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リストへの追加処理

最初のリスト生成の説明では、補助関数 cons を用いて、直接リストを生成していた。
しかし、実際にはデータを入力しながらの処理となるであろう。今回は、前回のリスト操作のプログラムの確認などと合わせ、リストへのデータの追加処理について説明する。

ループによるリスト操作・再帰によるリスト操作

ループによるリスト操作のプログラム例を以下に示す。

// リストの全要素を出力
void print( struct List* p ) {
   for( ; p != NULL ; p = p->next )
      printf( "%d " , p->data ) ;
   printf( "¥n" ) ;
}
// リストの件数を返す
int count( struct List* p ) {
   int c = 0 ;
   for( ; p != NULL ; p = p->next )
      c++ ;
   return c ;
}
// リストの合計を返す
int sum( struct List* p ) {
   int s = 0 ;
   for( ; p != NULL ; p = p->next )
      s += p->data ;
   return s ;
}
// リストの最大値を返す
int max( struct List* p ) {
   if ( p == NULL ) {
      return 0 ;
   } else {
      int m = p->data ;
      for( p = p->next ; p != NULL ; p = p->next )
         if ( p->data > m )
            m = p->data ;
      return m ;
   }
}
// リストの中から指定したkeyが含まれるか探す
int find( struct List* p , int key ) {
   // 要素を見つけたら 1 、見つからなかったら 0 を返す
   for( ; p != NULL ; p = p->next )
      if ( p->data == key )
         return 1 ;
   return 0 ;
}

同じプログラムを再帰呼び出しで書いた場合。

// リストの全要素を再帰処理で出力
void print( struct List* p ) {
   if ( p == NULL ) {
      printf( "¥n" ) ;
   } else {
      printf( "%d " , p->data ) ;
      print( p->next ) ;
   }
}
// リストの件数を再帰処理でカウント
int count( struct List* p ) {
   if ( p == NULL )
      return 0 ;
   else
      return 1 + count( p->next ) ;
}
// リストの合計を再帰処理で求める
int sum( struct List* p ) {
   if ( p == NULL )
      return 0 ;
   else
      return p->data + sum( p->next ) ;
}
// リストの最大値を再帰処理で求める
int max( struct List* p ) {
   if ( p == NULL ) {
      return 0 ;
   } else {
      int tm = p->data ;
      int rm = max( p->next ) ;
      return tm > rm ? tm : rm ;          // if ( tm > rm )
   }                                      //    return tm ;
}                                         // else
                                          //    return rm ;
// リストの中から指定した値 key を再帰処理で探す
int find( struct List* p , int key ) {
   if ( p == NULL )
      return 0 ; // 見つからなかった
   else if ( p->data == key )
      return 1 ; // 見つかった
   else
      return find( p->next , key ) ;
}

最も単純なリスト先頭への挿入

リスト構造を使うと、必要に応じてメモリを確保しながらデータをつなげることができるので、配列のように最初に最大データ件数を想定した入れ物を最初に作って保存するような処理をしなくて済む。

struct List {
   int          data ;
   struct List* next ;
} ;

// 保存するリストの先頭
struct List* top = NULL ;

void print( struct List* p ) {
   for( ; p != NULL ;  p = p->next )
      //  ~~~~~~~~~(A)     ~~~~~~~(B)
      printf( "%d " ,  p->data ) ;
           // ~~~~~(C) ~~~~~~~(D)
   printf( "¥n" ) ;
}//~~~~~~~~~~~~~~(E)
int main() {
   int x ;
   while( scanf( "%d" , &x ) == 1 ) {
      //  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~(F)
      top = cons( x , top ) ;
   }     // ~~~~~~~~~~~~~~~(G)
   print( top ) ; // 前回示したリスト全要素表示
// ~~~~~~~~~~~~(H)
   return 0 ; // (生成したリストの廃棄処理は省略)
}
// (1) 入力で、11 , 22 を与えるとどうなる? - 下図参照
// (2) 練習問題(A)~(H)の型は?
// (3) 入力で、11,22 の後に 33 を与えるとどうなる?

