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B木とデータベース

2分探索木の考え方を拡張したもので、B木がある。

B木の構造

2分木では、データの増減で木の組換えの発生頻度が高い。そこで、1つのノード内に複数のデータを一定数覚える方法をとる。B木では、位数=Nに対し、最大2N個のデータ d0..d2N-1 と、2N+1本のポインタ p0..p2N から構成される。piの先には、di-1< x < di を満たすデータが入った B木のノードを配置する。ただし、データの充填率を下げないようにするため、データは最小でもN個、最大で2N個を保存する。下図は位数2のB木の例を示す。

B木からデータの検索

データを探す場合は、ノード内のデータ di の中から探し、見つからない場合は、ポインタの先のデータを探す。位数がある程度大きい場合、ノード内の検索は2分探索法が使用できる。また、1つのノード内の検索が終われば、探索するデータ件数は、1/N〜1/2Nとなることから、指数的に対象件数が減っていく。よって、検索時間のオーダは、O(logN) となる。

B木へのデータの追加

B木にデータを追加する場合は、ノード内に空きがあれば、単純にデータの追加を行う。ノード内のデータが2N個を越える場合は、以下のような処理を行う。

ノード内のデータと追加データを並べ、その中央値を選ぶ。この中央値より大きいデータは、新たにつくられたノードに移す。中央値のデータは上のノードに追加処理を行う。このような方法を取ることで、2分木のような木の偏りが作られにくい構造となるようにする。

データを削除する場合も同様に、データ件数がN個を下回る場合は、隣接するノードからデータを取ってくることで、N個を下回らないようにする。

B木とデータベース

このB木の構造は、一般的にデータベースのデータを保存するために広く利用されている。

データベースシステムでは、データを効率よく保存するだけでなく、データの一貫性が保たれるように作られている。
例えば、データベースのシステムが途中でクラッシュした場合でも、データ更新履歴の情報を元にデータを元に戻し、データを再投入して復旧できなければならない。データを複数の所からアクセスした場合に、その順序から変な値にならないように、排他制御も行ってくれる。

データベースで最も使われているシステムは、データすべてを表形式で扱うリレーショナル・データベースである。

((リレーショナル・データベースの例))
STUDENT[]                           RESULT[]
ID   | name     | grade | course    ID   | subject | point
-----+----------+-------+--------   -----+---------+-------
1001 | t-saitoh |  5    | EI        1001 | math    | 83
1002 | sakamoto |  4    | E         1001 | english | 65
1003 | aoyama   |  4    | EI        1002 | english | 90
                                   外部キー
((SQLの例 2つの表の串刺し))
-- 60点以上の学生名,科目名,点数を出力 --
select STUDENT.name, RESULT.subject, RESULT.point --射影--
   from STUDENT , RESULT                          --結合--
   where STUDENT.ID == RESULT.ID    -- 串刺し --   --選択--
         and RESULT.point >= 60 ;

((上記SQLをC言語で書いた場合))
for( st = 0 ; st < 3 ; st++ )                   // 結合(from)
   for( re = 0 ; re < 3 ; re++ )
      if ( student[ st ].ID == result[ re ].ID  // 選択(where)
           && result[ re ].point >= 60 )
           printf( "%s %s %d" ,                 // 射影(select)
                   student[ st ].name ,
                   result[ re ].subject ,
                   result[ re ].point ) ;

B+木

データベースの処理では、目的のデータを O(log N) で見つける以外にも、全データに対する処理も重要である。この場合、全てのデータに対する処理では、単純なB木では再帰呼び出しが必要となる。しかし、他の表でも再帰処理を伴うと、プログラムは複雑になってしまう。

そこで、B木のデータを横方向に並べて処理を行う場合に、その処理が簡単になるように B+木が用いられる。
この方法では、末端のノードは、隣接するノードへのポインタを持つ。下図で示すB+木では、青で示す検索用のB木の部分と、赤で示す順次処理を行うためのシーケンスセットの部分から構成される。

ホスト言語とのインタフェースとERモデル

今日は、前半でホスト言語とSQLのインタフェースとその問題点について説明し、後半では次の章の目標となる適切なデータベース設計のための導入を説明する。

ホスト言語とのインタフェースとSQLインジェクション

プログラミング言語によっては、その言語の中でSQLを使うために「組み込み型のSQL」が使えるものがある。
(COBOL,PL/Iなど)

動的メモリ管理が得意な最近のPythonやPHPなどの言語であれば、データベース参照の関数が利用できる。

SQLインジェクション

例えば、PHPでは、SQLからデータを取り出す処理は、以下のようになる。

// 検索するユーザID
$id = "t-saitoh" ;
$pdo = new PDO( '...' ) ; // データベースに接続する関数
$sql = "select name from usertable where id='$id'" ;
$query = $pdo->prepare( $sql ) ;

// 取り出せたデータに関する処理 id がプライマリキーならforeachは1回ループのはず
foreach( $query->fetcAll() as $name ) {
   // $name に取り出した名前が入っている
} 

