コンテナクラスとテンプレート
例年より情報構造論が早く進んだので、STLとかBoostを少しだけ紹介するために、 その基本のコンテナとテンプレートを紹介する。
コンテナクラス
情報構造論の授業では、リストといった様々なアルゴリズムの説明では、 ひとまず整数でリストを…演習で名前と年齢の構造体で…といった 方式で進めてきたが、リストは次のデータのポインタと、実体のデータと考えれば、 実体データは、整数や名前と年齢といったように、必要に応じて変わってくる。
しかし、アルゴリズムが単純リスト・双方向リスト・2分木と変わっても、 実体データが違うだけで、自分自身で全てを記述することになる。 ただ、複雑なアルゴリズムになればなるほど、この作業が大変になる。
ここで、コンテナクラスという考え方が出てくる。 オブジェクト指向の派生・継承の考え方を使い、例えば単純リストを作りたい場合、 次のポインタだけの基本クラスを作り、そのリストを扱う処理をライブラリとして作っておく。 整数のリスト処理がしたければ、単純リストクラスに、整数を加えた派生クラスを作ったり、 名前と年齢を加えた派生クラスを作れば良い。
// 概念の説明用のクラス宣言であり、 // このままでは使いやすいクラスにはならない class List { private: List* next ; public: List( List* n ) : next( n ) {} } ; class ListInt : public List { private: int data ; : } ; class ListNameAge : public List { private: char name[20] ; int age ; : } ;
ただ、上記のプログラムでは、小さなオブジェクトでも仮想関数を使ったり、 肝心のアルゴリズムに相当する部分が記述が困難になるので、実際はもう少し 面倒な宣言になってしまう。 このため、C++などではテンプレートクラスがよく利用される。
テンプレート機能
C++でのテンプレート機能とは、型の部分を「仮の型名」としてプログラムを記述し、 そのプログラムを使用する時に具体的な型名を"<>"の中に記載する方式。 コンパイラ的には、異なる型でテンプレートが利用される度に、 その型用の機械語を生成するので、コードが肥大化する可能性があるのが問題ではある。
#include <stdio.h> template <class T> class List { public: T data ; List<T>* next ; public: List<T>( T x , List<T>*n ) : data( x ) , next( n ) {} } ; int main() { // 整数型のリスト処理 List<int>* p = new List<int>( 1 , new List<int>( 2 , NULL ) ) ; for( ; p != NULL ; p = p->next ) { printf( "%d\n" , p->data ) ; } // 実数型のリスト処理 List<double>* r = new List<double>( 1.2 , new List<double>( 2.3 , NULL ) ) ; for( ; r != NULL ; r = r->next ) { printf( "%f\n" , r->data ) ; } return 0 ; }
このテンプレートクラスの考え方を、究極まで活用したものとして、STL(Standard Template Library)や、 Boostといったライブラリが有名である。
// Cの場合 #include <stdio.h> int main() { int* a ; // 配列の作成 if ( (a = (int*)malloc( sizeof( int ) * 10 )) != NULL ) { // 配列の初期化 for( int i = 0 ; i < 10 ; i++ ) a[ i ] = i ; // 配列の合計 int sum = 0 ; for( int i = 0 ; i < 10 ; i++ ) sum += a[ i ] ; printf( "%d¥n" , sum ) ; } return 0 ; } // STLの場合 #include <numeric> #include <vector> #include <list> using namespace std ; int main() { vector<int> a ; // 配列サイズはSTL任せ... for( int i = 0 ; i < 10 ; i++ ) a.push_back( i ) ; // 配列末尾にiを追加 int sum = accumulate( a.begin() , a.end() , 0 ) ; printf( "%d¥n" , sum ) ; // 同じ処理を実数型の単純リストで... list<double> b ; for( int i = 0 ; i < 10 ; i++ ) b.push_back( (double)i ) ; printf( "%f¥n" , accumulate( b.begin() , b.end() , 0.0 ) ) ; return 0 ; }