ここで示したコードは、新しい要素を先頭に挿入していく処理となる。このため、作られたリストは、与えられた要素順とは逆順となる。この方法は、リストを管理するポインタが1つで分かりやすい

授業では、C言語のプログラムを示しているが、C++を使うと LIST 処理もシンプルに記述できるようになっている。参考資料として、C++で同様の処理を示す。テンプレートを使ったコンテナクラスを使うと、struct List {…} といった記述は不要で、std::forward_list<int> という型を使うだけで書けてしまう。

// C++ コンテナクラスで書くと...(auto を使うには C++11 以上)
#include <iostream>
#include <forward_list>
#include <algorithm>
int main() {
   std::forward_list<int> top ;
   int x ;
   while( std::cin >> x )
      top.push_front( x ) ;
   for( auto i = top.cbegin() ; i != top.cend() ; ++i )
      std::cout << *i << std::endl ;
   return 0 ;
}

要素を末尾に追加して追加順序で保存

前に示した方法は、逆順になるので、追加要素が常に末尾に追加される方法を示す。

struct List* top = NULL ;
struct List** tail = &top ;

int main() {
   int x ;
   while( scanf( "%d" , &x ) == 1 ) {
      //  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~(A)
      *tail = cons( x , NULL ) ;
      tail = &((*tail)->next) ;
   }//~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~(B) 下記の解説参照
   print( top ) ; // 前回示したリスト全要素表示
// ~~~~~~~~~~~~(C)
   return 0 ;  // (生成したリストの廃棄処理は省略)  
}
// (1) 入力で 11,22 を与えるとどうなる? - 下図参照 
// (2) 練習問題(A),(C)の型は?
// (3) 11,22の後に、さらに 33 を与えるとどうなる?

この方法は、次回にデータを追加する場所(末尾の目印のNULLが入っているデータの場所)を覚える方式である。ただし、リストへのポインタのポインタを使う方法なので、少しプログラムがわかりづらいかもしれない。

理解の確認のために、末尾のポインタを動かす部分の式を、型で解説すると以下のようになる。

途中でデータ挿入・データ削除

リスト構造の特徴は、途中にデータを入れたり、途中のデータを抜くのが簡単にできる所。そのプログラムは以下のようになるだろう。

// 指定した途中の場所に要素を挿入
void insert( struct List*p , int data ) {
   // p    は要素を入れる前のポインタ
   // data は追加する要素
   //      あえて、補助関数consを使わずに書いてみる
   struct List* n ;
   n = (struct List*)malloc( sizeof( struct List ) ) ;
   //  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~(A)
   if ( n != NULL ) {
      n->data = data ;
      //        ~~~~(B)
      n->next = p->next ;
      //        ~~~~~~~(C)
      p->next = n ;
   }
   // consを使って書けば、簡単
   //  p->next = cons( data , p->next ) ;
}

int main() {
   struct List* top = cons( 11 , cons( 22 , cons( 44 , NULL ) ) ) ;
   //                                      ↑
   insert( top->next , 33 ) ;           // ここに33を挿入したい

   return 0 ;  // (生成したリストの廃棄処理は省略)
}

// 指定した場所のデータを消す
void remove_after( struct List* p ) {
   struct List* del = p->next ;
   p->next = del->next ;
   free( del ) ;
}

int main() {
   struct List* top = cons( 11 , cons( 22 , cons( 33 , cons( 44 , NULL ) ) ) ) ;
   remove_after( top->next ) ;                //  ↑
                                              // これを消したい
   return 0 ;  // リストの廃棄処理は省略)
}

理解度確認

上記プログラムinsert() の中の、下線部(A),(B),(C)の型は何か答えよ。

レポート課題

以下に示すようなデータを扱うリスト構造を作り、そのリストを扱うプログラムを作成せよ。
( 出席番号 % 3 ) の番号の課題に取り組むこと。

  1. 緯度(latitude)経度(longitude)とその場所の都市名(city)
  2. 名前(name)と誕生日(month,day)(1つの変数に2月7日を0207のように保存するのは禁止)
  3. 複素数(re,im)