しかし、$id の部分を、Web の入力フォームなどの値であれば、名前以外の情報が入力される場合もある。

この際に、「 $id = ” ‘ or 1==1 — ‘ ” 」といった値が入っていた場合、SQLで実行される命令は、

$id = "' or 1==1 --'" の場合
$sql = "select name from usertable where id='' or 1==1 -- ''" ;

となってしまい、本来なら1人のデータを抽出する select 命令が、全テーブルに対して該当してしまい、情報漏洩が発生するかもしれない。

「 $id = “‘; drop usertable ; — ‘” 」であれば、usertable が消されてしまい、システムが動かなくなる(サービスを提供できなくする攻撃 = DoS攻撃 – Denial-of-service attack)ことも考えられる。

他にもSQLインジェクションを使う技がある。こちらの CTF の WriteUp などが参考になる。

こういった攻撃手法は、SQLに本来の意図ではないSQL命令を紛れ込ませる攻撃ということで、SQLインジェクションという。

SQLインジェクションで発生した有名な事件では、以下のようなものがある。

対策としては、ユーザが入力したデータを用いて SQL 命令を実行する場合は、ユーザ入力をSQLとして悪用されないように、シングルクオートなどをエスケープするなどの処理が必要となる。さまざまな手法があるので、SQL無効化の専用関数を用いるべき。

また、データベースシステムは、ネットワーク経由でSQLによる処理を行うが、データベースサーバ自体がインターネットに接続されていて、パスワード攻撃によりデータベース本体に不正アクセスが行われる場合もある。一般的なデータベースを用いたシステムは、フロントエンドのWebサーバ、スレーブDBサーバ、マスタDBサーバの三層構成をとることが多いが、バックエンドのデータベースは、インターネットから隔離しフロントエンドのWebサーバのみ接続できるようにするのが一般的である。

データベースに接続する場合はパスワードにより利用者を限定することができるが、データベースシステム自体がインターネットに接続されていると、パスワード総当たり攻撃(ブルートフォース攻撃)や、パスワードスプレー攻撃(総当たり攻撃は、短時間でパスワード失敗が多発するのでシステムで接続拒否するのが一般的。これを回避するために時間をかけて総当たり攻撃をする手法)により、情報漏洩が発生する。


データベースの設計

リレーショナル・データベースでは、データは表形式であればなんでも良い訳ではない。

例えば、学生の成績データが以下のような構造であった場合、

 ID   | name   | grade | subject  | teacher
------+--------+-------+----------+---------
20101 | aoyama |   1   | database | saitoh
20101 | aoyama |   1   | software | murata
20002 | suzuki |   2   | database | saitoh
20002 | suzuki |   2   | compiler | nishi
30203 | yamada |   3   | media    | ogoshi
  • 修正不整合: 授業担当が saitoh → takaku のように変更になったら、複数のテーブルを修正しなければならない。大量のレコード修正は、時間がかかるし、その途中にシステムダウンしたらデータの整合性に問題が発生するかも。
  • 挿入不整合: 新しい科目 internet を追加したいけど、受講学生が決まらないとデータを挿入できない。
  • 削除不整合: yamada が受講を取りやめたら、科目 media も消えてしまう。

これらを考慮すると、以下のような3つの表で設計するべきである。

学生                      受講            科目
ID    | name   | grade    ID   | SubID   SubID | subject | teacher
------+--------+-------  ------+-------  ------+----------+--------
20101 | aoyama | 1       20101 | 1001     1001 | database | saitoh → takaku
20002 | suzuki | 2       20101 | 1002     1002 | software | murata
30203 | yamada | 3       20002 | 1001     1003 | compiler | nishi
                         20002 | 1003     1004 | media    | ogoshi
                  消す→ 30203 | 1004     1005 | internet | foobar → 追加

データベースの設計では、(1)概念設計、(2)論理設計、(3)物理設計が行われる。

  • 概念設計:概念スキーマの決定(実体・関係モデルを使う)。上記の受講データベースの設計例
  • 論理設計:論理スキーマの決定。関係データベースで実装?ほかのデータベース?
  • 物理設計:物理スキーマの決定。データの格納方法や管理方法を決める。

実体関連モデル(ERモデル)

データベース設計では、実体関連モデル(ERモデル:Entity-Relation model)が使われる。 実体とは、モデル化しようとする対象で独立した存在となれるもの。 実体が持つ色々な特性は属性と呼ばれる。 属性の取りうる値の集合を定義域、同一種類の実体の集まりを実体集合と呼ぶ。 関連とは、実体同士の相互関係をモデル化したもの

実体関連図(ER図)では、実体を長方形、関連をひし形、属性を楕円で表現する。 属性で、キーとなるものには下線をつけて表す。

ER図で調べると、実際にはもっと細かい規定で表現が行われている。 参考:IDEF1X表記とIE表記

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