したり、最終的にOSが正しく動けなくなる可能性もある。こういった free() 忘れはメモリーリークと呼ばれ、malloc(),free()に慣れない初心者プログラマーによく見られる。

ただし、ヒープメモリ全体は、プロセスの起動と共に確保され(不足すればOSから追加でメモリを分けてもらうこともできる)、プログラムの終了と同時にOSに返却される。このため、malloc()と処理のあとすぐにプロセスが終了するようなプログラムであれば、free() を忘れても問題はない。授業では、メモリーリークによる重大な問題を理解してもらうため、原則 free() は明記する。

文字列を保存する場合

#include <stdlib.h>
char* names[ 10 ] ;
char  buff[ 1000 ] ;

// 名前を10件読み込む
void inputs() {
   for( int i = 0 ; i < 10 ; i++ ) {
      if ( fgets( buff , sizeof( buff ) , stdin ) != NULL ) {
         names[ i ] = (char*)malloc( strlen(buff)+1 ) ;
         if ( names[ i ] != NULL )
            strcpy( names[ i ] , buff ) ;
      }
   }
}
// 名前を出力する
void prints() {
   for( int i = 0 ; i < 10 ; i++ )
      printf( "%s" , names[ i ] ) ;
}
void main() {
   // 文字列の入力&出力
   inputs() ;
   prints() ;
   // 使い終わったら、free() で解放
   for( int i = 0 ; i < 10 ; i++ )
      free( names[ i ] ) ;
}

文字列を保存する場合には、上記の names[i] への代入のような malloc() と strcpy() を組み合わせて使うことが多い。しかし、この一連の処理の関数として、strdup() がある。基本的には、以下のような機能である。

char* strdup( char* s ) {
   char* p ;
   if ( (p = (char*)malloc( strlen(s)+1 )) != NULL )
      strcpy( p , s ) ;
   return p ;
}

また、入力した文字列をポインタで保存する場合、以下のようなプログラムを書いてしまいがちであるが、図に示すような状態になることから、別領域にコピーする必要がある。

char  buff[ 1000 ] ;
char* name[10] ;
for( int i = 0 ; i < 10 ; i++ ) {
   if ( fgets( buff , sizeof(buff) , stdin ) != NULL )
      name = buff ;
      // ここは、name = strdup( buff ) ; と書くべき。
}

配列に保存する場合

基本的な型の任意サイズの配列を作りたい場合には、malloc() で一括してデータの領域を作成し、その先頭アドレスを用いて配列として扱う。

#include <stdlib.h>
void main() {
   int size ;
   int* array ;
   // 処理するデータ件数を入力
   scanf( "%d" , &size ) ;

   // 整数配列を作る
   if ( (array = (int*)malloc( sizeof(int) * size )) != NULL ) {
      int i ;
      for( i = 0 ; i < size ; i++ )
         array[i] = i*i ; // あんまり意味がないけど
      for( i = 0 ; i < size ; i++ )
         printf( "%d¥n" , array[i] ) ;

      // mallocしたら必ずfree
      free( array ) ;
   }
}

構造体の配列

同じように、任意サイズの構造体(ここではstruct Complex)の配列を作りたいのであれば、mallocの引数のサイズに「sizeof( struct Complex ) * データ件数」を指定すればいい。

後半の array2[] では、ポインタの配列を使った例を示す。この例では、1つの構造体毎に1つのmallocでメモリを確保している。

#include <stdlib.h>
struct Complex {
   double re , im ;
} ;

// 指定した場所にComplexを読み込む。
int input_Complex( struct Complex* p ) {
   return scanf( "%lf %lf" , &(p->re) , &(p->re) ) == 2 ;
}

// 指定したComplexを出力
void print_Complex( struct Complex* p ) {
   printf( "%lf+j%lf¥n" , p->re , p->im ) ;
}
void main() {
   int size ;
   struct Complex* array ;
   struct Complex** array2 ;

   // 処理する件数を入力
   scanf( "%d" , &size ) ;
   // 配列を確保して、データの入力&出力
   if ( (array = (struct Complex*)malloc(
                    sizeof(struct Complex) * size )) != NULL ) {
      int i ;
      for( i = 0 ; i < size ; i++ )
         if ( !input_Complex( &array[i] ) )
            break ;
      for( i = 0 ; i < size ; i++ )
         print_Complex( &array[i] ) ;
         // or printf( "%lf + j%lf\n" ,
         //            array[ i ].re , array[ i ].im ) ;

      // mallocしたら必ずfree
      free( array ) ;
   }

   // ポインタの配列で保存
   if ( (array2 = (struct Complex**)malloc(
                     sizeof(struct Complex*) * size)) != NULL ) {
      int i ;
      for( i = 0 ; i < size ; i++ ) {
         // 各データごとにmalloc()
         array2[ i ] = (struct Complex*)malloc( sizeof( struct Complex ) ) ;
         if ( array2[ i ] != NULL ) {
            array2[ i ]->re = (double)i ;
            array2[ i ]->im = (double)i ;
         }
      }
      // 保存した構造体をすべて表示
      for( i = 0 ; i < size ; i++ )
         print_Complex( array[ i ] ) ;
      // 各データごとに free
      for( i = 0 ; i < size ; i++ )
         free( array[ i ] ) ;
      // ポインタの配列を free
      free( array2 ) ;
   }
}

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