このようなプログラムを作るのであれば、以下の例を参考に。

struct NameAgeList {
   char                name[ 20 ] ; // 名前
   int                 age ;        // 年齢
   struct NameAgeList* next ;       // 次のデータへのポインタ
} ;
struct NameAgeList* na_cons( char* nm, int ag,
                             struct NameAgeList*p )
{  struct NameAgeList* ans ;
   ans = (struct NameAgeList*)malloc(
               sizeof( struct NameAgeList ) ) ;
   if ( ans != NULL ) {
      strcpy( ans->name , nm ) ;
      ans->age  = ag ;
      ans->next = p ;
   }
   return ans ;
}

int main() {
   struct NameAgeList* top = NULL ;
   struct NameAgeList* p ;
   char buff[ 1024 ] ;
   // 1行読み込みの繰り返し
   while( fgets( buff , sizeof( buff ) , stdin ) != NULL ) {
      char nm[ 100 ] ;
      int ag ;
      // 1行の中から名前と年齢があったら na_cons で挿入保存
      if ( sscanf( buff , "%s%d" , nm , &ag ) == 2 ) {
         top = na_cons( nm , ag , top ) ;
      }     
   }
   // 読み込んだデータを全部出力
   for( p = top ; p != NULL ; p = p->next )
      printf( "%s %d¥n" , p->name , p->age ) ;
   return 0 ;  // リストの廃棄処理は省略)
}

リスト処理

リスト構造

リスト構造は、データと次のデータへのポインタで構成され、必要に応じてメモリを確保することで、配列の上限が制限にならないようにする。また、次のデータへのポインタでつなげているため、途中へのデータ挿入が簡単にできるようにする。

まずは、メモリ確保とポインタをつなげるイメージを確実に理解してもらうために、1つ1つのデータをポインタでつなげる処理を示す。

#include <stdio.h>
#include <stdlib.h>

// List構造の宣言
struct List {
   int          data ;  // データ保存部
   struct List* next ;  // 次のデータへのポインタ
} ;

int main() {
   struct List* top ;   // データの先頭
   struct List* p ;

   // (1)
   top = (struct List*)malloc( sizeof( struct List ) ) ;
   top->data = 111 ;
   // (2)
   top->next = (struct List*)malloc( sizeof( struct List ) ) ;
   top->next->data = 222 ;
   // (3)
   top->next->next = (struct List*)malloc( sizeof( struct List ) ) ;
   top->next->next->data = 333 ;
   top->next->next->next = NULL ; // 末尾データの目印

   for( p = top ; p != NULL ; p = p->next ) {
      printf( "%d¥n" , p->data ) ;
   }
   return 0 ;
}

このようなメモリーの中のポインタの指し示す番地のイメージを、具体的な番地の数字を書いてみると、以下のような図で表せる。先頭の111が入った部分が1000番地であったなら、topというポインタには1000番地が入っている。

NULLって何?

前回の授業で説明した、次の配列の添え字の番号を使う方式では、データの末尾を示すためには、-1 を使った。-1 は、配列の添え字で通常ありえない値であり、次のデータはないという目印とした。

同じように、C言語では、通常あり得ないポインタとして、0 番地を示す NULL が定義されている。NULLポインタの先を参照してはいけない。このリスト処理では、末尾を表す目印として使っている。

#define NULL 0

補助関数

上記のプログラムでは、(struct…)malloc(sizeof(…))を何度も記載し、プログラムが分かりにくいので、以下に示す補助関数を使うと、シンプルに記載できる。

struct List* cons( int x , struct List* n ) {
   struct List* ans ;
   ans = (struct List*)malloc( sizeof( struct List ) ) ;
   if ( ans != NULL ) {
      ans->data = x ;
      ans->next = n ;
   }
   return ans ;
}

int main() {
   struct List* top ;
   top = cons( 111 , cons( 222 , cons( 333 , NULL ) ) ) ;
   :
   return 0 ; // Listの開放free()は省略
}

補助関数の名前の cons は、constructor の略であり、古くから使われている List Processor(LISP) というプログラム言語でのリスト(セル)を生成する関数が cons 。

typedefを使った書き方

List構造の宣言は、古い書き方では typedef を使うことも多い。typedef は、型宣言において新しい型の名前をつける命令。

// typedef の使い方
//    typedef 型宣言 型名 ;
typedef unsigned int uint32 ; // 符号なし32bit整数をシンプルに書きたい
uint32 x = 12345 ;

typedef struct LIST {     // 構造体のタグ名と新しくつける型名と重複できない
      int   data ;        // のでこの時点のタグ名は "LIST" としておく
      struct LIST* next ;
   } List ;

List* cons( int x , List* n ) {  // C++なら struct List { ... } ; と書く
   List* ans ;                   // だけでこういう表記が可能
   ans = (List*)malloc( sizeof( List ) ) ;
   :
   ((略))
}
int main() {
   List* top ;
   top = cons( 111 , cons( 222 , cons( 333 , NULL ) ) ) ;
   :
   ((略))
}

最近のC言語(C++)では、構造体のタグ名がそのまま型名として使えるので、こういう書き方をする必要はなくなってきている。

// 最近のC++なら...
struct List {
public:
   int   data ;
   List* next ;
public:
   List( int x , List* n )
     : data( x ) , next( n ) {}
} ;

int main() {
   List* top = new List( 111 , new List( 222 , new List( 333 , NULL ) ) ) ;
   :
   // Listの開放deleteは省略
}

LISPと関数型プログラミング言語

LISPの歴史は長く、最古のFORTRAN,COBOLに次ぐ3番目ぐらいに遡る。最初は、人工知能(AI)のプログラム開発のための関数型プログラミング言語として作られた。特徴として、データもプログラムもすべてリスト構造(S式)で表すことができ、プログラムは関数型に基づいて作られる。

関数型プログラミングは、Ruby や Python でも取り入れられている。関数型プログラミングは、処理を関数をベースに記述することで「副作用を最小限にすることができ」、極端な話をすればループも再帰呼出しの関数で書けばいい…。

LISPの処理系は、最近では Scheme などが普通だが、プログラムエディタの Emacs は、内部処理が LISP で記述されている。

古いAI※※と最近のAIの違い

最近では、AI(Artificial Intelligence) という言葉が復活してきたが、LISP が開発された頃の AI と最近注目されている AI は、微妙に異なる点がある。

LISPが開発された頃の AI は、関数型のプログラム言語で論理的思考を表現することが目標であった。頭脳を左脳と右脳の違いで表現することが多いが、どちらかというとLISPの時代のAI「分析的で論理的に優れ、言語力や計算機能が高い」とされる左脳を作り出すことを目指していた。しかしながら、この時代では、漠然としたパターンを認識したりするような「感覚的、直感的な能力に優れ総合判断力を司る右脳」のような処理は苦手であった。

しかしながら、最近注目されている AI は、脳神経を真似たニューラルネットワークから発展した機械学習ディープラーニングという技法により今まで難しかった右脳の機能を実現することで、最近のAIでは左脳と右脳の機能を兼ね備えたものとなっている。

将棋のプログラミングで例えるなら、左脳(古いAI)に例えられるのが正確に先の手を読む機能であり、右脳に例えられる機能が大局観(全体の良し悪しを見極める判断能力)といえる。

簡単なリスト処理の例

先に示したリスト構造について簡単なプログラム作成を通して、プログラミングに慣れてみよう。

// 全要素を表示する関数
void print( struct List* p ) {
   for( ; p != NULL ; p = p->next )
      printf( "%d " , p->data ) ;
   printf( "¥n" ) ;
}
// データ数を返す関数
int count( struct List* p ) {
   int c = 0 ;
   for( ; p != NULL ; p = p->next )
      c++ ;
   return c ;
}
int main() {
   struct List* top = cons( 111 , cons( 444 , cons( 333 , NULL ) ) ) ;
   print( top ) ;
   printf( "%d¥n" , count( top ) ) ; 
   return 0 ;
}

リスト処理を自分で考えて作成

以下のようなプログラムを作ってみよう。意味がわかって慣れてくれば、配列の部分の for の回し方が変わっただけということに慣れてくるだろう。

// 全要素の合計
int sum( struct List* p ) {
   // sum( top ) → 888
   自分で考えよう
}
// リストの最大値を返す
int max( struct List* p ) {
   // max( top ) → 444 (データ件数0の場合0を返す)
   自分で考えよう
}
// リストの平均値を返す
double mean( struct List* p ) {
   // (111+444+333)/3=296.0
   自分で考えよう
}
// リストの中から指定した値の場所を返す
int find( struct List* p , int key ) {
   // find( top , 444 ) = 1 (先頭0番目)
   // 見つからなかったら -1
   自分で考えよう
}

再帰呼び出しでリスト処理

リスト処理の応用のプログラムを作るなかで、2分木などのプログラミングでは、リスト処理で再帰呼出しを使うことも多いので、先に示したプログラムを再帰呼び出しで書いたらどうなるであろうか?

// 全データを表示
void print( struct List* p ) {
   if ( p == NULL ) {
      printf( "¥n" ) ;
   } else {
      printf( "%d " , p->data ) ;
      print( p->next ) ; // 末尾再帰
   }
}
// データ数を返す関数
int count( struct List* p ) {
   if ( p == NULL )
      return 0 ;
   else
      return 1 + count( p->next ) ; // 末尾再帰
}
// 全要素の合計
int sum( struct List* p ) {
   // sum( top ) → 888
   自分で考えよう
}
// リストの最大値を返す
int max( struct List* p ) {
   // max( top ) → 444 (データ件数0の場合0を返す)
   自分で考えよう
}
// リストの中から指定した値を探す。
int find( struct List* p , int key ) {
   // find( top , 444 ) = 1 
   // 見つかったら1 , 見つからなかったら 0
   自分で考えよう
}

理解度確認

上記プログラム中の sum() , max() , find() を再帰呼び出しをつかって記述せよ。

集合とリスト処理

リストを用いた待ち行列の補足

# リストによる待ち行列を早速に創造工学演習で応用した人からの質問より…

以前に説明したリストを用いた待ち行列(queue)において、時間的都合から詳しく説明できなかった点の注意点を説明する。

待ち行列の説明では、get() の処理を以下のように示していた。しかし、このままでは、待ち行列が1件の状態で、以下のような get() を実行するとポインタが以下のような図に示される状態となり、tail ポインタがおかしい状態となる。

struct List* queue = NULL ;
struct List** tail = &queue ;
// 待ち行列の先頭から取り出す。
int get() {
   struct List* d = queue ;
   int ans = d->data ;
   queue = queue->next ;
   free( d ) ;
}

このため、待ち行列内のデータ件数が 0 件になる時だけ、tail ポインタが正しくなるような特別処理を加える必要がある。こういった特別処理は、以後の授業で説明する双方向リスト(deque:double-ended queue)などでは、プログラムを複雑化させてしまうので、別途「番兵」というテクニックが使われる。

リスト処理による積集合

前述の方法は、リストに含まれる/含まれないを、2進数の0/1で表現する方式である。しかし、2進数であれば、unsigned int で 32要素、unsigned long long int で 64 要素が上限となってしまう。 (32bitコンピュータ,gccの場合)

しかし、リスト構造であれば、リストの要素として扱うことで、要素件数は自由に扱える。また、今までの授業で説明してきた cons() などを使って表現すれば、簡単なプログラムでリストの処理が記述できる。

// 先週までに説明してきたリスト構造と補助関数
struct List {
   int     data ;
   struct List* next ;
} ;
// リストの入れ物を1つ作る
struct List* cons( int x , struct List* n ) {
   struct List* ans ;
   ans = (struct List*)malloc( sizeof( struct List ) ) ;
   if ( ans != NULL ) {
      ans->data = x ;
      ans->next = n ;
   }
   return ans ;
}
// リストを表示
void print( struct List* p ) {
   for( ; p != NULL ; p = p->next ) {
      printf( "%d " , p->data ) ;
   }
   printf( "\n" ) ;
}
// リストの中に指定要素があるか判定(有れば1,無ければ0)
int find( struct List* p , int key ) {
   for( ; p != NULL ; p = p->next )
      if ( p->data == key )
         return 1 ;
   return 0 ;
}

例えば、積集合(a ∩ b)を求めるのであれば、リストa の各要素が、リストb の中に含まれるか find 関数でチェックし、 両方に含まれたものだけを、ans に加えていく…という考えでプログラムを作ると以下のようになる。

// 集合積の計算
struct List* set_prod( struct List* a , struct List* b ) {
   struct List* ans = NULL ;
   for( ; a != NULL ; a = a->next ) {
      // aの要素がbにも含まれていたら、ansに加える
      if ( find( b , a->data ) )
         ans = cons( a->data , ans ) ;
   }
   return ans ;
}
void main() {
   struct List* a = cons( 1, cons( 2, cons( 3, NULL ) ) ) ;
   struct List* b = cons( 2, cons( 4, cons( 6, NULL ) ) ) ;
   struct List* c = cons( 4, cons( 6, cons( 9, NULL ) ) ) ;
   print( set_prod( a , b ) ) ;
   print( set_prod( b , c ) ) ;
}

例題として、和集合差集合などを考えてみよう。

リストの共有と削除の問題

リスト処理では、mallocを使うが、メモリリークをさせないためには、使用後のリストの廃棄は重要である。リストの全要素を捨てる処理であれば、以下のようになるであろう。

void list_free( struct List* p ) {
   while( p != NULL ) {
      struct List* d = p ;
      p = p->next ;
      free( d ) ; // 順序に注意
   }
}

一方、前説明の和集合(a ∪ b)のプログラムを以下のように作った場合、list_freeの処理は問題となる。

// 集合和
struct List* set_union( struct List*a, struct List*b ) {
   struct List* ans = b ;
   for( ; a != NULL ; a = a->next )
      if ( !find( b , a->data ) )
         ans = cons( a->data , ans ) ;
   return ans ;
}
void main() {
   struct List*a = cons( 1, cons( 2, cons( 3, NULL ) ) ) ;
   struct List*b = cons( 2, cons( 3, cons( 4, NULL ) ) ) ;
   struct List*c = set_union( a , b ) ;
   // a,b,cを使った処理
   // 処理が終わったので、a,b,cを捨てる
   list_free( a ) ;
   list_free( b ) ;
   list_free( c ) ;
   // c = { 1 , (bのリスト) }
   // (b)の部分は先のlist_free(b)で解放済み
}

このような、リストb,リストcで共有されている部分があると、データの廃棄処理をどのように記述すべきなのか、問題となる。

これらの解決方法としては、(1) set_union() の最初で、ans=b となっている部分を別にコピーしておく、(2) 参照カウンタ法を用いる、(3) ガベージコレクタのある言語を用いる…などがある。(2),(3)は後期授業で改めて解説を行う。

// 同じ要素を含む、新しいリストを作る
struct List* copy( struct List*p ) {
   struct List*ans = NULL ;
   for( ; p != NULL ; p = p->next )
      ans = cons( p->data , ans ) ;
   return ans ;
}
struct List* set_union( struct List*a, struct List* b ) {
   struct List* ans = copy( b ) ;
   // この後は自分で考えよう。
}

理解確認

  • 2進数を用いた集合処理は、どのように行うか?
  • リスト構造を用いた集合処理は、どのように行うか?
  • 積集合(A ∩ B)、和集合(A ∪ B)、差集合(A – B) の処理を記述せよ。

リスト処理基本の回答

前回授業の、sum(),max(),mean(),find() のループ版や、再帰版のプログラム例

// 合計ループ版
int sum( struct List* p ) {
   int s = 0 ;
   for( ; p != NULL ; p = p->next )
      s += p->data ;
   return s ;
}

// 合計再帰版
int sum( struct List* p ) {
   if ( p == NULL )
      return 0 ;
   else
      return p->data + sum( p->next ) ; // 場所のデータと以降の合計
}

// 最大値ループ版
int max( struct List* p ) {
   if ( p == NULL ) {
      return 0 ;
   } else {
      int m = p ->data ;                // 先頭を仮の最大値
      for( p = p->next ; p != NULL ; p = p->next )
         if ( m < p->data )             // それ以降から大きい物を見つけたら
            m = p->data ;               // その値を最大値として保存
      return m ;
   }
}

// 最大値再帰版
int max( struct List* p ) {
   if ( p == NULL ) // data0件で0を返すことにする
      return 0 ;
   else if ( p->next == NULL )
      return p->data ;
   else {
      int m = max( p->next ) ;   // 以降のデータの最大値より
      if ( m < p->data )         // その場所のデータが大きい
         return p->data ;
      else
         return m ;
   }
}

// 平均ループ版
double mean( struct List* p ) {
   int c = 0 , s = 0 ;
   for( ; p != NULL ; p = p->next ) {
      c++ ;
      s += p->data ;
   }
   return (double)s / (double)c ;
}

// 平均の再帰版
// ただし、 mean( top , 0 , 0 ) のように呼び出す。
double mean( struct List* p , int s , int c ) { // s はリストの合計
   if ( p == NULL )                             // c はリストの件数
      return (double)s / (double)c ;
   else
      return mean( p->next , s + p->data , c + 1 ) ;
}
// C++なら、meanの宣言に引数のデフォルト値を指定すれば
// double mean( struct List* p , int s = 0 , int c = 0 ) { ... }
// printf( "%lf" , mean( top ) ) ; みたいな使い方ができる。

// findループ版
int find( struct List* p , int key ) {
   int i = 0 ;
   for( ; p != NULL ; p = p->next )
      if ( p->data == key )
         return i ; // 見つかったらi番目
      else
         i++ ;
   return -1 ; // 見つからなかったら(-1)
}

// find再帰版
// ループ版とは返り値の取り扱いが違うので注意
int find( struct List* p , int key ) {
   if ( p == NULL )
      return 0 ; // 見つからなかった
   else if ( p->data == key )
      return 1 ;
   else
      return find( p->next , key ) ;
}

 

リストへの追加処理

前期期末試験までの授業予定( 7/10 リスト追加+課題, 7/17 stackとque+課題 7/24 リストで集合計算 )

最初のリスト生成の説明では、補助関数 cons を用いて、直接リストを生成していた。
しかし、実際にはデータを入力しながらの処理となるであろう。

最も単純なリスト挿入

struct List* top = NULL ;

int main() {
   int x ;
   while( scanf( "%d" , &x ) == 1 ) {
      top = cons( x , top ) ;
   }
   print( top ) ; // 前回示したリスト全要素表示
   return 0 ;
}

ここで示したコードは、新しい要素を先頭に挿入していく処理となる。このため、作られたリストは、与えられた要素順とは逆順となる。この方法は、リストを管理するポインタが1つで分かりやすい。

要素を末尾に追加

前に示した方法は、逆順になるので、与えられた要素が末尾に追加する方法を示す。

struct List* top = NULL ;
struct List** tail = &top ;

int main() {
   int x ;
   while( scanf( "%d" , &x ) == 1 ) {
      *tail = cons( x , NULL ) ;
      tail = &((*tail)->next) ;
   }
   print( top ) ; // 前回示したリスト全要素表示
   return 0 ;
}

この方法は、次回にデータを追加する場所(末尾だからNULLが入っている)を覚える方式である。ただし、リストへのポインタのポインタを使う方法なので、少しプログラムがわかりづらいかもしれない。

理解の確認のために、末尾のポインタを動かす部分の式を、型で解説すると以下のようになる。

途中でデータ挿入・データ削除

リスト構造の特徴は、途中にデータを入れたり、途中のデータを抜くのが簡単にできる所。そのプログラムは以下のようになるだろう。

void insert( struct List*p , int data ) {
   // あえて、補助関数consを使わずに書いてみる
   struct List* n ;
   n = (struct List*)malloc( sizeof( struct List ) ) ;
       ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~(A)
   if ( n != NULL ) {
      n->data = data ;
                ~~~~(B)
      n->next = p->next ;
                ~~~~~~~(C)
      p->next = n ;
   }
   // consを使って書けば、簡単
   //  p->next = cons( data , p->next ) ;
}

void remove_after( struct List* p ) {
   struct List* del = p->next ;
   p->next = del->next ;
   free( del ) ;
}

理解度確認

上記プログラムinsert() の中の、下線部(A),(B),(C)の型は何か答えよ。

レポート課題

以下に示すようなデータを扱うリスト構造を作り、そのリストを扱うプログラムを作成せよ。
( 出席番号 % 3 ) + 1 の番号の課題に取り組むこと。

  1. 緯度(latitude)経度(longitude)とその場所の都市名(city)
  2. 名前(name)と誕生日(month,day)(1つの変数に2月7日を0207のように保存するのは禁止)
  3. 複素数(re,im)

このようなプログラムを作るのであれば、以下の例を参考に。

struct NameAgeList {
   char                name[ 20 ] ; // 名前
   int                 age ;        // 年齢
   struct NameAgeList* next ;       // 次のデータへのポインタ
} ;
struct NameAgeList* na_cons( char* nm, int ag,
                             struct NameAgeList*p )
{  struct NameAgeList* ans ;
   ans = (struct NameAgeList*)malloc(
               sizeof( struct NameAgeList ) ) ;
   if ( ans != NULL ) {
      strcpy( ans->name , nm ) ;
      ans->age  = ag ;
      ans->next = p ;
   }
   return ans ;
}

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